魔法幽霊ソウルフル田中 〜魔法少年? 初めから死んでます。〜 不思議な出会いな5話 |
花子さんに蹴っ飛ばされて、ハワイ旅行へでかけた6時間後に俺は『西』の方向から学校へ戻ってきた。
一応言っておくけど俺は『東』の方向に蹴っ飛ばされたんだよ?
おそらくマッハ5は出てた、滅茶苦茶怖かった、星になるかと思った。
ハワイらしき島も見えたけどあっという間に通り過ぎちゃたし、世界一周の旅行になっちゃったし。
しかし、厳しい特訓の成果もあって俺はついに高速飛行を覚えることが出来たのだ!
さすがにマッハ5は難しいがなのはちゃん家から聖祥までならあっという間だぜ!
花子さんにお礼をいってなのはちゃんと合流することにしよう、ちょうどもうすぐ学校も終わるしね。
タイミングよく塾へと向かうなのはちゃん達と合流した俺は、仲良くおしゃべりする三人の後ろにふよふよ『憑いて』いた。
学校以外では、俺は話し相手がいないので基本的に彼女らのおしゃべりを聞くこと以外することが無いのだが……。
「ワン! ワンワンワン!!」
すれちがったお姉さんの連れている犬に吠えられた。
俺と目を合わせて尻尾振っていることから、どうやらこの犬、俺の気配がなんとなく分かっているらしい、野生の勘すげえ。
しかし、俺の姿は見えないのでなのはちゃん達にむかって吠えているようにしか見えないのだが。
「ワンワン!」
犬は、遊んでほしそうにこちらを見ている!
犬種はコーギーなのだろう、短い尻尾をフリフリしてるのを見ているとムツゴロウさんじゃなくとも『よーしよしよしよし』したくなるじゃないかっ……!
「よし、さわれはしないけど遊んでやろう! いくぞーー!」
もう辛抱ならん! 俺と犬は同時に駆け出して――――
「Be quiet!!」
「「…………」」
犬と俺、アリサちゃんの一声で撃沈。
俺たちは非常に残念な様子でお互いのご主人様の後をついて行く、ごめんよワンちゃん……。
え、どうやって遊ぶつもりだったかって?
そりゃあそこら辺にある木の棒をポルターガイストで浮かして引っ張り合いこぐらいなら造作もない。
浮かせられるのは無機物だけで、あんまり重いものは無理だけど。
「あ! こっちこっち!」
しばらく歩いているとアリサちゃんが道の脇にある森の中を指差した、どうやらそこから塾まで近道できるらしい。
夕暮れ時に幼い子供たちが、こんなけもの道を通るのは賛成しないのだが俺がとやかく言ってもどうしようもない、せめて何も起きないよう祈ることしかできない。
なのはちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんの三人は無言でけもの道を進んでいく。
だが、なのはちゃんは何かを確かめているかのようにキョロキョロと辺りを見回していた。
「どうしたの?」
「なのは?」
すこし様子の違うなのはちゃんに気付いて、前を歩く二人が心配そうに声をかけた。
「あ、ううん、なんでもないよ。ただ、なんかここおばけがでてきそうだなーって――――
「ちょっ! やめてなのは、アンタが言うと冗談に聞こえないから!」
「ご、ごめん! そうだよね、おばけなんていないよね! あははは……」
何かを誤魔化すようになのはちゃんの口からでてきた『おばけ』というワードにアリサちゃんは過剰に反応する。
それもそのはず。
「でも本当に不思議だよね、消しゴム拾ってあげようと思ったら突然消しゴムがふわふわ浮いて、机の上に戻っていったこともあったよね」
「かっ、風のせいよ! 」
「あの時は窓を閉め切ってた気がするの」
ぎくっ。
「でも、なのはちゃんって写真の写りがものすごく悪いし、こないだ写真撮ったときなんか後ろに真っ黒な人影が……」
「たっ! たまたま黒人さんが後ろを通ってたのよ!」
「アリサちゃんそれは無理があるの……」
ぎぎくっ。
「こないだアリサちゃんに野球ボールが当たりそうになった時なんてとっさに反応して受け止めようとしたのも凄かったけど、ボールが手の平に当たる直前で静止したときなんかびっくりしちゃったよ」
「そっ! それはなのはが実はエスパー少女で……」
「わ……私超能力者なんかじゃないよー!」
正しくは魔法少女だね、うん。
そしてアリサちゃん君いくつだい?
というかそんなことを言いたい訳じゃない、皆さんは気付いているだろうが前述の怪奇現象はすべて俺の仕業である。
写真の件は『心霊写真なら気付いてくれるはず』と思って意気揚々と存在感をアピールしたら濃くなりすぎて真っ黒に写ってしまったというね。
他の二つは、純粋に役に立とうと思ってポルターガイストしたのが、逆に騒ぎになってしまったというね。
おかげでなのはちゃんにいらんコンプレックス与えちゃうし、アリサちゃんは怖がるし、後で花子さんに「そんなに目立って除霊師よばれたらどうするんだい!」ってどつかれました。
除霊されると完全に意識が消滅するらしい、ガクガクブルブル……。
「うううー……、私だって分かんないの……」
しょんぼりと肩をおとすなのはちゃん、心なしかツインテールが萎れてるように見える。
ホントマジごめんなさい、頼むから除霊とか考えないでください。
「そ、そんなに落ち込まなくてもいいじゃない!」
「そうだよなのはちゃん! こんど私お家に『オ〇キューム』作ってもらえるように頼んでみるから!」
いやぁぁぁ! やめて!! すずかちゃんちなら作りかねない上に絵画になるなんて除霊より怖ぇぇぇぇ!!!
月村家驚異の科学力に(俺が)恐怖する一幕がありながらも、三人は黙々と歩いている。
でもなのはちゃんだけは挙動不審である。
……正直、心当たりが無いわけじゃない。
なのはちゃんは9歳、もうそろそろなんじゃないかと思っていたところだ。
「……? なのは?」
「いま、何か聞こえなかった?」
「何か?」
「なにか、声みたいな……」
三人はその場に立ち止まって聞き耳を立てるが、おそらくなのはちゃんにしか聞こえてないのだろう。
ちなみに俺も聞こえない、リンカーコアが最初から滅んでいるからだ。
やがてなのはちゃんは『声』に導かれるように走り出した!
「多分、こっちの方だ!」
「なのはちゃん! いっちゃだめーー!!!」
「なのはー! か、帰れなくなるわよーー! 戻りなさーーーい!!!」
どうにもアリサちゃんとすずかちゃんは幽霊の仕業と勘違いしてるらしい。
すごい必死な表情でなのはちゃんを追いかけている、一応言っとくけど俺じゃないよ?
森のなかを駆け足で進む。
そしてその先にあったのは、赤い宝石を首にかけたボロボロのフェレット。
心当たりは見事的中、どうやら魔法少女が始まったらしい。
説明 | ||
第五話です、アニメの1話中ごろあたりか。 そして原作キャラに関わらない主人公、この作品では仕様です。 |
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