狼男のスカイリム冒険記
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プロローグ3〜解放〜

 

 

急いで中に入ると、三人のストームクローク兵士が傷ついて倒れていた。俺は急いで治癒魔法を両手に発動させ、傷口をふさいでいった。血まではどうにもできないけど、体力と傷は何とかできる。

 

 

「驚いた、ヴィンセントは治癒師なのか?」

 

 

「いや、そうでもあるが専門じゃない。その道の専門家には負けるよ」

 

 

「それでも十分じゃないか。彼らはお前に命を救われた」

 

 

治った三人に礼を言われるが、時間がないので頷きだけで返す。横ではレイロフがウルフリック首長に動揺を声にして聞いていた。

 

 

「ウルフリック首長!あれは一体?伝説は本当なんでしょうか?」

 

 

「いや、伝説は村々を焼き払ったりしない」

 

 

やけに落ち着いた風なウルフリック首長に疑問が出るが、このままここで討論していても仕方がない。急いで移動するというウルフリック首長にの言葉に全員が頷き、階段を上っていく。しかしそこはがれきで塞がれていて、ストームクローク兵士が退かしていると確認した瞬間、真横の壁がドラゴンに吹き飛ばされた。

 

 

《ヨル・トール……シュル!》

 

 

「このクソったれが!」

 

 

声と共に吐き出される炎。すぐさま先頭にいた俺が魔力の壁でこちらに来るのを防ぐ。少し吐き続けたドラゴンは、一鳴きして飛び去っていった。しかし思いの他マジカの消費が激しい。三分の一持って行かれた。あのがれきを処理していたストームクローク兵士は……もう、完全に真っ黒になっている。

 

 

「また助けられたな……彼を助けられなかったのは残念だが、急ごう。道の反対側にある宿が見えるか?あの屋根を跳び抜けて、そのまま進め!」

 

 

「わかった。お前たちは?」

 

 

「後から続く。行け!」

 

 

両手斧を右手に持って勢いよく跳んでいき、ゴロゴロと転がりながらも何とか着地する。そしてレイロフ達の方を見るが、また戻ってきたドラゴンに邪魔されている。また面倒なことを!

 

 

「レイロフ!」

 

 

「行け!こっちは別の道を探してみる!後で合流しよう!」

 

 

舌打ちが思わず出てくる。仕方がないので穴が開いた二階部分から一階に降り、外に出てみると何人か帝国兵士がいるのが見えた。中にはリストを読み上げていた奴の姿も見える。どうやら子供を誘導しているようだ。

 

 

「上を見るな、俺を見るんだ。お前なら出来る!」

 

 

しかしさっきまでレイロフの方にいたドラゴンがその子供のすぐ後ろに降り立ちやがった。しかもすぐにあの炎を出す体制で。

 

 

「あぁー!くそっ!俺のお人好し!」

 

 

俺は一気に駆け出して途中で両手斧を捨てると、子供の前に出て魔力の壁を張ってブレスを受ける。

 

 

「おい!早くしろ!」

 

 

「っ!ハミング!こっちに来い!早く!」

 

 

駆け出した子供に合わせて少ずつ下がっていき、建物の影に入ったところでそこに飛び込んだ。まただいぶマジカが減ってしまった……俺は投げていた両手斧を拾って大きく息をついた。

 

 

「助かったよ。ありがとう。だが、どうして?」

 

 

「……ガキが死ぬのを見てるだけっていうのは嫌なんだよ。それだけだ」

 

 

「そうか……グンナール、そいつの事を頼む。俺はテュリウス将軍を見つけて守備に加わらないと。囚人、とりあえず避難出来る砦まで連れて行ってやる。さっきの礼だ、死にたくなかったらついて来い」

 

 

「神々のお導きを祈る、ハドバル」

 

 

ドラゴンが砦の上にいる弓兵を食いちぎって俺の真横に落としていったのを見ていると、助けたハドバルという帝国兵が先導してくれるという。俺はヘルゲンに詳しいというわけではないし、レイロフ達と合流するためにもついて行く方がいいと判断した。俺は黙って頷き、ハドバルについていく。そして焼け焦げた道を通っていくと、目の前の塀の上にドラゴンがいきなり降り立った!

