■9話 かごめ、一刀奮闘す■ 真・恋姫†無双〜旅の始まり〜
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■9話 かごめ、一刀奮闘す

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道中これと言ってめぼしいイベントも無く、いつも通り訓練して、新たに加わった一刀に稽古をつけて、特に食料の心配も無く平穏無事に進んでいたのに、何故洛陽目前で黄巾党に道を阻まれていたりするのだろうか。

 

「これってどうなんだろう? 洛陽って皇帝のお膝元ですよね?」

「んー、それほど皇帝の力が弱まっているのかも」

 

妥当な考えではある。三国志を知る一刀ならばこれから皇帝が倒れて戦国時代に突入するのは目に見えているだろう。まあ知識が無い所でこんな場所に黄巾党が巣食っていたら誰でも思う事ではあるが

 

「どうでもいいけど、ただの命知らずなだけじゃないの?」

 

訂正。綾はそうは思わなかったらしい、確かに命知らずではあるだろうがここにいる理由にはならないんじゃないだろうかと思うのは俺だけだろうか。

 

「一刀、が……あたり…だと…思う」

「かごめがそういうならそうなんだろうな」

 

さきほどから考えるそぶりをしていたかごめはきちんと自分の答えを言って見せる。これを綾にも見習ってほしい、恐らく無理だろうけど。

 

「ちょっと! どうして皇帝の力が弱ってるってわかるの!」

「一刀に聞いてくれ」

「え? こっちに振ってくるなよ………えっとだな、普通皇帝に力があるなら恐れをなしてこんなとこまで賊は近づいて来ないって事だけど。今洛陽前に黄巾党がいるって事は……」

 

ちっとも自分で考えようとしない綾に説明するのは面倒くさい。なので一刀に丸投げしてみたのだが思いのほか面倒見がいい。少し文句を言っているようなそぶりを見せたもののきちんと丁寧に説明してあげている。

 

さすが華琳、調教がしっかりと行き届いている。

 

「わかった。つまり今の皇帝は弱いからなめられてるってことね」

「ああ、まぁそうなるけど。今の言葉聞かれてたらただじゃすまなくなるから言わないようにね」

 

結構長ったらしく説明が続いていたがやっと綾が理解したらしい。全く、黄巾党に囲まれてるっていうのに呑気なやつらだ。

 

「理由なんてどうでもいいけど、まずこの状況をどうにかしようぜ」

「「いやお前が振ったんだよ」」「………だよ」

 

かごめ、一緒に突っ込めないからって最後だけ言う必要ないんだぞ……。だけどツッコミに対してはあえて反応しない、別に言い返せないわけではないと思いたい。

 

「そもそもこんな事になったのは誰のせいだと……」

 

そうだ、こんな状況にした奴が一番悪いんだよ。別に緊張感がないやりとりを始めた俺は悪くはないはずだ。そう思ってこうなってしまった経緯を4人で思い出す。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「ぁ゛???。そろそろ休まないか? 尻が痛くて」

「男の癖に情けないな一刀」

「まぁ、そういってやるな綾。一刀は天からやって来たんだからな」

「そう言ってくれるのは時雨だけだよ……」

 

何処か縋るような目で見てくる一刀を一瞥してあさっての方向を向く。華琳の扱いが厳しかったことは想像に難くないので罪悪感が半端じゃない。

 

「でも結局急がないといけないし、熱いし。休める様な場所があれば話は別なんだが……」

「そういえば何で急いでるんだ? そもそもなんで俺を連れてきたんだ?」

「んー、それはだな……」

 

洛陽も近いのでそろそろ説明してもいいかなと口を開こうと思った所でかごめが服を引っ張ってきた。何事かと思い目を合わせる。

 

「なんだかごめ?」

「あっち……池が、ある」

 

そういってかごめが指差したところに目を向けるとちょっとした森が見える。でも池なんてものは視認できないのだが、一体かごめはどんな風に風景が見えているのか気になるところだ。

 

「池が見えるのか?」

「うん……」

「そっか、なら一刀あっちで休憩するぞ」

「ああ、なんだかすまないな俺のために」

「別にいいよ。お前には色々悪いことしてるしな……」

 

