07 土地守なのに関わりすぎですよ? 龍斗 |
●月村家の和メイド07
なのは view
「き、狐ちゃん!? なんでなのはの御家にいるの!?」
私、高町なのはがアリサちゃんの家でアルフさんを見つけて帰った日の夜。部屋で眠っている最中、物音に目を覚ましてベットから上体を起こすと、部屋の中で、桃色の桜が飛び散る着物を着て、狐のお面を被った女の子が、当たり前の様に立っていました。
この子は確か自分の事を狐と言っていた龍斗くんの……お友達、っでいいのかな?
「別に来たくて来たのではないのですがね……。鈍感で優柔不断で判断ミスしたおバカな友人の為に、仕方なく体調を崩した身体を引きずって来て差し上げたのです」
「恩着せがましい上に、恨みが籠ってる!?」
あの二人の間で何かあったのかな?
「本気で眩暈がしますので、さっさと用件を済ませましょう」
「え? あ、はい! 何でしょう?」
思わず身構えると、狐さんは振袖の中から、一枚お札を取り出して私に差しだします。
「もし、龍斗の事が嫌いでないのなら、……そして、フェイトに手を差し伸ばしたいと本気で思っているのなら、これを龍斗にお見せください。それで意味は伝わります」
「え? あの、これは?」
「教えて欲しければ三回回って『おねしょしてごめんなさい』と泣きなさい」
「――――」
普通、三回回ったら『わん』では? なんて思ったけど、その代わりとなる内容もとっても恥しいぃよ〜〜! 龍斗くんに見せれば解るって言ってたし、別にしなくていいよね?
「教えて欲しくなければ全裸で『紫色の宇宙人が追いかけてくる』と叫びながらグラウンドを一周してください」
「どっちを取っても羞恥プレイだよ!?」
「まあ、今のは腹癒せで八当たりな悪い冗談なのですがね」
なのは、龍斗くんの八当たりされてるの? 龍斗くん狐ちゃんに何したの?
「内容は龍斗に聞いてください。あと、それの契約方法は接吻だと教えてあげてください。以上です」
「せっぷん? って、なに?」
「……解らないとは好都合ですね」
仮面で顔が隠れているはずなのに、狐ちゃんの顔がにやけているような気がする。もしかして狐ちゃんって、結構意地悪さん?
「それでは、僕は帰ります。精々恥しい思いをしろと龍斗に伝えてください」
そう言って狐ちゃんはなのはの返事も聞かずに窓から飛び降りてしまいました。
一体この御札は何なんだろう?
翌朝の早朝、急いで龍斗くんのいる八束神社にユーノくんと向かった私は、さっそくお札の事を話して―――、現在ちょっと気まずい状況にあります。
っと言うのも、まず、私がお札を取り出し、龍斗くんに説明を求めたことから始まりまして……。
「それは『天后』の『式神札』だよ。昨日、なのはがフェイトに対して考えている事があるって言ってたよね? それを実行するのに安全な場所で行えたらと思って狐と相談したんだ。そこで、もう一度土地内で戦うために、必要な条件として、コイツでなのはと俺が契約する必要があったんだよ」
「え? じゃあ、これでなのはと龍斗くんが契約すれば―――」
「ああ、フェイトともう一度戦える。今度は後手に周らないよう対策も立てられる」
「それじゃあ!」
「待って、確かに全部上手い事行くんだけど……、そのためにはこいつの契約方法を俺は知らないんだ」
「え? そうなの? ……あ、そう言えば狐ちゃんが教えてくれたあれの事かな?」
「へえ? 聞いてるの?」
「えっと、たぶんね、『せっぷん』って言うのだと思うの」
「……」
「? どうしたの龍斗くん?」
「……狐、他にも何か言ってなかった?」
「えっと……『精々恥しがれ』って」
「……あのねなのは、接吻って言うのはね」
き、き、き、……キスの事だったなんて〜〜〜〜〜っ!!
気まずいよ〜〜! 必要な事だって解ってても、そんな……、龍斗くんとキスなんて〜〜〜!
どうしよう? どうすればいいんだろう? こんなの分かんないよ〜〜〜!?
「「ねえ(なあ)、ユーノくん(ユーノ)、どうしたらいいと思う?」」
「二人一緒に聞かないでよ!? っていうか僕に聞かれても困るよ!!」
それはそうだよね……。でも、今聞ける相手ってユーノくんしかいないし、どうすればいいんだろう? 誰に相談していいか解らないよ〜〜〜っ!
「……なのは」
「は、はいっ!!」
うわっ! 声裏返っちゃった! 動揺してるの丸わかりで恥しいよう〜〜!
「えっと、……こんな事になっちゃって、なんて言っていいのか分かんないけど……、俺は、なのはとなら嫌じゃないから! だから……、もしなのはが嫌じゃないなら!」
そう言って龍斗くんがなのはの肩を掴んできて、はわ〜〜〜〜っ!? 顔が近いよ! 息が当たるよ! 龍斗くんの目に自分が映ってるのが見えるよ〜〜〜!?
