IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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『Gブロック、第二エリア突破されたっす! 先輩!』

 

「わかってる!」

 

アメリカのエレクリットカンパニー直属のIS試験運用場、通称『ナイト・シルエット』。そこでは、エレクリットカンパニー技術開発局局長のエリナ・スワンが鉄の回廊を疾走していた。

 

「エリス! 対侵入者用のトラップは!?」

 

『ダメっす! 次々と突破されてるっす! このスピードからすると侵入者はISを使ってるっす!』

 

右耳に装着した小型通信機から発せられる後輩であるエリス・セリーネの動揺した声が彼女の鼓膜を振動させる。エリスはオペレータールームから通信を送っている。

 

(侵入者の目的は間違いなくアレ・・・・・! どこの誰だかは知らないけど渡すわけには!)

 

彼女はエリスとともにこの試験運用場に赴き、あるISの最終調整を行っていた。そのISの調整が無事に終わり、いざ開発局に帰ろうとした矢先の侵入者警報であった。

 

『先輩! 侵入者が目標地点に到達したっす!』

 

「くっ・・・・・! ヴァイオレット!」

 

エリナはネックレスとなっていた待機状態の専用機の『ヴァイオレット・スパーク』を展開。バーニアを噴かし、一気に鉄の回廊を駆け抜ける。

 

道中で見られる無残に壊されたトラップたちは侵入者が破壊したとすぐに理解できた。

 

(でも、どうしてここの場所が特定されたのかしら・・・・・?)

 

この試験場は地図にも載っておらず、一部のエレクリットの社員しかどこにあるかは知らない。

 

(内通者がいる・・・・・まさかね)

 

自分の考えを一蹴し、エリナは目標地点に到着。侵入者に追いついた。

 

「! うそでしょう・・・・・・・!?」

 

侵入者の姿を見てエリナは驚愕した。

 

「あら? 随分と速いお着きだこと?」

 

こちらに振り返り、ニッコリと微笑んだ侵入者が展開しているISは、エレクリットカンパニーが最重要機密として処理している自社製オーダーメイドIS、『セフィロト』であった。

 

「ここの警備トラップは優秀ね。予定の時間より二秒(・・)もオーバーしちゃったわ」

 

バイザーで顔が見えないが、余裕の表情であることは分かる。

 

「どこの誰かは知らないけど、どこでソレを手に入れたの?」

 

セフィロトにはBRFシールドの完成型が装備されている。ビーム系射撃武器は無力なことを理解しているエリナは小型マシンガン〈ブラウ〉をコールして安全装置を外す。

 

「うふふ。どこでって、分かってるんじゃないかしら?」

 

「そうよね。盗んだのよね! 亡国機業!」

 

刹那、エリナはセフィロトに向かって突進。マシンガンのトリガーを引き絞りながら距離を縮める。

 

「ふふ・・・」

 

セフィロトの操縦者は微笑み、後ろに飛び退いて実体ブレードをコールする。

 

「接近戦がお好みなら、相手になるわ」

 

そう言ってエリナにブレードを振り下ろす。

 

「なんのっ!」

 

瞬時に反応したエリナは自分もブレードをコール。鍔迫り合いになる。

 

「!?」

 

突如、ブレードを持っているセフィロトの右腕の装甲の一部が開き、小型の高速振動ナイフがエリナに襲い掛かった。

 

それをギリギリで躱すが、蹴りを入れられてエリナは壁に激突する。

 

(仕込みナイフ!? 本来の開発計画にあんな武器はなかったはず! 改造も済んでるってことね)

 

「それなら!」

 

エリナは右の拳を侵入者に向けた。

 

すると拳を包む装甲が振動し始める。

 

「ロケットパンチはいかが?」

 

ゴォッ!

 

高速で射出された装甲が侵入者目掛けて真っ直ぐ突き進む。

 

ヴァイオレット・スパークの特徴的な武装の一つ、拳の装甲だけを射出し、質量弾として撃ちだすこの武装はエリナのお気に入りである。

 

「面白い武器ね」

 

しかし侵入者はそれを突きだした左手で受け止めた。しかもあろうことかそれを持って大きく振りかぶり、エリナに投げ返してきたのだ。

 

「お返しするわ」

 

「うっ・・・・・!」

 

横っ飛びで戻ってきた拳を躱す。だがそこにはすでに移動していた侵入者が再び蹴りを浴びせようと構えていた。

 

「ああっ!」

 

ドゴォオン!

 

それをもろに受けたエリナは壁に二つ目の大きなヒビを走らせた。

 

(さすがはサイコフレーム内蔵機体・・・・・。速い、堅い、強いの三拍子そろってるわ)

 

ぺっと血を吐き、立ち上がるエリナ。だが侵入者はもう目前にはおらず、少し離れたところに立っていた。

 

(しまった・・・・・!)

