IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
「ありがとうございましたー!・・・・・・・ふぅ」
今日六人目のお客様を失神させずに無事に送ったあと、俺は軽く息を吐いた。この執事の役にも大分慣れてきたな。
(卒業したら執事になろっかな・・・なんちって)
「おーい、瑛斗」
ん?一夏に呼ばれたぞ。
「おう、どうし―――――」
俺は動きが止まった。目の前にはなんと・・・なんと!
「や、来ちゃった☆」
「楯無さん・・・だと・・・!?」
「ああ。そうだ。楯無さんだ」
五番テーブルで、軽く苦笑いを浮かべた一夏の向かいにはなぜかうちのクラスの衣装のメイド服を着た楯無さんが座っていた。
「・・・・・・まかせた」
ここは逃げるに限る。触らぬ生徒会長になんたらだ。
「まあ待ちたまえよ。瑛斗君」
一夏が俺の右肩をがっちりと掴んできた。つ、強い。顔は笑顔だが、手には血管が浮き出ている。
「そうだよ。せっかくだから瑛斗くんも座って座って?うん。生徒会長権限」
楯無さんが殺し文句を言った。
「・・・・・わかりました」
俺はかぶりを振って隣のテーブルから椅子を取って座った。
「うふ。やっぱり美形執事二人は映えるなぁ」
「はは・・・・・」
「ど、どうも」
((早く帰ってくんないかなぁ・・・・・))
気のせいかな?一夏の声が脳に直接響いてきたような・・・・・。
ガラッ
「はーい!新聞部でーす!織斑執事と桐野執事の取材に馳せ参じたぞー!」
突然、勢いよくドアを開けて画数が多い新聞部のエースこと、黛薫子さんが入ってきた。
「あ、薫子ちゃん!」
「あー!たっちゃんだ!なになに?メイド服?可愛いー!」
そして楯無さんを発見するなりキャイキャイと盛り上がる二年生の先輩二人。
「・・・・・一夏」
「了解」
目くばせをして立ち上がる。この機を逃してなるものか!
「じゃあ俺達!」
「仕事あるんで!」
「だーめ。二人とももう少しだけ」
ガシッ
「そうそう!二人の取材に来たんだもん!行っちゃヤダ!」
ガシッ
((ちぃぃっ!!))
抵抗空しく再び着席。
「さて!いろんなところ回ってきたけど、やっぱり一組が一番写真の撮り甲斐がありそうね!どうせならメイドさんとのツーショット頂戴!」
カメラを構えてウインクする黛さん。
「え、ツーショットですか?」
「あいつら・・・箒がオッケーするか―――――」
「そういう」
「ことでしたら」
「もう準備は」
「できている」
聞いていたのか、四人がやって来た。どうやら、準備万端のようだった。
「「あ、そなの?」」
そんなわけで、執事とメイドの撮影会がスタート。組み合わせは本人たちたっての希望で、俺はシャルとラウラ、一夏は箒とセシリアと撮ることになった。
まずは俺とシャル。
「ね、ねえ瑛斗。この服、どうかな?」
「ん?どうって、よく似合ってるぜ?」
「ほ、本当?本当に?燕尾服よりも似合ってる?」
「燕尾服の姿を見たことがないからどうとも言えねえが、女の子なんだからメイド服の方が断然似合うだろ?可愛いぞ」
「か、可愛い・・・・・えへへ♪」
(なんか、今朝も同じようなやりとりをした気がする・・・・・)
次、俺とラウラ。
「こうして並んでみると、お前と私ではそれなりに身長差があるようだな」
「ああ、まあ、そう言われてみれば、そうだな」
「・・・・・・・てもいい・・・・・」
「あ?」
「・・・・・・・してもいいぞ・・・・・」
「なに?」
「だ、抱っこしてもいいぞ!あ、ああ、あくまで撮影のためだ!」
「・・・・・してほしいのか?」
「したければすればいい・・・・・」
「いいぜ。ほら」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・なあ、上手く持ちあがらないんだが?なんで足に力入れてるんだよ」
「・・・・・・りいい」
「ん?」
「・・・・・っぱり、いい」
「なに?なんだって?」
「やっぱり・・・・・いい」
「あ・・・そう」
(なんだったんだ・・・・・?)
その後、一夏とセシリア、そして箒も順々に写真を撮り終え、黛さんはほくほく顔でプレビューを見ている。
「やー、撮った撮った!やっぱり一組は写真写りがいい子たちが揃ってるわ!」
「でしょでしょ!?」
なぜ楯無さんが胸を張ってるんだ?まあ、いいか。
「じゃ、私はまた別のところの写真を撮りに行くわ!」
「おー、それじゃ薫子ちゃん、生徒会の方もよろしくね!」
「ええ!この黛薫子におまかせあれ!」
黛さんはドンと自分の胸を叩いた。前々から思ってたけど、どうしてこの学園の文化部は熱血な感じの人達が多いんだろう?
「さーて、一夏君と瑛斗君。あなたたちも少し休んで他のところを見てきたら?」
楯無さんが俺達の顔を交互に見て言った。
「いいんですか?」
「もちろん。おねーさんにまかせて学園祭を楽しんできなさい!」
そう自信を持って言われちゃあ断る方が失礼だ。俺と一夏は上着を脱いでネクタイを外した。
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
「お願いします」
「うん。いってらっしゃい!」
楯無さんに送り出され、俺と一夏は廊下に出た。
IS学園で二人だけの男子が学園祭に繰り出せば視線を浴びるのは当然のことだった。
「あ、織斑君と桐野君だ」
「二人のツーショット写真もらった!」
「学園祭とは表向き、実は裏では二人は・・・・・ぐへ、ぐへへへへへへへ」
また最後の一人がおかしかった。
「あの!織斑一夏さんと桐野瑛斗さんですね!?」
「「?」」
ふと声をかけられ、振り返るとスーツを着た長い黒髪の女性が立っていた。
「えーと・・・どちらさまで?」
「初めまして。私はIS武装開発企業『みつるぎ』の巻紙礼子と申します」
「はあ」
「お二人にわが社の兵器の試験運用をお願いしたいのですが」
「「ああ〜・・・・・」」
まただ。夏休みにもこういう人達がわんさかと来た。そのたびに断るのが大変なんだこれが。一夏の白式は武装は雪片弐型しか受け付けないワガママさんなので、様々な企業がこぞって一夏に声をかける。
そのとばっちりで俺にも声をかけられることが少なくない。面倒なんだよねぇ、ホント。
「あの、そういうのは学園を通していただかないと・・・・・」
「そういうわけなんで、それじゃ」
こういうのは早々に立ち去るに限る。俺たちはこの場から脱出を図った。
「そう言わずに!」
しかし巻紙さんは見た目とは裏腹なアグレッシブな商談に出てきた。
「こちらの武装には出力を向上させる増設スラスターや脚部ブレードなども含まれています。ですか――――――」
「あー、そういうの間に合ってます」
「人待たせてるんで、じゃ」
「あっ!」
ファイルを取り出している間に俺達は足早に立ち去る。
「瑛斗、お前も人と待ち合わせてるのか?」
「ん?ああ、まあな」
同じ目的の俺達は校門に向かった。
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待ち合わせには間に合うように行け | ||
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巻紙、乙。(jon/doe) | ||
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