いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した
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第三十一話 いいかげんにしなさい!

 

 

 「・・・」

 

 …ふう、これでよくわかったわ。

 彼は限りなくシロ。つまり次元犯罪者でもなんでもない。ただの一般市民というには持つ力が強大過ぎるけど危険な思考。犯罪者とは程遠い温厚。それでいながら殆ど何も望まない。

 無欲。悪く言えば都合の良い人。といったところか…。

 

 安心でありながら危険でもある。

 

 もし彼のような人が味方になれば心強い。しかし、敵に回れば厄介なものは無い。

 彼は人質になった味方は可能な限り救おうと奮闘するだろう。

 しかし、敵になり、捕虜になれば躊躇わず自分に命を捨てるだろう。味方に被害が回らないように。そして、そのような性格に漬け込み犯罪組織に目をつけられたら…。

 あのガンレオンの戦闘能力。陸戦専用とはかなりのものだし、マグナモードを使えば飛行も可能。あの圧倒的戦闘能力。どこの組織でも引く手あまたになるだろう。

 

「…はぁ」

 

 クロウ君が言うにはブラスタの中にあったデータで危険な存在と定義付けられていた。だが、それはクロウ君本人によって書き換えることは出来る。

 彼に救われた管理局員の証言からも沢高志という人物は犯罪・危険とは程遠いと思われる。極めつけは先程まで見ていた医療ルームでの動向。彼の人格は世捨て人にも似ている。

 

 …欲しい。

 彼の戦闘能力を今回の闇の書事件に当てれば一気に解決に向かうだろう。

 だけど、それにはプレシアの問題も片づけないといけない。今は本局に問い合わせている。が、プレシア自身も言ったように彼女はすでに私達の知っている魔導師プレシア・テスタロッサではない。本人がそうだと言ってもあちらが受け取ってくれるかどうか…。

 

 「…リンディさん。あの相談したいことがあるんですが」

 

 私が指令室でプレシア達の様子を覗っているとなのはさんが話しかけてきた。

 

 「あら、なにかしら?」

 

 「沢君は逮捕されるんですか?その、デバイスの不法所持とか、フェイトちゃんのお母さんやアリシアちゃんのことも聞きたいんです。これからどうなるか?」

 

 「…少なくても今すぐに開放することは出来ません」

 

 私は目の前の女の子に正直に答えることにした。

 

 「そんなっ」

 

 「だって、彼は大怪我をしているからね♪」

 

 「…ふぇ?」

 

 「ふふふ♪」

 

 「リンディさん」

 

 …ごめんなさい。なのはさん。

 今の私の動作で私は高志君を治療するためにアースラから出れないと受け取ったかもしれないけど、本当は違う。

 彼が危険な人物じゃないと判断しても私達に協力してくれるように取り次ぐまでは・そして、彼の身柄を把握しするまではこのアースラから出すわけにはいかない。

 待機状態のガンレオンに出来ることなら発信機。最悪自爆装置をつけることも検討している。できることならそんなことはしたくはないのだけれど…。

 

 「あ、あのそれじゃあいつお話できますか?」

 

 「そうねぇ。あと一時間くらいかしら。彼への点滴もその時には終わるでしょうし…。その前になのはさん、シャワーでも浴びてきなさい髪の毛に砂漠の砂がついてぱさぱさよ」

 

 私はなのはさんの頭を撫でながらそう伝えると彼女は顔を赤くしながらその場を後にした。

 

 「…さて、クロウ君。聞こえる?」

 

 私はモニターを医療ルームからクロウ君がいる待機室に回線を繋げた。

 

 「なんですか?」

 

 「今から一時間後に私となのはさんとフェイトさん。そして貴方とで。プレシアとアリシアさん。そして、タカ君とで話し合いがしたいの。それまでそこで((待機|・・))していてもらえる」

 

 「…わかりました」

 

 これはクロウ君に遠まわしにそこから動くな。と言っているようなものだ。そして、それもクロウ君には伝わったのか、彼も黙って頷いた。

 正直に言うとクロウ君はガンレオン。タカシ君の事について私達に伝えた情報とはほぼ真逆とも思える情報を渡している。

 そして、私達の表情。いや、感情に合わせて対応を変えている動作もしている。

 彼の言う『揺れる天秤』というレアスキル。

 そして、アサキムと名乗るあの黒い鎧。

 クロウ君を『揺れる天秤』。タカシ君を『傷だらけの獅子』と呼んでいた。その事について、プレシア。もしくはタカシ君が知っているかもしれない。

 私はそう考えながらクロウ君に繋いでいた回線を閉じた。

 

 

 それからしばらくして、なのはさんとユーノ君。そして待機させていたクロウ君もつれて医療ルームの前に行くとなにやらワイワイと部屋の中が騒がしかった。

 

 「でね、フェイトの髪の毛サラサラして気持いんだよっ」

 

 「…あ、アリシア」

 

 「フェイトが困っているからやめなさい、アリシア」

 

 「そうだよっ、なんでそんなにフェイトに引っ付きたがるんだいあんたは!」

 

 「だって、お兄ちゃんは包帯ぐるぐる巻きで構ってくれないんだもん。だからフェイトで…」

 

 「うう、すまないねえ、アリシアさん」

 

 「それは言わない約束だよお兄ちゃん」

 

 「ひぃあ、アリシア。くすぐったいからやめて」

 

 「やだ。お姉ちゃんと言ったら…」

 

 「お姉ちゃんやめて」

 

 「もっといじる♪」

 

 「ひぃあああああ」

 

 「フェイトが嫌がっているからいいやめろっ」

 

 「むむ、これは…」

 

 「にゃあっ?!」

 

 「アリシア、いい加減やめてやれ」

 

 「お兄ちゃんっ、フェイト、結構おっぱいある」

 

 「「「いいかげんにしなさい(しろ)!アリシアッ!」」」

 

 

 ・・・。

 いつのまにやらテスタロッサ家のわだかまりはとけた?ようだった。

 

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第三十一話 いいかげんにしなさい!
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