IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
「おーい、コレはここに置いといていいのかー?」
「あ、うーん!そこに置いといてー!」
学園祭当日の朝、俺は我が一年一組の催し物、『ご奉仕喫茶』の準備をしていた。
「ふわぁ・・・・・ねむ・・・」
とは言ってもほかの一組の人たちはまだ寝ている。俺を含む数人の女子が早朝六時に教室内のテーブルやら小道具やらをセッティングしているのだ。
本当なら俺も寝ていられるはずだったんだがクラス副代表として何か仕事をせにゃならんと思ってこうして手伝っているわけだ。
「今日は頑張らないとね!」
「そうね!なんてったって桐野君か織斑君がゲットできるんだもんね!」
「・・・・・・・・・・」
どうやら他のクラスにも朝から準備に取り掛かっているらしく、廊下からそんな会話が聞こえた。
(楯無さんには本当にまいるぜ・・・・・)
結局、楯無さんは本当に一夏の部屋で生活をするようになり、一夏は楯無さんに毎日振り回されたらしい。この前なんて大分衰弱してたから、その苦労っぷりが見て取れた。
「えーいとくん」
「ん?」
ふと名前を呼ばれ、振り返る。
むに
右頬を扇子で押された。あれ?こんなシュチュエーション、前にもあったぞ?
「きゃは☆引っかかったぁ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
噂をすればなんとやら。後ろには例のフリーダム生徒会長、楯無さんがいた。
「おはよ♪」
「お、おはようございます」
挨拶されたのでとりあえず返しておく。楯無さんは一組の教室を見て、再び俺に目を向けた。
「気合入ってるねー。一夏君から聞いたけど一年一組はメイド喫茶なんだってね?男の子二人はどんな格好するのかな?」
「それは学園祭が始まってからのお楽しみですよ」
接客は俺、一夏、箒、セシリア、シャル、そしてラウラという専用機持ち達が行う。衣装はメイド喫茶だから女子はメイド服なのだが、俺達男子は燕尾服らしい。執事と言えば燕尾服なのだそうだ。なんか違う気がするが。
「え〜、ケチ〜。教えてよ〜」
そんなことはお構いなし。楯無さんは俺の頬を上下左右に引っ張りなお聞いてくる。
「ふぁふぁらひみふふぇふっふぇ(だから秘密ですって)」
俺が楯無さんに頬をうりうりぐにぐにやられていると、一人の女子がそれに気づいた。
「あっ!更識先輩が桐野君のほっぺを弄ってる!」
「え!ずるい!私も私も!」
「織斑君だけじゃなく、桐野君にまで手を出すなんて!」
それがどんどん伝播し、六人程の作業をしていた女子たちが一斉に仕事を放棄してこっちに来た。
「ほらー、もう。楯無さんが余計なことするから皆来ちゃったじゃないですか」
楯無さんに非難の目を向けると、楯無さんは悪戯っぽく笑った。
「うふふ、いいじゃない。愛されてるのよ。きっと」
そう言うと楯無さんは教室のドアに手をかけた。
「私も出し物の準備の手伝いをしないといけないから、そろそろ行くね」
「そうですか。そういや、そっちの出し物はなんですか?」
聞くと、楯無さんは振り返って含みのある笑みを浮かべながら答えた。
「学園祭が始まってからのお楽しみだよ♪」
「あー・・・そうですか」
そして楯無さんは教室を出て行った。
「・・・・・つか、何しに来たんだ?あの人は」
ただ俺の頬を弄りに来ただけなのだろうか?
「あ、そうだ!織斑君と桐野君のメニューに『ほっぺ触り放題』を追加しようよ!」
「おお!それいいわね!」
「賛成賛成!ねっ、桐野君もいいでしょ?」
「却下だ」
「「「え!?」」」
『いいよ』とでも言うと思ったか?
そしてついに学園祭が始まった。スタート直後から生徒のはっちゃけっぷりは凄かった。
「うそ!?一組で織斑君と桐野君の接客が受けられるの!?」
「しかも燕尾服で執事姿!」
「それだけじゃなくてゲームもあるらしいよ?」
「しかも勝ったら写真撮ってくれるんだって!ツーショットよツーショット!これは行かない手はないって!」
とりわけ一組の『ご奉仕喫茶』は大盛況で、朝から大忙しだ。
ってか、忙しいのは俺と一夏だけで、ほかの面子は結構楽しそうにしちゃってるんだよね。
「いらっしゃいませ♪こちらへどうぞ、お嬢様」
特にシャルがノリノリで、朝からずっとにこにこしている。
(始まる前に『似合ってる』って褒めたからか?それにしちゃあ上機嫌だな?)