思い返すのは置き去りにした時の一刀、武器扱いした時の一刀、気絶している時に子供の玩具にされていた一刀である。

 

「気にしなくてもいいのに……俺も悪いことしたんだし」

「でもあれは華琳の命令だったんだろ? 仕方ないさ……」

「時雨……」

 

そんな純粋で綺麗な瞳で見つめないで欲しい、罪悪感で伏せってしまいそうだ。

 

「まぁ、実をいえば俺も休みたかったしな! さっさと行こうぜ」

 

これ以上好意の視線に耐えられず、飛影を池の方面へと飛ばす。それをなんとか追ってくる一刀がぼやくのが聞こえる。

 

「わかったから待てって、尻が痛いんだよ……」

「早くしないと置いてくぞ、一刀」

「綾さんも待ってくれーーー!」

 

そんな一刀を見て笑いながら俺たちは林を目指して駆け抜けた。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

今回は俺たちもハッキリ視認できたこともあって森に着くのにさほど時間はかからなかった。ただ休める場所が見つかったという安堵感が体の疲れを感じさせたのも確かだ。

 

疲れた体をなるべく無理させない様に歩くペースを遅めにして、かごめが先導する中森へ入っていく。入った場所からそう遠くない場所に池があった為、ここでも疲れを蓄積する事無くすんだのは幸いだろう。

 

それにしてもかごめの目は相変わらずいいを通り越して異常だ。どうやったら森の中まで見えるのかさっぱりわからない。

と気にした所で何かが変わるわけでもない。とりあえず飛影を放した後は大人しく池近くの木に身を預ける事にした。

 

「足……借りて……いい?」

「ああ、かごめはここを見つけてくれたし。構わないよ」

 

近づいてきたかごめがねだってきたので気前よく了承して足を崩す。するとすぐにかごめが太ももに頭を載せて体を丸める。

 

「ん……」

 

あまりにも嬉しそうな笑顔を浮かべるのでこちらも思わず嬉しくなってしまう。しばらくはいつもの恒例となっている頭を撫でる事に従事して、そのうち髪をとかしてみたり、かごめの顔にかかった髪を避けたりしていた。

そんな事をしているうちに気づけかごめは寝むってしまってて、やはり疲れがたまっていたのだろうと思う。

 

「あー! またかごめだけずるい! 私もしてー」

「わかったから、静かにこっちにこい」

 

相変わらずの大声で訴えて来た為反射的に了承の返事をしてしまった。かごめを起こさないようにしたかったので結局は変わらないだろうが自分と歳の変わらない綾に膝枕を提供するのは些か恥ずかしいものがある。

 

「やった!」

 

俺の返事に対して小さい声で喜び、飛び跳ねた後こちらへと躊躇なくやって来る。そしてもう片方の太ももに頭を載せた瞬間からニコニコし始める。どうにも笑みが抑えられないらしい。

 

「むふふー」

 

かごめもかなり喜んではいたが綾もそれに比肩する喜びようである。こんな無骨な男の膝枕でこれだけ喜んでくれるなら貸す価値は十分にあるなとしみじみ思う。

 

「にふふー」

 

不思議な声をあげるながら笑う綾にかごめと同じように撫でてやる。すると綾もすぐ寝てしまった。綾は大して疲れを見せていなかったのにどうしてだろうかと疑問に思ったが、こいつの場合ただ眠りたかっただけなんだろうと結論づける。

 

「相変わらず時雨はモテるねー」

「いや、これは甘えてるだけだろ。モテっていうならお前のほうがモテてる思うが……」

 

時雨の思考では女の子にひざまくらさせてもらえる状況はモテに入るが、自分が膝枕をしている状況を特にモテとは捕えないのである。ゲームに出てくる保護者みたいな立場が自分のそれだと信じて疑っていないのである。

 

「え? そんなことないだろ………。なんというか女性陣がかわいそうになってくるな」

「へ? なんで? ってそんなことあるだろう」

 

