IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
マドカを織斑家に迎え入れることになった翌日。
冬休み初日であるこの日は雲一つない晴天である。
そんな青空の下、街を歩く二人がいた。
「ねえねえお兄ちゃん、あとどれくらいで着くの?」
「ん? んー・・・もう少しかな」
一夏とマドカの二人である。一夏はマドカを家族にするにあたって、家のことを教えてやらなければと考え、その旨を千冬に告げると、『好きにしろ』と了承をうけた。
(そう言えば、『準備は済ませておく』って千冬姉は言ってたけど・・・何のことだろ?)
一夏はマドカのいる医療室に向かおうとした時に言われた千冬の言葉が気になっていた。
そんな一夏を、先行くマドカの明るい声が呼んだ。
「お兄ちゃーん! はやくはやくー!」
「おう、今行く」
一夏はやや小走りでマドカに追いついた。
「楽しみだなー。ふふっ♪」
「おいおい、家はどこにも行かないって」
笑顔のマドカに一夏も笑って言った。
(それにしても、同じ人間とは思えないな・・・・・)
一夏はマドカの笑顔を見ながら考えた。
自分と瑛斗を誕生日に襲ったマドカ。自分を誘拐してまで千冬と戦ったマドカ。
そのマドカが、目の前で屈託のない笑顔を浮かべている。しかも自分の妹となって。
一夏は嬉しいような、照れくさいような、何とも言い難い想いを胸に抱いた。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
そんな二人を、後ろからじっと見つめる者がこちらも同じく二人いた。
銀髪眼帯少女のラウラと、そのラウラに嫁にすると宣言された瑛斗である。
二人とも制服ではなく目立たない色の私服を着こみ、真っ黒なサングラスを掛け、電柱の陰に立って、手にはアンパンを持っている。
「・・・・・・・・瑛斗」
ラウラが瑛斗に話かけた。
「なんだ?」
「私たちは、なぜこんなことをしているんだ・・・・・?」
「なんでってお前、俺が『一夏がマドカを家に連れて行くんだって』って言ったら、『私も行く』って言って聞かなかったのはお前だろ?」
「それはそうだが、何も私は尾行したいと言ったわけでは・・・・・・」
「じゃあ今からアイツらのとこに行くか? それこそKYってやつじゃないか? 兄妹水入らずを邪魔したらいけねえよ」
「む・・・むぅ・・・・・・・」
ラウラは黙り込んでしまった。
「・・・・・・・・・・・・・」
そんなラウラの耳元で、瑛斗は呟いた。
「・・・まだ、認めたくないんだろ? マドカのことを」
「っ!」
図星をつかれて顔を上げるラウラ。
「俺だって、箒達だってマドカを完全に信じたわけじゃねえさ。だけどよ、それでもアイツを受け入れるって言った千冬さんと一夏の気を汲んでやろうぜ?」
「・・・お前たちも、疑っていたのか?」
「まあな。ま、それもすぐに確かめられるさ。さ、アイツらを見失う前に俺達も行こうぜ」
瑛斗はそう言って別の電柱の影に移動した。
「ま、待て・・・・・!」
ラウラも慌ててそれに着いて行く。
しかし二人とも気づいていない。周囲から不思議そうに見られていることを。
二人とも真っ黒なサングラスを掛け、手にはアンパンを持ち、あまつさえ一人は綺麗な銀髪なのだ。注目されるのも無理はないはずなのだが、それに気付かないあたり、二人はそれほどまでにマドカと一夏に注意を注いでいるのだろう。
・・・・・傍から見れば珍妙極まりないのだが。
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一夏とマドカがお出かけ | ||
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