「桐野くーん!三番テーブルのお客様の接客おねがーい!」
(お、出番が来た)
オーナー的立場の女子から言われ、俺は三番テーブルに向かう。
「いらっしゃいませ。お嬢様」
「は、はい・・・・・」
どうやらこのお嬢様(お客様)は大分緊張しているみたいだ。顔を真っ赤にして俯いている。
「ご注文は何にいたしますか?」
「そ、それじゃあ、この『執事との戯れセット』を・・・・・」
「『執事との戯れセット』ですね。かしこまりました。少々お待ちください」
「わ、わかりました・・・・・」
立ち上がって一礼してから俺はお客様の前から立ち去り、キッチンテーブルに向かう。
オーダーは俺の身に着けている燕尾服に着けられているブローチ型のピンマイクからキッチンに送られているので、俺はそれをキッチンテーブルで受け取るだけでいい。
ちなみに『執事との戯れセット』はアイスミルクティーとクッキーのセットでお値段は五百円と、それなりにリーズナブルだ。
「ぶーーーーーーっ!」
「おっと」
突然近くにいた客が紅茶を噴いた。それをギリギリで躱す。危なかった。一体だれだ?
「げほごほ!」
「お、おい鈴。大丈夫か?」
燕尾服の一夏に心配されているのは真っ赤なチャイナドレスを着た鈴だった。
「おいおい一夏。鈴になに言ったんだよ?」
「い、いや、ただ『可愛いな』って言っただけなんだが・・・・・」
「言っただけって・・・鈴、平気か?」
「う、うん。大丈夫・・・・・」
本人が大丈夫と言うのだから大丈夫なのだろう。
「じゃあ、俺三番テーブルに客を待たせてるから」
「ああ、行ってくれ」
一夏達のテーブルから離れ、再び三番テーブルに戻ってくる。
「お嬢様、お待たせしました」
「あ、ありがとうございます・・・・・あの・・・・・」
「何でしょう?」
「こ、これに書いてある、ゲームって・・・・・」
「ああ、これはお嬢様が私めとじゃんけん、ダーツ、神経衰弱のどれかでゲームをし、お嬢様が勝った場合は私めと写真が撮ることができます」
「ほ、ほんとですか?」
「ウソを言う理由がございません。どれにいたしますか?」
「じゃ、じゃあ、ジャンケンで」
「かしこまりました。では・・・・・じゃん」
「け、けん!」
「「ぽん!」」
俺がグー、お客様がパー。俺の負けだ。
「おめでとうございます。お嬢様の勝ちです」
「あ、あわわ・・・・・」
「それでは、写真をお撮りいたします。失礼」
俺はそのお客様が小柄で軽そうだったからサービスでお姫様抱っこをした。
「きゃわ!?」
パシャ!
カメラのシャッターが切られ、写真が出てくる。うん、悪くない写りだ。
「どうぞ。お嬢様」
「・・・・・・・・・・・・」
「お嬢様!?」
写真を受け取ったお客様はそのまま仰向けに卒倒した。俺は咄嗟に支えて声をかける。
「ふぇ〜・・・・・・」
顔を真っ赤にして目をぐるぐるさせている。あらら。
「え、瑛斗、もしかして・・・・・」
そこにシャルが様子を見にやって来た。
「ああ。まただ」
俺はそのお客様を抱えると、部屋に隣接されている休憩室に本日三人目の失神者を運んだ。
「え!?桐野君また!?」
「ああ。まただよ」
他の気を失っているお客様に額に濡れタオルを乗せていた女子が驚きの声をあげる。
「なあ、なんで俺が接客すると必ず皆幸せそうな顔して倒れちまうんだろう?」
「そ、それは・・・ねえ?」
「俺が聞いてるのにそっちも疑問形で返されると困るんだが・・・」
「あ、ほら!また新しいお客さん入ったみたいだよ!行って行って!」
「お、おう」
俺はいまいち釈然としないまま、再び部屋に戻った。
そしてその十数分後、俺は幸せそうな顔の四人目の失神者を休憩室に運ぶのだった。
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学園祭・・・・・スタートですよ! | ||
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この認識のなさに悪意を感じるwww(jon/doe) | ||
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