 

気づいた時には侵入者はこのフロアに保管されているISに触れていた。

 

「セフィロト二号機、《黒い幻影(ブラック・ヴィジョン)》・・・・・。この機体以上のスペックだと聞くわ」

 

侵入者は無人展開されているセフィロト二号機を見ながらつぶやく。

 

「素晴らしい獲物。頂戴していくわ」

 

「待ちなさい!」

 

エリナが高速で接近するが、侵入者はセフィロトの展開を解除。そして瞬時にセフィロト二号機を展開する。

 

「ふふふ・・・・・あははははは!」

 

一号機の金色の装甲とは違い、黒い装甲に暗い青色のラインが走るその機体を手に入れた侵入者は声をあげて笑った。

 

「素晴らしい機体だわ。あの子に渡すのが勿体ないくらい!」

 

言いながら接近したエリナのブレードによる斬撃を片手で受け止める。

 

「ここにはもう用は無いからお暇させてもらうわ」

 

そう言うと侵入者は左腕の装甲をさらに展開。現れた四門の銃口からビームの弾丸を壁に放つ。

 

高威力のビームの集中砲火を浴びた壁は簡単に崩れ、外の太陽の光が漏れ始める。

 

「あなたとの戦闘、なかなかスリリングだったわ!」

 

「ぐっ!」

 

右足のビームブレードでエリナに切りかかりエリナを後退させ、穴が開いた壁から超スピードで逃亡する侵入者。

 

「逃がさないっ!」

 

それを追うように飛翔するエリナ。それを見た侵入者は空中で停止して大型ビームガンをコールする。

 

「しつこい女は男に嫌われちゃうわよ?」

 

そして引き金を引き、真紅の光が放たれる。

 

ドォン!

 

「うあぁっ!」

 

直撃を受け、地面に叩き付けられたエリナはヴァイオレット・スパークが光の粒子になり始めている事に気がつく。

 

(シールドエネルギーが・・・・・!)

 

そしてヴァイオレット・スパークは再び待機状態に戻ってしまった。

 

セフィロト二号機は亡国機業に奪取され、残ったのは一部が無残に破壊された試験場だけだった。

 

『エリナ先輩! 無事っすか!?』

 

小型通信機からエリスの声が聞こえた。膝をついていたエリナは立ち上がり、応答する。

 

「ええ。聞こえてるわ。無事とは言い難いけど、大した怪我はしてないわよ」

 

『はぁ〜、良かったっす。先輩、戦闘中は通信を切っちゃう癖があるから、待ってるこっちは気が気じゃないっすよ〜!』

 

「ごめんなさいね。でも私の主義だから。それより・・・・・」

 

エリナは言葉を切った。

 

「セフィロト二号機が・・・・・黒い幻影が奪われたわ」

 

『はいっす。そのことに関してっすけど、北アメリカの『地図にない基地(イレイズド)も何者かの襲撃にあったみたいっす。おそらくあっちも亡国機業に襲撃を受けたかと』

 

「被害は?」

 

『まだ確認中との事っす』

 

「そう・・・・・」

 

エリナは侵入者が逃げて行った方角を見た。

 

(あの時、アイツは『あの子に渡すのが勿体ないくらい』と言っていた・・・・・)

 

エリナは侵入者のその言葉が気がかりであった。

 

(黒い幻影を別の誰かに渡そうとしているのは明らか。一体誰に・・・・・?)

 

しかしいくら考えても答えは出ない。

 

「亡国機業・・・・・あなたたちの目的は何なの?」

 

エリナはポツリと呟いた。

 

 

 

 

 

 

『ナイト・シルエット』から黒い幻影を奪取することに成功した亡国機業のスコールは陽動として近くの基地に襲撃任務を与えていた亡国機業のメンバーのエムと合流した。

 

「お疲れ様。エムのおかげでこっちの任務は果たせたわ」

 

「・・・・・・・・」

 

サイレント・ゼフィルスを展開して追従飛行するエムは無言、無表情である。

 

「そっちには手応えのある操縦者はいた?」

 

「・・・・・いいや。どいつもこいつも平凡だった」

 

「そう」

 

エムのぶっきらぼうな返答を微笑みながら見るスコールは速度を少し落としてエムの横を飛ぶようにした。

 

「あなたに次の任務よ」

 

「何だ?」

 

「『キャノンボール・ファスト』。IS学園で近々行われるイベントよ。あなたにはこれに行ってもらうわ」

 

「出場しろと言うのか?」

 

「違うわ。ただ・・・・・・・」

 

スコールの表情は微笑から歪んだ笑みに変わった。

 

「しっちゃかめっちゃかに掻き回してきてほしいだけよ」

 

「・・・・・・・了解」

 

スコールの言葉の意味を理解したエムは飛行速度を上げた。

説明
災厄の序章
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コメント
亡国企業の練度がハンパじゃない上に、パイロット能力が高いのもあって公式チートを語れるレベルですね。(jon/doe)
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インフィニット・ストラトス

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