IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第二十二話 〜依頼の行方〜 |
会議室でクロウが口を開く。
「事情は分かった。再び聞くがそれであんたは俺に何をして欲しい?」
「護衛の依頼だ。正確にはシャルロットの護衛を頼みたいところなんだ」
「一つ疑問なんだが、シャルルは今やIS学園の生徒だぞ?もうあんたが手を回さなくても大丈夫じゃないのか?」
クロウが当たり前の疑問をぶつけるがその返答は信じられないものだった。
「いや、それがそうでもないんだ。エーデルはまだ、シャルロットを狙っている」
「まさか・・・ここはIS学園だぞ?そこに何かしら手を出したら一気に人生が終わる」
クロウはIS学園に入ってまだ日が浅いがある程度理解していた。IS学園は全世界から、多数の人間が集まっている、国際的にも重要な施設である。そのような場所に手を出せば、社会的信用が一気に失われる。到底正気の沙汰とは思えない判断だった。
「エーデルはアクシオンの本社ではそれなりの地位にいてね。独立部隊、俗に言う暗部を動かす事も出来るんだ。それを使って強行的に襲わないとも言い切れない。そんな事をされたら僕だけでは守り切れない。だから君に頼むんだ」
「だが、可能性としては限りなく低い」
「それでもだ。僕は、打てる手は全て打っておきたいんだ」
「・・・」
全てを話したカルロスは苦渋を舐めた様な顔をしている。本当はこんな依頼したいハズがないのに、この様な事をしなければならない程、シャルロットの命は危ういのだ。
「クロウ、決めてくれ。この依頼、受けるか受けないか」
「・・・こちらから一つ条件を出してもらってもいいか?」
「何だい?できる限り答えよう」
「報酬の件だ。報酬は成功報酬にしてくれ。内容は俺が決める。それでいいか?」
「ああ、構わない。こちらも無理を承知で頼んでみたんだ。それくらいはお安いご用さ」
「ならOKだ。この依頼、受けるぜ」
その言葉を聞くと、カルロスは喜びの表情を見せる。
「ありがとう、感謝する」
「気にすんな。俺としてはルームメイトを守りたいだけなんだからよ。さて、戻っていいか、千冬?」
「ああ、いいぞ。私はもう少し話す事があるので残るがな」
「じゃあな」
そう言うと、クロウは扉をあけ、外に出ていく。しばらくすると、ひとりごとのように静かに千冬が問いかける。
「・・・あいつはどうだ?貴方の眼鏡に叶う様な人間だったか?」
「優しい人間だな。初対面の僕の頼みをああも簡単に引き受けてしまうとは」
「いや、それだけではないと思うぞ。あいつは身近な人間が死ぬことを極端に恐れている。」
「そうか、シャルロットもその中に入っていると言うことか」
「あいつは口では女嫌いを公言しているが、人嫌いではないからな。シャルロット・デュノアという一人の人間が死ぬことが嫌なんだろう」
「それでは私はこれで」
「そうか、そちらは真夜中だったな。すまない、長話をしてしまって」
「いや、構わないよ。こちらは依頼する側だしね。それじゃあ」
と言い残し、モニターの電源が切れた。
〜フランス・カルロス邸〜
カルロスは静かに自室のパソコンの電源を落とした。
「ふぅ・・・」
カルロスは考えていた。彼、クロウ・ブルーストについて。最初、千冬から彼の件を頼まれた時、僕は信じられなかった。しかし、彼の目を見た瞬間、そんな考えはどこかに飛んでいった。少年には似つかわしくない目、言葉の端々に現れる感情。それらは成熟しきった大人の物だった。
「彼になら任せられるかな・・・」
とカルロスが寝る準備をしようと椅子から立ち上がりかけると背後から声が。
「あなた・・・」
カルロスは驚いて、後ろを振り向く。今は深夜。自分以外起きている人間などいるはずが無かった。
「君か・・・エーデル」
部屋の扉の前には、全ての元凶である寝巻き姿の妻、エーデルがいた。見つかった、と思ったカルロスはバレないように携帯電話を操作する。
「話は聞きました。ねえ、あんな女の事、もう忘れてくださりません?私がいるじゃありませんか」
「君には悪いが、シャルロットの事だけは譲れない」
