IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
「いやー、晴れて良かったな」
日曜日、天気は快晴、素晴らしい。
来週から始まる臨海学校の準備もあって、俺はとある女子と二人で街に繰り出していた。その女子と言うのが―――――
「・・・・・・・」
なぜか仏頂面のシャルロット―――――もといシャルだ。
「・・・・・僕は夢が砕ける音を聞いたよ・・・・・」
と、良く分からんがさっきからずっとこの調子だ。ずーんっていうか、どよーんっていうか、とにかくこんな調子なのだ。
ちなみに、シャルの服装は半袖のホワイト・ブラウス。その下にはスカートと同じライトグレーのタンクトップを着ている。ふわりとしたティアードスカートはその短さもあって健康的な脚線美を十二分には演出していた。・・・・・ん?どうしてこんなに詳しいかって?それはな―――――
数日前
『ちょっと瑛斗』
『ん?鈴か。どうした?』
『アンタ、地球に降りてきたって言ってたけど、服とか持ってたりするの?』
『服?』
『私服よ、私服。アンタ制服ばっか着てるじゃない』
『あー、服ねぇ・・・。あ、ツクヨミにいたときの作業着があるぞ』
『・・・・・それだけ?』
『あー、ちょっと待て・・・あ!』
『!』
『そう言えば、シャツとジーンズがあったぞ!あと、パーカー』
『・・・・・それだけ?』
『・・・・・それだけ』
『・・・・・はぁ』
『なんだよそのため息』
『やっぱアンタに当たって正解だわ。ほら、コレ』
ドサッ
『? なんだ?雑誌か?しかも大量に』
『これ読んで少しは勉強しなさいよ。アンタ、ファッションセンス疎過ぎ』
『疎っ・・・・・!?』
『そんなんじゃ、地球の流行に乗ってけないわよ?ま、せいぜい頑張るのね』
―――――ってなことがあって俺は鈴からもらった雑誌を読んで最近の流行を学んだのだ。その過程で女の人が着る服の特集がある本とかも読んだりしてそういうのから知識を得た。鈴には感謝しないとな。
「どうした、シャル?具合でも悪いのか?」
心配になって顔を覗き込むと、ぐいいっと押し返された。
「・・・・・・」
しかも無言。しかしその視線は非難囂々を告げている。
「シャル、なあ―――――」
「瑛斗」
「お、おう?」
「乙女の純情をもてあそぶ男は馬に蹴られて死ぬといいよ」
こ、怖い・・・・・。とりあえずここは反論しない方が良い。
「そうだな。俺もそう思う」
「鏡を見なよ」
ん?寝癖でもついてるのか?いかん。それは格好悪い。
「どうせ、どうせね、こんなことだろうとは思ったよ・・・・・。この前も一夏が箒さんにそんなことしてたし・・・・・。はぁぁ〜〜・・・・・」
うお、いきなりマリアナ海溝より深いため息をつかれた。一体全体どうしたっていうんだ。まさか無理に付き合わせちまってるのか?
「いや、その、悪い。でもあれだぞ?無理しない方が良い。なんだったら帰るか?」
「・・・・・・」
無言のプレッシャー。うぐぅ・・・なんだこの真綿で首を絞められたような気持ちは。どうしよう?
どうしようもないので、俺は言い訳を探す。
「そうだ!お礼に他の女子たちが美味しいって言ってた駅前の専門店でパフェおごる!」」
「パフェだけ?」
「よし分かった!ケーキとドリンクも付ける!」
ん?自分でハードル上げてるような・・・・・。まあ良いか!
「それと・・・・・、ん」
そう言ってシャルは手を差し出してきた。
「手、繋いでくれたらいいよ」
「なんだ、そんなことか。お安い御用だぜ」
そう言えばお互いにあまり知らない街だ。それに今日は日曜日。人も大勢いるだろう。なるほど。はぐれないための予防線か。シャルは機転がきくな。
「・・・・・・・・」
うん?なんで急に黙りこくるんだ?それにさっきよりも顔が赤い。
「大丈夫か?」
「ひゃあっ!?な、なにが!?」
「いや、シャルが。やっぱ帰るか?」
「ううん!大丈夫!さ、行こう!」
「わ、お、おい!」
シャルに手を引かれ、俺は街の雑踏の中に足を踏み入れた。
「・・・・・大丈夫かな。アイツ」
時間を戻して五分ほど前、中国の代表候補生の鈴は物陰から瑛斗とシャルロットを見ていた。
「一夏と会うつもりで来たのに、まさかこんなところで会うなんて・・・」
実は数日前に鈴が瑛斗に渡した雑誌は自分が読み終えて、処分に困ったものである。理由を作って誰かに渡してしまおうと考え、瑛斗にそれを渡したのだ。
「まあ、アイツにも少しくらいは借りがあるから―――――」
「何をしてらっしゃいますの?」
「ひゃあっ!?」
振り返るとそこにはイギリスの代表候補生であるセシリアがいた。
「何だ、セシリアか」
「何だとは何ですの?!」
「シッ!それより、アンタ何しに来たのよ」
「うっ!・・・・・そ、それは、あっ、新しい水着をと思って・・・」
「ふーん?ま、いいわ。それよりあれ見て」
「? 瑛斗さんと、シャルロットさん?」
「デートかしらね?でもそれにしてはシャルロットは不機嫌そう・・・・・」
「そうですわね・・・・・」
じっと物陰から二人を見る鈴とセシリア。二人とも十代の女子。他人の色恋沙汰に興味がないと言えばウソになる。
「手握った!」
「本当ですわ!」
「追うわよ!」
「ええ!」
立ち上がりかけたその時、後ろから声をかけられた。
「ほう、楽しそうだな。私も交ぜろ」
「「!?」」
そこにいたのは先月自分たちをコテンパンにしたラウラだった。
「なっ!アンタいつの間に!」
「そう警戒するな。お前たちに危害を加えるつもりはない」
「し、信じられるものですか!再戦というのなら受けて立ちますわよ!?」
「あのことは、まあ、許せ」
しれっと言われて絶句する鈴とセシリア。
「許せってアンタねぇ・・・・・!」
「はいそうですかと言えるわけが・・・・・!」
「そうか、では私は瑛斗を追うので失礼する」
すたすたと歩き始めるラウラを止める二人。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「そうですわ!追ってどうしますの!?」
「決まっているだろう。私も交ざる。それだけだ」
度ストレートに言われ、自分たちももう少し押しが強ければと悔やんだり、羨ましがったりする二人。
「ま、待ちなさいよ。未知数の敵と戦うにはまず情報収集。基本でしょ?」
「ふむ、一理あるな。ではどうする?」
「ここは追跡ののち、ふたりの関係がどこまでのものなのか見極めましょう」
「なるほどな。では、その作戦で行こう」
ここに英中独追跡同盟が結ばれた。この際だから言っておこう。鈴とセシリアは今日、一夏がここに来るとわかっていて、待ち伏せをしようと考えていたのだ。
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