IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
夏休みも終わりに近づいてきた八月下旬。午後二時ちょっと過ぎ。俺は公園のベンチに座ってジュースを飲んでいる。
(ぼちぼちだな・・・・・)
腕時計で時間を確認し、空になったジュースの缶を屑籠に投げ入れる。
カコン
屑籠のふちに当たった缶は乾いた音を立てながら屑籠の中に納まった。
「瑛斗ー!」
お、どうやら来たみたいだ。
振り返るとシャルが手を振りながら近づいてきていた。隣にはラウラもいる。
「よう。どうだった?」
「ああ。問題はない、全てのミッションは完了した」
ラウラはいつも通りな声で答えた。
「ミッションって・・・・・、迷子の母親を捜してただけだろ?」
そう。そうなのだ。俺達は今日、一夏の家に遊びに行くことになっている。その道中で迷子の小さな女の子に遭遇し、シャルの提案でその子の親を捜していたのだ。
「すぐに見つかってよかったね」
シャルがそう言いながら時間を確認する。
「捜索開始から三十分。悪くないタイムだ」
「まあ、広い公園だからな。・・・・・ん?ラウラ、それなんだ?」
見ると、ラウラの手には缶バッジが握られていた。
「ああ、これか。これは、まあ―――――」
「ラウラがあの迷子の子のお母さんを見つけたら、その迷子の女の子がラウラにくれたんだよ。ラウラってば、貰うとき照れ―――――」
ラウラが何かを言おうとしたシャルの口を押える。なんか、いつかも押さえられてた気がする。
「い、言うなシャルロット!瑛斗、何でもないぞ」
「う、うん。わかった。言わないから」
「な、なら良い・・・・・」
そう言ってシャルから手を離すラウラ。仲のいいことで。
「? まあ良いか。そろそろ行こうぜ」
「そうだね」
「わかった」
俺達は公園から出て、一夏にメールで送ってもらった地図を頼りに織斑家に向かった。
ああ、そうそう。冒頭で俺はジュース飲んでたけど、決してサボってたわけじゃないから。あれ休憩だから。
「瑛斗?誰と話している?」
「ん?いや、別に?」
じゃあ、そういうことで。
「いやあ、鈴とセシリアも呼ばれてたのか。奇遇だな」
「そ、そうね」
「ええ。奇遇ですわ」
一夏の家の前までついた俺達は鈴とセシリアに出会った。二人とも一夏に呼ばれていたらしい。
「え?二人とも、一夏が帰省してる日を調べ―――――」
「あー!なんのことかしらー!?」
「シャルロットさんったら、ご冗談を!おほほほ!」
またシャルが口を押えられている。本日二度目である。
「さて、じゃあ、押してみよう」
俺はインターホンのボタンを押した。
ピンポーン
「ちょ、瑛斗!アンタ何勝手に押してんのよ!」
「そうですわ!こちらにも心の準備というものがありますわ!」
押したと同時に鈴とセシリアに食ってかかられた。え?友達の家に遊びに行くのに心の準備なんているか?少なくとも俺はいらない。
『はい?』
「「!?」」
一夏の声が聞こえた。なぜか鈴とセシリアはビシッ!っと固まった。
「よう一夏。来たぜ。シャル達の他に、鈴とセシリアもいる」
『ああ、ちょっと待っててくれ』
インターホンが切れてほどなく、玄関から一夏が出てきた。
「よう」
「いらっしゃい。暑かったろ?入って入って」
「「「「「おじゃましまーす」」」」」
そんなわけで織斑家にお邪魔。玄関に入ると
「・・・・・・・・・」
リビングの方から箒がこちらを見ていた。
「お、箒も来てたのか」
「ああ、箒も今来たとこだからそんなに差はないぜ。今麦茶持ってくるからソファにでも座って楽にしててくれ」
「ああ、分かった」
俺達はリビングに入りソファに座る。リビングは綺麗に掃除されてて、埃などは見当たらない。
「へえ、よく掃除されてるな」
思わず感心してしまう。
「そうか?そう言ってもらえると嬉しいな。ほら麦茶」
「おう、サンキュ」
「皆も」
冷えた麦茶を一気にあおる。こういう暑い日は麦茶が美味い。ん?
