正義を受け継ぎし者 プロローグ 2 |
この平行世界は、異常である。
存在しないはずの魔術師(衛宮士郎)が現れ、彼の魔術と理想を受け継いだ少女(高町なのは)がいる。
それ以前に、この世界に、なぜ"衛宮士郎"がいるのか………
それは、数年前に逆上る……
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side 士郎
あまりの激痛で、目が覚める。
体には、すでに再起不能とまでの傷を受けている。
俺は、今まで正義の味方になろうとあらゆる国へ行き、争いを止めたり、人々を救ってきた。
けど、俺の望む正義の味方には、なれなかった。
多くを救うために、時には誰かを犠牲にしてしまったことだってある……
俺は、結局親父やアイツと同じになったんだな……
啖呵切って、親父に「俺が、なってやるよ」って言ったのに、結局なれなかったんだな……
「なあ、親父……
俺は、親父が望む正義の味方にはなれなかったや…約束したのに、果たせなくてごめんな……
でもさ、後悔も絶望もしてないんだ。正義の味方には、なれなかったけど……
今まで、助けた人たちが笑顔を見してくれて、もう満足できた気がするんだ。
…なあ、親父………俺さ、もう休んでもいいかな?
あの時、救えなかった皆は、俺のこと……許して…くれるかな?」
俺は、独り言のように、死んだ親父に向けて語りかけた。
俺の体は、もう持たない。だから、最後くらいは、こんな湿っぽいのもいいだろう……
例え、この傷が無かったとしても、俺の魂には"|この世の全ての悪(アンリマユ)"の呪いが掛かっている。
聖杯戦争の時、言峰との最終決戦に俺は、"|この世の全ての悪(アンリマユ)"を浴びせられた。
"|この世の全ての悪(アンリマユ)"自体は、"|全て遠き理想郷(アヴァロン)"で吹き飛ばしたが、それよりも速く"|この世の全ての悪(アンリマユ)"が、俺の魂に呪いを掛けた為、呪いは既に、俺と一体化してしまっている。
俺は、目を閉じ永遠の眠りにつこうとするが、誰かが近づいてくる気配を感じ目を開く。
俺の目の前には、魔術の師匠である"遠坂凛"が立っていた。
「久しぶりね、士郎。」
「ほんと、久しぶりだな遠坂。」
いつもと変わらない、遠坂を見て少し昔のことを思い出す。
聖杯戦争の時、出会ったみんなとの思い出を……
だけど、いつまでも昔を思い出していられない。
彼女が、ここに来たということは、考えられるのはただ一つだ……
「…………俺の死体でも、回収しに来たのか?」
「ええ、少なくともそういう設定で来てるわね。」
えっ---------
設定て?ってことは、遠坂は、協会や時計塔の連中を騙してまで、ここに来たのか?
そう思ってると、いつのまにか遠坂は、俺の目の前まで来ていた。
「まったく、さっきの独り言聞こえてたわよ。
こっちが、泣きそうになるくらいの告白だったじゃない………」
さっきのが、聞こえてしまっていた事実につい顔が赤くなるのを感じてしまう。
顔を見られないように、背けようとするが、彼女の手でしっかりと固定されてしまう。
「ほんと……あんたは、良く頑張ったわよ……」
「遠、坂?」
「いい、士郎。良く聞いて、
私が、あんたの魂を人形に移すわ。それで、平行世界に送ってあげるわ。
そこで、しっかりと幸せになりなさい。」
どうやら、それはもう決定事項のようだ。
なら、最後の最後に甘えさせてもらうか。
「ああ、ありがとな遠坂。」
たくさんの宝石と、何処から持ち出したか解らない人形を出している遠坂にお礼を言う。
「別にいいわよ。お礼なんて……
その代わり、必ず幸せになるのよ。みんな、それを望んでいるんだから。」
ああ、きっと、幸せになるよ。
「それじゃあね、士郎。大好きだったわ………」
最後に、遠坂の告白を受けながら、俺の意識は彼方へと消えた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
目を覚ますと、そこは知らない天井だった。
まあ、平行世界に来たのだから、知らないのが当たり前だが、なぜ室内にいるのだろうか?