そもそも主人公なのだから多少ヘタレてもさほど気にされず、あまつさえやることなす事全て好感度が+に行くようになっている奴にモテなどといわれたくない。というのは時雨のみの考えであることは間違えない。

 

「はぁ……まぁいいや。それよりも気になって事があるんだけど、時雨は天の言葉がわかるみたいだけどどういうこと?」

「ぉお、以外にするどいな…ってそうでもないか。まあ一刀に隠すほどでもないけど、実は俺前世の記憶もちなんだ」

 

ちょっとシリアスな雰囲気をかもしだして言ってみる。前世に未練なんてないのでちょっとした御ふざけである。

 

「驚こうかとも思ったけど自分がいい例だし、驚けないな」

「そこはリアクション欲しかったかも」

 

全く表情を変えない一刀にリアクションを求めるも華麗にスルーされてしまった。

 

「そっか、でも同じ知識が共有できるっていいな。出来ることが増えた気がするよ」

「そう? それは良かった。でも俺は三国志なんて見たことないし、そう思うと一刀のほうがよっぽど役に立つだろうな」

「んー、俺が知ってる三国志とだいぶ違うから一概にそうともいえないけど」

 

なるほどなー、まぁ三国志に出てくる武将が男ってのは俺でも知ってるし、三国志の世界とこの世界を比べると色々とおかしいのはわかる。けれど俺の知っている恋姫の世界とも若干違う気がする。そもそもここは本当に俺の知っている恋姫の世界なんだろうかという疑念が尽きない。

 

本当なら一刀は蜀に拾われて大陸の王になるはずなのに……。とそこまで考えてもしもの可能性に行きつく。最後に買いだめしたゲームの中に確か続編で出ていた真・恋姫†無双があったはずだ。と言う事はそれに準じる世界なのではないだろうか?

 

というかそれの方が可能性としては……まぁ今は考えるのをやめよう。どうせそうだったとしてもやってないし。なにも分からないことに変わりはない。

 

「まぁそんなことより一刀はつかれてたんじゃないのか?」

「ああ、そうだけど?」

「なら眠っておけ何が起こるかわからんし、俺も眠るから」

「でも大丈夫か? 他に人が来たら大変じゃないか?」

「俺と綾は寝ていても人の気配がわかるから大丈夫だ」

「そ、それはすごいな……」

「綾はちょっと獣じみてるとこあるからな」

「いや、それをいうと時雨もだからな?」

 

一刀と話していると昔の感覚が蘇るようなことがある。そして今の自分の異常性が分かってしまうだけに何も言い返せなくなってしまう。

 

「………眠ろう」

「そうだな」

 

ちょっと気まずい雰囲気の中それぞれ眠りにつく。出来る事ならいい夢見たいものだ。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

寝むってどれ程たっただろうか、長い様な気もするし短い様な気もする。そんな中途半端な眠りから周りに人の気配が増えた事で起こされてしまった。ちなみにいい夢みれませんでした。

 

「綾……」

「わかってるよ」

 

相手がこちらに気づいているのは分かっている為素早く綾と視線を交わし、一刀とかごめを起こす。

 

「ん……朝?」

「あと5分………」

 

かごめがすぐさま目を覚ましたのに対して一刀はテンプレのセリフをのたまって寝返りをうつ。また声をかけても変わらないであろう結果を予測してパシと頬を叩く。

 

「おっ、おおう。一体何が」

「どうやら人が来たみたいだ。どうなるかわからんから準備しておけ」

「わかった」

 

さすがに頬を叩かれたのは効いたのだろう。一刀は寝ぼけモードから真面目モードへと切り替わる。

それぞれ自分の得物を準備し、奥から人が出てくるのを待ち構える。くぐってきた修羅場は少ないながらも濃密だった。そのお蔭で時雨達は大して混乱せずに対処にあたることが出来る。

 

ガサガサと無造作に草を除けながら出てきたのは……、黄色い頭巾を被った半ば30代後半のちょっと禿かかったオヤジだった。頭巾を被っているのにどうしてわかるって? そんな顔をしてたからに決まっている。

その顔を見た瞬間俺たちの緊張の糸は切れてしまった。

 

