IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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時間はあっちゅーまに過ぎて、現在午後七時半。俺達は大広間を三つぶち抜いた大宴会場で夕食を取っていた。

 

「うん、うまい!昼も夜も刺身とは豪勢だな!」

 

「ああ、IS学園は羽振りがいい」

 

「そうだね。このお刺身とっても美味しいよ」

 

一夏、俺、シャルの順番で感想を言う。ちなみにシャルは、というか全員が浴衣姿だ。良く分からんがこの旅館の決まりらしい。ずらっと並んだ一学年の生徒は座敷であるから当然正座だ。そして一人一人に膳が置かれている。

 

「しかし凄いなこの刺身。カワハギだぜ」

 

「カワハギ?カワハギってあれか?あの、薄いやつ。図鑑で見たぞ」

 

「ああ、最近は高級魚って聞いたな」

 

「へ〜、どら」

 

パク、俺はカワハギの刺身を一切れ食べた。独特な歯ごたえだ。クセのない味がまたなんとも・・・。

 

「うん!美味い!」

 

「だろ?それにこのわさび、本わさだ。高校生の飯じゃないぜ」

 

「「本わさ?」」

 

「ああ、瑛斗とシャルロットは知らなかったな。本物のわさびをおろしたヤツを本わさって言うんだ」

 

「ほう、じゃあ、IS学園の刺身定食についてるあのわさびはなんだ?」

 

「あれは練わさ。ワサビダイコンとかセイヨウワサビとかいうヤツだったかな。着色したり合成してりして見た目と色を似させてるんだ」

 

「ふぅん。じゃあ、これが本当のわさびなんだね?」

 

「そう。でも練わさでもおいしいのはあるぜ。店によっては本わさと練わさを混ぜて出したりするからな」

 

「そうなんだ。はむ」

 

「なるほどな。はむ」

 

「え・・・・・・」

 

うん?なんで一夏はそんな驚いた顔をしてるんだ?俺はただ本わさの味というのを―――――

 

「「っ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」」

 

ぐぉぉぉ!?な、なんて味だ!は、鼻がツーンってなって、スーッってなって、くぅぅぅ!

 

鼻を押さえて悶える俺の横ではシャルも涙目になって悶えている。そうか、お前も味わったんだな。

 

「だ、大丈夫か?二人とも」

 

「だ、大丈夫だ・・・多分」

 

「ら、らいひょうぶ・・・」

 

つとめて笑顔を見せようとしたが、涙目になっているからいまいち決まっていないだろう。

 

「ふ、風味が、あって・・・・・いいね。お・・・・・美味しい・・・よ?」

 

シャル、どこまでいい奴なんだお前は。尊敬するぜ・・・。ぐぉぉ、まだ鼻が・・・。

 

「地球の食材・・・、恐るべし・・・!」

 

そんなわけで俺達の楽しい(?)夕食は八時過ぎまで続いた。なんか一夏がまたセシリアと何か話をしていたが、まあ、関係ないか。

 

 

 

「ふっふふ〜ん♪」

 

夕食を食べ終わり、しばらく経ってから、俺は風呂に入った。一度部屋に戻ってエリナさんに『明日の試作装備の中にエレクリットが作ったものがいくつかあるから見ておいてほしい』という内容の電話をもらって、少し長く話してしまったため、一夏とは入れ替わる形になったので、貸切のような感じで露天風呂が使えた。

 

「いやぁ、一人で露天風呂使えるなんて滅多にないからなぁ」

 

そんな感じで上機嫌で部屋の前まで戻ってくると、

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

箒、鈴、そしてセシリアが一夏と織斑先生の部屋のドアに耳をつけていた。

 

「何やってんだ?お前ら」

 

「「「・・・・・・・」」」クイックイッ

 

ジェスチャーで耳をつけるように指示された。一体何が起こってるんだ?俺は耳をドアにつけた。

 

『千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?』

 

『そんな訳あるか、馬鹿者。―――――んっ!す、少しは加減しろ・・・・・』

 

『はいはい。んじゃあ、ここは・・・・・と』

 

『んぁぁっ!』

 

「・・・・・・・・・」

 

えーと、どういうことなんでしょうね、コレ。ホント、どーゆーことなんでしょーね、コレ。

 

「あれ?皆何してるの?」

 

「貴様ら、何をしている」

 

「「「「!?」」」」

 

な、なんだ、シャルとラウラか。驚かせやがって・・・。そんなことより!

 

「「「「・・・・・・・」」」」クイックイッ

 

「「?」」ピト

 

俺達のジェスチャーで、シャルとラウラもドアに耳をつける。傍から見れば、六人がドアに縦に張り付いていて珍妙だろうが、そんな場合じゃない!

 

『ほら、大分あったまってきただろ?』

 

『そ、そんなこと・・・あぅぅっ!?』

 

『はは、体は正直だね。千冬姉』

 

『う、うるさ―――、はぁあん!』

 

「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」

 

さっきよりエスカレートしてるよな。エスカレートしてるよな!?

 

俺達は尋常ならざる状況にダラダラと汗を流す。暑さのせいだけではないだろう。

 

『じゃあ、次は・・・・・』

 

『一夏。ちょっとまて』

 

二人の会話が途切れる。不審に思った俺達はさらにドアに顔を近づける。

 

バンッ!!

