ジョニィの奇妙なトータルイクリプス
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我々の正史とは異なり、宇宙からの侵略者『BETA』が存在した世界での出来事である。

初めてBETAが地球を襲ったのは1973年。

それ以来、BETAは全てを蹂躙し、全てを食らい尽くし、アジア圏を中心として展開していった。

人類も必死に抵抗するも虚しく、地球圏の3割は既にBETAが跋扈している世の中になってしまっている。

 

そして時は加速し、1998年。

日本にもBETAの魔の手が伸びようとしていた・・・・・・。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

それは京都の街中に位置する、暗く、血の臭いと異臭が充満するビルの中。

その臭いの原因は、大きく設けられたロビーにあった。

ロビーでは、赤い独特の体色をした身長5〜6mはあるだろうBETAが、一カ所に集まって何かに群がっている。

それぞれ大きな手で一つの真っ白な『戦術機』を、巨体に見合った怪力で引きちぎっては口に運び、バリバリと歯で磨り潰しながら食べる。

遂にBETAの手が機体の腹部に位置するコックピットの外殻に手を付け、引きちぎり、中身を露わにする。

そのコックピットには、怪我によって動くこともままならない少女、山城 上総がおり、彼女は外にいるもう一人の少女、篁 唯衣に叫ぶ。

 

「撃ってええええええぇぇぇ!!撃ってよ唯依イイイイィィィッ!!!!」

 

それは『BETAを撃って助けて』というのではなく、『喰われる前に自分を撃って殺せ』という、明治時代における、武士道そのものに通ずる心からの叫びだった。

親友である篁は戸惑ったが、山城の覚悟を受け取り、涙を流しながらも震える手で銃を構える。

断腸の思いで銃口の狙いをつけ、引き金を――――――

 

 

 

カツッカツッカツッ......

 

 

 

「スローダンサーとの復帰レースだってのに、厄介ごとはもううんざりだよなァ・・・・・・。ニョホ」

 

 

篁が引き金を引こうとした瞬間・・・・・・、バギバギバギと、BETAが戦術機の破片をちぎって口に運ぶ中、確かに聞こえたのだ。

馬の蹄の音を、男性の笑い声を。

 

バッ!

 

篁が振り返ると、茶色い斑模様の白い馬に跨った青年が、両手を前に突き出す格好でBETAを睨んでいた。

青年の服は白を基調とした長袖の服に青いラインが走り、帽子には同じく白を基調に青い星がちりばめられている。

どこからどう見ても軍の人間ではない。

しかし、軍人では無いと分かっても、篁は反射的に『青年に対して無礼な行動をしてはいけない』と悟った。

数分とは言え、死線をくぐり抜けた篁の背中に寒気が走るほど、青年のその瞳には明確なる殺意、『漆黒の炎』がゆらゆらと燃えていたからだ・・・・・・。

 

 

白馬に乗った青年の名は、ジョニィ・ジョースター。

SBR(スティール・ボール・ラン)という、馬に乗ってアメリカ大陸を横断するレースに参加し、親友と力を合わせて数々の死地をくぐり抜けてきた歴戦の猛者だ。

しかし、今まで様々な現実離れした出来事を目の当たりにし、その度に気転を利かせては何度も窮地を潜り抜けてきたジョニィだが、復帰を懸けた乗馬レースの最中、血生臭い無機質な空間に飛ばされたと理解するにはあまりにも突発過ぎ、思考がピタッと止まってしまった。

だが、そこは流石のジョニィ、思考が止まったのは本当に『一瞬』だった。

即座に自分自身に『これはスタンド攻撃による現象だ』と納得させる理由を作り出し、生物の気配がする方に馬を走らせた。

 

結果、この修羅場に居合わせる。

しかし、突如として迷い込んだジョニィだが、巨大な化け物に臆することなく、相変わらず両手を・・・・・・いや、『両手の指』をBETAに向けたままだ。

 

「なるほど、敵はあいつらか。そこの女の子の頭が『黄金の比率』で助かったよ・・・・・・。ACT4」

 

バシュゥ

 

篁の髪を掠めて揺らし、青年の指から何かが発射された。

確かに何かが発射されたのは感じ取れたが、それは小さく、視認するのは困難を超えて無理だった。

 

バシュバシュバシュゥッ!

 

続けざまに数発、青年の指先から発射される『何か』。

 

「あ・・・・・・貴男は一体・・・・・・」

 

ジョニィから見れば、『目の前の妙な服装をした少女が複数の怪物相手に銃を構えている』。(本当はコックピットにいる山城に対してだったが)

それだけの判断材料で、この場の『敵』は誰かを理解し、牙(タスク)ACT4をBETA一体につき一発ずつ撃ち込んだのだ。

 

(ハッ!山城さん!)

