とある神父の布教活動 第1話 |
『Love&Peace』
正直、このご時世にこの言葉を有言実行しようとするのは不可能に近い。口ではいくらでも言えるものも、いざ行動に移すと全く効果が見られないのが現実だ。
だが、ある一人の神父がまさにこの言葉を有言実行しようとしつつあった。
〜アダムside〜
とある欧州の町の教会、神父が大勢の人に囲まれていた。
「神父様!本当に行ってしまうんですか!?」
「はい…残念ですが……」
すると多くの人が絶望に満ちた様な顔になる。
「なんで…?なんでこの町から出て行くの……?」
人混みから一人の少女が目に涙を溜めながら問いただす。
「私にはやらなければならない使命があります。あなた方も分かっている筈です……」
「でも……でもぉ………」
少女は涙を堪え切れず泣き出してしまう。
「ご安心を!あなた方の心に『Love&Peace』の言葉がある限り、私との絆は不滅…そう!永遠なのです!!」
「「「「「神父様!!!」」」」」
神父の言葉に多くの人が歓声をあげる。
「私はこれから慈愛に満ちた素晴らしき世界にする為に旅に出ます!その間、教会の留守をお頼みしたい」
「任せてください!神父様がいない間、俺達が神父様代行だ!!」
うん……!彼らなら必ずやこの教会を守ってくれるでしょう!!
「それではまた逢う日まで!皆さんに……神のご加護があらんことを!!」
「さよなら神父様ー!!」
「向こうでも頑張ってくださーい!」
「どうか神のご加護をー!!」
神父は人々の声援を背中で受け号泣しながら町から去って行った。
神父は巨大なゲートの前にいた。
『学園都市』
多くの能力者が集まるその場所は、『Love&Peace』と言う言葉は全くの不釣り合いな場所であった。
「ここが学園都市…」
能力者がはびこるこの街は今や無法地帯に近い……。
「だがそれではいけない!いけないんだ!!」
突然、大声を出した神父に周囲の人々が不思議そうに眺める。
「こお無法地帯を救うしかない!そう!『Love&Peace』で!!」
無法地帯までとはいかないが、確かに学園都市は決して治安の良い所ではなかった。能力を使い犯罪に手を染める者やスキルアウトが街に溢れ返っていたのだ。
「さて、そうと決まれば入るとしますか」
ON/OFFの切り換えが素晴らしく早い神父は、ゲート付近にいた警備員に近づく。
「すみません、この中に入りたいのですが…」
「…もしかして宗教関係の方ですか?」
「まぁ、そのようなものです」
すると、警備員は何を思ったのか神父を小馬鹿にする様に苦笑しだす。
「この学園都市は科学が発達した街ですよ。宗教を広めるにはオススメしませんよ?」
むっ…、私はそこら辺にいる宗教を広める人達と一緒ではないのに……。
「そもそも、何か身分を証明出来る物がありませんと中には……」
「では、これで」
神父が警備員にズィッと何かを差し出す。
『お絵かき帳 4年2組 ((膝裏痒之助|ひざうらかゆのすけ))』
「これで良いですね?では失礼…」
「待ちやがれ」
警備員が神父の頭をわし掴みにする。
「あたたた…。何がいけないのでしょうか?」
「これただのお絵かき帳ですよね?というかあなたの名前…、珍しいってレベルじゃありませんね」
「あっ、それペンネームです」
「ペンネームかい!!」
しかし、私のお絵かき帳がダメとなると…。
「じゃあ…これで」
『TSU〇AYAの会員カード』
「うん、アンタ馬鹿だろ」
「何故です?」
「いや理解出来るだろ!?常識的に考えて!!」
警備員の堪忍袋の緒が切れたのか地団駄を踏み出す。
「やれやれ…仕方ないですねぇ……」
「何で呆れてんの!?こっちが呆れたいんだけど!!」
神父はまたも警備員に何かを突き出す。
「大型自動車免許です。これで良いでしょう?」
「(何で大型自動車免許?……まぁ、いいや。)お待ちください。少しご確認を」
警備員はトランシーバーを取り出し通話を始める。
「――――――はい…はい。それで名前が………。」
警備員はもう一度、免許証に目を移す。
「名前はアダム=マスタング。男性です」
しばし時間が経った後、警備員がアダムと言う名前の神父に近寄る。
「結構ですよ、行っていいです。(早く行ってくれ!!)」
「ありがとうございます。お手数おかけしました」
アダムは警備員に礼を言うと、開いたゲートを通って行く。
「さーて…張り切っていきましょう!!」
アダムはそう言うと、ニッコリとした満面の笑みで声を張り上げた。
説明 | ||
『Love&Peace』。この言葉を信じ続ける神父がいた。 だが、実はこの神父はアホで理不尽な人だった!? この物語は、そんな神父が学園都市に愛と平和の大切さを説くものである!! |
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