「そう言えば織斑先生は?」
「ああ、千冬姉は仕事。今日は帰ってくるかな?」
「仕事か。教師も楽じゃないな」
「あ、言っとくけど千冬姉の部屋は勝手に入ったら殺されるからな?マジで」
一夏が忠告してきた。興味はあるけど・・・・・やめとこ。触わらぬ神になんとかってな。
「わかった。だとよラウラ」
「なっ、なぜ私に言う!?私はそんなことは考えてはいないぞ!」
「そうか。そりゃ悪かった」
じゃあ、辺りをきょろきょろ見渡して明らかに何かを探していたあの挙動は気のせいなんだな。
「さて、ここで話してるのもなんだから、何かして遊ぼうぜ。鈴」
「なに?」
一夏が鈴を呼ぶ。
「お前のことだから、何か持ってきてるんだろ?」
「ん、良いカンしてるじゃない。そうね、いろいろ持ってきたわよ」
鈴は大きめの鞄からボードゲームやらトランプ、果てはカルタなど、様々な遊び道具を取り出した。
「ほう、我が国ドイツのゲームもあるではないか」
そう言ってラウラは一つの箱を手に取った。
「『バルバロッサ』かぁ・・・・・、懐かしいな。何だっけか?鈴が造ったあの餃子だかあんまんだかよく分からなかったアレ」
「何言ってんの。アレはももまんでしょ」
「うわ、もはやギリギリの造形だな」
「なによ、自分だって粘土を四角く捏ねただけで豚の角煮って言い張ってたじゃない」
「ばっか、お前、俺はちゃんと三層で表現したぞ?それに弾は分かってた」
「アレはアイツがたまたま昼に豚の角煮定食を食べてたからでしょ!」
一夏と鈴の二人だけで思い出話に花を咲かせている。
「うーし。じゃあこのバルバロッサってのをやってみようぜ。箒もやるよな?」
「あ、ああ」
さっきから黙りこんでいた箒に声をかける。箒はハッとしたように返事をしてきた。
「じゃあルール説明するわよ。まずは―――――」
鈴がルールの説明を始めた。少々お待ちしてくれ。
「―――――ってわけ。わかった?じゃあ、各自、制作スタート!」
鈴の合図で粘土を捏ね始める。
(ここはやっぱり勝ちに行くために少々邪道な作戦で行くか・・・・・)
俺は心の内でそう決め、粘土を手に取った
〜数分後〜
「皆準備できたわね?じゃあ座ってる位置から、時計回りで箒が瑛斗が何を造ったのか当てるの」
「よし。分かった」
「受けて立つぜ。正直当てられるとは思ってないからな?」
俺は箒にニヤリと笑ってみせる。
「大した自信だな?」
「ああ。当てられるもんなら当ててみやがれ!」
俺はテーブルの上に作品を置いた。
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
「どうだっ!」
一同が凍りついた。ふっふっふ、作戦通り!当てられるか?この球体の粘土が何かを!
「瑛斗」
お、質問スタートか。ノーの答えが出た時点で質問は終了らしい。
「なんだ?」
「うーむ・・・・・、これは地球上にあるものか?」
引っかかった!
「ノーだ」
「なっ!?」
「さあ、当ててみろよ?」
「うぐ・・・・・・・」
箒は顎に手をあてて考えている。分かるかなー?宇宙に詳しけりゃすぐに分かるけどなー?
「そうか!わかったぞ!」
「!」
何だと!?
「野球のボールだ!」
・・・・・・・・・ふぅ。(心の中のため息)
「違う!」
「何ぃ!?」
俺がそんな安直なものを造るとでも?