 

篁は場違いな青年と馬に目を奪われていたが、親友の覚悟を決めた最後の願いを聞き届ける為にも、銃を構えて戦術機のコックピットに狙いをつける。

 

だが、ここで違和感に気づくべきだった。

先ほどまで、バリバリバリと咀嚼する大きな音がしていたのにも関わらず、今は馬の嘶きと蹄の音しかしていない。

あまりにも『静かすぎた』。

さっきまでの、戦術機の破片を食らっていたBETAが、今すぐにでもコックピットに居る山城に手をかける!

・・・・・・という緊迫した空気すら、いつの間にか薄れている。

BETAはそこにまだ居たが、一匹がこちらに赤い目を向けているのを除いて、どれもこれも『動いていない』。

あるBETAは破片を手にとったまま、あるBETAは戦術機を壊そうとしたまま・・・・・・。

 

(どうして・・・・・・)

 

BETAの不動に訝しんだ次の瞬間

 

スパアアァァン!!

 

視界の端に捉えていたBETAが一瞬の内に、フッと消えた。

正確には、体の至る所が厨房に積み上げられた分厚い皿の様に変化し、楕円形となった肉体は方々へと散り去った。

 

スパアアァァン!スパアァァン!

 

一体、また一体と消えていく。

それは視界から消えたのではなく、本当に、体液も肉片も残さずその場から忽然と姿を消した。

 

「嘘・・・・・・なんで・・・・・・?」

「僕が黄金の回転で無限の穴の中に引きずり込んだ。『重力』で保っていた肉体は、バラバラになる以外に道は無い・・・・・・」

 

  ド

    ド

    ド

   ド

 ド

   ド

     ド

 

(無限の回転に重力!?何を言っているのこの男は・・・・・・)

 

篁は消えたBETAを探し、銃を構えながらキョロキョロと周囲を警戒する。

そんな篁を尻目に、ジョニィは馬から降りてため息をつく。

 

「ハァ・・・・・・。Dioじゃあないが探すだけ無駄だよ、無駄」

「な、何言ってるんですか!さっきまでそこに居たんですよ!きっとどこかに・・・・・・」

 

ジョニィは消えたBETAの行方など意に介せず、残ったBETA一体と対峙する。

 

「10発、一体残ったか。SBRでも奇妙な体験をしてきたが、エイリアンみたいな敵と対峙するのは初めてだ。こいつらはスタンドか?」

 

一つの指につき一つの爪。

爪の威力は、ACT1→ACT2の順に強くなっていき、強くなっていくにつれてリロードの時間もかかる。(ACT3とACT4のリロード時間はACT2と同じ)

ACT1ならば撃ち放題だが威力は低い、ACT2はリロード時間が長いが威力は高い。

 

先の先制射撃で射出した爪はACT4。

両手の爪のリロード時間は数十秒はかかるはずだ。

 

だが、ジョニィは両手の爪を撃ち尽くしたというのに、極めて冷静だった。(脚の指からも牙は射出できるが、靴が破けるのでジョニィは本気でヤバイと感じた時にしか使わない)

つまり今は、脚の爪を使う必要も無いくらいに余裕だという証拠だ。

ジョニィは腰のホルスターの留め金をパチンとはずし、六本の線に六角形の溝が掘られた愛用の『鉄球』を取り出して身構える。

鉄球は、地面と平行になったジョニィの掌の下で・・・・・・、なんとも不思議だが、鉄球は地面に落ちる事無く、ジョニィの『掌の下』で回転していた。

まるで皮膚に吸い付くように・・・・・・。

 

(ヴィジョン・・・・・・これも一種のスタンドの形だとでも言うのか?)

 

「グオオオオォォォォォ!!!」

 

先に動いたのはBETAだった。

全身が赤く染まっているBETAは、体の色よりも更に深い赤い色をした目をぎらつかせ、大きな口を開けて唸りをあげる。

仲間が消えたというのにも一切躊躇せずに、食事タイムを邪魔したジョニィに巨体には似付かわしくないスピードで接近していく。

瞬間、ジョニィは考えを捨て、本能で行動をとった。

 

(いいや違う、アレはヴィジョンなんかじゃあないッ・・・・・・!アレは・・・・・・)

 

「Dioの恐竜(ダイナソー)みたいに複数いる・・・・・・生物だッ!『鉄球』ッ!」

 

ドシュウウゥゥゥ!

 

シルシルシルと彼の掌で回っていた鉄球は綺麗な回転を描き

 

ドゴォ!

 

ゆうに20mは離れているであろう、左足の脹脛に吸い込まれるように命中した!

 

「凄いコントロール・・・・・・!けど、そんなんじゃ無駄です!早く逃げて!」

 

銃を撃ちながら、女の子がジョニィに逃げるよう促す。

確かにパッと見ダメージを与えるには、衝撃による威力が物足りなさ過ぎだ。

派手な音こそしたものの、命中した鉄球は走っているBETAの脹脛に張り付き、シュルシュルシュル......と回転しているだけで、BETAは痛がるそぶりも見せない。

だが、ジョニィは少女の声など耳に入っていなかったのか、どこか涼しげな表情を浮かべ腰のホルスターから二個目の鉄球を取り出し、既に投げるモーションに入っていた。

 

「オラァッ!」

 

ドシュウウゥゥゥ!!