「そう、じゃあ・・・殺すしかないわね!」
いきなり彼女の形相が変わったかと思うと、後ろから屈強な男たちが何人か出てき、カルロスを拘束する。
「待て、エーデル!何をする気だ!?」
「もちろん、あの小娘を殺しに。貴方はここで待っていて下さい。・・・社長を別室へ」
その言葉と共に、カルロスは連れて行かれる。
「やめろ、やめてくれ!エーデル!!」
「あなたも手を回したようだけど、ここまでね。護衛なんて無駄よ。一介の学生にそんな事できるはずがないでしょう」
その言葉と共に、カルロスは連行される。
「(まだだ、ブルースト君がいればまだ!!)」
カルロスは先程会話していた。少年の皮をかぶった大人に願いを託すのだった。
〜IS学園・寮〜
クロウは一言で言うと、寝不足だった。なにせ口では男、と言っていても隣で寝ているのは紛れも無く女性。しかも護衛対象にまでなってしまったのだから、気を抜くことなんてできやしない。まあ、それだけではないのだが。結果、クロウの目の下には濃いくまが出来ていた。
「ク、クロウ。大丈夫?」
「ああ、平気だ・・。それより早く教室に行かなきゃな。織斑先生の雷がおちるぜ」
「うん、急ごう!」
部屋から飛び出し、教室へと急ぐ二人。チャイムが鳴るギリギリで何とか到着し、席に着く事が出来た。
「よお、みんな・・・」
「おはよう・・・ってどうしたんだクロウ?そのくま?」
「気にすんな、ちょっとな・・・」
その時、教室のドアが開き、千冬と麻耶が入ってくる。いつもならここで((SHR|ショートホームルーム))を始めるはずなのだが、今日はいつもと違った。
「さて、((SHR|ショートホームルーム))を始めるが、クロウ・ブルースト、ちょっと来い。山田先生、後はお願いします」
そう言うと千冬は一人だけ廊下に出てしまった。一夏とセシリアは席に着かず、そのまま小声で話し始める。
「(クロウ、何かやったのか?)」
「(いや、全く覚えがない)」
「(とにかく早く行った方がよろしいと思いますが・・・)」
「(そうだな・・・)」
クロウは重い体を動かしながら、教室から出る。千冬が無言で歩き出すのでクロウは大人しくついて行き、昨日カルロスと話した会議室に着いた。千冬の顔を見ると、眉を寄せ、厳しい顔をしていた。こころなしか焦っているようにも見える。
「どうしたんだ?千冬」
「クロウ、マズイ事になった。昨晩、フランスからアクシオンの独立部隊、バーグラー隊が出撃したとの情報が入った」
その言葉を聞いた瞬間、クロウは一気に目が覚めた。
「何だと!本当か!?」
「カルロスからの緊急コールが私の所に来た、それに加えて彼の直属の部下に確認を取った。今夜、襲撃してくるぞ」
「くそっ、まさかここまで行動が早いとはな。それで、数は?」
「一小隊三機編成の二小隊で来るらしい」
「六機もだと!フランスのIS部隊はこんな簡単に動かせるのかよ!?」
クロウが詰問する。六機と聞くと少ない、と感じるかもしれないが、ISの数は全部で467機。その内の六機となれば話は違ってくる。
「いや、エーデルとかいう女の力だろう。どうするクロウ?さすがにこれは早すぎるぞ」
「・・・やるしかないか」
「待てクロウ!事情を話せば一夏たちも協力してくれる!」
「それはダメだ。あいつらにこんな裏社会の事に首を突っ込ませるわけにはいかねえ。それに相手は軍人なんだ。容赦なく殺しに来るだろう。一夏に怪我させちまったら本末転倒だしな」
「・・・勝算はあるのか?」
千冬が心配そうにクロウに尋ねると、クロウは難しい顔で返答する。
「無くはない。昨日の夜から考えていた案がある」
そう、くまの原因はシャルルの存在だけではなく、クロウが作戦を考えていた、というのもあったのだ。
「勝算は確かにある。だがそれにはお前の協力が必要だ」
「何?」
「手伝ってもらうぞ。千冬」
その日は夜まで作戦を立てるクロウと千冬の姿があった。
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第二十二話です。 | ||
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