疑問をよそに、何故か入っていた布団から、起き上がろうとすると、右腕に何か重さを感じる。
確認する為に右腕の方を見てみると、そこには一人の少女が眠っていた………
(ま、待て!なんだ、この状況は!?平行世界に来ると同時に、俺はもう犯罪者か!!?)
などと、混乱していると、少女が起きたらしい。
「う〜〜〜〜ん、………ふえ?」
起きると同時に、少女と目が合う。
少女は、こちらを見ているが、俺はどうすればいいか、わからず固まってしまう。
少女は、栗色の髪を片結びに縛っていて、だいたい五歳から六歳くらいに見える。
俺が固まっていると、少女は、立ち上がり扉の方へ向かっていき、
「おとーさーん、おとこのひとおきたよ〜〜〜!」
そう言って、部屋の外に出て行った。
暫くすると、さっきの少女とおそらく、少女の両親だと思われる男性と女性が入って来た。
「君、体の調子はどうだい?」
「はい、もう大丈夫です。手当てしていただきありがとうございます。」
「別に、たいしたこと無いよ………
っと、そう言えば、自己紹介がまだだったね。
僕は、高町士郎。こっちが、妻の高町桃子。それで、この子が僕たちの娘の高町なのはだ。」
「俺は、衛宮士郎って言いいます。」
「それで、士郎くん?」
「はい、何ですか?」
「君は、どうやって家に現れたんだい?
いきなし、家の庭が光ったと思ったら、君が倒れていたからね。」
そう聞き、何処まで話そうか迷ってしまう。
けれど、なぜかこの人たちには、全てを話したくなる。
ここまで、優しい人たちに嘘は付きたくないから………
「解りました。全てお話します。
ただ、その前に、ドアの前にいる人にも入ってきてもらってください。」
俺が、そう言うと桃子さんが扉を開くと、士郎さんに良く似た男性と、めがねを掛けた黒髪の女性が倒れこんでいた。
「恭也!美由紀!」
桃子さんは、驚いているようだが、士郎さんは気づいていたようだ。
「士郎君、息子たちが迷惑を掛けたね。
こっちは、高町恭也で、こっちが高町美由紀だ。」
「かまいませんよ。
それじゃあ、お話します。衛宮士郎という男のことを………」
そして、俺は今まであったことを全て話した。
俺が、魔術師であること。別の世界からきたこと。
あの大火災に、聖杯戦争、そして正義の味方を目指して頑張っていたことを………
「------それで、俺は遠坂のおかげで今ここにいるんです。」
俺が、最後まで言い終わると桃子さんが、俺を抱きしめてきた。
「今まで、辛い思いをしてきたのね、士郎君。」
「ああ、でももう大丈夫だ。僕は、裏の世界について詳しいが、この世界には、協会や魔術師はいないよ。」
いつの間にか、俯いていた顔を起こすと、そこには涙を流しながら、俺を受け入れてくれている家族があった。
「なあ、士郎君?
君は、この世界で幸せを掴むんだろう?」
「はい、そのつもりです。」
「なら、僕たちと、家族にならないか?」
「えっ?」
突然の言葉に、驚いてしまう。
「あら、士郎さんいい考えね♪」
「まあ、父さんならそう言うと思ってたが、俺は賛成だ。」
「私も、賛成だよ。もっと、いろんな話が聞きたいしね♪」
「しろうおにいちゃんも、なのはたちといっしょにくらすの!!」
「私たちは、大歓迎だが、どうだい士郎君?」
俺は、この家族たちの優しさに涙が流れてくる。
ここまで、良くしてくれるこの家族に俺は入りたくなる。
だから、俺の答えは……
「これから、よろしくお願いします。
この家族の、一員として!!」
みんな、俺はこの世界で、絶対に幸せになってみせるよ!!!
説明 | ||
今回は、士郎が何故なのはの世界に来たのかというお話です。 | ||
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