真恋姫†夢想 弓史に一生 第二章 第五話 覚悟と実力
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〜聖side〜

 

俺は呉の方々に歓迎された。

 

 

どうやら呉の国でも、天の御使いというのは噂されているようだった。しかし、噂というのは尾ヒレが付き易いもので…。

 

何でも、「天の御使いは猪を生で頭から食らう」とか、「その力は山一つあろうかという大きな岩を片手で砕く」だの、俺はどこぞの超人やねんって突っ込みたくなるような噂だった。

 

 

そんなこともあってか、呉での宴会では孫堅軍の将から「あの噂は本当なのですか?」とか「是非その力を見たい」とか質問攻めで揉みくちゃにされる始末…。

 

しばらく質問攻めにあった後、俺は喧騒の宴からそっと抜け出し、寿春の城壁の上に来ていた。

 

 

漆黒の町並み、闇夜に光る大きな月の光が優しく町を照らす。俺は城壁に腰掛け、足を投げ出した状態でその情景に一思いに耽る。

 

 

なんとなく月の光が優しく感じられるのは、この町が平和だからなのだろう…。いつかはこんな町を作っていかなきゃな…。

 

 

「こ〜ら。宴会の主役がこんなところにおってどうする?」

 

「えっ!!!」

 

「どうした。酒にでも酔って涼みにでも来たか?」

 

「はははっ、まぁそんなところですよ、孫堅様。」

 

「隣に座ってよいか?」

 

「どうぞ。」

 

 

孫堅様は俺の隣に座り、俺に杯を渡した。

 

 

「まぁ、一献どうだ。」

 

「…頂きます。」

 

 

酒をあおる。鼻に甘い香りが抜け、喉を通る感覚が心地良い。

 

 

「さぁ、孫堅様も一杯。」

 

「ん、頂こうか。」

 

 

クイッと杯を傾ける。城壁の上で月明かりの下、酒を飲むその姿は絵になっていた。

 

思わず見とれていると、

 

 

「なんじゃ? なにかついとるか?」

 

「いえ、なんとも絵になってるなと思って。」

 

「ふふふっ、褒めても何も出んぞ。」

 

「期待してませんから…。」

 

「はっはっは。言うのうお主も。」

 

しばらく二人で酒を酌み交わしながら、たわいも無い話をする。ふと、孫堅様は俺を見てこう切り出した。

 

「…お主は…この先、世がどうなると思う?」

 

「…先ほども言ったとおり、正直言って漢王朝はもう長くは無いでしょう…。この世はその余波を受けて乱世に突入、各地の諸侯がその力を示し、世は群雄割拠の時代に突入すると思います…。」

 

「ふっ…はっきりとものを言うわ…。朝廷の力が弱くなったとはいえ、漢王朝は人々の心の拠り所じゃぞ?? それが倒れるとはっきり言ってしまう…お主は凄いな…。」

 

「まぁ、朝廷のお役人さんの前ではなかなか言えないですけどね…。」

 

「私も一応朝廷管轄の役職なのだけれど♪」

 

「あっ!! …ごめんなさい…。」

 

「ふふっ、良いのよ。私も…そう思っているから。」

 

「孫堅様の理想ってなんなんですか?」

 

「私? 私は…この国、呉の民たちが笑って暮らせるような、そんな国を作りたい。」

 

「今も結構笑って暮らせているように思いますが?」

 

「一面だけな…。皆心に不安があるの。近くに他の勢力があれば不安になるのが普通でしょ?」

 

「確かに…。」

 

「その為に孫家は天下統一を果たす。そうしないと本当の意味での平和が来ない気がするから…。」

 

「…天下統一以外にも方法はあると思います。」

 

「あなたの理想ではそうね…。皆が皆手を取り合って…か。それが出来れば苦労は無いのにね…。」

 

「そうですね。」

 

「ねぇ、あなたは一諸侯として立って、私たちとぶつかった時どうするの?」

 

「俺はこうして孫堅様の理想を聞いていますし、理想の向かう先は同じ道な気がします。そんな人とぶつかりたくは無い…それが本音ですね…。」

 

「でも、戦場ではそうはいかないわよ。」

 

「分かってます。でも、少なくとも孫堅様は無駄に人の命を奪ったりはしないと思います。なので、こちらが話し合いたいといえばきっと答えてくれる…そう思ってます。」

 

「あらっ、随分とお高く買われてるのね…。でも、そういう考え嫌いじゃないわよ。」

 

「ありがとうございます。」

 

「分かったわ。私はあなたに協力してあげる。さっきあなたが言ったとおり、私の理想とあなたの理想は繋がってる…。もし、一諸侯になったなら、私たちはあなたに協力するわね。」

 

「ありがとうございます…。英傑と戦なんてしたくないですもん…良かったです…。」

 