 

 

「壁際にいるんだ!」

 

 

「言われなくても!」

 

 

身をかがめて壁際に移動する。目と鼻の先にいるドラゴンを改めて見ると、やはりすごい威圧感を感じる。そこらへんのデイドラなんか比じゃない。黒光りする見るからに堅そうな鱗に吐き出される灼熱の炎。頭の上には鋭い爪が塀に食い込んでいるのが見えた。

 

 

「よし、行くぞ!」

 

 

ドラゴンが立ち去ったのを確認して一気に駆け出す。焼け焦げた死体を飛び越え、崩れた民家を潜り抜けていく……その中で、抱き合っている親子の焼死体を見つけた。またここに来ることがあるとしたら、その時はしっかりと供養してあげよう。おそらく誰も戻ってこないこの場所が、盗賊の寝床にならないようにだけ祈っておく。

 

 

「イスミールにかけて!歯が立たない!」

 

 

「行け!行け!」

 

 

「狙いを定めて撃て!」

 

 

民家から出ると、帝国兵士が集まってドラゴンに矢を放っていた。中には魔術師もおり、魔法を飛ばしているが全く効いている風ではない。と、そこへどこかで聞いたことのある声が聞こえてきた。

 

 

「ハドバル!砦の中へ!離脱するぞ!」

 

 

「テュリウス将軍!?」

 

 

あの禿げたおっさんめ、兵士を置いて即行で離脱宣言か。ハドバルも味方を置いていくのが口惜しいのか、悔しそうな顔をしている。だが命令には逆らえないので行く、という感じだ。まぁ、俺にとってはどうでもいいがね。

 

 

「ヴィンセント!無事だったか!」

 

 

「おぉ!レイロフ!そっちこそよく無事だったな!」

 

 

少し進んで砦が目の前にまで来ると、横の通路からレイロフが出てきて丁度会うことが出来た。さっきまでは持ってなかった鉄の片手斧を持っているので、どこかで拝借してきたんだろう。

 

 

「レイロフ!この裏切り者め!どけ!」

 

 

「……俺達は脱出するぞ、ハドバル。今度は止めないだろうな」

 

 

「いいだろう。お前達全員あのドラゴンにソブンガルデへ連れて行かれちまえ!……ここまでだ、囚人。達者でな」

 

 

そう言って、ハドバルは早々に前の砦に入って行ってしまった。ドラゴンの真下でよく口論出来るな、と思ったが、特に口には出さずレイロフに導かれるままそれとは別の砦に入った。直前にちらりと空を見ると、変わらずドラゴンは、我が物顔でヘルゲンを破壊していた。

 

 

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砦に入ると中は円柱状で、黄色い絨毯と帝国の黒い大きな旗があり、左右の扉には鉄格子がかけられている。そして奥には、机の横で息絶えているストームクローク兵士がいた。

 

 

「ソブンガルデでまた会おう、兄弟よ」

 

 

祈りをささげるレイロフに、俺も黙祷する。

 

 

「さて、生き残ったのは俺達だけみたいだな」

 

 

「ロキールやウルフリック首長達はどうしたんだ?見当たらないが、まさか……」

 

 

「いや、途中で別の脱出ルートを見つけてそこから逃がしたよ。最後の俺はまたドラゴンに邪魔されて、なんとか逃げていたら生きてるお前に会えたんだ」

 

 

「運の悪いやつだなお前も」

 

 

「人の事が言えるか?」

 

 

いや、確かにピンポイントの時期と場所で捕まったがよ。それは言わないお約束だぞレイロフ。悲しくなってくる。

 

 

「まぁいい。それにしても、あれは間違いなくドラゴンだった。子供向けの物語や伝説に出てくるやつだよ。終末の導き手だ」

 

 

「あぁ、小さいころおとぎ話でよく聞いた。だが、これは現実だ。まったくもって馬鹿げてるけどな」

 

 

「そのおかげで助けられたんだから皮肉だよ。さ、先を急ごう。俺はそこの鉄格子を見てみる。お前はあっちを頼んだ」

 

 

「了解」

 

 

手分けして扉を調べてみるが、片方は鍵が、もう片方はこちらからは開けれなくてどうしようもない。辺りにそれらしい物もなかったので俺の破壊魔法で壊すかと考えていると、がしゃがしゃと鎧の擦れる音とあのいけ好かない女隊長の声が聞こえてきた。しかも遠くから聞こえる声からして、俺の所持品をちゃっかり持って行ってるようだ。これは好都合……。

 

 

「ちっ、帝国軍だ!隠れ「いや、俺に任せろ」……わかった。頼むぞ」

 

 

