IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
「作戦完了―――――と言いたいところだが、お前たちは独断行動により重大な違反を犯した。帰ったらすぐ反省文の提出と懲罰用トレーニングを用意してやるからそのつもりでな」
旅館に戻って来てから三十分くらい経ったかな。戻ってきた俺達は織斑先生に正座で思いっきり説教を受けていた。つ・・・辛い。セシリアなんかさっきまで赤い顔してたけど、もう顔が白いぞ。
「あ、あの・・・、織斑先生。もうその辺・・・・・・、け、怪我人もいることですし・・・・・」
そう俺達を擁護してくれるのは山田先生だ。さっきから救急箱を持ってきたり水分補給用のパックを持って来たりと大忙しだ。
「ふん・・・・・まあ、その、なんだ。全員、よくやった」
山田先生の言葉を受けたからかどうかは分からないが、織斑先生の説教はこれで終わった。最後にお褒めの言葉らしきものをいただいたが、アレは褒められたととっていいんだよな。
「じゃ、じゃあ、一度休憩してから診察しましょうか。ちゃんと服を脱いで全部見せてくださいね。ああ!男女別ですよ!わかってますか織斑君と桐野君!?」
「分かってますよ。心外だなぁ。俺達がそんなスケベな野郎に見えま―――――」
「「「「「・・・・・・」」」」」ササッ
・・・・・えーと、女子たちが自分たちの体を隠すように身を縮めているんだが、そんなにスケベに見えるんだろうか?ショックだ・・・・・。
「一夏、そういうことみたいだからここを出ようぜ」
「え?あ、ああ」
俺は一夏を連れて部屋から出た。
「なあ、瑛斗」
「ん?」
「俺達、ちゃんと・・・守れたよな?」
「・・・・・・・・・・」
「?」
「・・・ああ。守れたさ」
お前と、白式と、俺と、G−soulは。
ざざぁん・・・・・ざざぁん・・・・・
「んー・・・・・ん、んー」
この日の夜。波の音に合わせるように鼻歌を奏で、小型ディスプレイに目を向けているのは、篠ノ之束その人だ。彼女が見ているのは白式第二形態《雪羅》とG−soul第二形態《G−spirit》の戦闘映像だ。
「はー、それにしてもこの二機には驚くなぁ。白式は操縦者の肉体再生まで行うなんてまるで―――――」
「まるで、『白騎士』のよう・・・・・。そう言いたいんだろう」
すると、林の中から声が聞こえた。自分が愛している友の声。木に背をあずけて、よりかかっているのだろう。
「あー、ちーちゃん・・・」
束は姿を現さない千冬の方には顔を向けず、淡く輝く月を見ている。
「ふふ、そうだね。白式の方も面白いけど、G−soul・・・、こっちもなかなかのものだよ」
「何がだ?」
「このISのコア、元は誰のISのコアだか分かる?」
「・・・・・」
千冬は答えない。束はそれを確認すると答えを言った。
「このISのコア、ちーちゃんのあの時の対戦相手だった人のIS『G−HEART』のコアなんだよ」
「ほう・・・・・、それはまた偶然だな」
あの時、第二回モンド・グロッソで千冬は決勝戦を辞退。理由は誘拐された一夏を助けるため。それによって、千冬の決勝戦の相手が不戦勝で二代目のヴァルキリーになった。
「で、そのISの操縦者が―――――」
「ツクヨミのIS研究所所長、アオイ・アールマイン、だろ?」
「ぴんぽーん。正解。良く分かったね」
「ふん、知らなくてどうする・・・・・」
「じゃあさ、ご褒美に面白いこと教えてあげるよ」
「なんだ?」
「えっくんのことだよ。えっくんはね―――――」
ざぁぁ・・・・・。と風が木々を揺らし、ざわめかせ、音をたてる。
「―――――――――――だよ」
「なんだと!?そんなことがあるはずがない!いや・・・・・あってはならない!」
声を荒げ、林の中から躍り出る千冬。その眼は真っ直ぐ束を見ている。しかし束はそんなことは気にせず話を進める。
「それが現実なんだよ。ちーちゃん。えっくんはいつか、このことを知った時、どうするかなぁ?」
「・・・・・・・・・」
「自己嫌悪になっちゃうか、それとも・・・・・」
束は楽しそうに語る。まるでおとぎ話を話すように。
「いっくんや箒ちゃん、その他の前から姿を消して決着(ケリ)をつけに行っちゃうかなぁ?うふふ・・・、何にしても面白い話でしょ?」
