魔法戦記リリカルなのは 二人の転生者の願い 無印編
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第一章 無印編

第二十一話「Resuscitation dead」

 

 

「か、母さん・・・」

 

「プ、レシ・・・ア・・・」

 

二人の言葉は崩れゆく庭園の中に響き渡る。

そこにあるのは虚無感だけだ。

 

「あ、あ、母さん・・・・・・」

 

ガクリ、と手と膝をつき大粒の涙を流し続けるフェイト。

せっかく愛する母親の本当に気持ちを知ることができたのに助けられなかった。

その現実が彼女の胸の中に渦まいていた・・・。

 

「そ、そんな・・・そんな・・・」

 

そして彩斗は膝をつき、ただ唖然としていた。

この世界に来て、プレシアを助けると言いながら結局は助けられなかった。

約束は必ず守ると豪語しながら、結局守れなかった。

 

そんな自分への激しい怒りと悲しみ、絶望感が彼の心を支配していく・・・。

 

それは彼が決してしたくはなかったことをさせようとしていた・・・。

 

「と、とりあえずここは危険だ!

 なのは達は成功したようだし、僕たちもアースラに戻るぞ!!!!」

 

クロノが二人にそう言うが、二人はほとんど聞いていなかった。

そこへ爆発音とともに天井から桜色の光の柱が出てきた・・・。

 

それは最上階で封印していたなのはの魔力光だ。

 

「あっちも来たようだ。エイミィ!準備は!?」

 

「もう少し、あと一分ほど!」

 

「早めに頼むぞ!!さぁ二人とも・・・彩斗・・・?」

 

そういっていたときにクロノが気づく。

彩斗の様子がおかしい。

助けられなかった・・・という思いから来る虚無感だけではなかった。

 

そこにいたのは・・・

 

「フフフ、ハハハハハ!!!!」

 

突然高笑いをする彩斗。

クロノはただ唖然としていた。

どこからどう見ても今の彼は異常だった。

 

「モウイイヤ・・・ツカオウ・・・プレシアガタスケラレナイナラ・・・」

 

「な、何をする気だ彩斗!?」

 

 おかしい本当に彩斗なのか!?

 

「アリシアヲソセイサセテ・・・ソレデマンゾクシテヤル・・・」

 

 死者の蘇生!?そんなことができるわけ・・・

 

そう思っていたクロノだがふと周りを見てみた。

さきほどまでジュエルシードの暴走で

崩れかかっていた庭園が一時的に静かになっていた。

 

そして上空には彩斗を中心にして9つのジュエルシードが均等に並び、

一定のスピードで回転していた。

 

彩斗の周りに規則正しく風が流れる。

 

そして彩斗の口から放たれる言葉。

 

「アル・メロ・フィー・ラー・マフ・・・」

 

それは本人はまったく知らないが、別の世界では精霊語と呼ばれる特別な言葉。

混沌なる世界を纏める詠唱。

 

「ハルーーーーートッ!!!!」

 

そして家族を意味する言葉とともに彼の周りが輝き始める。

その輝きは一点に集まると一つの光の球体となり

近くにいるアリシアの体へと吸い込まれていった。

 

 

パキンッパキンッ!!

 

 

そしてエネルギーを過剰に消耗したジュエルシード8個は

甲高い音を上げて砕け散った。

 

「・・・が、は・・・・・・」

 

「!!彩斗!!!おい、彩斗!!!」

 

突然倒れる彩斗。

クロノは急いで彼の体を支える。

意識が完全になく、自身で重心を操作できていなく予想以上に重たい体だった。

 

「・・・皆大丈夫!!?」

 

「フェイトッ!!!!」

 

そこへなのは達が合流してきた。

 

「あぁ二人とも・・・一応大丈夫だ。

 彩斗が気絶しているが、大丈夫だ・・・」

 

「えっ?彩斗くんが?どうして?」

 

「とりあえず説明は後だ!エイミィ!」

 

「了解!!」

 

その声とともにその場にいた全員とアリシアがアースラへと転送された。

 

 

―アースラ医務室

 

 

「・・・・・・ここは・・・?」

 