速攻でぶち殺すから隠れてろとジェスチャーで送り、レイロフに距離を取らせる。彼も臨戦態勢を取っているが、おそらく必要ないだろう。俺は黒檀の両手斧を構えて身をかがめて気配を絶つ。隠密スキル万歳だ。

 

 

「門を開けなさい」

 

 

女隊長の命令で開いた門から出て来た兵士に、立ち上がりながらの一発を出会いがしらに頭にくらわせる。黒檀の斬れ味の前では革鎧など意味をなさず、頭を斜めに両断することに成功した。そのままの勢いで回転しながら俺の所持品を運んでいたもう一人の兵士の胴に振りぬくが、途中で詰まって革に引っかかってしまった。持っていた箱が落ちないようにしたけど、手入れしとけよ処刑人!

 

 

「なっ!あなたは囚人のぅぁっ!」

 

 

仕方がないので武器を手放し、剣を抜こうとした隊長に手を押さえつけながらタックルし、馬乗りになる。兜が取れてあらわになった顔はいかにも鍛えてます、って感じ。なんだかなー、好みじゃない。まだオークの力強い女の方がいい。彼女らは誠実で堅実だ。ってことで

 

 

「ライトニングボルトォォォォ!!」

 

 

「ぎゃあぁああああああああ!!」

 

 

両手に一杯のライトニングボルトを飛び退くと同時に叩きつける。即死しないのがミソだ。あと、彼女の焼け焦げた死体からしっかりと鍵も拝借しておくのも忘れない。

 

 

「おいおい、まるで容赦がないな……どんだけ恨んでたんだよ」

 

 

「俺はやられたらやり返す主義なんだよ」

 

 

「いやそれでも……まぁいい。お前は言っても聞かなさそうだ。それで?その箱の中身がお前の持ち物なのか?」

 

 

「あぁ、いろんなところを渡り歩いた相棒達さ」

 

 

少し大きめな木箱をそっと持ち上げて広い真ん中まで持っていく。鍵はレイロフに渡してあるので俺はサクサク着替えていくことにした。メニューから綺麗な下着とかに着替えておき、一気に着る。どういうわけか装備するのもゲームのように一瞬で終えてくれるので助かっている。もちろん今はレイロフがいるので鎧は自分で着ているんだけども。

 

 

「お前といると驚くことばかりだよ……まさかデイドラの装備とはな。一生に何度もお目にかかれる代物じゃない。俺は一度召喚されたデイドラで見たことあるが、どうやって手に入れたんだ?」

 

 

「最初は遺跡でボロボロの物を見つけたんだよ。それでそこに特殊な鍛冶場と製造法もあったから、そこで見よう見まねでなんとか作り上げたのがこれさ。一個の部位に複数のデイドラの心臓が必要で、集めるのに苦労したよ。結構な回数失敗したから、余計にな。でも、それだけの価値はあったさ」

 

 

装備し終えて、あの時の事を思い出す。本当に不気味な遺跡で、トロールのタックルで崖から落ちていった先にあったんだ。あの時は死にかけたけど、運が良かったのかもしれない。それから友人達を半ば無理やり連れて行ってデイドラ狩りの日々がしばらく続いた。デイドラを召喚出来る高位の魔術師がいると聞けばそこへ飛んでいき、崇拝する教団があればたきつけて召喚させた。もちろんその教団は全滅したけど、心臓も手に入るし金も名誉もがっぽりだった。おかげでデイドラに関しては俺や友人達に多く仕事が舞い込んでくるようになった。まぁ、友人達はしばらくデイドラのデの字も聞きたくなさそうだったけどね。

 

 

それで、そんだけの労力と俺の持てる技術の粋をかき集めたこの装備は、最高の防御力と軽さ、柔軟さ、フィット感を兼ね備えている。デイドラの血のせいか、俺の体の成長にもしっかりついてくるという摩訶不思議な現象が起きている。一度一緒に酒を飲んだことのある快楽を司るデイドラ・サングイン様曰く、そんじょそこらの定命の者が着ていいものじゃ無いそうだ。まぁそれも良しと言ってくれたので気にしてないけどさ。あの時はただのおっさんだと思ってたから驚いた……。

 

 

「まぁこの装備の話はまた安全な場所でゆっくり話そう。とにかく急いでここから離れないと」

 

 

「あぁ、そうだな……やった!開いたぞ!さぁ、ドラゴンが頭の上に塔を倒す前に、ここから逃げ出すぞ」

 

 

「おう!……って何故キャベツがここに?」

 

 

「おい!早く行くぞ!」

 

 