「うーむ・・・・・」
少し難し過ぎたか?他の皆も腕を組んで俺の作品を凝視している。
読者の皆には教えておこう。答えは『木星』だ。
この手のゲームは『地球上にあるか?』と言うような質問から始める人が多いと見た。だから地球上にないものを造ればおそらく無敵だろう。
「ほら、分かった人は答えてくれ」
ヤベ、楽しい。このゲーム気に入った。
「あ、分かった」
お、シャルが分かったようだ。まあ、当てられるとは思っていないが。
「よし、言ってみろ」
「木星?」
「・・・・・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「瑛斗?もしかして・・・正解?」
「・・・・・・・・・はい」
「本当?やったあ」
なぜだ?なぜシャルは分かったんだ?
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
鈴がシャルの肩に手を置く。
「?」
「どうしてこれが木星だなんて分かったのよ!?」
「俺も知りたい。どこで分かったんだ?」
「えへへ、それはね・・・・・」
「それは?」
ゴクリ
「秘密♪」
シャルはウインクした。
「え〜・・・・・?」
ぬぅ、悔しいがどうやら俺のことはお見通しらしい。仕方ない。次はもっと難しいものを!
「あ、次から瑛斗はちゃんと地球上のもので固定ね」
「え!?」
それから、俺達のバルバロッサによる激闘は続いた。セシリアのエキセントリックな作品は俺達の度肝を抜き、ラウラの前衛的な作品は俺達を驚愕させ、箒は犬だか馬だか分からない何かを造るなど、意外と手強かったり・・・・・・・。
まあ、分かりやすく言うと、あっという間に時間が過ぎたよってこと。
ガチャ
鈴の持ってきたゲーム類を一通り終え、菓子を食べながら談笑し始めたころ、リビングに誰かが入ってきた。
「妙に玄関に靴が大量に並べられてると思ったら、お前たちだったか」
「千冬姉。お帰り」
「おう、ただいま」
訪問者は一夏のお姉さんで一年一組の担任。織斑千冬さんだった。
「織斑先生。お邪魔してます」
織斑先生の服装はサマースーツで、いかにも仕事をしてきたという感じだ。
「先生はやめろ。ここは学校ではないからな。『千冬さん』で良い」
「はあ」
せんせ・・・・・じゃねえや。千冬さんは鞄を一夏に預けた。
「早かったね。コーヒーゼリーできてるけど、食う?」
「あー・・・・・」
千冬さんは一夏と俺達を交互に見た。
「いや、この後すぐまた出る。少し用事があってな。遅くなるからコーヒーゼリーはまた次の機会にしよう。そこの客人たちにでも振る舞っておけ」
「う、うん。わかったよ」
「ではな」
千冬さんは一夏から再び鞄を受け取るとリビングのドアに手をかけた。
「そうだ、お前たち。ゆっくりしていって構わんが、泊りはダメだぞ?布団がないからな」
リビングを出る前にそう言うと千冬さんは二階に上がっていった。多分、着替えるのだろう。私的な用事だろうか?
「じゃあ、どうする?皆コーヒーゼリー食べるか?」
「あ、俺食う」
「僕もいただこうかな?」
「私は食べよう」
「わたくしもいただきますわ」
「アタシももらうわ」
「わ、私は・・・・・・」
箒だけが言いよどんでいる。どうしたんだ?