「こいつは禿だな」

「だな」

 

思わず出た言葉に一刀が同意する。どうやら俺たちの意見は一致したらしい、だって仕方ないだろ? 顔もそうだけど黄色い頭巾の頭の中央が凹んでるんだから……。

髪で盛り上がってる他と比べると一目瞭然と言うか何というか。

 

「……禿?」

 

俺たちが声を同じくしていると可愛らしく禿について聞いてくるかごめ。そうだよ、あのおじさんは禿てるんだよ……と優しく諭してあげる。

 

「あはは、おじさん禿てるの?」

 

時雨と一刀がかごめに禿について優しく解説しているのを見て、綾が笑いながらそんな失礼なことを直に聞いてしまった。

 

ブチッという鈍い音が禿てるおじさんの方から聞こえてくる。

 

「おめぇら……いい度胸してるじゃねぇか! 野郎どもやってやるぞ!」

 

そう目の前の……禿た男がそういうと他の黄巾党の面々がぞろぞろ出てきた。全員男なのでむさ苦しい事この上ない光景である。

 

「なんだかむさい奴らだ」

「だな」

 

思った事を率直に言葉にしてしまったのをまたもや一刀が同意する。いくら相手が少ないとはいえそろそろ気をつけないと危ない。

 

「よーくわかった。そんなに死にたいならお望みどおりにしてやるぜ!」

 

言うが早いか禿どもは遠慮なしに時雨達に襲い掛かってくる。

 

俺は太刀を抜き黄巾の禿どもに向かって紙一重の位置に一閃して脅かし、敵がたたらを踏んでいるうちに一刀の横に並ぶ。

 

「静まれい! こちらにおわすお方をどなたと心得る! 我ら庶人のために天より降りられし天の御使い様にあらせられるぞ!」

「なにが御使い様だ黙ってろ! やっちまうぞ」

 

どうやらこの禿にはネタが通じないらしい。困った禿だ。

 

「しかたない、時雨さん、綾さんやっておしまいなさい!」

 

何気に一刀が乗ってきてくれる……いいやつだと思わずにはいられない瞬間だった。

 

「俺今戦う気ないから、逃げよう」

「え? あんな振りしといて?」

 

ここはだが断る! という場面だったかもしれないと思いながら理由を一刀に説明する。

 

「うん、だってもう洛陽の近くだし。面倒」

 

正直に言い過ぎた為か一刀は苦笑すると頷き繋いでいた馬を引き連れに行く。その間に俺は今までとは違う凄みを見せて脅かす。

 

「我が名は紀霊! この名に覚えのあるものは来ない方がいい。死ぬぞ?」

 

通じればいいなぐらいの脅しだったのだが、俺の名を聞いた何人かが明らかに動揺を見せる。情報が通じているという事は以前の戦いで討ち漏らしがあったのだろう。

 

都合よく怯んだ隙に俺は素早くかごめを抱えて近くに寄ってきていた飛影に飛び乗り、続いて一刀と綾も馬に跨った。

 

「んじゃまたねー」

 

別れの挨拶を適当に済ませて逃げ出した……までは良かった。洛陽前に黄巾党がたむろしていなければの話だが……。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「あれ? もしかして俺のせい?」

 

頷く一同に対して引き攣った笑いしか返せない。

 

「いや、今は誰のせいだと議論する場合じゃない。とりあえずこうなってしまった以上戦おう」

 

自分で俺ウザッと思いながら無理やり誤魔化す。というより誤魔化さないと視線が痛い。でも結局相手を殺していようがいまいがどの道こいつらとの戦闘は避けられなかっただろう。見つかって只で通してくれるとは到底思えない。

 

「それもそうだね」

 

そういって剣を抜く一刀を見て今更ながらに疑問を浮かべる。剣道を習っていたはずの一刀が刀を持っていないというのも可笑しい話だ。でも何故刀を使っていないのかわからない。

 

「一刀、お前さん刀は使わないの?」

「え? 刀があるの?」

「ほら、これ太刀」

「ぇえ!? なんで、どうして……」

 