 

投擲した鉄球は、またしてもBETAに命中。

今度は右足の脹脛にシュルシュル......と張り付いた。

ジョニィが放った鉄球は、どちらも走る怪物の脹脛から離れない。

そう、この二球とも地面から足に伝わる衝撃をものともせずに、張り付いているのだ。

 

「無駄・・・・・・?本当にそうかな。僕にはとても有効に見えるんだけど、今放った二つの鉄球」

「何を言って・・・・・・!」

 

少女は言葉を噤んだ。

盾になってでも、一般人であるジョニィを守ろうと前に出ようとした瞬間、少女は見たのだ。

ジョニィに迫っているBETAの足が、何かに掬われたように突然浮き上がった!

 

当然、スピードをつけていたBETAは、慣性の法則に従ってスピードが乗った巨体がフワッと宙に浮き、ジョニィを通り越して仰向けにズドオオォォンと土煙を上げて倒れる。

BETAが滑稽に転ぶ様を目の当たりにした篁は、驚愕の表情でジョニィを見る。

 

「ニョホ」

 

当のジョニィは癖のある独特の笑いをし

 

パシイィィン

 

フリスビーの如く持ち主へ帰ってきた鉄球を、さも当たり前の様にキャッチした。

 

「い、一体何を・・・・・・」

「奴が何者かは見当もつかないが、ACT4の重力が適用され、体液が流れて動く以上生物なのだろう?だったら、重力に抵抗し体を支える『筋肉』と『骨』が存在するはずだ。でも骨は無さそうなんだよなァ〜。あるのは筋肉だけか?この怪物には」

 

「――――グオオオオオオォォォォォ」

 

一人でブツブツと自答を唱えるジョニィだが、その声はBETAのうなり声に掻き消される。

BETAはまだ立ち上がれないのか、体を捻って首だけをこちらに向けていた。

自答を止め、ジョニィは瞳に漆黒の炎を揺らしながら、鉄球を腰のホルスターにシュタンとしまい、こちらを睨んでいるBETAの眉間に人差し指を突きつけた。

ジョニィの人差し指の爪は、まるで秋風に揺れる木の葉のように綺麗に円を描いて回転している。

リロードが完了した合図だ。

 

「そして、牙(タスク)のリロードは完了した。ACT2!」

 

ドバァッ!

 

指の先から一つの爪が発射され

 

スパアアァァァン!

 

見事、BETAの眉間に命中し、そこから液体がドバァーと流れ出す。

その液体の量はおびただしく、五百円玉ほどの小さな穴からコロラド川のように流れ続け、BETAの咆吼はそのまま断末魔となり、その場へ倒れ伏した。

 

「死因は大量出血か?急所の一撃か?この怪物の脳が頭部にあるとは到底思えないが・・・・・・。どっちにしろ、僕は医者じゃないから俄知識に違いない」

「い、一体・・・・・・何が起こったの・・・・・・?」

 

篁は現実に着いていけなくなった。

無理もない。

馬と青年が現れてから、BETAがあれよあれよという間に姿を消して行き、目の前の青年が放った鉄球と正体不明な攻撃によって、拳銃程度では死なない硬度の皮膚をあっさりと貫いてBETAが死んだのだ。

 

当のジョニィは「よいしょ」と馬に乗り、手綱を操りながら篁に近づいていく。

 

「ジャイロみたいに馬に乗りながら鉄球を投げるのは難しい、年季の差だなァ〜。ところで君」

「は、ひゃい!」

 

ボーっと突っ立っていた篁はジョニィに声をかけられ、ビクッと体を強ばらせて直立不動のポーズになる。

 

「あれは『人間』かな?僕の目が確かなら女の子に見えるんだけどさ」

 

ジョニィは、山城が搭乗している半壊状態の戦術機の露見しているコックピットを指さし、質問する。

露見しているコックピットでは、山城が頭から血を流し、全身はガクガクと恐怖で震えていた。

が、頭から流れる血で左目は開けないが、残った右目でジョニィに視線を注いでいる。

故に、ジョニィは山城に気づいた。

 

「や、山城さん!」

 

ハッと篁は我に返り、手や足をフルに使って瓦礫を駆け上る。

体の所々に擦り傷を創りながらも、やっと親友の元へと辿り着いた。

篁は山城の頭の血をスーツの袖で拭いながら、生死を彷徨いかけの山城に呼びかける。

 

「山城さん!私が分かる?山城さん!」

 

だが、山城の視線はジョニィに釘付け。

篁の呼びかけに応じず、ぼそりと呟いた。

 

 

 

「白馬の・・・・・・王子様・・・・・・」

 

 

 

 

説明
ジョジョ7部24巻後のジョニィと、マブラヴ オルタネイティブ トータル・イクリプスの単発クロスオーバーです。

鬱をなんとか紛らわしてぇな・・・・・・って思って・・・・・・。
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タグ
トータル・イクリプス クロスオーバー ジョジョ 

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