真恋姫†夢想 弓史に一生 第二章 第四話外伝 |
〜諸葛瑾side〜
私は不幸なんだ…。
私の名前は諸葛瑾、字を子瑜。琅邪郡陽県の生まれで、私が物心ついたころには家族は妹と私、そして両親の四人で幸せに暮らしていた。
しかし、両親は村が山賊に襲われた時に、私の目の前で殺された。今でもあの時の光景を夢に見ることがある…。
賊が村を襲っていた時、私と妹は両親に納屋に隠れているように言われた。そして、両親は戦っていた…。
私の故郷の村は、そこまで大きなものでないので、県令とかはいなく、自治的に運営されていた。
中でも、両親は元軍に仕えていたこともあり、この村の長的な位置にいた。
だからこそ、村の人たちのために戦った…。
一時はそれこそ返り討ちに出来そうなくらいまで戦況を盛り返した。
しかし、子供たちを人質にとられ、両親は人質解放の約束を条件に後ろ手に縛られた状態で、この納屋の前で盗賊の手によって殺された。
山賊たちは両親を殺害した後も村の人たちを襲い、蹂躙し、強姦し、あまつさえ全てを奪いさっていった…約束を反故にして…。
私は目の前の光景に言葉を失い、身が振るえ、人の血の匂いに吐き気を催した。そして、思った。人は簡単には信用できないと…。
残ったのは私と妹だけ…。
盗賊たちが去った後、私は納屋から一人で出て村を見つめ、慟哭し、自分の無力さを痛感し、激しく狼狽した。私はこのとき初めて、自分が不幸であることを知った…。
その後、新たに誓いを立てた。
この村の人たちの為にも、私達姉妹は生きなければならない。そして、いつか仇は自分の手で討つと…。
私と妹はその村から逃げ出した…特に行き先を決めていたわけではなく、ただひたすらに歩を進めた。
しかしある時路銀が底をつき、食べ物に困った私たちは、一人で歩いていた女性を道すがら襲った…。
勿論この行為がどれだけ下劣な事かは重々承知していた。しかし、私たちは村の人たちの為生きなければならない。どんな手を使ってでも…。
「ごめんなさいです…。傷つけるつもりは無いのです。ただ、路銀を少し分けてはくれないでしょうか?」
女性は初めこそ驚いていたが、私の言葉を聞くと口元を緩ませ。
「あらあら、何かお困りのようね。良かったら話を聞くわよ。どう?この先の町で食事でもしながら?」
私たちはその言葉を素直に受け止められなかった。盗賊の姿が頭を掠め、人を信用できなくなっていたのだ。
…もしかしたらこの人が武器を隠し持っていて、私たちは殺されるかも知れない…。
そんなことを考えていたこともあり、返事を渋っていると、その女の人は周囲を確認した後、おもむろに着ている服を全て脱ぎだした。
…その光景にあっけに取られた。
「どう?武器なんかは持ってないから貴方達を襲ったり、傷つけたりは出来ないわ。私はあなたたちと話しをしたいだけ。どうかしら?」
私たちはこの人の心根の強さ、器の広さに感嘆し、その笑顔に魅せられた。そして、その女性についていく形で町に行くことにした。
私はそこで、その女性に、今まであったこと全てを…胸につかえていたもの全てを吐露した。
…女性はただじっと話を聞いていた。
その表情は私の話に同情と悲哀の色を浮かべながらも、私たちに『良く生きた』と言わんばかりの安堵の顔色をしていた。
…なんだかこの人は落ち着く…。
私が話しているとき、妹は脇で寝息をたてていた。
休む暇なく逃げてきたし、夜中もおちおち寝ていられなかったこともあり、疲れが溜まっていたのだろう…。
私が全てを話し終えると、女性はお茶を一口啜った後こう言った。
「私のところに来る気はある?私は司馬徽。田舎の方で小さいけど私塾を開いているの。」
「えっ…。」
「嫌ならいいのよ。私は道を示しただけ…。それを選ぶのは自由なんだから。」
「…信じて…いいのですか?」
「あらっ。私にまたここで裸になれとでも言うのかしら?」
「っ!! いえっ、そんなことは…。」
「じゃあ信用して頂戴。勿論姉妹共々ね。」
正直、路銀がつき、明日のご飯も確保できていなかった私たちには渡りに船だった。
これが、私たちと司馬徽、皆からは水鏡先生と呼ばれる人との出会いであった…。
その後、私と妹は水鏡塾で兵法や政事、軍略や知識、農耕や工事などを学んだ。
水鏡先生は私たちをまるで実子であるかのように扱ってくれた。それこそ時に優しく、時に厳しく…。
そして、水鏡塾で過ごすこと五年…。年が上の私は妹より先に水鏡塾を卒業することになった。