一刀の驚きようを見てようやく自分に太刀と小刀をくれた存在が異常だったと思いだす。

 

「まぁ色々あってな、よければ使うか?」

 

本当なら自分でも使いたくないのだがこの際仕方がない。多少消耗してしまう事は元々視野に入れていた、今後鍛冶職人探しが議題となるがそれはおいおい考えるとしよう。

 

「いいならありがたいし、使わせてもらうけど。時雨の武器はどうするんだ?」

「俺は基本的に何でも使えるよう鍛錬してるから、その武器貸してくれ」

「わかった」

 

お互いの武器を交換しおえ戦闘準備完了。といった所で新たな黄巾党が合流してしまったのが見える。

 

「おい、てめぇらさっきはよくもこけにしてくれたな……」

 

どうやらさっきの禿が合流してしまったらしい。元々ここにいた黄巾党の数も馬鹿にならないほどいたし、これはやばいかもと冷や汗を流す。

 

「綾、一刀とかごめ守りながら戦ってもらえるか?」

「わかった」

 

俺の言葉に了承の意を返した綾。けれどかごめはその気遣いが不要とばかりに首を左右に振る。

 

「わたし……も、戦…う」

「わかってる、弩の練習してるの見てたよ。期待してる」

「ん……」

 

真桜からもらった武器を使ってコソコソと一人で訓練していたのは見ていた。動く獲物を探すのに苦労していたようだがそれでもかなりの訓練量だったと思えるほど頑張っていた。

そんな今までの行動からも戦闘参加への意欲の強さは分かる。ここで引きとめた所でかごめは一人で戦ってしまうだろう、そんなことになれば生き残れる可能性も低い。そう思っての了承である。

 

「それじゃ俺は一人でも多くひきつけるから!」

 

そういって周りから止められる前にかごめを飛影から降ろし、さっさと前の黄巾党の群れへと突っ込んでいく。せめてここが俺の死場ないことを祈りながら。

 

「我が名は紀霊! 貴様らのその黄色い猿頭に死と絶望を刻み付ける者の名だ! 心して参られよ」

 

名乗りを上げ、敵を挑発して敵の中心へと突き進んでいく。

 

「黄猿よ! 腕に覚えがあるのなら我の首獲ってみよっ! ぜいっはぁぁぁああああああ!」

 

掛け声と共に剣を振り上げ気合いを発する。

 

そして相手の激昂が収まらない様挑発しながら敵の命を刈り取ってゆく。先の戦いで学んだ両刃の剣だからこそ出来る、刀の様に刃を返さないで出来る最速の攻撃を紡いでいく。

 

「どうした、こんなものか! こんな程度では俺の糧にもなりえんぞ! 奮闘して見せろ、俺を滾らせて魅せろ!」

 

正規の兵ではなく世直しの為に立ち上がった黄巾党は無駄にプライドが高い。賊の様な行動を起こしていてもそれは正義に準じる行動とだと脳内変換している奴らは挑発すればするほど怒り、何も考えずに襲いかかってくる。

 

それを殺すために効率よく刺し、斬って、斬って、また刺し、時には殴り蹴る。

 

「がぁぁあああああああああ!」

 

途切れる事のない相手に繰り返し斬る。そして刺し貫き一気に引き抜くその勢いを利用してまた切り殺していく。

 

どれほど殺っても次から次へと来る敵が鬱陶しい、それに置いてきた綾たちが気がかりだ。本当は4人で背を合わせながら戦う事も考えたがそれだと綾たちに自分と同様の敵を相手してもらう事になる。

 

挑発して敵を引き付けた方がまだ綾たちは安全になるはずだと判断したが実際はどうだかわからない。

 

ちらりと横目に見ることは出来るが詳しい状況がわからない以上、俺は相手を挑発してできるだけ敵を自分に集めるしかない。

 

ただただ俺に来いと念じる続ける。そして綾たちに無事であってくれと祈らずにはいられなかった。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

時雨の心配をよそに、綾たちは日々の訓練のおかげで結構戦えていた。

 

「っせいやぁあぁあああああ!」

 

