魔法少女が許されるのは15歳までだと思うのだが 無印B |
前回の出来事
「ナンタラカンタラパトローナム!」
シュイーン。封印できました。スイーツ(笑)
さて、冗談はほどほどにして、本編でございます。
その後、子供が思わず目を瞑りたくなるようなR15残虐ショーが行われ……るようなことはなく、無事ジュエルシードを封印することができました。
「ふむ。なかなかどうして、面白いものだな。魔法というものは」
偉そうな口でそう評する子供は世界中探してもこやつだけでしょう。
「あの……」
と、ここで半ば置いてけぼりを食っていたフェレット(らしき生物)が口を開きました。
そこでなのはは我に返り、自分の失態を呪いたくなりました。
(しまった。いつもの調子で言ってしまった)
この少女、どうもテンションが上がると自我を抑えきれないようで、時折本当の自分が表に出てしまう様子でした。こう書くと厨二病のように聞こえなくもないですね。
(いかんな。ここで始末しておくべきか……)
助けておきながらトドメを指す側に速攻で回ろうとするあたり相変わらずでした。
(いや待て。この不思議能力といい先程の謎の生き物といい、生かしておけば後々何らかの形で役立つやもしれん。それに邪魔になれば排除すれば良いだけのこと。フフフ私にかかれば赤子の手を捻るようなものよ……)
あくどい顔で笑うのでした。
勿論、フェレットから見えない位置で。
「あ、あの。危ないところを助けてくれて、ありがとう……」
外見的には幼い子供を、自分のせいで危ない目に合わせたことを申し訳なく思っているらしく、しゅんとした雰囲気が漂ってきます。
普通の人間なら誰だってそう思うでしょう。
普通の人間なら誰でもそう考えるでしょう。
普通の人間でしたら誰もが認めるでしょう。
重要なことなので三度言いました。
ところが、ここにいるのは普通とは紙一重どころか壁100重はある少女ですので、汗で濡れた前髪をはらいながら、落ち着かせるように言いました。
「何、気にすることはない。自分の力至らなさ加減を嘆く必要はない。私は寛大だよ? 庶民が危機に瀕したならば助太刀するくらいの心は持ち合わせている。代価は要るが」
子供とは思えない発言でしたがこれはジャブにも満たないのでした。
そしてこの上から目線です。この少女の場合女王様気質どころの騒ぎではないでしょう。
「なんだか君、変わってるね……」
少女の芸風にフェレットは驚き半分呆れ交じりに言いますが、なのははしれっとした顔で言ってのけます。
「人は皆違うものだろう?」
いきなり真理を持ちだしました。
「いずれにせよ、君には迷惑をかけてしまった。申し訳ない……」
フェレットは素直に謝罪しますが、
「何、気にすることは無い。私は多分、平気だよ」
と、屈託なく笑うのでした。
命の危険に晒されても、決して咎めません。フェレットは救いを見出した敬虔な信者のような輝いた眼で見つめましたが、
「迷惑料を払ってくれれば尚素晴らしいがね」
台無しでした。
すっかり帰りが遅くなってしまい、フェレットに「家族が心配するから説明は後で」と言われ、止むを得ず服の中に収納しました。
なのはが急いで自宅に帰ると、仁王立ちする恭也と美由希に出迎えられました。
「なのは、一体どk「なのは! 今何時だと思ってるんだ! 兄ちゃんがどれだけ心配したと思っている!」…………」
何か言いかけた美由希をどかして恭也が怒鳴りました。近所迷惑になるので玄関で大声出すのは止めましょう。
「お兄ちゃん……ごめんなさい」
涙目上目遣いで言うのですから、シスコン道にこの人ありと言わせしめた恭也は一瞬で態度を豹変させました。
「いいんだ気にするな! お前が無事なら俺は何も求めない……!」
そう言いつつ全力でハグしようと構えたので、横から飛来した苛立ち全開の美由希によるシャイニングウィザードで一撃フィニッシュされました。
後方で展開される残虐ショーを無視して、怯えるユーノを服の中に隠したまま自室へ向かいます。美由希に後で言及されるでしょうが、適当に言い訳でもすればいいと考えていました。
自分の部屋に着くと、やっと一息つけました。
「今日は本当にありがとう、助かったよ。僕、ユーノ=スクライアって言うんだ。宜しくね」
「うむ。私は高町なのはだ」
腕組んでニヤリとしながら名乗る姿は凄まじく不気味でした。
「して、ユーノとやら。説明くらいはしてもらえるのだろうね?」
ビクッ、と身体を震わせるユーノ。それはそうでしょう。あれだけ現実離れした状況に置かれて、事情を知らないまま終わろうなどとはムシが良すぎます。
