IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜
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「Gメモリー! セレクトモード!」

 

G−soulのウインドウにGメモリーが表示される。

 

「セレクト! パルフィス!」

 

コード確認しました。パルフィス発動許可します。

 

G−soulの装甲が変化し、センサーアンテナが肩から伸び、ヘッドギアも、天使の環のように変化して俺の頭上を浮遊している。

 

今、俺は楯無さんとともに近くのビルの屋上に来ている。

 

目的は一夏捜索。探索用Gメモリーのパルフィスの能力を使って一夏を捜している。

 

「どう? いける?」

 

「難しいですね。ISのコアから発せられる微弱な電波を手がかりにするとなると、特定することまず厳しいですね・・・・・」

 

「それでも、何もしないよりはマシよ。やってちょうだい」

 

「わかりました」

 

俺は目を閉じた

 

(どこだ・・・? 一夏、どこにいる・・・・・?)

 

俺は意識を集中させ、一夏探索に挑んだ。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・お前の、存在・・・・・・?」

 

一夏は、マドカの言うことが理解できなかった。

 

「・・・お前は私が最初からこの顔だと思っているのだろうが、それは違う」

 

マドカは扉に背中をあずけて語り始めた。

 

「私にも父がいて、母がいた・・・・・・・『人並みの幸せ』と言えば、お前も理解できるな? だがそんなものはとうの昔に奪われた。そう、奪われたんだよ。何もかも、亡国機業に・・・・・!」

 

「? 亡国機業って・・・・・、お前たちの組織じゃないか」

 

「お前・・・・・、私はどこの国の人間に見える?」

 

唐突にそんなことを聞かれて一夏はますます訳が分からなくなる。

 

「そりゃあ・・・・・日本人、だろ?」

 

「違う・・・・・。少なくとも、私は日本の生まれではない・・・・・・・もっとも、私自身、自分がどこの国で生まれ育ったかなど覚えてはいない」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「フッ・・・・・。そうだろうな、私が何を言っているか分からないだろうな」

 

マドカは自嘲気味に笑った。そして、その笑みが消える。

 

「私は、六歳のころ亡国機業に両親を殺され、組織に誘拐されたんだよ」

 

「なっ・・・・・・!?」

 

「私はそのまま亡国機業に身を置くことになった。そこで最初に施されたのは記憶の消去。愕然としたよ。自分の名前も、両親の顔も思い出せなかったときは・・・・・・・そしてその時に私の脳には監視用のナノマシンが植え付けられた・・・・・・」

 

マドカは自分のこめかみを右手でトントンと叩いた。

 

「そして私は二つ目の名前・・・・・『エム』というコードネームを与えられ、それからは地獄の日々だった・・・・・。昼夜を問わず激しい戦闘訓練。私の他にも攫われた子供たちの中から、死人が何人も出た」

 

「そんな・・・・・・・」

 

「その地獄の中で、私は友と呼べるほど親しくなった者がいた。『エー』と呼ばれていた私と同じ時に組織に連れてこられた女の子だった。アイツは、私同様記憶と家族を失っていた。それも親しくなる一因だったんだろう」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「そのエーは私たちのコードネームから名前を作るのが好きだった。私も例外なく、『マドカ』と名前をつけてもらった。アイツ自身は、自分に名前をつけようとはしなかったがな」

 

「仲が良かったんだな」

 

「まあな・・・・・・。それから年月が経ち、エーと私は初めて任務に向かった。場所はアメリカ軍の特殊兵器開発基地。厳重なセキュリティーを掻い潜り、私たちは無事データを盗むことができた。しかしそれは陽動で、別働隊が任務を完遂させるための囮。それが私たちの本来の任務だったんだ」

 

マドカはギリと歯を噛み締めた。

 

「二手に分かれて逃走を試みたが、無事に帰還できたのは私だけだった・・・・・。エーは死亡認定を受け、私は一人残された。『マドカ』という名前と共に・・・・・」

 

「・・・・・お前がマドカって名前を使う理由は何となく分かった。けど、俺が知りたいのはそんなことじゃない。どうして千冬姉と同じ顔なのかってことだ」

 

「それは―――――――――」

 

 

 

ドゴォオンッ!