「ただし、あなた自身が、掲げたその理想にそぐわないと感じたら、内側からでもあなたを討つわ。」

 

「ははっ…。内側から江東の虎に噛まれたらひとたまりも無いですね…。」

 

「せいぜい虎の扱い方を学ぶことね。」

 

「尽力します、孫堅様。」

 

「(蓮音|れんね)よ」

 

「えっ!? それって真名なんじゃ…。」

 

「同盟相手にはその誠意を見せとかないとね♪」

 

「そうですか、でも今はまだ俺たちのほうが下ですから、蓮音様って呼ばせてもらいますね。」

 

「まぁ、じゃあそういうことにしておく。」

 

「あっ俺は真名が無いんで、呼びたいように呼んでください。」

 

「分かった。じゃあ聖って呼ぶわね。」

 

「その…一つ気になったんですが…。」

 

「ん?? 何??」

 

「喋り方変わってません?」

 

「あぁ〜一応これが普通なのよ…。たまに古っぽい言葉遣いが出るだけ…。こればかりは癖でね…。」

 

「そうなんですか…。じゃあ、気にしないようにします。」

 

「聖はどっちが好き? 古臭い方? それとも普通?」

 

「俺はどっちも好きです…。綺麗な女の人が使うのならどっちでも素敵ですから。」

 

「あらっ、ふふふっ。聖はなかなか大胆ね。呉の王を口説く気?」

 

「えっ!! 別にそんなことしないです。」

 

「あらっ、私は別に良いのよ。」

 

「勘弁してください…。」

 

「ふふふっ。」

 

「おやっ、堅殿ここに居られたか。 お主は…徳種だったか? 堅殿に酒にでもつき合わされたか?」

 

「あらっ、祭じゃない。どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたもあるか。自分たちの王の姿が急に見えなくなったんじゃから探すのが普通じゃろうが。」

 

「あっ、そんなに時間が…。じゃあ、蓮音様。そろそろ戻りましょうか。」

 

「そうね。長居しちゃったわね。」

 

「…堅殿。この者に真名を許したのですか?」

 

「えぇ、この子はこれから私たちの同盟相手になるんだから、その誠意を見せないと、と思ってね♪」

 

「この者にそれだけの価値がございますかな…?」

 

「私たちに利はあっても、少なくとも害にはならない…。」

 

「…ふむ。堅殿がそこまで言うなら、これ以上何も申しますまい…。なら、わしもお主に真名を授けるのが礼儀。わしは姓は黄、名は蓋、字は公覆、真名は祭じゃ。」

 

「よろしくお願いしますね、祭さん。俺は姓は徳種、名は聖。真名は無いんで適当に呼んでください。」

 

「あいわかった。これからよろしく頼むな徳種。 さぁ!! 二人とも宴に戻ろうぞ、主役がいなくては酒も美味しくないじゃろうが。」

 

こうして、宴は夜遅くまで行われた。

 

 

この宴で、孫呉との同盟が口上だがなされた。

 

俺が釣り合える程の君主にならないと、蓮音様や祭さんに申し訳ない…。

 

早く同じ土俵に登れるように頑張ろう…。

 

 

俺は心に誓いを立てて、宛がわれた部屋の寝台に横になった。

 

 

 

翌日、俺は朝早くに目が覚めた。朝靄がかかる廊下を抜けて、中庭に出る。

 

 

呉の英傑と肩を並べる…。その為にも、まずは俺自身が強くならないといけない。

 

そう思い、中庭で朝練をすることにしたのだ。

 

 

まずは、素手での武術の確認をする。空手、合気道、少林寺、太極拳、功夫、テコンドー、ボクシング、ムエタイ、ジークンドー、コマンドサンボ、グレイシー柔術に、わが国伝統の国技“SUMOU”。俺が思いつくだけでこれだけの素手での格闘技がある。まぁ、チート能力の性で全てその道の達人並みに使えるわけだが…。

 

 

さて、実際に素手で戦う場合の戦法を考えておく必要があるだろう…。まず、最初に『静』と『動』に分けること。空手や功夫、テコンドーやボクシングなど自らが仕掛けていく格闘技は『動』の武、逆に合気道や少林寺、太極拳などは相手からの攻撃への対処、つまりは『静』の武となる。

 

 

…となると、相手との間合いさえ開いてれば俺には弓があるので、相手は近接戦闘を仕掛けてくるはず。となれば、基本は『静』の武、カウンター気味に『動』の武を宛がうのが最適だろう。

 

 

…とすると一番相性がいいのはなんだろうか…。

 

 

まず、合気道をベースに考えてみる。仮想相手を目の前に思い描き、そいつが切りかかってくるのを思い浮かべる。

 

 

まず、相手が剣の時…。相手の一撃をかわしながら手を取り、手首を支点にするように投げる。相手は宙で一回転をして地面に落ちる。すると、場所的には蹴りが丁度良いので、踵落としなり廻し蹴りなりで仕留めれそうだ。