この時には揚州刺史、孫文台のことを聞き、善政を敷くその人に会って見たいと思っていた。
なので、水鏡先生に別れを告げた後、一路寿春に向かうことにした。その道中、天の御使いの話を聞き、その人にも興味を持った。
しかし、不幸な人生に休む間など無く、一人旅を始めて一月。
寿春まであと少しというところまで来ていた私は、ある時道を歩いていると、黄巾賊らしき男二人に急に襲われた。
一対二という不利な状況…。私は隙を見て逃げ出した。
この時、私は森の中へ逃げてしまった。森の中なら姿を隠しやすいと思ってのことだった。
しかし、男たちにとってこの森は庭だったらしく、じりじりとその差は詰まっていった…。
まずい…このままじゃ…。そう思っていたときだった。
「きゃあ!!」
逃げることに夢中で、足元に意識がいってなかった…。
木の根が飛び出していて、そこに思いっきり引っかかった。
…私が起き上がる前に、男たちは私の傍まで来て私を見下すようにしていた。
「ひっひ。ねーちゃん、逃げたって無駄だぜ!?おとなしくしてれば痛い目は見ないからさ。」
男たちはその顔に下衆な笑いを浮かべて迫る。
…嫌だ…やめて…。
「いやっ!!来ないで!!近寄るな!!」
「大丈夫だって。俺たちに任せな。ひっひ。」
あぁ、私はここでこの男たちに犯されてしまうのだろうか…。そう思って諦めかけたときだった。
「さぁ、俺たちとたのし…あっ??一体…なに…が…。」
私の正面にいた男が急に倒れこんだ。その頭には矢が刺さっている…。
一体何が起こったの…。
「おい!!大丈夫か!! くそっ!!一体どこのどいつだ!!!」
残りの男は周囲の警戒をしている。
すると森の奥から二人の女性が走ってきた。そして、その速さを緩める事無く、すれ違いざまに男を切り倒し、私の傍までやってきた。
「大丈夫ですか〜? お怪我は〜?」
私はあまりに一瞬の出来事に声が出なかった…。
そして少しして、私はこの人達に助けられたのだと分かった。
「あっ…。あの…。助けていただきありがとうございましたです。」
「とりあえず怪我はしてないみたいだね。間に合ってよかったよ。」
「そうです〜。聖様が緊迫した雰囲気を醸し出すから、間に合わないかとひやひやしました〜。」
「しかし、お頭は流石だね…。脳天一撃だよ…。」
「あの…お二人が気付いて助けてくれたんですよね…?」
「いいえ〜。私たちは聖様の言葉で駆けつけただけです〜。あなたを見つけたのは聖様ですよ〜。」
彼女たちに呼ばれる人物…。どうやらその人が私を見つけてくれた様子…。しかし、その人の姿が見えない…。一体どこに…。
そう思っていると、森の奥から変な服を着た男と女性が一人、その後ろには数人の兵士が付いて来ていた。
この男が先ほど噂されていた男だろうか…。
男は私の前に立つ。
…自然と体が先ほどのことを思いだして震える。
「大丈夫?怪我は無い?」
「…。(キッ)」
私は疑心の篭った目でその男を見る。見た感じはそこ等辺の男となんら変わらない…。服以外は…。
強いて言うなら少しだけ顔はいい気がする。本当に少しだけ…。
すると男は私に優しく微笑みかけて言った。
「俺は黄巾賊じゃないから、そんなに警戒しなくても良いよ。」
黄巾賊が自分のことを黄巾賊というはずがない。もしこれが策だとしても、私を今騙すことに利が見出せない…それに黄色い布を身につけてない。
確かにこの男は黄巾賊ではないようだ…ただ、まだ断定は出来ないが…。
それにしても、この男の笑顔には優しさがあふれている。まるで慈愛の神のようなその貴き尊さを感じさせる…。
…この笑顔を見ていると、水鏡先生を思い出す…。
この男を信じてみようかな…。
そんなことを思案していると、
「…〜〜…ここじゃなんだし、寿春までついてきてもらってもいいかな?」
話を聞いていなかったが、まぁ目的地は同じだし、また襲われるかもしれないことを考えたら安全だと思ってこの男の提案にのった。
その道中。先ほど助けてもらった女性に改めてさっきの話を聞く。
「私をどうやって見つけたんですか?」
「う〜ん。どうって言われると説明が難しいんですけど〜…聖様は特殊な技能をお持ちで、何でも空を飛ぶ鳥の位置からの視点で物事が見えるらしいのですよ〜。」
「えっ!! …そんなのありえませんです。常軌を逸してるのです!!」
「まぁ、良くも悪くも常識にお頭はとらわれないからな…。」