 

「「「「「「へぶっ!?」」」」」」

 

思いっきり、ドアに殴られた。打撃の刹那に出た声は忘れてあげることにしよう。いくらなんでも可哀想だ。

 

「何をしているか、馬鹿者共が」

 

「い、いや〜、あはは・・・・・」

 

「は、はは・・・・・」

 

「ど、どうも・・・・・教官・・・」

 

「こ、こんにち・・・こんばんは・・・・・」

 

「こ、こんばんは。織斑先生・・・・・」

 

「さ・・・・・・・さようなら、織斑先生っ!」

 

脱兎のごとく逃走開始・・・・・のはずがあっという間に拘束され、

 

「盗み聞きとは感心しないな。ちょうどいい。入っていけ」

 

ずるずると半ば引きずられる形で入室。この人には・・・勝てる気がしないや・・・。

 

「おお、セシリア。遅かったじゃないか。早速はじめようぜ」

 

ぽんぽんとベッドを叩いてセシリアを呼ぶ一夏。な、なんてストレートな言い方を・・・!

 

「え、その、織斑先生もいらっしゃいますし・・・、その・・・・・」

 

「?別に良いじゃねえか。俺も体が温まってるし、早く始めよう」

 

俺達が良くねえんだよ!by俺の心の声

 

「い、いえ・・・・・でもこういうのは、その、雰囲気が・・・・」

 

「?」

 

そして数秒セシリアが考え、ついにベッドに横たわった。ほ、本当にやるのか!?

 

「・・・・・・・」

 

だが、一夏は動かない。なぜだ?

 

「あの、セシリア?」

 

「は、はい・・・」

 

ぎゅーっと目を固く閉じて返事をするセシリア。

 

「うつぶせじゃないと、できないぞ?」

 

そ、そういう問題かよ・・・・・。俺は心でツッコんだ。

 

「じゃ、はじめるぞー」

 

うつぶせになったセシリアに手を添える一夏。ああああっ!?やるのか!?ホントにやるのか!?

 

「うわああああああっ!」

 

気がつけば俺は真っ赤になって一夏を羽交い絞めにしていた。

 

「ちょっ、瑛斗っ!?」

 

「落ち着け一夏!こ、こんなところでそんなことしたらいかんぞ!こんなに大勢が見てる中でそんなことしたらお前、そりゃお前・・・・・とにかくやめろぉ!」

 

じたばたと暴れる一夏。それを押さえる俺。なんとしてもこの男を止めなければ!

 

「落ち着け桐野。こいつはただマッサージをしてやるだけだ」

 

「そうです!そのマッサージがダメって・・・・・・・え?」

 

まっさーじ?え?マッサージ?

 

「そうだよ、俺はさっき千冬姉にマッサージしてたから、その流れでセシリアにもしてあげようと思ってだな」

 

・・・・・・あ、そゆこと。

 

「な、なんだー!そういうのはもっと早く言えよもー!このこの!」

 

俺は一夏の拘束を解除した。女子たちもほっと安堵の息を漏らしている。

 

「・・・・・・・」

 

ただ一名、セシリアを覗いては。なんだ?ものすげーガッカリした顔してるぞ?

 

「なんだ?まさか私とコイツがあんなことやこんなことをしてると思ったのか?おめでたい奴らだな。はっはっはっは」

 

「「「「「「・・・・・・・」」」」」」

 

冷静になって、自分たちが考えていたことを思い返して顔を真っ赤にする俺達。うぅ、恥ずかしい。

 

「ま、なんにしてもだ。一夏。オルコットにやってやれ」

 

「あ、うん。わかった。じゃ、セシリア、最初は痛いかもしれないけど我慢してくれな?」

 

「は、はいぃ・・・」

 

そんな訳で俺達はセシリアのマッサージを受ける姿を数分見続けた。見続けるしかなかった。このいたたまれない空気を紛らわすためにも・・・・・。

 

 

 

 

「ふぅ、じゃ、これで終わりだ。もういいぞ?」

 

「あ、ありがとうございましたぁ〜」

 

一夏のマッサージを受け、心も体もすっかり蕩けさせたセシリアが蕩けた返事をする。普通に気持ちよさそうだったな。

 

「さて、そうだな。一夏。桐野。お前たちはもう一度風呂にでも入ってこい。二人とも結構汗をかいたようだしな」

 

う、そう言われると否定できない。あの時はホント体中から汗が噴き出たからな。シャツが少しべたついている。

 

「うん、わかった」

 

「わかりました」

 

一夏と俺はもう一度風呂に向かった。部屋を出るとき、一瞬シャルとラウラの残念そうな顔が見えたんだが、あいつらも一夏のマッサージを受けたかったんだろうか?

 

「一夏」

 

「うん?」

 

「今度、シャル・・・ああ、シャルロットとラウラにもマッサージしてやってくれ」

 

「ああ、別に良いけど、シャルってのは?」

 

「シャルロットの呼び名。俺とあいつの間だけのな」

 

「へえ!そういえば、あいつが男のふりしてた時も結構仲良さそうだったもんな」

 

「そうか?」

 

「ああ。俺もああいう友達欲しいぜ」

 

「・・・・・お前にゃ、幼馴染がいるだろ」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「いいや、何も」

 

俺達は男湯の更衣室ののれんをくぐりながらそんな会話をした。

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臨海学校初日の夜
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