そして、その状況下でなのはが巻き込まれる原因ともなったユーノは、
「ご、ごめん! 今は何もできないけれど、必ず元の生活を送れるよう約束するから、」
「否、それはどうでもいい」
え? と小首を傾げるユーノは、直後、見ました。
なのはの口の端がつり上がり、口が三日月を描いたのを。
―――後に彼はこう語る。ああ、これが魔王その人なんだ、と
「私の大事な(平和な生活とか貴重な時間を一分一秒でも割いたとかそういった)ものを奪ったのはこの際置いておこう。だが、私のあられもない(元の性分を晒した)姿を見て置いて、それに関して何の詫びもせずしかも謝礼を確約できんとは……貴様どういう了見かね? 慰謝料を請求してもよろしいかね? ん?」
「い、慰謝料って……」
「うむ。―――十億万円だ」
頭の悪い数字でした。
「冗談だ。安心したまえ、子供から金などとらんよ。後々しかるべき機関に要求する腹積もりだ」
安堵の息を吐きかけたユーノですが、今のなのはの発言に聞き流せない単語があることに気づきました。
「君……僕が人間だって、知ってたの?」
「何、君の言動を考えれば辿り着く結論だろうよ。君は人間と同程度の倫理観や思考を持ち合わせている。だから私の服の中でそわそわしていたし、子供が夜までに帰らないと家族に心配されるという結果も予想できていた。後者は人間特有の考え方だ。フェレットに人間並みの知識と思考を授けても、そういった考え方ができるとは思い難いし、加えて前者は私を意識している証拠に他ならない。人間の女に興味を抱くのは同じ人間の男だけということだよ。更には君の声音・話し方・慌て加減などを加味すれば、ほら、人間の子供としか思えないだろう? 魔法とは実に便利なものだね」
大人並みの推理にユーノは唖然としています。『見た目は子供、頭脳は大人』……というより、『見た目は詐欺師、頭脳は外道』と言っても差し支えない気がします。
というか、あれだけのことがあったというのにこの落ち着き払いっぷりは尋常ではないでしょう。これも今更でしたね。今更すぎて驚きが薄れているのは良くない兆候です。
「君、本当に子供……?」
「さてね」
その誤魔化し方からして子供ではないです。そんな子供いて欲しくないです。
しかし現実はハードでした。さようなら理想、こんにちは現実。
「さて、落ち着いたところで話を聞かせてもらおうか。魔法というモノについて、ね」
一時間後。
「ふむ。成程、大まかなところは把握できた。つまるところ、君はその願いを叶えるとされるジュエルシードの発見者の一人として、それの回収が責務と判断し、単身異世界にやって来た、と」
話を要約すると、ユーノは頷きました。
見た目はフェレットですが、責任感溢れる少年のようで、なのはは好感を抱きます。
とはいえ、彼も子供のようですし、ここまで自分のせいと後ろ向きになるのはどうかと思います。常に前向きに爆走している輩がここにいますが。
「今の僕にほとんど力は無い……だから、申し訳ないけれど、君の力を借りたい。君には魔導師としての才能がある。その力を、どうか貸してくれないかな?」
ユーノの懇願に対し、なのははさわやかな笑みをもって答えます。
「断固辞退する」
さわやかに拒否しました。
さもありなん。命の危険に何度も晒されるなど、幾らなのはと言えども安請け合いはできません。
(報酬が出るなら応相談だが)
眼が『$』になっていました。最悪でした。
案の定、顔を暗くするユーノでしたが、しかし続くなのはの言葉に目を丸くします。
「とはいえ、世界の危機とやらに直面するやもしれんのだろう? 現実的な話ではないが、一笑に伏して良い話でもない。何故なら先程私はファンタジーな要素をこの目で見届けたのだから。君の話から察するに、事は重大かつ危険なものだね? ならばそれを解決できる存在が必要で、尚且つそれが私だというならば、不本意ではあるが協力せざるを得ないだろうよ」
非常に回りくどい言い方ですが、つまり、少女はこう言っているも同然でした。
『そこまで言うなら、アンタに力を貸してあげるわ! かっ、勘違いしないでよね! 世界が滅んじゃったら大変なだけなんだから!』
と、いうことでした。
ハイハイツンデレ乙という言葉が弾幕のように飛んできそうな勢いでした。
「いいのかい?」
「良いも悪いもない。やらねばならぬ事情がある。ならばやるだけさ」
フッと不敵に笑うなのはの横顔は頼りがいのあるものでしたが、
「世界の救世主か……フフフ、良い響きだね? 私こそ真の支配者……!」
邪気百パーセントオーバーでした。
その呟きはユーノに聞こえなかったようで、彼は申し訳なさそうに、しかしどこか嬉しそうにお礼を言いました。