 

 

 

「「!」」

 

突然、大きな揺れが二人を襲った。

 

「な、なんだ!?」

 

慌てる一夏とは対照的に、マドカはニヤリと口の端を吊り上げた。

 

「来たか・・・・・!」

 

「あっ、おい待て!」

 

歩き出したマドカを引き留めようと、一夏も立ち上がった。

 

だが、手錠で繋がれているため、そのまま動けなくなってしまう。

 

(クソッ! また俺は何もできずに助けられるのを待つだけなのか・・・・・・!)

 

「ちくしょう・・・・・・・!」

 

悔しさのあまり拳を握りしめる一夏の目にあるものが映った。

 

「ナイフ・・・・・・?」

 

足を伸ばせばこちらに近づけられることができそうな位置に願ってもないものが転がっていた。

 

「さっきまでこんなものは・・・・・・まさか!」

 

マドカが置いて行った。そういう結論が一夏の頭の中で出た。

 

(最初から逃がす気だった? ならどうして・・・・・・)

 

一夏は考え、そして一つの答えにたどり着いた。

 

「そうか・・・・・、千冬姉を誘き寄せるため・・・・・・・・!」

 

一夏は転がっているナイフを足で引き寄せ、手まで近づけて鎖を断ち切ろうと試み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

『ねえねえちーちゃん、本当にここであってるの?』

 

着地した千冬のIS《迦楼羅》から声が聞こえる。束の声だ。

 

「今日はアイツは生徒会の仕事でこの近くのショッピングモールに来ているらしい。このエリア周辺の廃工場はここしかない。いるとしたらここしか考えられん」

 

『なる――――――――』

 

「なるほど・・・・・、流石はねえさんだ」

 

千冬の前に出てきたのは、サイレント・ゼフィルスを展開したマドカ。しかし、その顔はハイパーセンサー内蔵のバイザーで口元以外は隠されている。

 

「貴様か。私の弟を攫ってくれたのは」

 

「そうだ・・・・・・・」

 

「歳のわりには中々良い度胸を持ってるようだが、身の程を弁えろ」

 

「フ・・・フフフ・・・・・」

 

「?」

 

「会いたかった・・・・・この時を待っていた・・・・・・・!」

 

突然笑い出したマドカに、千冬は眉をひそめる。

 

『ちーちゃん、あんなヤツ、さくっとやっつけちゃってよ。さくっと』

 

「待て。様子がおかしい」

 

「やっと、やっとあなたに復讐できる・・・・・!」

 

「・・・・・・・・・!?」

 

バイザーを外したマドカの素顔に、千冬は驚愕した。

 

自分と同じ顔。そんな顔をした少女が、自分の前に立っている。

 

「さあ、死んでもらうぞ、ねえさん!!」

 

バシュバシュバシュッ!

 

シールドビットを全機射出し、自分もスナイパーライフルを構えて発射する。

 

「くっ!」

 

千冬はそれを紙一重で躱し、距離を取る。

 

「束。この機体の武装は?」

 

『んー? ちーちゃんの好みに合わせて、雪片弐型の発展型の《雪牙(せつが)》っていうのがあるよ』

 

「・・・・・それだけか?」

 

『だってちーちゃん、あっても使わないじゃん』

 

「フッ、それもそうだな」

 

千冬は右手に実体ブレード《雪牙》を持ち、マドカに肉薄した。

 

「甘いっ!」

 

マドカは瞬時にシールドビットを操り、千冬の接近を許さない。

 

「ほう・・・。中々やるな」

 

千冬は後ろに飛び、再びマドカと距離を取った。

 

「久しぶりの実戦だ。 腕が鈍ってなければいいが・・・・・な!!」

 

「!?」

 

マドカはもの凄い衝撃に吹き飛ばされた。吹き飛ばされる直前、ブレードを振り切った千冬の姿が見えた。

 

(ビットが反応できなかった!? これが・・・・・ねえさんの実力!)

 

マドカは今までとは遥かにレベルが違う戦いに体をざわつかせた。

 

 

 

 

 

 

「フフフ・・・・・・・」

 

マドカと千冬の戦闘を遠くで眺める者がいた。

 

名前はスコール。美しい金髪の美女は激しい戦闘を見続けている。

 

「エムったら、こんな勝手なことをして・・・・・。まあいいわ、あなたがそうするなら、私も勝手をやらせてもらうわ」

 

双眼鏡から目を離し、踵を返して歩きながらスコールは笑う。

 

「さあ・・・・・、あなたのご主人様とご対面よ」

 

その手に、漆黒のリングを持って。

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