IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「では、今日はありがとうございました」

 

「おう。じゃあな」

 

セシリアの新装備『バレット・ビット』(俺が造った)の稼動テストを終え、寮に戻ってセシリアを部屋まで送ってから俺は自分の部屋へと歩き始めた。

 

「そうだ。これどうすっかな?」

 

俺はあることを思い出し、ポケットに二つ折りにされていた一枚の紙を手に取る。

 

(誰を誘おうか・・・・・)

 

IS学園で行われる学園祭でIS学園の生徒には一般客を招待できるチケットが一人一枚配布される。

 

親を誘うヤツもいれば、旧知の間柄の人を呼ぶヤツもいる。しかし俺に親はいないし、ましてや地球に古い知人がいるわけでもない。したがって選択肢は必然的に狭まっていく。

 

「ここはやっぱり・・・・・」

 

俺は携帯を取り出し、お世話になってるエレクリット・カンパニーの技術開発局長エリナさんに電話をかける。

 

Prrrrrrrrrr

 

『もしもし?』

 

「エリナさん。俺です。瑛斗です」

 

『あら、どうしたの?何かあったかしら?』

 

「いえ、別にこれと言った用があるわけじゃないんですけど、もうすぐIS学園で学園祭をやることになってまして」

 

『おー、いいじゃない。それで?』

 

「実は一般客として誰か一人を生徒が呼べることになってて、エリナさん、来ます?」

 

『・・・あー・・・・・』

 

おや?予想とは違うリアクションだ。絶対に来ると言うと思ったんだが?

 

『瑛斗、ごめんなさい。ちょっと行けそうにないわ』

 

「そうですか・・・・・。ま、無理にとは言いませんから」

 

『でも、せっかく誘ってもらったことだし・・・・・代わりに誰か―――――』

 

『せんぱーい。作業、やっと終わりましたっすー』

 

エリナさんの言葉の間に誰かが割り込んできた。今の声はエリスさんだな。

 

『エリス!丁度いいところに来たわ!』

 

『ほへ?』

 

『瑛斗、ちょっと待ってて!』

 

「あ、はい」

 

エリナさんに言われ、しばらく待つと、再び電話から声がした。

 

『もしもし?桐野さんっすか?』

 

声はエリナさんではなくエリスさんだった。

 

「エリスさん。どうも」

 

『はいっす。今、先輩からその学園祭に自分が行ってこないかと言われたんすけど、それでもいいっすか?』

 

なるほど。どうやらエリナさんはエリスさんに事情を話したらしい。俺としてはチケットが無駄にならなければそれでいいので別段断る理由があるわけでもない。

 

「はい。全然オッケーです」

 

『おお、マジっすか』

 

「じゃあ、日時をいますね。日時は―――――」

 

日時を説明し、来場手続きの説明をして確認を取る。

 

「―――――以上です。わかりました?」

 

『了解っす!楽しみにしてるっす!それじゃあ先輩と代わりますね」

 

「はい」

 

『じゃあ瑛斗、そういうことだからそっちにはエリスを向かわせるわ。企業からはエレクリットの上層部のヤツが一人か二人行くらしいけど、気にしないでね?』

 

「わかりました」

 

『じゃあねー』

 

「失礼します」

 

電話を切り、携帯をポケットにしまう。技術開発局長のエリナさんもその気になれば来れると思うが、あの人は社長と仲はいいけど、その下の幹部の中にはそれを面白く思ってないヤツもいるらしい。

 

(大人って大変だねぇ・・・・・)

 

そんなことを考えながら歩いていると、一夏とばったり会った。

 

「お、一夏」

 

「おう、瑛斗か」

 

目の前の一夏は明らかに疲れている。こりゃ楯無さんに相当しごかれたな。

 

「どうだった?楯無さんとの訓練は」

 

「大変だったよ。鈴が来ていきなり実戦訓練で例のシューター・フローを使わされて何度も壁にぶつかっちまってよ」

 

「はは、一夏が壁に激突する様が目に見えるぜ」

 

「どういう意味だよそれ」

 

一夏がジト目で睨んできた。

 

「悪い悪い。愚痴はお前の部屋でお茶でも飲みながら聞いてやるよ」

 

鈴の件は俺にも責任が数パーセントあるから愚痴くらいは聞いてやろうとそのまま一夏の部屋に向かった。

 

ガチャ

 

「お帰りなさい。私にする?私にする?それとも、わ・た・し?」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

バタン

 

・・・・・・・・・えーと、あれ?おかしいな?部屋間違えたか?

