IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「よーし、みんな揃ったわね? それじゃ、しゅっぱーつ!」

 

クリスマスパーティーが三日前に迫った今日。楯無さんを筆頭にする我ら生徒会メンバーは駅前のショッピングモールに来ていた。

 

目的は生徒会プレゼンツの特大ケーキ製作の材料を買うためである。

 

「今日買うものは小麦粉と卵と牛乳、バターと砂糖と生クリーム、あとはフルーツ類ですね」

 

虚さんがメモに書かれた買い物リストを読み上げる。

 

「じゃあ、二手に分かれて動きましょう。本音と虚と瑛斗くんは小麦粉と卵と牛乳。私と一夏くんでバターと砂糖と生クリーム、それとフルーツをそれぞれ買いに行くわよ」

 

「わかりました」

 

「らじゃ〜」

 

「はい、会長」

 

「了解です」

 

「うん。ああ、それと結構な量になると思うけど、頑張ってね?男の子たち☆」

 

楯無さんが星が出るウインクをした。

 

「あの・・・楯無さん」

 

「その『頑張って』って・・・・・」

 

「そう、荷物持ちよ」

 

「「ですよねぇっ!」」

 

やっぱり男ってこういう仕事をやらされるんだな。別に嫌じゃないけど、なんか納得いかない・・・

 

「ほらほらきりり〜ん。はやく行こうよ〜」

 

のほほんさんがクイクイと袖を引っ張ってくる。生徒会の活動ということでみんな制服姿なので、相も変わらず彼女の袖はダルダルだ。

 

「わかってるって。今行く」

 

のほほんさんにせがまれ、俺は歩き出した。

 

「ここのモールには色々なものがありますからね。買えないということはまず無いでしょう」

 

「けっこう手馴れてますね」

 

「ええ。一年生のころからそれなりに通ってますからね」

 

虚さんと歩きながら話す。

 

「ね〜ね〜、おね〜ちゃ〜ん」

 

「なに? 本音?」

 

「残ったお釣りでお菓子買っていい〜?」

 

「・・・・・・・・・・」

 

のほほんさんの言葉を聞いて虚さんはハァとため息をついた。

 

「ダメよ。生徒会の費用から落としてるんだもの。私的な事に使ったら怒られるわ」

 

「えぇ〜、買って買ってぇ〜」

 

なおも食い下がるのほほんさん。

 

「ダメったらダメ。早く買い物を済ませましょ」

 

「ぶ〜、ケチ〜」

 

少し語勢を強めて言われて、ようやくのほほんさんは諦めたようだ。

 

(この二人って、姉妹って言うより、親子に近いな・・・・・)

 

二人のやり取りを見ながらそんなことを考える。

 

「あ、きりりん今、『この二人って、姉妹って言うより、親子に近いな』とか思った〜?」

 

「え・・・あ・・・・・まあな」

 

のほほんさんが俺の考えていたことをズバリ言い当てた。

 

「そう思うでしょ〜? お姉ちゃんってば、いっつも私のあれこれ言ってくるんだよ〜。参っちゃうよね〜」

 

ゴンッ!

 

虚さんの鉄拳がのほほんさんの脳天にヒットした。相変わらず容赦ない。

 

「何言ってるの。それもこれも本音がしっかりしないからでしょ」

 

「うぅ・・・、いった〜い!」

 

頭をさすり、微妙に涙目になるのほほんさん。

 

「まったく・・・・・、私が卒業したらどうなるのか、心配・・・・・・・」

 

「「・・・・・・」」

 

そうだ。虚さんは三年生。もうすぐIS学園を卒業する。進路は当然更識家に仕えるメイドだが、まだまだ妹のことが心配のようだ。

 

「や、まあ、のほほんさんもやる時はやってくれますし、なあ?」

 

「う、うん。そーだよ。私だってやる時はやるんだよ〜」

 

慌てて俺は妹を心配する虚さんをフォローし、のほほんさんもそれに乗る。

 