ど、どうしようこれ? ユーノくんが見てるのに!? ―――ってユーノくん!? 何処行っちゃったの!? こんな時に消えないでよ!? 念話で呼びかけても声が返ってこないよ!?
「なのは……」
「え? わっ! りゅ、龍斗、くん……!」
え? どうしよう? 龍斗くんが!? 龍斗くんの顔が!? お、お、おぉ、お口が!? ち、ちか、ちかか、近づいいて〜〜〜〜〜!?
「あ、あの……っ! 待って……!?」
「嫌だったら、俺を突き飛ばせばいいから……」
そんな優しい声で囁いて、腰に手を回されちゃったら……っ! 私、わたし……っ!?
「……ん」
「ん……っ!? ん、ん……ちゅっ!」
―――――――――――――――――――――。
―――――――――――――――――――――――――――――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
「……はぁ」
「ん、ぁ……」
キス……、しちゃった……。
キスしている間は、頭の中が真白になって、何もかもが解らなくなってた……。
こんなにすごい事だなんて知らなくて……。
胸が、顔が、唇が……、熱くて、熱くて、もう何も考えられなくなって……。
「龍斗くん……」
「なのは……」
見つめ合った私達は、なんだかよく解らないまま、ただ熱にうなされるように、そのまま……。
龍斗 view
途中からあんまり記憶がない。キスをした後、熱に浮かされてぼうっ、としちゃって、その後は何をしたのか憶えてない。ただ気付いたらお互い着崩れた状態で抱き合ってて、床に転がってた。すぐに恥ずかしくなって離れたけど、何だか傍にあった熱が消えると、急に名残惜しくなって、二人とも同じ部屋で背中くっつけたまま落ち着くのを待った。
そしてお互い落ち着いたら、やるべき事の為に準備を始める。式神『天后』の稼働テストだ。
「普通に変身すればいいの?」
「って言うか、一応始動キーが必要になるんだ。合言葉はもう考えてあるから、いつもの変身に追加で命令してくれ。そしたら俺の魔力がなのはに流れて、『天后』の力を使えるようになるから」
「うん、やってみる!」
「合言葉は【|風総べる刃(エアレイド)】だ」
俺の言葉に一つ頷いたなのはは、一度深呼吸をしてからレイジングハートを掲げる。
「レイジングハート! エアレイド・セーットアーップ!」
光と共に風が逆巻き、なのはの姿を変えていく。
なのはは、いつものバリアジャケットに、式神『天后』の力で、手甲型の青いパーツと胸のリボンの代わりのボディーアーマーが追加されている。レイジングハートにも青と白のパーツが追加され、トリガーが取り付けられている。砲撃型のなのはには嬉しい付属パーツだろう。更にスカートはミニスカートになって、腰マントが追加されてる。腰には透明なリボンが長い尾を垂らして、女の子っぽさにも磨きがかかっている。
「うん、似合ってるよ」
「え、えへへ、ありかどう……」
「それで『天后』30%バージョンだね」
「え? 全開じゃないの?」
「あくまで式神だから、俺が命令しないと全開は出せないよ。って言うか、慣れない内に全力を使わない方が良いよ。二人分の魔力を一人に叩き込む事になるから」
「あ、そっか……、うん、でもこれだけでも充分過ぎる力を貰ったから、後はなのはが頑張ってみます!」
「ああ、その域だ」
俺はなのはに親指を立ててエールを送る。
さあ、これから管理局側に作ってもらった結界内に行き、フェイトとの決戦だ。
カグヤ view
カグヤのやれる事は殆ど全て終わりました。
あと、カグヤがするべき事があるとすれば、身体に残った熱を早く治す事と……。
「来るであろう龍脈への歪みに備え、御神楽の準備ですか……」
しかも今度は一人で発動です。
簡略式の小規模発生型に儀式を合わせましたが、正直死ぬ覚悟ですね。まだ死にたくないんですが。
「龍斗が宣言通り、一人でなんとかしてくれれば全て収まるのです。だからカグヤは信じて待つとしましょう。……いえ、保険をかけている時点で信じるも何もない気がしますね? カグヤは薄情なのかもしれません」
まあいいでしょう。前が安心して戦えるように、後ろはしっかりと固めるのが基本なのですから。
さて、そろそろ龍斗の連絡があった場所に霊鳥が辿り着く頃ですね。高町なのはとフェイト・テスタロッサの戦いの行方はどうなっているのでしょう? 辿り着いた霊鳥の視界が画面になってカグヤの前に現れます。おや? なのはが空中でロックされています。捕縛系の魔法を喰らったようですね。あれでは動けないでしょう。
フェイトの方は……、うおっ!? 何ですあの雷弾の数は!? 全部防御貫通系の魔弾ですか? そんな数を動けない相手に全部打ちこむなんて―――、
「フォトンランサー・ファランクスシフト」
―――撃ちましたよ!? え? ちょっと、個人に撃つレベルの技ではないですよ? いくらなのはが龍斗の魔力で『天后』を得ているとはいえ、これはかなりきついはずです。耐えられたとしても残った魔力ももう殆どないのでしょうから、後一発が限界かもですね……。
「スパーク……!! エンド……」
おお……、最後の一撃で周囲の建物が全て消し飛びましたよ。一瞬海も開いて海底が見えました。いえ、あの……、勝敗以前に死んでしまったのでは?