その声とともに目覚める彩斗・・・

ふと意識を傾けるとなにやら重たいものがあるようだった。

体を置きあげてその対象をみる。

 

そこにいたのは・・・

 

「・・・むにゃ・・・・・・」

 

「フェイト・・・?」

 

金髪ツインテールの女の子・・・

そして病院にいる患者がつけるような白い服を着ていた。

そんな子はフェイトだけだと考えていたが・・・

 

「いや、髪留めが違う・・・?」

 

フェイトが着けているリボンは黒色なのだが、

今ここにいる彼女がつけているリボンは緑色だった。

 

確か・・・緑色のリボンを着けていたのは・・・

 

そうだ!!アリシアだ!!

 

そして先ほどまで自分がしていた行動を思い出した。

アリシアの意思を尊重すると言いながら、自分の自己満足のために

神の願いの最後に書いた力・・・

 

 さらに一生で一度だけアリシア・テスタロッサを蘇生できる能力

 

を使用した自分を・・・

 

神は神自身が蘇生させる願いはだめだと言ったが、

自分自身が蘇生させることができる能力はだめとは言わなかった。

だから駄目元で頼んだ能力。

もしアリシアと話せて彼女自身が行きたがってるなら使ってあげたかった。

ただそのためだけに頼んだ能力・・・

 

それを自己満足のために使ってしまった自分自身に彼は今更ながら腹を立てていた。

 

「・・・う、う〜ん・・・」

 

そんなことを思っていると彼女「アリシア」が起きる。

そして第一声

 

「あっ起きたんだ。おはようお兄ちゃん!」

 

・・・What's!?

 

「あぁ、うん、とりあえずおはよう。」

 

「どうしたの?そんな鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔して?」

 

「いや、いきなり初めて会う人から「お兄ちゃん」なんて言われたら驚くぞ?」

 

仮にアリシアが五歳児の体のままだったらここまで驚かなかった。

だが今の彼女は先ほどフェイトと勘違いしたことからわかる通り、

身長はほとんどフェイトと変わっていなかった。

 

「えっ?・・・あ、あれ?そういえば私が会った彩斗、もっと大きかったような・・・?」

 

「俺と会った・・・?」

 

「あっうん、私がまだ生きていたときにね。

 未来から彩斗が来てくれて一緒に遊んだことがあるんだ。」

 

「はは、またまた突拍子もない・・・」

 

そんなことがあるわけ・・・

あっそういえば・・・前にプレシアさんと会ったとき・・・

 

「っ!あなたは九十九彩斗!!」

「・・・?そうですが・・・。」

「・・・いえ、なんでもないわ・・・あなたなんでここにいるの?」

 

前々から初めて会ったにしては反応がおかしいと疑問に思っていたが、

もしアリシアの言うとおりなら辻褄が合う。

 

 少なくとも"今"の俺ではないが、"未来"の俺が過去のプレシアさんと会っていた。

 

こう考えればあの反応も納得できる。

 

「あ〜うん、どうやら本当みたい・・・少なくとも俺じゃないけど」

 

「ふ〜ん、やっぱり今の彩斗じゃないんだ・・・」

 

「はは、それはそれとしてアリシア・・・」

 

彩斗は真剣な顔になってアリシアに顔を向けて・・・

 

「ごめん・・・」

 

ただシンプルに謝った。

 

「・・・それは何に対して・・・?」

 

「一つ目はプレシアさんを助けられなかったこと・・・」

 

人差し指を立てながらそういう。

 

「そして二つ目は・・・お前を勝手に生き返らせたこと・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

アリシアはその言葉を静かに聴いていた。

 

「お前が望んでいたかどうかは問題じゃない。

 ただお前の意思を尊重せずに・・・俺の自己満足で蘇生させたんだ・・・。

 だから・・・ごめん・・・」

 

そういってベッドの上で頭を下げた。

アリシアはその頭をなでて・・・

 

「ううん、いいよ。彩斗・・・

 私は生き返りたかったから・・・二十年間・・・ずっとさびしかった・・・」

 

「えっ・・・?」

 

その言葉に頭を上げる彩斗。

アリシアは言葉を続ける。

 