夜も遅く、そろそろ寝ようかと話が落ち着いたところで、ユーノはなのはに聞きました。
「ところで、君は、一体何者なんだい? 僕の話を聞いても差ほど驚いた風でもないし、子供にしては非常に達観した物言いだ。明らかに普通じゃないけど……」
抱いて当然な問いではありましたが、なのはは悲しげに首を振りました。
「それを一番知りたいのは私だよ」
―――何せ、記憶がないものでね。
続くその言葉は、とても言葉では言い表せない感情が込められていました。
「ところで話が変わるがユーノ君。君は男なのだろう? ならば私と半ば同棲するのは些か問題ではないかね?」
「あ」
翌日から、魔法の特訓が始まりました。
これから怪我をするかもしれない状況に追い込まれるかもしれないので、少しでも身の安全を確保するために、魔法を使いこなせるようにしよう、というのが、ユーノの意見でした。
なのはも同意を示し、明日から早速やろうと決まり、今に至ります。
昼間は学校があり、家の門限もあるため、早朝と夕方に訓練を行う方針となりました。といっても、なのはは5時には起床する(肉体的には)健康優良児だったので、あまり問題はありませんでした。中身に関しては触れないのが肝要です。
魔法の扱い方について、ユーノから手ほどきを受けるなのはですが、その顔はお世辞にも明るいとは言えません。元々無表情だからじゃねーかとかそういう意味ではありません。慣れない魔法、知らない技術に、さしものなのはも戸惑い気味でした。
「ふむ。幾ら有能な私とはいえ、初めて見聞きしたものだ。そう容易くは扱えまい」
「あはは、そうだね」
などと二人そろって気楽なことに笑っておりましたが、なのはが適当に指パッチンすると、突然光が生じ、
「あ」
『それでは次のニュースです。本日未明、海鳴市の市民公園にて、原因不明の爆発事故が発生しました。爆発の跡は半径5メートルにも及び、警察は不法投棄されていた前時代の不発弾によるものと推測しておりますが、破片の一つも見つかっておらず……』
さらに翌日。
事情があって公園は使えなくなったので、なのはの家から正反対の方向にある山の中で特訓することになりました。
出会った当初からなのはに驚異的な魔力が秘められていることを察していたユーノですが、ここまで才能豊かとは思っていなかったようでした。
「まずは、魔力を上手くコントロールすることから始めよう」
真面目さ加減大爆発な顔で言いました。
下手すると暴発して自分も盛大に巻き込まれる可能性があるから、という意見は否定できませんでした。
「うむ。やはり己を律することは重要だね。若きに負ける未熟な精神、ここで鍛え直さねば」
などという台詞を9歳児が言う姿はツッコミどころ満載でした。
で。
特訓が本格的に開始されたのは良いのですが、ユーノとて半人前の魔導師ですので、教え方はお世辞にも上手とは言えません。
そのため、
「信じるんだ、自分の心を! 為すべきことを為すつもりで! あ、ダメだよなのは! そこはもうちょっとグイッと押し込むような感覚で! 優しく! 時に激しく! 緩急をつけて抉りこむように……そう、それだよ! イイよなのは! その調子でイくんだ……!」
「もうちょっと具体的に言いたまえ……!」
突っ込みを入れた瞬間、制御を手放してしまいました。
「あ」
『続きまして、今朝のニュースです。海鳴市の××山付近で、再び爆発事故が発生しました。現場には人間がいた痕跡が残っており、焼け焦げた土の上には人型がありました。体躯は小柄でまるで少女のようにも見えますが、警察は今回の事件の被害者と断定し、また証言を求めて捜索を続けて―――』
「ちょっとなのは、どうしたのよ? 頭焦げてるじゃない」
「ドーナツ作りに失敗したの〜」
本格的な特訓は夕方からとなりました。
説明 | ||
「世界を救って……」「無理に決まってるではないか」しかし目覚めると見知らぬ世界、見知らぬ身体。異なる世界から意識を飛ばされ、しかも魔法少女の体に乗り移った主人公!失った記憶と肉体と尊厳、所持するものは知識のみ!諦めろ、魔法少女が許されるのは子供のうちだけだ……!「ダメだよなのは!魔法使って暴力沙汰はいけない……!」やかましい。「では行こう。まずは話し合いだ」ただし肉体言語的な意味も含めて。 ※注意:この作品では主人公を筆頭に原作キャラが一人残らず人格或いは外見の改変を受けており変態の巣窟と化しております。あらかじめご了承ください。 |
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