IS インフィニット・ストラトス 〜転入生は女嫌い!?〜 第二十三話 〜真夜中の悪夢〜 |
〜夜〜
IS学園全体が静かに眠っている。明かりは道に付いている街灯だけ、という状態。そのIS学園に六機の黒いISが静かに潜入していた。
「各員、状況報告」
「異常ありません」
「異常無し」
「第二小隊、全機異常ありません」
「よし、それぞれ低空飛行にて、目標ポイントまで移動開始」
B-1が報告を求めると、B-4までの全員が返答する。目の前の林の上空を飛行していく六機の黒いIS。それはアクシオンの暗部の実行部隊が使用するラファール・リヴァイブカスタムVR
バージョン
バーグラーであった。無言だった部隊にB-3の愚痴が流れる。
「しっかし今回の任務ってなんなんですか、隊長?少女一人殺害してこい、だなんて」
「無駄口を叩かないで、B-3、隠密作戦中よ。ターゲットには護衛もいるという情報もあるんだから」
「でも、B-3の意見も正しいと思います。余りにもおかしいですよ」
B-2がたしなめるがB-4も同感の意を示す。B-1はその意見を却下すると進み続ける。
「・・私たちは命令を実行する。それだけでいいの」
互いに意見を言い合っていた、その時
「きゃあ!!」
B-6がいきなり((被弾|・・))した。その衝撃でB-6は隊列から離れていく。
「B-6!どうしたの!?」
B-4がB-6に声を上げる。B-6はまだ無事の様だ。
「被弾しました!これは・・きゃあ!!」
「B-6!!くそっ、ターゲットの護衛か!?」
B-6と呼ばれた女性は林の中に落下していく。B-2が落下地点を見れば、ISを強制解除されて、気を失っているB-6の姿があった。無事のようだが、こちらに向かって放たれてくる弾丸の嵐はいまだやまない。
「全機、互いをカバーしつつ、速やかに目標ポイントまで移動!急げ!!」
「隊長、敵のスナイパーの位置が特定できません!!」
B-1が部隊に指示を出すも、敵の位置が把握できないので隊員に一層の不安が伝播する。
「くっ、各機警戒を怠るな!」
「B、B-1!左手の林からISの反応が!!」
「何っ!」
B-1がそちらを見ると、ものすごい速さで切りかかってくるラファール・リヴィブが一機。近接用のブレードを展開しつつ、切りかかってくる。
「こいつは私が相手をする!お前たちは早く行け!」
「分かりました!」
「きゃあああ!!」
その瞬間、B-5に火線が命中し、B-5も林の中へ落下していく。残り四機となった部隊は混乱に陥る。
「B-5!?」
「なんてこと!?B-5も落とされるなんて、スナイパーは化け物クラスなの!?」
「とにかく急げ!足を止めたら狙われるぞ!!」
「ああ、急がないとっ!?」
しかし彼女たちの前には、いつの間にか、一機のISがいた。バイザーに光が反射していて、顔は良く見えないが銀色のISは月の光で煌めいていて、とても綺麗だった。
「まさか、このISが!?」
「全機構えろ!!」
「さあ、やろうか!」
〜クロウside・数分前〜
クロウは林の中で、ステルスモードで待機していた。ブラスタのステルス機能は、機動兵器だったころに一回使ってから一度も使用したことがないので、上手く起動するかどうか不安だったがそれは杞憂だったようだ。そこに千冬からの通信が入る。
≪クロウ、そろそろ来るぞ≫
≪よし、準備をしてくれ。俺が狙撃を始めて、ある程度部隊が進行したら、突撃を頼む。そのあとは一対一でいい。周りは俺が引き受ける≫
≪・・・本当にそれでいいのか?お前が一対多になるが≫
≪俺にはブラスタがいるから大丈夫だ。いざって時にはスフィアも使う。あまり使いたくはないけどな・・・。むしろお前の方こそ気をつけろよ?ISが普通のラファール・リヴァイブじゃあ、あいつらのカスタム機には及ばないからな。最悪時間稼ぎでもいい≫
クロウの立てた作戦というのは、二人による同時攻撃だった。まず、千冬が教師権限を使いIS学園のレーダーで敵機を捕捉。クロウと千冬は敵の進路上に潜伏し、十分な距離になったら、クロウが狙撃を開始。敵部隊が混乱している隙をついて、千冬が教員用のラファール・リヴァイブを使用し、側面から攻撃を仕掛けるという簡単だが効果的な物だ。問題があるとすれば、千冬の方に敵が多く集まり、一対多になる可能性だが、敵部隊の狙いがシャルロットである以上、敵は部隊の足を止める様な事はしないだろう、とクロウは読んでいた。
≪・・分かった。だが十分に気をつけろよ?≫
≪ああ、こんな所で死ぬつもりはないし、依頼はきっちり完遂する。じゃあ交信終了≫
そういってクロウは千冬との通信を切る。
「さて、やるか・・。あいつらならギタギタにしても問題ないからな」
そう、クロウは仲間を侮辱された時と同様に本気で怒っていた。少女の殺害という作戦を何の葛藤も無く遂行する部隊。それはかつて、暗い過去の自分自身とかぶって見えたからである。
「狙い打つぜ、俺も・・!」
そう言ってクロウはスナイパーモードのEAGLEを構え、狙撃を開始した。
〜現在〜
「さあ、やろうか!」
クロウが姿を表した瞬間、三機のISが散開し、銃撃を仕掛けてくる。さすがのクロウも全部の攻撃を回避しきる事は出来なかった。そのまま銃撃戦が数分続く。
「(くそっ!使うしかないか!!)来い、SPIGOT!!」
その言葉と共に、クロウの周囲に四つの((戦輪|チャクラム))が出現する。
