IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
「えーと・・・・・これは?」
「うん、袴だよ」
「それくらいわかります!」
一夏と楯無さんが勝負することになった数分後、俺、一夏、楯無さんは畳道場にきていた。
「俺はてっきりISの模擬戦闘での勝負だと思ってたんだがな・・・・・」
二人の姿は白い胴着に紺袴。映画に出るようなジャパニーズブゲーシャ、と言ったところだ。
ギャラリーは俺だけ。布仏姉妹は仕事があるらしい。
「さて、勝負の方法だけど、私を床に倒したら君の勝ち」
「え?」
一夏は意外そうな顔をする。
「逆に君が続行不能になったら私の勝ち。これでいいかな?」
「え、いや、ちょっとそれは・・・・・」
素人の俺が見ても明らかにその条件では楯無さんが不利だとわかる。だが楯無さんは続けた。
「どうせ私が勝つから大丈夫」
その一言で一夏に火がついたようだ。ムッとした表情になると一夏は身構えた。
どうやら一夏も経験者みたいだな。大方、箒にでも教わったんだろう
「行きますよ?」
「いつでも」
一夏がすり足で楯無さんに近づき、腕を取る。
ズダンッ!
「!」
一瞬。まさに一瞬だった。楯無さんは流れるような動作で一夏を投げて床に叩き付けた。一夏も何をされたか分からないというような顔をしている。
「まずは一回」
一夏の頸動脈に触れ、クスリと笑ってみせる楯無さん。どうやら、一夏程度ならいつでも殺せるというアピールなのだろう。
「・・・・・・・・・・」
立ち上がった一夏は距離を取って構えなおす。下手な手では返り討ちに遭うとわかったのだろう。膠着状態が続く。
「ん?来ないの?じゃあ私からいくわよ」
そう言うと、楯無さんは一夏よりも速いすり足で接近し、肘、肩、腹に軽い掌打を打ち込む。
「がはっ・・・・・!」
軽い掌打のはずなのに、一夏の姿勢は大きく揺らぐ。何だ?楯無さんは何をしたんだ?
「足元ご注意」
ズドンッ!
一夏は今度は背中から倒れ込んだ。しかも先ほどとは違ってすぐに起き上ろうとしない。いや、起き上れないのか?
「これで二回。まだやる?」
襟を全く乱さずに笑う楯無さん。
「まだまだ・・・・・!やれますよ!」
そう言って一夏も立ち上がるが、足が震えている。相当なダメージのようだ。
「ん。頑張ってる男の子って好きよ」
「そりゃどうも」
一夏は深呼吸すると、再び身構えた。
(空気が変わった・・・・・。一夏は本気だ)
俺はゴクリと唾を飲んだ。
「む、本気だね」
「・・・・・・・・・」
一夏の無言の返答に楯無さんも無言で対応する。
(向こうも本気だな。決着が着く・・・・・!)
そう直感した。そして最初に動いたのは一夏だ。
「!」
いままでとは違う動きに楯無さんは半歩下がる。それを見逃さずに一夏は腕を掴んで投げ飛ばし――――――た?
ズダンッ!
「がっ・・・・・!」
今度は前のめりに床に叩き付けられた。しかし一夏は意地を見せた。
「おおおっ!」
倒された直後に楯無さんの足首を掴んだのだ。
「あら」
「今度こそ、もらったぁぁぁっ!」
そのまま足首を力任せに真上に投げて空中でひっくり返った楯無さんの胴をとった。
「いけ!」
おっと、おもわず声を出しちまった。だが・・・・・・・。
「甘ーい」
あろうことか楯無さんは右手を床に突き出し、コマの要領で回転し一夏の拘束を振り切る。おまけにそのまま回転蹴りをはなった。
(もはやゲームの域だな・・・・・)
駅前のゲームセンターの格闘ゲームでこんな技を使うキャラクターがいたな。
「でやああああっ!」
しかし、まだ一夏も負けちゃいない。吹っ飛ばされた直後に身を捻って着地し、そのまま突進。殴りかかるような勢いで楯無さんの襟を掴んだ。
「あ・・・・・・・」
「え・・・・・・・」
「きゃん」
すると楯無さんの胴着がはだけられた。ブラジャーに包まれた豊満なバストがまろび出る。デカいな。箒と互角・・・・・イヤ、それ以上・・・って何考えてんの俺!?