「箒?」
一夏が箒の顔を見る。すると箒は顔を耳まで赤くした。
「な、なんでもない。私ももらおう」
「? まあ良いか」
一夏はキッチンに向かい、冷蔵庫の中からコーヒーゼリーを七つ取り出した。
「はいどうぞ。千冬姉は苦めの味が好きだったから苦かったら砂糖とミルクもあるぞ」
「アンタこういうのも作れるのね。呆れるわねー」
文句を言いながらも鈴はゼリーのカップを手に取ってそれを美味そうに食べる。
「美味しい!これ、一夏が作ったんだよね?」
「本当!美味しいですわ」
シャルとセシリアも大絶賛だ。どれ、早速食べてみよう。はむ。
「おお、うめー!一夏、これ美味いぞ!」
「そ、そうか?そんなに褒めてもらえるとこっちも嬉しいぜ」
一夏は照れくさそうに頭を掻いた。
「・・・・・・・・・・・」
ラウラはただ黙々とゼリーを口に運んでいる。それが目にとまった一夏は俺を小突いてきた。
「なあ、もしかしてラウラの口に合わなかったかな?」
「いや、あれは相当美味いんだろう。アイツはそういうやつだ」
ラウラやシャルとは良く一緒にいるからそういうのが分かってきた。
「・・・・・・・・・・・」
見れば箒も何も言わずにゼリーを食べている。
「なあ、瑛斗」
「ん?アレは知らん。けど、美味いから食べるんだろ?」
「そ、そうなのか?箒、美味いか?」
「・・・・・・・・・」コクン
「な?言った通りだろ?」
「あ、ああ」
皆でコーヒーゼリーを美味しくいただいた後、俺達は談笑したり、再びトランプなどをして過ごした。
「お、もうこんな時間か。皆は夕飯はどうする?」
ふと、時計を見た一夏がそんなことを聞いてきた。
「夕飯?」
「ああ、千冬姉は泊りじゃなけりゃゆっくりしていって良いって言ってたから夕飯くらいなら今から買い物に行くから人数分用意できるけど?」
「ふーん。皆はどうする?ここで飯食っていくか?俺は皆に合わせるぞ」
シャル達の方を向くと皆なぜか自信満々な顔をしていた。な、なんだ?
「ふっふっふー、今日はアタシたちがご飯作ってあげるわ!」
「「え?」」
突然の鈴の一言に俺と一夏は目を丸くした。
「んしょ・・・んしょ・・・・・、もう、切りにくいジャガイモね・・・・・」
キッチンの方から鈴の独り言が聞こえてくる。俺と一夏はテレビを見るふりをしながらチラチラと後ろで繰り広げられる料理という名の『戦闘』を見ている。
鈴が言うには、今日は自分が一夏に手料理を振る舞うつもりだったが、それを聞いたシャルや箒たちも『どうせなら自分もやりたい』と言ったことから女子たち全員が料理を作って皆でそれを分けて食べようということになったらしい。
その心意気はありがたいの一言に尽きる。尽きるんだけど・・・・・・・。
「まだ赤みが足りませんわね・・・・・・」
ドババッ
「おいセシリア、ケチャップを入れすぎなんじゃないか?それに火が強すぎるぞ」
「箒さんご心配なく。わたくしは料理では最後に勝負をしかけますから!」
「勝負って・・・・・料理は戦いや賭け事ではないんだぞ?」
とか
「ラウラ、サバイバルナイフの扱いが上手だね」
「そ、そうか?まあ、ナイフの一本も扱えなければ野戦でトラップも作れんからな」
「う、うん。あ、そうだラウラ。大根が余ったら分けてくれないかな?この前一夏に教えてもらった唐揚げをつくりたいんだ」
「わかった。少し待っていろ」
「?」
「―――――切る」
ダンッ!
「ら、ラウラ?」
「―――――切る・・・ん?ああ、なんだ?」
ダンッ!
「い、いや、なんでもないよ」
とか、なんか、ヤバいツートップがいるんですが?
(瑛斗、俺にはセシリアが何を作ろうとしているのか見当がつかないんだが?)
(知るか。俺はラウラの方が怖いわ。なんでサバイバルナイフで料理してんだよ。普通の包丁が手元にあるだろうに・・・・・)
向こうに聞こえない位の小声で一夏と話す。
(やっぱり、様子を見に行った方が良いよな?)
(やめとけやめとけ。行ったところでどうにもならないから。俺達は待つしかない)
(だよな・・・・・・)
一夏も覚悟を決めたようで、これ以上女子たちの調理行程を気にするのはやめた。
そして・・・・・・・、遂にその時は来た。
「よーし、完成よ!」
そんなわけで俺と一夏の前には五人が作った料理が並べられている。
「我ながら、今までの中で一番上手く作れましたわ!
俺と一夏をハラハラさせてくれたセシリアの料理はビーフストロガノフ、的なものだった。匂いがすごい。なんだ?この目が痛くなる匂いはタバスコか!?セシリアめ・・・・・赤を足すために全部入れやがったな・・・・・!