 

 

次に、相手が長柄の物の時を考える。基本長柄の物は「突く」か「薙ぐ」に分かれる。突きの動きに合気道を合わせるのはどうやら厳しそうなので、螺旋の動きを基本とする太極拳を主体とする。突きにあわせて体を回転、上手くあわせれば相手の懐にすぐにでも入れる。すると、相手は石突で鳩尾を狙うか長柄を離して素手で戦うかなので、石突で来るときはその動きの力を利用して投げてやれば良い。素手なら素手で臨むところだ。

 

 

問題は…薙ぐときか…。薙ぐ攻撃というのはなかなか止めれるものではないし、下手に受けると吹き飛ばされてしまう…。

 

 

そうすると、薙ぐ動作の寸前の溜めを狙うしかないか…。そこを抑えて肩間接を固めたり、距離が近ければ発勁を用いて相手の鳩尾らへんでも殴ればいいだろう。

 

 

とまぁこんな感じで頭で描きながら体を動かし、朝練を進めていった。この姿を見られているとも知らず…。

 

 

 

〜孫策side〜

 

 

あぁ〜かったるいな〜。なんで朝っぱらから母様に呼び出されなきゃならないのよ…。

 

 

私何かしたっけ…。

 

書簡ほったらかしにして飲みに行ったこと? でも、これは母様もやってたことだし…。

 

じゃあ、戦場で作戦を無視して先陣で出たこと? でも、母様は「孫家の人間なら率先して先陣をきるのだ」とか言ってたからこれも違うわね…。

 

すると、なんなのかしら…。まったく持って予想がつかないわ…。

 

 

でも、不思議と期待感がある。なにか特別な出会いがありそうなそんな予感。

 

 

勿論、勘なんだけどね…。

 

でも、私の勘は外れたことが無い。

 

今日の母様の呼び出しは悪いものではない…。そうじゃなきゃ、わざわざここ寿春まで呼び出すことなんて無いもの。

 

 

一体何が待ってるのかしら…。

 

 

そう思いながら私は城の門をくぐるのだった。

 

 

城の廊下を歩いて中庭へと差し掛かったとき、一人の男の姿が見えた。その男は見慣れない服を着たまま、なにやら見慣れない動きをしている。

 

 

しかし、武に関係する者なら見ればわかる。あれは相当な手練の者。それこそ極みと言っても過言ではない。

 

その動きにぎこちなさは見える(多種を合わせてるのでそう見える)が、その動き一つ一つには隙は見られなく、しっかりと内勁を溜めて放っている一撃一撃は相当な威力とも思える。

 

 

 

私は思わずその姿に見とれていた。何て綺麗な舞を見ているのだろうと…。

 

実際には舞ではなく武術なのであるが、あまりにも華麗すぎて人を倒す行為には見えない。そして、同時にこの男に興味を抱く。

 

 

 

「…少しばかりご挨拶しましょうか…。」

 

 

 

傍に落ちていた木刀に手を掛け、ゆっくりと男に近付く。口元には妖絶な微笑を浮かべて。さて、私を楽しませて頂戴ね…。

 

 

 

〜聖side〜

 

大方の動きの確認が終わったところで少し休憩を取ろうと気を緩ませる。

 

しかし、これが不味かった…。

 

 

「ヒュッ―――ガスッ!!」

 

「ぐっ…!!!」

 

 

 

左肩に走る痛み、重い鈍器で殴られたような…そんな痛み…。

 

すぐに、木刀を握った女性による一撃だと分かる。何とか距離を保って構えなおし、内勁を練り上げる。

 

これは…刺客か何かか??

 

でも、刺客なら木刀ではなく真剣なはず…。それにこの容姿…どことなく蓮音様に似ている…??

 

 

「あらっ、不意打ち過ぎたかしら。じゃあ次は確り打っていくから、ちゃんと対応してね。」

 

 

女性はそう言うと、木刀を片手で持ちながら驚くべき速さでかけて来た。

 

俺はその動きを追うことが出来ず、その女性の一撃を腹に受けてそこで意識を手放した。

 

完全に意識が飛ぶ前に上から、「あっちゃ〜まさかあたるなんて思ってなかったからな〜…。おぉ〜い、大丈夫??おぉ〜い。」と俺を呼ぶ声が聞こえたが、瞼はそのまま閉じることとなった。

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。

前話は、外伝をお書きしました。

どうですかね??諸葛瑾さんの過去話に焦点を当ててます。

「何だよ、結局ニコポじゃなぇか!!」って言いたい人もいるかと思いますが…まだポとはいえないと思いますよ…。その気持ちに気付いてないのですから…。

でもまぁ、きっかけにはなってしまってるので残念ではありますが…。それ以外になると完全魅了の意味がなくなっちゃう気がするんですよね…。

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