「…まぁいいのです。では、矢を射掛けたのはどちらだったのですか? 姿が見えなかったのでどちらか分からなかったのですが…。」
「あぁ〜それも聖様ですね〜。」
「あぁそうだな。お頭が君に気付いた後、大体二里半くらい離れたところから男の頭を射抜いたんだ…。まったく…あの弓の正確さ…。恐れ入るよ…。」
その言葉を聞いて心底驚いた。
二里半だって…!! 普通の弓では、どんなに達人が飛ばそうが一里半が限界だろう…。そんな距離を飛ばせる弓矢も凄ければ、その距離から正確な射撃が出来るあの男も凄い…。
私は、あの男が武官としてとてつもない勇将である、と認識させられる形となった。
しかし、この時はまだ知ることが無かったが、この先その男の本当の実力を知ることになる。…がしかしそれはまた別の話…。
寿春に着き、私たちは宿の手配を済ませ、城へと向かうことにした。
その道中先ほどの男と話した。
その男の名は徳種 聖。
先ほどは自分が座っていたこともあり、良く分からなかったのだが、背は高く、肩幅は広く、その大きな背中は、今は亡き父様を彷彿させるようだった。
しかし、この男は先ほどからずっと私を見たまま動かない…。そんなに見られると…少し気恥ずかしい…何とか言うのですよ…。
耐え切れなくなって尋ねる。
「私の顔になにかついてるですか?」
「いやなに、可愛らしいその顔に見惚れちゃって。」
…驚いたのです…。
そんなこと生まれてから男の人に…父様以外に言ってもらったことは無かったのです…。
だから、吃驚したのです…。うん…そう、吃驚したから鼓動が早くなってるに違いないのです…。
ふ〜…一回落ち着くのです。
鼓動は早いながらも、先ほどの男の呟きに答えを返す。
「…可愛らしいですか…。あんまり言われ慣れていない言葉なのです。( //)」
ちょっとそっけなさ過ぎたですかね…。でも、あれ位なら大丈夫だと思うのです。
「もっと、自信を持ったほうがいいと思うよ。諸葛瑾さんは綺麗だし可愛いし、あぁ後は笑った方がもっと可愛いとは思うけどね(にこっ)」
「っ!!! …まぁ、分かったです。(゜゜///)プイッ」
なんだか、こいつが笑いかけるたびに心臓がどくんってなるのです。私は病気になっちゃったのでしょうか…。また、後日医者にでも見てもらうとするのです…。
「話は変わるんだけど、諸葛瑾さんはこれからどうするの?」
「私はもとより、この城で孫堅様に仕えるために来ましたから、城へ仕官の伝をしに行くのです。」
「そう、じゃあ仕官できるといいね!! 応援してるよ。」
「ふんっ!!あなたに応援されても仕方ないのです…。」
「まぁ確かにね。でも、きっと大丈夫だよ。これだけの善政をしてる人なんだ、人を見る目は確かだと思う。諸葛瑾さんは能力がある…。だから、大丈夫だよ!!」
「まっまぁ…能力はあるのです!!あなたとは違うのです!!」
…嘘です…。自信なんて無いのです…。
水鏡塾では勉強は出来る方だったけど、いざ実際にやれと言われて出来るかといえばそれは…。
「…福田か…。懐かしいな…。」
「???」
「いやっ、気にしないでくれ。こっちの話だ…。」
「…変なのです。(くすっ)」
「おっ、笑ったな。」
「!!」
笑った顔を見られてしまったです。うぅ〜何たる不覚…。なんだか妙に恥ずかしいのです。
「なんで隠すの? 笑ってた方が可愛いって言ったじゃん。ねっ、もっと見せてよ!!」
「ば…だっ誰があなたになんか見せるかです!!(プイッ)」
恥ずかしさに耐えられなくて、こいつから視線を外したのです。そうでもしなきゃこの場にいられなかったのです…。
まったく、この男は何者なのですか…。まぁ、悪い男でないことは認めてやるとするのです。
その後無事に孫堅様の下で働けるようになったのです。
しかし、あの男が天の御使いと知ったときは吃驚したのです…。
私が聞いた噂の人よりずいぶんと優しそうな…良い人だったからなのです。
不幸な少女の人生に舞い降りた一人の救世主の存在があったことを、その少女はまだ知らないのだった…。
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 第二章 第四話の外伝になります!! このお話は、第四話を別視点から見てる内容ですね…。 諸葛瑾の過去に迫ります。 彼女の過去には一体何があったのか……。 |
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