何故か押し車の中にあったキャベツが気になりつつも、開いた扉から先に進む。すぐそばの階段を下りていくと通路に出ることが出来たが、おそらくドラゴンのせいで壁が崩れ落ちて先に進めなくなってしまっていた。退かそうにも量が多すぎるし時間がかかりすぎる。

 

 

「くそ、あのドラゴンめ。簡単には諦めてくれないぜ」

 

 

「仕方ない。そこの扉から行こう。出口に繋がってると良いが……」

 

 

何とか巻き込まれていない扉が手前にあったのでそこから中に進んでいく。その先は様々な物資が置いてあり、中でも食料やポーションが多くある。どうやら貯蔵室のようで、帝国兵が持っていこうとしていたところを二人で後ろから一気にカタをつけた。

 

 

「貯蔵室だな。ポーションがないか見てくれ。必要になるはずだ」

 

 

頷いて少し調べてみると、樽の中と棚に休息の薬と魔術の薬、回復の薬、ワインがいくつかあったので拝借しておく。俺は自前のがあるのでそれらはレイロフに渡している。純度からいってあれは一番効力の低いものだったので、メニューからこっそり出した中回復のものも渡しておいた。そこから先に進むと、何やら空気が一気に血なまぐさくなってくる。

 

 

「トロールの血!拷問部屋じゃないか!しかも向こうで誰か争ってる!行こう、味方かもしれない!」

 

 

急いで階段を駆け下りると、丁度拷問官に貫かれた女性ストームクローク兵がいた。辺りにはほかのストームクローク兵の遺体も見え、拷問官は一人だけ生き残っていた。

 

 

「くっそォ!帝国のクズ野郎が!」

 

 

「なっ!まだいやがぁっ!」

 

 

レイロフが怒りにまかせて剣を抜こうとしていた拷問官の頭をかち割った。よっぽど力んでいたのか、大きく息を乱している。俺は急いで刺された女性を見てみるが、もう既に息絶えていた。レイロフに首を振ると、彼は横の牢を思いっきり叩く。その顔は怒りに歪み、唇からは血が流れていた。俺はそっと治癒をかけていく。

 

 

「……悪い、少し熱くなりすぎた。武器がだめになってしまったみたいだから探してくるよ。少し、待っていてくれ」

 

 

顔を俯かせる彼が奥の小部屋に入っていくのを黙って見送る。これ以上仲間を目の前で失いたくないんだろう。覚悟は持っているが、あとほんの少し早く来れていれば助かったかもしれない命だ。その思いは計り知れない。

 

 

俺はその場を調べ始める。牢には死体と魔術書、ゴールドがあったのでロックピックでこじ開ける。すると、横から何か擦れる音がしたのでよく見てみると、あのアーケイの司祭が牢の中にいるではないか。影に入っていたのと牢自体が一番端だったのでよく見えなかった。少しばかり衣服が破れて、痣が見えるけど、確かに彼女だ。なんか無性にエロく感じられた俺はきっと悪くない。

 

 

「おい、あんたは確かアーケイの……」

 

 

「ひっ、近づかないで!あなたも私に乱暴するつもりなの!?」

 

 

その牢に近づくと、思いっきり拒絶される。しかしこのままでもしょうがないのでロックピックで扉を開けながら理由を聞いてみた。ちなみに兜を外して俺だよって言ったら余計ビビらせてしまった。そういえば俺は囚人だったんだから、理由も知らない彼女は怖がるのは当然だったな。強行策に出たので何度か彼女の魔法も食らったけど、鎧と首飾りのおかげでなんとかなった。

 

 

「熱ぃな、おい。で?マジカも尽きたようだし、少しは落ち着いたろう。理由を聞かせてくれないか。アーケイの司祭であるあんたが何でこんなところに閉じ込められてるんだよ。しかもこんな短時間の間にさ」

 

 

「わ、私は助けを求めに来たの!外の帝国兵士の人に逃がしてもらって、ここへ来たのにあの拷問官どもは人の話を聞かずに……あ、あろうことかアーケイの司祭である私に襲いかかろうとしたのよ!?」

 

 

まぁ普通に考えてドラゴンなんておとぎ話だし、外からの音の聞こえづらいここじゃそんなエロい恰好してきた女は襲われるのは当然だ。しかもここにいるのは拷問官。頭のいかれた奴らばっかりなんだから余計にタチが悪い……よし、やっと開いた。

 

 

「で、でもストームクローク兵の彼女たちが来てくれたから私は牢に入れられて……」

 