「ああ。ブラックジョークなら最高傑作だ」
千冬は束の顔を真顔で見ながら答える。
「あはは、ちーちゃんこわい〜。・・・・・じゃあ、束さんはそろそろドロンするのだ。じゃあね」
「待て」
「?」
「お前に聞きたいことがあって来たんだ。お前にだけ話させてたまるか」
「・・・いいよ。束さんに話して御覧なさい!」
「一夏と桐野。なぜあの二人はISを動かせる?」
「んー・・・・・、どうしてって言われてもなぁ」
「答えられないということは、分からないってことだな?」
お前は昔からそうだ。腕を組み、そう続けた千冬。束は反論しない。
「そうだね。束さんは天才だけど、分からないこともあるんだよ。束さんは天才だけど、神じゃないからね」
「・・・・・そうか。もう行っていいぞ」
「最後にちーちゃん」
「?」
「――――――――」
何かを言って、束は海に飛び降りた。おそらくその下には束が作ったボートでもあるのだろう。
「・・・・・・・・」
何を言ったのか千冬には理解できた。千冬はふっと笑う。
「当然だ。馬鹿者・・・・・」
夜風が千冬の髪を撫でた。
「ん〜〜〜〜〜っ・・・・・はあっ」
臨海学校最終日。この日の日程はただIS学園に帰るだけ。今はサービスエリアでトイレ休憩中だ。寝ていた俺は、バスから降りて伸びをする。
「お茶でも買うか・・・・・ん?」
飲み物を買おうと自販機の前に立つと、その横のもう一つの自販機の方に人影が二つ。
「何してんだ?お前ら・・・・・」
「「はうっ!?」」
反応したのは箒とセシリア。手にお茶のペットボトルを持ちながらなにやらぶつぶつ独り言を言っていた。
「べっ・・・・別に?」
「な、なんでもありませんわよ?」
目がものすごく泳いでいるが・・・ん?
「箒、髪留めのリボン変わったのか?」
いつものやつとは色が変わっている。
「へっ!?あ、ああ、こっ、これは・・・その、い、一夏・・・がな・・・」
「一夏に買ってもらったのか?」
「そ、そうだ・・・。へ、変か?」
「いいや、全然」
「そ、そうか・・・・・」
こころなしか嬉しそうにポニーテールを弄る箒。大分気に入ったようだ。一夏もこーゆー才能はあるんだな。人の喜びそうな物を買う才能が。
「そ、それではわたくし、バスに戻りますわ」
「あっ、ま、待て!」
そして二人はバスに戻って行った。何をそわそわしてるんだろうか。
「っとと、俺も買わなきゃ」
本来の目的を思い出し、俺はお茶を買ってバスに戻ることにした。
「あー、学園に戻ったらエリナさんに謝らないとな・・・・・」
急に嫌なことを思い出し、ちょっぴり気が沈む俺。シールド、壊しちゃったからなぁ・・・・・。
「ま、まあきっと、許してくれるさ。は、はは、ははは、はぶっ!?」
ぼふん!
座席にもどる途中で何かにつまずいてしまった。のはいいんだけど、なんだろう?なにか柔らかいものが俺の顔面を受け止めてるんだが?
「?」
ふに、ふにふに
良い感触だ・・・・・。待てよ?こんな展開いつかも・・・・・。
「あらあら、こっちの子は随分積極的ね」
「へっ!?」
上から声がしたので見上げるとそこにはアメリカ人の綺麗な女性がいた。え、俺が掴んでたのって、まさか・・・。
「え、へ、ええっ!?」
胸だった。その女性の結構大きな胸を俺はしっかり掴んでいた。
「ごっ、ごご、ごめんなさい!」
慌てて謝る俺。しかし女性は苦笑しながら俺の後ろを指差した。
「謝るなら、あっちにも謝ったほうがいいんじゃないの?」
「?」
振り返る。
「瑛斗・・・、ラッキーだったね」
「はっはっは」
「! シャ、シャル、ラウラ・・・・・」
動きが止まる。二人の背中には風神と雷神が見える・・・・・。
「「・・・・・」」スッ
500ミリリットルのペットボトルを構える二人。動けない、俺。
「「はいどうぞ!」」
「ぶげらぁっ!!」
ペットボトルが直撃した俺は気を失う寸前、仰向けに倒れながら後ろの方に座る一夏が見えた。
「・・・・・・・」
のびてたな・・・アイツ。・・・・・ガクッ。
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臨海学校、完結! | ||
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