 

「瑛斗」

 

「ん?」

 

一夏が尋常じゃないくらい汗をかいている。俺もだけど。

 

「俺の頬を一発殴ってくれ。楯無さんにしごかれ過ぎたせいで幻影が見えちまった」

 

「そうか。じゃあ殴るからその後で俺も殴ってくれ。最近疲れがたまってるみたいだ」

 

「わかった」

 

「いくぞ・・・・・」

 

バキ!

 

「ぐ・・・!おらぁっ!」

 

ドゴッ!

 

「がっ・・・!へ、中々、良いパンチじゃねえか」

 

「ふ、お前こそ」

 

「じゃあ」

 

「ああ」

 

俺と一夏は意を決して再びドアノブを捻る。

 

ガチャ

 

「おかえりなさい。私にする?私にする?それとも、わ・た・し?」

 

バタン

 

再度ドアを閉め、俺達は膝から崩れ落ちる。

 

(なんでだぁぁぁぁぁぁ!?)

 

なぜ?どして?なんで一夏の部屋に楯無さんがいて、んでもって裸エプロン!?しかもあの発言、選択肢が一つしかない!

 

「んもう、早く入ってきてよ。おねーさん、待ちくたびれちゃうぞ?」

 

フリーダム生徒会長、楯無さんがドアから顔を出して唇を尖らせる。

 

「た、楯無さん・・・・・・」

 

「なんつーカッコしてるんですか・・・・・・」

 

俺達は呆れかえりながらなんとか部屋に入る。できるだけ楯無さんを見ないように心掛けながらだ。

 

「あれあれ?二人ともどーして顔をそむけるのかなぁ?あ、わかった。まだまだ刺激が足りないってことなんだね?」

 

違う!と言おうしたときにはもう、楯無さんはエプロンを外しにかかっていた。

 

「だああああっ!」

 

「待て待て待て待て!待ってください楯無さん!」

 

俺達の必死の制止も空しく、楯無さんの体を隠していたエプロンがハラリと落ちた。

 

「なーんちゃって、実は水着でしたー☆」

 

「「・・・・・・・・」」

 

「残念だった?」

 

「「んなわけないでしょ!」」

 

俺と一夏のダブルツッコミ。

 

もう、なんなの?この人・・・・・・。

 

「で、なんでここに?」

 

楯無さんインパクトから立ち直った一夏が俺と共通の疑問を楯無さんにぶつける。

 

「んっとね、今日から私、ここに住もうと思うの」

 

「「は?」」

 

何を言ってるんだこの人は?ここは一年生寮だぞ?二年生の楯無さんが来るなんて―――――

 

「瑛斗君、その疑問はたった一言で一気に解消だよ?そう。『会長権限』」

 

「いきなりジョーカー!」

 

っていうかなんで俺の思ったことが分かったんだあの人は。

 

「それに、もう準備は万端だよ。ほら」

 

「「?・・・・・!」」

 

一夏の部屋には楯無さんの私物と思われるものがすでセッティング済みだった。ホント、俺の部屋じゃなくて良かった・・・・・。

 

俺はポンと一夏の肩に手を置いた。

 

「一夏。もう、何を言っても無駄みたいだ」

 

「・・・はぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・」

 

一夏は深い深いため息をついた。楯無さんはそれとは対照的にニッコニコの笑顔を浮かべてこっちを見ている。

 

「じゃあ、グッドラック」

 

俺は一夏の肩をパンパンと叩いて部屋を出た。この動作は『脱出』、もしくは『逃亡』と思ってくれても構わない。

 

 

 

 

部屋に戻る途中、上機嫌の箒とすれ違った。手には包みを持っている。この先には一夏の部屋がある。

 

「・・・・・ん?」

 

上機嫌な箒、一夏の部屋の方向、一夏は楯無さんと同棲・・・・・・・。

 

「箒ー、今は行かない方が――――――」

 

振り返るが、箒はもう結構遠くにいた。

 

「・・・・・・・・。ま、いいか」

 

俺は頭を掻き、自室に戻った。

 

 

 

 

 

部屋に戻って数分後、一夏から『HELP!』とメールが来た。

 

「・・・・・・はぁ」

 

俺はベッドからよっこらせと起き上り、一夏の部屋に向かい、日本刀を構える箒の説得にあたるのだった。

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