綾が大剣で多数の敵を凪いで吹き飛ばし、大剣を再度振うそのわずかな隙をつこうとする敵をかごめが打ち殺していく。そして一刀はかごめが打ち殺せないこちらに近寄ってきた敵を切り捨てていく。

 

即席にしてはなかなかの連携を発揮していたが、やはりここまで健闘出来るのは時雨が敵をひきつけていることが大きい。そして恐ろしい程に血が舞うあの光景を見た敵兵が怯んでいることもここまで健闘出来る要因になっているだろう。

 

「時雨……大丈夫、かな…」

 

人の事が心配できるほど余裕はないが、かごめは時雨を心配せずにはいられなかった。信用はしているがさすがにこの量がこの人数では厳しいどころか絶望的なのはわかっている。

そしてそんな量を挑発して一手に引き受けている時雨は恐らく相手からしたら一角の将に見えるだろう。その事がより功名心のある敵をさらに引き寄せていっている。

 

「時雨なら大丈夫さ、それより今は目の前に集中しないとってよっと」

 

喋りながらも一刀が近づいてきた敵をまた一人斬り捨てていく。

 

いつまでたっても敵を殺す感触というのはなれないものだし、実際に立ってみると分かるがこと戦闘においてその場を支配する恐怖は強大だ。襲いかかる敵兵のプレッシャーに今にも屈してしまいそうであると言っても過言ではない。けれどそれを時雨はこちらの倍近い兵を相手にやっているのだから凄まじい。

 

そんなことを考えているかごめもある意味凄いのは明らかだ。初めて人を殺した時は少なからず顔が強張り、がちがちになっていたはずが、時雨の相手を罵る声を幾度も聞いているうちに時雨のことばっかり気にするようになった。

 

「ん……わかってる」

 

そう返してもかごめの視線はやはり片隅にでも時雨を捕えている。相手の心配をすればそれだけ隙が出来てしまうが今は一刀たちがいる。もう少しかごめが成長するまで2人に負担が行くことは間違いがない様だった。

 

「俺も負けてられないな……男として」

 

鬼神の如き戦いを見せる時雨とそれを見てより一層頑張るかごめを見ているとそう思わずにはいられない一刀。曹操の横で見てはいたその戦というものに初めて参加したが言い訳にするつもりはない。

 

もしこんな場面を見られれば曹操に叱咤されるだろうし、それどころか夏候惇に刺殺されるのではないかとも思える。そんなことを考えて震えて動きが鈍る己を叱咤し、また戦場へと意識を切り替える。

曹操の調教のせいかはわからないが、まだ戦い始まったばかりだと自分に言い聞かせた一刀は引き攣りながらもその顔は笑っていた。

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

一刀が1人決意している頃、洛陽の門から二人の女の子が出てきた。

 

「……誰かいる」

 

「何! 恋殿の活躍の場を奪うとは何事ですか! こうしてはいられません急ぎましょう」

 

無口な女の子は小さい女の子の言葉に頷きをもって返事を返す。そしてそれと同時に小さい女の子を抱えひた走る。

 

目指すは戦場。片手に斧槍を携えながら無口な女の子は無表情にその戦場へと突入していった。

 

 

 

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■後書き■

昨日はついに書けなくてすみません。

 

スマホでコメ返すぐらいは出来るのですけど編集前のデータはPCにしかないので投稿は出来ませなんだorz

これからもちょくちょくこういった事があるでしょうが長い目で見てやってくれると有難いです。

説明
編集して再投稿している為以前と内容が違う場合がありますのでご了承お願いします
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コメント
コメありです。 やっぱり前の世界の話が通じるって見知らぬ世界ではかなり嬉しいですよね。(※ここからネタバレ注意!:一刀は色物担当になるのでそこまで華琳との絡みは出て来ないかと思います。予定の話ではありますけどね)(竜胆 霧)
ノリのいい一刀がw自分が同じ立場だったらネタが通じる人間がいるってすげぇ嬉しいと思うwww華琳があんまり好きじゃないので魏に戻るっぽいのがちょっと残念ですが仕方ないね。(PON)
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