 

「よしよし、こんなに傷だらけになってまでよく頑張った。お前はもう大丈夫だから安心しろ。俺達が何とかしてやる」

 

 

鎧で傷付かないように優しく抱きしめながら治癒魔法をかけていく。痣や切り傷、火傷が治り、彼女が泣き止むまでゆっくりと。女性にとってこういうのはかなりのトラウマになるし、信じていた助けに裏切られたとくれば数ある最悪の出来事の中でも1,2を争うほどの心の傷になるだろう。下手すれば人間不信になりかねん。今回は未遂だったけど、事後だったらおそらく助けられても自害していた可能性も否めない。

 

 

泣き止んだ彼女は顔を真っ赤にしていたので、和ませるように少し笑うと怒られた。少し笑顔が戻ったので良しとしよう。俺はいつまでもそんなエロい恰好でいさせられないと、メニューから黒いローブと魔術の薬を出して手渡す。俺は女好きの変態だが紳士です。もちろん聞かれたけど、そのことを適当に誤魔化して彼女が着替えている合間に兵士の遺体を綺麗に並べていく。

 

 

レイロフも途中で戻ってきた。背中にナップサックとロングボウ、矢を背負って、鉄のメイス、鉄の盾を持っていた。生き残っていた彼女には驚いていたけど、拷問官の仕打ちに憤りを感じたようで同行を許可してくれる。着替え終わった彼女にアーケイの祈りをささげてもらった。タロスじゃなくて悪いが、俺達二人とも祈りの方法なんて知らないからな。少なくともちゃんとソブンガルデに逝けるように、俺達は祈った。

 

 

「よし、急ごう。思ったより長くいてしまった。ここから出口に繋がる道があればいいが……」

 

 

牢の連なる通路を進み、またあった拷問部屋を通り過ぎていく。すると壁が崩れて洞窟に繋がっている道があったのでそこを進む。少し行くと、帝国兵士らしき声が水の流れる音と共に聞こえてきた。

 

 

「テュリウス将軍が来られるまでは待機という命令だ」

 

 

「このままじゃドラゴンに殺されるだけだ!退却しなければ!」

 

 

「ダメだ!将軍のために時間を稼げ!」

 

 

俺は司祭に待つように告げてグレートソードを抜く。レイロフもロングボウを引いていつでも撃てる状態になっているのを確認し、俺は一気に飛び出した。石の橋の一番手前の奴を後ろから大きく横振りにして首をはねているうちに、レイロフがその奥のやつの頭に矢を当てる。見事な腕だ。しかしここよりも奥にいるやつらに気づかれてしまった。

 

 

「なっ!ストームクローク!この薄汚い裏切り者共め!」

 

 

邪魔な死体を蹴り飛ばし、移動しながらグレートソードを担いで落ちていた剣を投げつける。それだけで十分目くらましになったのを確認するまでもなく、飛びかかりながらよろついてる相手の顔面を殴り飛ばした。

 

 

「レイロフ!」

 

 

「任せろ!」

 

 

後ろからついてきているレイロフにそいつを任せ、俺は柱に隠れて呪文を唱えていく。数は二人。しかも弓兵なので一気にカタをつけなくてはいけない。俺はともかくレイロフは軽装備だし、兜を着けていないからヘッドショットで一発だ。俺はグレートソードを置いて飛び出し、次の矢を番える前に魔法を放った。

 

 

「まとめて死ねぇ!」

 

 

俺の両手から放たれた雷が直撃し、二人に連鎖する。破壊魔法チェインライトニング。先程のライトニングボルトが敵に連鎖してくれる魔法だが、下手したら仲間にも行きかねないしそこそこマジカを使うので注意がいる魔法だ。まあ今回はうまく二人を丸焦げに出来たけども。

 

 

「よし、じゃあ先に進もう。危険がないか確認してくれ。俺は彼女を呼んでくる」

 

 

「了解」

 

 

遺体のポケットのあったゴールドをいくつか拝借し、先の通路を見てみると橋が上がっていたがレバーを倒すことでなんとかなった。司祭と合流し、先に全員が通ったところで天井が崩れて戻れなくなってしまった。

 

 

「もう引き返すことはできないな」

 

 

「まぁ、その分追手が来ることもない。後ろを気にせず行けるんだから良しとしよう」

 

 