「フォーメーション、ショットガン!!」
その瞬間、SPIGOTは高速で動き回り敵に向かって斬撃を仕掛ける。それぞれ一機につき一つが攻撃したのだが、落とせたのは一機だけだった。
「(マジかよ!?意外と粘るな!)残り二機!」
クロウはEAGLEで残りの二機へと攻撃を再会する、SPIGOTは収納せず、出したままにしている。少しでも威嚇としての効果を狙っていたのだが、効果はあったらしく、敵は踏み込んでこなかった。そのまま数分撃ち合いが続いた。
「(このままじゃ、ジリ貧だ。しょうがねえか)いくぜ、スフィア起動!」
その時、千冬からの通信が入ってきた。
≪おいクロウ!それはまずいんじゃないのか!?≫
「全開では発動しない!せいぜい半分位だ!!こっちは気にせずそっちを頼むぜ!!」
その言葉と共に、胸のクリスタルから光が溢れ出し、ブラスタの機動力が格段に上がる。
「スパイカー、セット!!」
クロウがEAGLEの弾倉を取り替え、銃剣用のエネルギーパックにする。そしてEAGLEの先端からエネルギーの刃が。
「レディ・ゴー!!」
SPIGOTで牽制しつつ、突撃。見事相手の腹部にスパイカーが突き刺さった。
「まだだ!!」
クロウはそのまま、地上へと向かう。相手を大地に打ち付け、完全に気を失わせる。
「さて、最後はあんたか」
〜B-2side〜
「B-3!!」
B-3は完全に無力化されたようだ。絶対防御は発動しているので、怪我は無いようだが。
「(くそっ!あいつは本当の化け物か!?)」
まず最初の攻撃、撃ち合い自体は少しこちらが押していた。しかし敵が四つの円状の物体を呼び出してから、戦局は一変した。あの円による斬撃でB-4は戦闘不能。そのあとの銃撃戦も、円の動きを警戒していたせいで、攻めきる事が出来なかった。
「(かくなる上は隊長と合流して・・)なっ!?」
いつの間にか、敵は距離を取っていた。何故このタイミングで私にとって有利な距離を取るのか。その答えは次の瞬間明らかになった。敵が何かを叫ぶと、円が敵の前に一列に並び、円の中心部分からレーザーが飛び出してきた。
「くうっ!!!」
かろうじて避けたが敵の姿を見失ってしまった。しかし私の下から声が。
「消えろ、VXブレイザー!!」
「きゃあああ!!!」
私の意識はそこで閉ざされた。
〜クロウside〜
「終わったか・・・。一応手加減はしておいたから、死にはしないはずなんだが」
スフィアの発動を終了させ、撃墜した三機のISの様子を見ると、全員見事に気絶していた。クロウは千冬の事が気になり、連絡してみる。
「千冬、そっちは大丈夫か?」
≪ク(ザザッ)か?こち(ザザッ)い状況だ。い(ザザッ)・・・≫
「おい、千冬?応答しろ!!(マズイ、何かが起きていやがる!!)」
クロウが再び通信をつなごうとすると、アリーナの方から火柱が上がる。何かがあった事を悟り、クロウは全速力でアリーナに向かう。
「千冬っ!!」
〜アリーナ〜
クロウが急行するとアリーナには二機のISがいた。もちろん一機は千冬のラファール・リヴァイブ。しかしもう一機は明らかに先程まで戦っていたリヴァイブのカスタム機とは違っていた。まず目を引くのは、両腕に付けられている大型のドリル。背中には一対の大きな無機的な翼。さらには胸の部分には獅子が象ってあり、全体的に禍々しさをイメージさせるISだった。その前には千冬がISを纏った状態で倒れている。
「千冬っ!!」
「そいつは私に逆らった。だから相応の報いを与えてやったのよ」
正体不明のISが言葉を発する。千冬はクロウの姿を認めると、辛そうに声を出す。
「ク、クロウ。逃げろ・・」
「馬鹿言うんじゃねえ!まずはお前を逃がす!!」
「ほう、次はお前が相手か?」
クロウは千冬を抱きかかえながらゆっくりと後退していく。
「ク、クロウ。一機は倒したんだが、あのISがやってきて・・・。すまない、お前に頼ってもらって、嬉しかったのに、役に立てないで・・・」
千冬はとぎれとぎれになりつつも何とか言葉を紡ぐ。
「いいから寝てろ。後は俺が引き受ける。」
「気を付けろ。あいつは強い・・」
そこまで言うと、千冬は気を失ってしまった様で、目を閉じ、四肢から力が抜けた。クロウは千冬を安全なピット内に寝かせると、再びアリーナに降り立つ。
「そんで、あんたは誰だ?」
「貴方がクロウ・ブルーストね?あの人が雇った護衛の」
「・・その話を知ってるってことは、あんたデュノアの関係者か?」
「そう、私はエーデル・デュノア。あの人の妻よ」
「そうか・・あんたがあの・・。んでここまで来た目的は?」
「ふふ、言わなくてもわかるでしょう?」
その言葉と共に、エーデルは両手に付いているドリルを構える。
「そうだな、何より俺の仲間を傷つけて、タダで帰す訳にはいかねえ!!」
クロウもEAGLEとバンカーをエーデルに向ける。二人の目に宿っているのは相手を倒す、ただそれだけの感情だった。
「じゃあ、やりましょうか!」
「勝つのは俺だ!クソ女!!」
その言葉と共に、戦いのゴングが鳴った。
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第二十三話です。 | ||
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