ONE PIECE ?黒髪少年の描く世界? 第二十一話 脱出 |
ワニがいきなりの攻撃にのたうち回る。
「ハッ、これでも力抜いてやったんだ。感謝してほしいね」
手を腰に当てて言う。
「あ、あのさ?ヤマトは味方なの?敵なの?さっきビビを傷つけたのは俺だとか言っときながら助けてるし…」
ナミが動揺気味に聞く。
「ん?味方のつもり。ちょっといろいろあってこっちに潜入してるんだ。…でも信じてもらえなかったらそれでも仕方ないかもな」
弱気に笑う。
ナミがしばらく考えて、顔を上げる。
「信じるわ。だって一回仲間になったもんね」
そう言って笑ってみせる。ああ。金に関してあんなに怖くなかったら絶対惚れてるよ。怖くなかったら、ね。
「それにビビの傷は偽物のようだし」
「これヤマトさんの絵の具なのよー。いろんな赤を混ぜて作ってたわ」
ビビが檻の方へ行ってホラ、と言ってみせる。それを見てルフィやナミ達はへー、と感心しながら見ていた。
「これからもこっちで潜入しながら手助けさせてもらうよ」
「ん?なんだ結局ヤマトは敵じゃなかったのか?」
「あんたこの会話聞いてたらわかんでしょ!ヤマトはこっちのもんよ!」
ナミがルフィに説明する。『もん』て俺物かよ…。
こんなほのぼの?した雰囲気でもワニちゃん達はとことんKYらしく襲いかかってくる。
「!!ヤマト!」
「またかよ…さっきのでこりて巣に戻ってれば良かったものを…」
くるりとワニの方を向く。
「ワニの急所は目、腹。背中への攻撃は固い鱗に被われているためあまり意味をなさない。…だがあんたらのKYさに敬意を表して背中からの攻撃にしてやろう!」
ワニの真上に向かって飛ぶ。
「カラー・セレクト、ヘビー級!!」
叫び、絵の具を取り出して筆につける。
「|黒十字(こくじゅうじ)!!」
絵筆を振り、ワニの背中に十字を描く。
ズンッズズンッ
ワニの身体がみるみる床にめり込んでいく。
「!?なにしたの!?」
ナミが驚いて見ている。
「色の心理効果を最大限使った技だよ。色の明度によって重さ、軽さが決まる。黒は一番重い色だからワニが地面にめり込むってわけ」
「ミス・ゴールデンウィークみたい…」
「?」
どうやらおんなじような技を使うやつがいたらしい。
その後も大体はこの技でしとめた為、部屋の中はつぶれたワニであふれ返った。
…といってもグシャとがブシュとかグロくならないように原形を残して上手く埋めた。俺の女性に対する少しの配慮だ。
「…さすがヤマト…ていうか背中に攻撃するも何も全身埋まっちゃってるし…」
「よ、よよよーし!よく俺の作戦通りにしたヤマト!ここを開けてくれ!!」
作戦練った記憶がないんだが。
「ヤマトー!!ここ開けろーー!」
俺も能力者だから無理に近いんだが。
「さあ、ヤマト!鍵を探すのよ!」
さっきの一瞬惚れそうになった俺の心を返してくれ。
「ていうかどのワニだかもうわかんねーよ」
埋めたワニ達を見つつため息をつく。
「てめぇが最後に埋めたワニだ。そいつに吐かせろ」
『スモーカーさん』だ。
「ほー。なんでわかんだ?」
「てめぇの耳は飾りか?鍵を食ったワニと鳴き声が一緒だった」
「あーさすがだな。スモーカー…ぁー。中佐?」
「大佐だ!」
「それだ。いやー中佐ってなんかかっこよくないか?中佐しか階級覚えてねーんだ」
ヤマトがスモーカーの言ったワニに近寄りながら言う。
大佐の方がかっこよくないか?と思う者の方が多いだろう。
「うーん。我ながら見事に埋まっている…。カラー・セレクト、ライト級、|白銀蝶(はくぎんちょう)!」
今度はワニの背中に白の絵の具で蝶を描く。とたんにワニの身体が地面から出て、浮く。
一回空中で止まった。が、ヤマトが持ってる筆を上にピンッと振るとワニの身体が勢い良く天井にぶつけられる。
ドガァァァァン
天井からパラパラと何かが振ってくる。それとともにワニの口から白い玉が落ちてきた。
「何だこりゃ。カルシウムで被われるには早すぎる気がする」
顔をしかめて玉を見つめる。
「まあとにかくこのワニは用済みだな」
筆を今度は下にピッと振る。するとまたワニが下に落ち、(いや、引っ張られと言った方がいい気がする)地面にめり込む。ワニが少しばかり涙ぐんでいるように見えた。
くるっと玉の方を向き、近づく。玉はホントにまんまるで白かった。
「うん。ここは俺の故郷の昔話のように包丁でで割るべきか」
モモじゃないが。
川から流れてきたわけでもないが。
やるっきゃないっしょ!
ドコン
パカッ
割れた玉から出てきたのは
「オオ…!ミズだガネ…!奇跡だガネ…!!」
とても元気のない男の子。
「こりゃ随分キモイ桃◯郎が生まれちまったもんだ」
「!3だ3!」
「Mr.3!なんでワニの胃の中に!?」
「フフフ…クロコダイルめ、こんなんで私を仕留めたと思ったら大間違いだガネ!ん?ぎゃーーーーーー!お前らはっっ!!」
Mr.3がルフィ達の方を見て酷い形相をする。キモイ顔がさらにキモくなってしまった。
どうやらこいつもルフィ達と因縁があるようだ。どんだけいろんな人と関わってきたんだ…。
「なあ、あんた確かその手でいろんな形作れるんだよな?鍵探すのめんどいからお前の能力で合鍵作れ」
「ん?フムフム…状況把握できたんだガネ。私がいないと麦わら達は檻から出られないのだな?いやだと言ったらどうするガネ?」
どうやらMr.3はこちらの弱みを握ったとでも勘違いしたようで意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「そうか…残念だ。んじゃちっと後ろ向け。」
「ん?何だガネ」
Mr.3が後ろを向く。
「お礼に蝶でも描いてやるよ」
「?何のお礼だガ、ネ!!?」
筆を上に振ると共にグンッとMr.3の身体が浮き上がる。
「ひっ」
「これからいやでも鍵を開けてもらうからそれのお礼だよ」
ニッコリ笑いながら天井にぶつける。
「でっ」
マヌケな声が上がる。そして筆を下に振る。
「ぼぇぶっ」
下にMr.3が落下する。
近づいてしゃがみ込む。
「どう?開けてくれる気になったか?」
「あ、開けばぶ…」
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