足元に流れる水に司祭が嫌がることもあったが、とにかく洞窟を進んでいく。骸骨がそこらかしこにあって、当たった時にがらがらうるさい。少し進むと、蜘蛛の巣だらけの広い空間に出た。瞬間、何匹ものフロストバイト・スパイダーが降りてくる。

 

 

「いやあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

訂正、降りる前に司祭に焼かれた。いや、うん。凄かった。半泣きで焼きまくるのを呆然とレイロフと二人で見ていたが、巣ごと丸焼けになるとは思いもしなかった。曰く、多脚の虫はどうしても生理的に受け付けないそうだ。見つけ次第、焼き殺す。それが彼女の中で確定事項であり、一回だけ死者の間を焼きかけたとかなんとか。じゃあ何でアーケイの司祭なんかやってんのとは怖くて聞けなかった。

 

 

「あー、その、なんだ。俺もこういうのは嫌いだ。目が多すぎるだろ?」

 

 

「まぁな。気持ち悪いのは同意する」

 

 

「そうよね!いつか燃やし尽くしてやるんだから!」

 

 

「「……」」

 

 

腕をぐっと握り決意表明をする司祭。そんな彼女になんとも言えなくてそそくさと先を急ぐ。通路を進むと、水が流れている大きな空間に出た。そこから先に進んでいくと、なにやらもぞもぞと動いている黒い物体が見えて、俺達は物陰に隠れた。

 

 

「おい、クマがいやがる。見えるか?」

 

 

「あぁ……出来れば今はもめたくない。俺の持つ弓じゃ効かないし、あの位置にいるならこっそり通り抜けることも出来るんじゃないか?」

 

 

「そ、そうよ。結構大きなクマだし、迂回した方がいいんじゃない?」

 

 

確かにあの位置にいるならゆっくり進めば迂回することも出来なくはない。だが今は司祭もいる。クマはタムリエル大陸全土で脅威になっている動物だ。移動していた一般人が食われたなんてのもよく聞く話で、司祭が怖がるのも頷ける。が、一般人ならともかくクマ一匹程度トロールを撲殺出来た俺1人でどうにかなる。楽勝だ。

 

 

「いや、時間をかけたくない。それにクマ一匹程度楽勝だ。ここで隠れていてくれ。すぐに仕留める……今日はクマ鍋もいいかもな」

 

 

「お前……食いたいだけだろう」

 

 

本音が漏れた。しょうがないじゃないか、お腹が空いたんだもの!なんてコントをして場を和ませつつ俺はグレートソードを抜き、屈みながら移動する。隠密行動を幾度となくやってきた俺にとって、クマにばれないなんて朝飯前。俺は眠っているクマの前まで近づくと、脳天を一気に突き刺した。

 

 

レイロフと司祭を呼び、先に行かせる。俺はクマを担いでそのあとに続いた。

 

 

「お前は全く、クマを丸々担げるなんてどこのオークだってんだ」

 

 

「あなたに驚けなくなった自分が悲しいわ……」

 

 

呆れるようにため息をつかれて先に行かれた。なんだか悲しい……鍋やらないぞこの野郎。

 

 

「おっ!この道は外に繋がっているようだ!絶対外に出られると思ってたぜ!」

 

 

「やっとこの洞窟から出られるわ!急いでヴィンセント!」

 

 

「あぁ!」

 

 

前を見ると外への光が見えた。遠目に山々が見えるからちゃんとした出口なんだろう。俺達は喜んでその出口に駆け出した。

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デイドラの鎧ってそうほいほい作れるものじゃない、という設定で行きました。いろいろあるでしょうがご容赦をば

 

説明
帝国タムリエルは窮地に立たされていた。Skyrimの王は殺害され、王位継承のために同盟が形成されていった。内紛が起こる中、長い歳月閉ざされていたElder Scrolls(エルダー・スクロールズ)へ通じる道がタムリエルへと開かれ、太古の邪悪な生物たちが蘇った。Skyrimの未来は、唯一ドラゴンに立ち向かうことのできる救世主“ドラゴンボーン”が現れるという予言を待ち望みながら、生死の淵を彷徨うしかなかった……。―――――――べゼスダゲームの傑作・スカイリム二次創作です。なるべく原作のセリフや言動を崩さないようにやっていきますが、どうしてもほころびが出ます。ご容赦ください。ある程度の原作崩壊(キャラ生存・死亡、主人公設定など)はありますので、それがお嫌いな方はご注意ください。主人公最強・ご都合主義・ややエロ(?)などを含みます。主人公は原作未プレイです。にじふぁんから移動してきました。
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