「ラウラ・・・これ、おでん、だよな?」
「そうだ」
「・・・・・おでん、だよな?」
「そうだと言っている」
思わず二回聞いてしまうほどのラウラ作のおでん。なぜこんがり焼き色がついているんだ?まあ、あまりぶっ飛んだものじゃなくてよかった。
「どうよ!」
鈴は腕組みして一夏の答えを待っている。鈴の料理は肉じゃが・・・・・かな?あれは?
「あぅ・・・ああ。美味そうだな」
「む、何よその言い方。もうちょっとなんかないの?」
ああ、一夏が対応に困っている。じゃあ一夏が困ってる間にシャルと箒の方も見ておこう。
シャルの料理は鶏の唐揚げ。食べやすいサイズになっていて、シャルの家庭的なところが見て取れる。いい嫁さんになるな。きっと。
「瑛斗、僕の顔になにかついてる?」
「へっ?ああ、いや、別に」
いけね。料理を見てたつもりがシャルの方を見ていたようだ。
そんでもって箒。すごいなこれ。カレイの煮つけか?もう店で出しても全く差しさわりのない完璧な出来だ。そう言えば、いつかも和食が得意だと言ってたな。
「じゃあ、さっそく食べようぜ。飯はあったかいうちに食べたほうがいい」
そして皆も椅子に座って手を合わせる。
「いただきます」
声を合わせてちゃんといただきますを言ってから食べ始める。
皆で食う飯は美味かった。まあ、途中、セシリアの料理食って喉が地獄を見たが、それも含めて、皆で食べる飯はいつもと違う、なんて言うか、こう―――――
「・・・・・・・」
「ラウラ?どうしたの?」
ふと、箸を動かす手が止まっているラウラが目に入り、シャルが声をかける。
「いや・・・・・、こうして皆で食べていると、不思議な感じがする」
「ラウラ、きっとそれはね、『嬉しい』ってことなんだよ」
「そうか。嬉しい、か」
ふっ、とラウラは笑って再び手を動かし始めた。
そう。嬉しい。俺もラウラと同じものを感じていたんだろう。忘れてたな。親しい人たちと同じ場所で飯を食う嬉しさってのを。
ツクヨミで所長やクルーの皆とそうしていたように、今は一夏やラウラ達とこうやって・・・・・。
「瑛斗?どうした?」
「え?」
一夏がぎょっとしたように声をかけてきた。他の皆も驚いたような顔をしている。
ぽたっ、ぽたっ
「え?あれ?」
手を顔に当ててみると自分が涙を流していることに気づいた。おかしいな。全然止まらねえや。
「大丈夫か?」
一夏がティッシュを俺に手渡した。
「ああ、悪いな」
俺はそれで涙を拭う。
「いやあ、ちょっとセシリアの料理が目に効いてきたみたいだ」
笑ってごまかしてみる。
「まあ!どういう意味ですの!?」
「そのまんまの意味でしょ?」
「鈴さん!?」
「ほら二人とも、やめろって―――――」
「い、一夏・・・・・」
「なんだ?箒」
「そ、その、私の料理・・・・・美味しい、か?」
「え?ああ、すっごく美味いぞ」
「そ、そうか!ほら!私の分もやろう!食え!」
「え?え?」
「あ!箒ってばずるい!一夏!アタシの分もあげるわよ!食いなさい!」
「え?」
「一夏さん!わたくしの分も差し上げますわ!」
「えぇ!?」
「なぜわたくしにだけ明らかに反応が違うんですの!?」
ふぅ、良かった。何とか取り繕えたみたいだ。
「瑛斗」
「ん?なんだ?」
「瑛斗も、嬉しかったんだよね?」
シャルがニッコリと笑った。
「・・・・・・・・・」
「?」
「ああ。嬉しかった。それに、今も嬉しい」
「ふふ、よかった」
こうして、織斑家訪問は楽しい夏休みの思い出として俺の胸に刻み込まれたのだった。
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織斑家にお邪魔 | ||
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