「一夏っ!何やってんだ!」
一夏に叫ぶ。
「え、いっ、いや、これは―――――」
「二人のえっち」
「「なぁっ!?」」
楯無さんの言葉に思わずたじろぐ。しかしそれを見逃さなかった。
一夏は足払いで浮かべられ、楯無さんがそこに連撃を叩き込む。
ズドン!ドガ!バキッ!ドガガガガッ!
容赦ない攻撃。しかしそれはあまりにも美しかった。一つ一つの動作に無駄がない。一体あの人は何者なん―――――
「あ」
「え?」
突然、何かが超高速で俺に飛来した。
ドガァン!
「げふっ!?」
腹に思い切りぶち当たったそれと一緒に俺は壁まで吹っ飛ぶ。
(な・・・なんだ?なにが・・・・・)
朦朧とする意識で飛来物の正体を見る。それは、目をぐるぐる回した一夏だった。
「あらら。やっちゃった」
楯無さんが困ったように笑う。
(やっちゃったじゃねえ・・・・・よ・・・・・・)
俺は楯無さんがこちらに近づいてくるのを見て、気を失った。
「あいつはどこに行ったんだ。まったく、嫁失格だぞ・・・・・」
ラウラは校舎の廊下を歩きながらつぶやいた。今日は瑛斗と一緒に一夏の訓練をする日である。
瑛斗は固定で、いつもの専用機持ちがローテーションで一夏の訓練をすることになっているのだが待っていても一向に二人は現れない。そこでラウラは二人を、もとい瑛斗を捜すことにしたのだ。
(最近、瑛斗といる時間が少ない気がする・・・・・・)
ラウラは瑛斗がシャルや他の女子たちと仲が良いのは知っていたが、そこは十代乙女の恋心。多少なりとも危機感というものを感じている。
(せっかく二人になれるというのに、まったく)
ラウラは一夏の訓練をしたいというわけではなく、ただ瑛斗といたいだけなのだ。そりゃ、一夏にだって借りはあるから訓練はする。だがラウラの目的はあくまで瑛斗だ。
「・・・・・・・少しくらいなら問題なかろう」
ラウラの頭の豆電球がピコーンと光った。そして周囲に人がいないことを確認する。
「よ、よし。誰もいないな?」
ラウラはISの所在把握信号で瑛斗を捜すことにした。捜す手間が省けるからだ。
「だ、大丈夫だ。なに、ちょっと起動してすぐ解除すれば・・・・・・」
専用機『シュヴァルツェア・レーゲン』を準発動モードにしたその時!
「なにをしている」
「!」
後ろから声をかけられた。
「だっ、誰だ!?」
あまりに慌てたため、身構えてしまう。手はいつでも銃を取り出すことができる位置に置いてある。
「何だ?随分慌てているな?」
声の主は自分の恩師である千冬だった。
「お、織斑先生・・・・・」
ラウラはホッと息を吐いた。
「ボーデヴィッヒ」
「はい」
「いくら専用機持ちといえど、指定区域以外で許可なくISを展開すれば校則違反でもあるし、国際条約違反にもなる。わかっているな?」
「は、はい」
どうやら自分のしようとしていたことはばれていたらしい。ラウラは素直を返事をする。
「桐野なら、部室棟の第一保健室で見たぞ。織斑と一緒だったな」
「一夏と一緒?保健室!?」
なぜ一夏と?という疑問もあったが、保健室と聞いてラウラは驚く。
「ありがとうございます!」
ラウラは千冬に一礼すると、そのまま部室棟に向かって歩き出した。
「ボーデヴィッヒ。廊下は走るなよ?」
「わかっています」
そう言うラウラは五メートルほどまでは早歩き程度だったが、そのエリアを抜けると猛ダッシュで走り始めた。
千冬はその教え子の姿を見て、「やれやれ」と肩を竦めて笑うのだった。
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