「そうならいいけど・・・・・」

 

「そうそう! のーぷろぶれむだよ! さ、いこいこ〜!」

 

のほほんさんはタタタッと走り出した。

 

「あ、本音、待ちなさい!」

 

それを追うように虚さんも走り出した。

 

「あ、ちょ、ちょっと!」

 

慌てて俺も走り出すが、一歩目で誰かと肩がぶつかった。

 

「っとと、ごめんなさい」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

しかし、その人はすぐに行ってしまった。

 

どこかで見たような気がして振り返るが、あるのは大勢の人が行き交う光景だけだった。

 

「?」

 

不思議に思ったが、はぐれては困るので俺はのほほんさん達の後を追うことにした。

 

 

 

 

 

 

「あ、あの・・・楯無さん・・・・・」

 

『ん? なにー?』

 

「これ、大丈夫なんですか?」

 

楯無と行動している一夏は目的とは全く違う場所にいた。

 

場所はモール内のファッションショップ。もっと言えば更衣室前だ。

 

「いいんですか? 思いっきり目的を忘れてる気がするんですが・・・・・・」

 

着替えていた楯無はカーテンから顔だけ出した。

 

「大丈夫よ。これも重要な目的の一つなんだから」

 

「え? 企画って、ケーキだけじゃないんですか?」

 

頭に疑問符を浮かべる一夏に楯無は二ッと笑って再びカーテンの中に顔を引っ込めた。

 

「ジャーン!」

 

そして勢いよくカーテンを開けた。

 

そこにはサンタクロースの衣装に身を包んだ楯無が立っていた。

 

「どうかしら?」

 

「ど、どうと言われても・・・・・・」

 

一夏は困ったように視線を逸らした。

 

それも無理はない。今の楯無はサンタの格好をしていると言っても、それは上半身だけ。下半身は真っ赤なミニスカートを穿いている。要するにミニスカサンタと言うヤツだ。

 

(め、目のやり場に困る・・・・・!)

 

バッチリ似合っている。似合っているが、楯無の抜群のスタイルと相まって、どこか扇情的な雰囲気を醸し出している。

 

「い、良いんじゃない・・・ですか?」

 

「そうでしょ!? 当日は本音と虚にもこの格好させようと思ってるの!」

 

「そ、そうなんですか」

 

「ね? ね? いいアイデアでしょ!?」

 

楯無は満足気にカーテンを閉めた。

 

『楽しみよねー。きっとみんな驚くわ!』

 

声を弾ませながら着替える楯無。その声を聞きながら一夏は考えていた。

 

(クリスマスか・・・。そう言えば千冬姉と一緒に鈴のところに行ってたっけ・・・・・)

 

自分がまだ中学生のころ、姉の千冬と共に鈴の両親が営んでいた飲食店にクリスマスになると二人で行って料理を食べていた。

 

鈴が中国に帰ってからはクリスマスは特にイベントらしいことはしていなかったので、一夏個人としてはとても楽しみであった。

 

(そういえば・・・・・)

 

ふと、一夏はマドカのことを思い出した。

 

(アイツはどうして千冬姉と同じ顔なんだ・・・・・? それになんで亡国機業に・・・・・・・)

 

「・・・・・知りたいか?」

 

「!?」

 

後ろから声をかけられて振り返ると少女が立っていた。

 

千冬と同じ顔をした、織斑マドカを名乗る少女が。

 

「おまっ―――――――――!?」

 

言おうとしたところを布で口を押えられた。

 

「来てもらうぞ」

 

(意識が・・・・・・・・)

 

その言葉を聞いたのは、意識を失う直前だった。

 

「お待たせー・・・って、あれ?」

 

着替えを終えた楯無が試着室からでると、すぐに異変に気づいた。

 

「一夏・・・・・くん?」

 

首を巡らせて周囲を見渡すが、前に立っていたはずの一夏はどこにも見当たらなかった。

説明
一夏、失踪
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