「私ね・・・あの事故で死んだ後・・・信じてもらえないかもしれないけど

 ・・・所謂幽霊になったみたいでずっと庭園をさまよっていたんだ・・・。

 肉体はあそこにあったから・・・」

 

「・・・それで・・・?」

 

「聞こえるし、見える。でも触((さわ))れない、話せない。

 目の前に大好きな母さんが悲しんでいるのに・・・

 

 11年くらいずっと一人だった。

 母さんが見ていた本とかデータを少し覗いたりするくらいしかできなかった。

 

 そして母さんはフェイトを作った・・・

 最初は母さんの愛を受けているフェイトに嫉妬していたけど・・・

 リニスやアルフと一緒に幸せにいて、綺麗な笑顔を見たら

 もうそういう感情がどうでも良くなったんだ。

 

 だからフェイトを見守って行こうって目標はできた・・・

 

 だけどある日を境に母さんの様子が変わった。

 あんなに愛していたフェイトに対して虐待をし始めたの・・・」

 

「あの薬の副作用・・・そのせいでプレシアさんはフェイトを

 アリシアの紛い物かなんかのように見ていたんだろうな。」

 

「そう、そんな母さんやフェイトを見てとても悲しかった。

 でも私には何もできない。もし生き返ったら今すぐにでも

 二人を助けたいと思っていた・・・。あの時は夢物語だったけどね」

 

「・・・・・・今の目標は・・・?」

 

「・・・母さんが消えちゃった以上私は残ったフェイトのために生きたい。

 あの子の姉としてね・・・だから彩斗・・・ありがとう・・・」

 

「ふふ・・・そうか・・・その言葉で大分救われたよ・・・」

 

「それじゃあ彩斗が起きたことだし、クロスケ君呼んでくるね」

 

「あぁ頼む・・・」

 

そしてアリシアは病室を出て行った・・・。

 

 

数分後

 

 

「とりあえず現状を報告しに来た・・・」

 

「あぁよろしく」

 

「まず時の庭園だが・・・あの後崩壊して虚数空間の中に消えていった。

 その後・・・一応調査したが・・・プレシア・テスタロッサは見つからなかった」

 

「・・・そうか・・・」

 

 予想はしていたが・・・やっぱり堪えるものがある。

 

「そして転送でつれてきたアリシアが突然目を開いたから驚いたさ。

 確かにジュエルシード8つを使って君が蘇生させようとしていたが、

 本当に生き返るとはな・・・おかげで今書類作成でアースラは大忙しさ・・・」

 

「悪いな・・・あのときはホントどうかしてた・・・」

 

「君が気にすることじゃない・・・過ぎたことだ・・・」

 

「それでも・・・ごめん・・・クロノ・・・」

 

ベッドの上で頭を下げる彩斗。

クロノはそれに答えた。

 

「どういう意味だ・・・?」

 

「予知夢で知ってたのに・・・

 父親をなくしたお前の目の前で死者蘇生なんてやったこと・・・」

 

彩斗はため息を吐き、続ける。

 

「お前が命をどう思ってるかは知らないけど・・・

 まるで電池を換えるみたいにパッと生き返らせた

 俺に不快感を感じてないわけないだろ?」

 

「・・・どうしてそう思うんだ?」

 

「・・・? 思ってないのか?」

 

「思っていないといえばうそになるがな・・・

 正直、過ぎてしまったことだし、

 お前だって悪気があったわけじゃないだろ?」

 

「ま、まぁ・・・」

 

「だからいいさ。君が今回してくれた働きは意外と大きいんだ。

 何せ地上本部がバックについてくれたからな」

 

「?地上本部が?なんで?」

 

「それは母さ・・・艦長が秘密といっていたからわからないが・・・」

 

「そうか・・・ありがとう・・・」

 

「・・・それじゃあ。またな・・・」

 

そういってクロノは退出した。

 

死者蘇生・・・ここまで心苦しいものだったとはね・・・。

俺は・・・浅はかだったのかな・・・

 

 

説明
今回はタイトルの通り「死者蘇生」です。
作者はこういう蘇生に関しては基本的に作風によると考えている中立派です。

ただ今回は・・・キャラがほしかっただけなんですけどね・・・
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