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俺と才人が厨房に入ると、コック達が忙しそうに動き回っていた。
料理を作る人もいれば、それを凄い速さで貴族達に運びまわっている。
「えっと……どうすればいいんだ?」
才人が頬をかきながら呟く。
「タバサの言うとおりにしてみるか……
えっと、料理長のマルトーさんっているか?」
少し声を大きくして、周りの人に問いかける。
「あー……貴族様?厨房に何の用で?」
マルトーさんが厨房の奥から出てきた。
「俺達は、貴族の使い魔です。
貴族じゃありませんよ」
周りがざわざわする。どうしたんだろう。
「俺はヴェル、こっちが才人」
「よろしく」
才人が軽く頭を下げる。
「あぁ、よろしく。
俺はここのマルトーの料理長だ。
それで、どんな用で来たんだ?」
「あぁ、実は賄いをもらおうと思って。
食堂は貴族が使うから駄目らしいんだ」
才人が俺の変わりに説明してくれた。
俺も頷いておく。
「おう、賄いだったな?
すぐに持ってくるから待っててくれ」
そう言ってマルトーさんは奥に引っ込んでしまった。
「なぁ……ヴェル?」
「ん?どうしたよ」
「さっきから気になってたんだけどさ、
どうしてフード被ってんだ?」
「あー、そうだな。外すか」
フードに手をかけて、フードを外す。
少し光が眩しいな……
「……えっ?」
「どうした?」
才人が呆然とこっちを見つめてくる。
男に見つめられても嬉しくないぞ?
「いや、その髪の色……」
「あぁ、才人と一緒だな」
黒髪に黒い瞳……ゲームでは色を好きに変えれるが、
俺は黒にしておいた。やっぱり黒が好きだな。
「お、来たぞ?」
俺が指差すと、マルトーさんが二人分のご飯を持ってきてくれた。
これからも賄いをくれるらしい。感謝感謝。
「ご飯をくれたお礼に何かできないか?」
才人がマルトーさんにお礼をしようとしてるな。
「あ、じゃあ俺も!!」
俺もお礼ぐらいはしたいな。
マルトーさんは、少し腕を組んで考えた後、口を開いた。
「そうだな、今はもう終わりだから―――――」
「―――それで昼食に配膳の手伝いをする?」
「あぁ、別に構わないだろ?」
タバサが小さく頷いた。
良かった……これで駄目なんて言われたら
どうしようかと思ったぞ。
俺達が教室に入ると、好奇心や嫌悪の眼差しが突き刺さる。
「視線に攻撃力があったら死んでるな」
「人気者」
「やめろ」
俺達は、教室の中央よりも少し後ろの席へつく。
どうやらどこでもいい……のか?
少し待っていると、太っ………ふくよかな女の人が入ってきた。
あれが先生か?
「皆さん、おはようございます」
先生が教卓の前に立つと、あいさつをしてくる。
「今年も春の使い魔召喚は大成功の様ですね。このシュヴルーズ、この時期に
皆さんの使い魔の初々しい姿を見るのがとても楽しみなのですよ」
シュヴルーズ先生の教室を見回す視線が俺のところで止まった。
僅かに物珍しげに見ながら、シュヴルーズ先生が言った
「あなたが東方の魔法剣士の……」
「ヴェルだ。シュヴルーズ先生」
「えぇ、そうでしたね……確か東方では平民も魔法が使え
召喚と呼ばれる魔法があるとか……」
先生が興味津々で聞いてくる。
チラリとタバサを見ると、小さく頷いた。
どうやら先生達には『東方から来た魔法剣士』で行くらしい。
それなら魔法を使っても『東方に伝わる魔法です(キリッ』って言えば大丈夫だな。
でも……生徒達の視線が酷くなってんだけど……?
あぁ、たしか平民を馬鹿にしてるんだっけ?
だから平民が魔法使うのが嫌なのか?
「そして、ミス・ヴァリエールの使い魔は……」
今度は才人の方に視線が移動する。
「平賀才人です。」
才人がそう言ったとき、教室が騒がしくなる。
「ゼロのルイズ!召喚出来ないからって、金で使い魔を雇うなよ!」
「違うわよ!サイトは私の力で呼んだのよ!」
「嘘吐くな!どうせ召喚ができなかったんだろう!!」
それからは、他の生徒がそうだそうだ、とか言ったりゼロなどと馬鹿にしている。
どうしてタバサの事は馬鹿にしないんだろうか?
そう思いながら俺は手を挙げて立ち上がる。
「才人がルイズの使い魔じゃないって、どうしてお前らそう思うんだよ?」
「ゼロのルイズは、魔法が成功したことがないんだよ!」
「だったら才人のルーンとやらを見てみろよ。
才人?手出して」
「お、おう……」
才人はルーンが刻まれた手を挙げた。
「ほら、お前達の使い魔と似たようなルーンが刻まれてる。
これが使い魔の証じゃないんだったら、お前の蛇はどっかから
持ってきたって言われても文句言えないぞ」
そう言うと、生徒は黙って俯いてしまった。
シュヴルーズは数回咳払いをし、こう言った。
「それでは、授業を始めますね」
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五話『同じ使い魔』 | ||
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