……、おおっ!? 何と生きてますよ!? 服が半分以上弾けて結構素肌を晒していらっしゃいますが、まだ戦えるようですね。
「今度はこっちの―――!」
「Divine Buster Air raid」
「―――番だよっ!!」
なのはが今まで見た杖に、新しく付いたトリガーを引きます。発射された砲撃魔法には、今まで見たディバイン・バスターに似ていますが、その砲撃に取り巻くように螺旋を巻く三つの風が合わさり、回避を難しくしています。対空攻撃として、あれほど出来た技もないでしょう。しかし、相手は速度が得意分野のフェイトです。アレならギリギリ……、おや? 左手を除いて全ての四肢が設置型の捕縛魔法で固定されています。いつの間に引っかけたのでしょう?
動きを封じられたフェイトに、……ええっと、なんでしたっけ? ディバイン・バスター・エアレイド? でしたか? の、直撃を受ける事になりました。
お? どうやらギリギリ障壁を張って耐えたみたいですね? これはすごい。
え? は? なっ!?
高町なのは、何とまだ攻撃の手緩めていません!? 大気中に使い切れなかった魔力をかき集めています! って、なんですかそのバカでかい魔力は!? あんなの地面に向かって放ったら龍脈に影響出ますよ!?
「スター・ライト……ブレイカーーーーーーッ!!」
撃ちました!? なんとフェイト障壁の多重発動で耐えています!? ああ……! しかし一枚、また一枚破られ……っ! 防御の上から砕かれました!? なんて威力ですか!? カグヤが霊力を得た状態で充分な溜めをした最大砲撃くらいあるんじゃないでしょうか? いえ、あれは上限がない分、上位の技と見ていいでしょう。
って、あああ!? 忘れてました龍脈!?
……おや? ダメージ0? おお、龍斗がしっかり龍脈への衝撃を相殺しています!? 加えて結界内と言う事もあり、かなり緩和されたみたいですね。
「ここまで上手くされてしまっては……カグヤも手伝わない訳にはいかないですね」
本当は公私混同になるので手を出すつもりはなかったのですが……。今回は大役を果たして下さったので、御褒美です。
カグヤは境内に出ると、白木の弓に『矢鳴り』を番えます。
龍斗 view
勝負はなのはの勝ちだ。負けたフェイトは、何かを失ってしまったかのように項垂れたまま宙を飛んでいる。
来るとしたらこのタイミングだ。一度目はジュエルシードを前にフェイトが棒立ちした時だった。今度はジュエルシードを賭けた戦いに負けた。ならジュエルシードを求めているプレシアが、ここで攻撃してこないわけがない!
龍脈への被害は自分の魔力で抑えた。今度は龍脈の力を借りて、あの雷を防ぐ。取り込んだ分の霊力は、なのはと俺の間で出来た契約から霊力を作り、少しずつ返していく事になる。けど、恐れはない。どうやれば霊力が作れるのか、まだ聞いてないけど、なのはと一緒なら何も怖くない。
「! 来た」
常に注意を払っていた上空から、大質量の魔力を感じる。あの時は見逃してしまった。だけど今度は―――!!
なのははフェイトとの戦いに、スター・ライト・ブレイカーという、とっておきを準備していた。
「俺もこの為に、準備を疎かにしてなんていない!!」
クイック・ムーブで瞬時に空を駆け、出来るだけ上空で、あの二人から離れた位置で、その攻撃を一挙に受け止める!
「龍斗くん!?」
俺に気付いてなのはが叫ぶ。同時に眼前の暗雲から紫の雷が、こちら目がけて眩い閃光を上げる。
頼むっ! 今の俺では過ぎた魔術かもしれないけど!? 土地よ! 今だけは俺の我儘に力を貸してくれ!!
「【|熾天覆う勝利の原罪(クラウン・クラウン)】」
真っ白なクラウンマントと銀の仮面で出来た魔力で作られた楯。その姿はまるで神様に遊ばれる道化人形を思わせる。俺がこの一撃を防ぐためにリスクを無視して考え出した最強の盾、クラウン・クラウン『神様の道化』。力は全て勝利するために在る物だ。だからそこに付け込み、勝利するための力が大きければ大きいほど、俺の盾も力を増すように作った。この盾は、勝利を原罪として裁くための盾だ。
クロノの話しでは、この攻撃はSランクオーバーと言われる、かなり大きな魔法のはずだ。なら、俺の【熾天覆う勝利の原罪】で全てを防ぎきる事が出来るはず!
「なっ!?」
楯に当たった雷は、確かに防ぐ事が出来た。だが、高度が足りていない。盾の大きさを超えた範囲に落ちる雷まで防ぎきれない。
最大の一撃は防げても、余波となる幾条もの雷がなのはとフェイト、それどころか遠くで観戦していたユーノやアルフにまで飛び火してしまう。
急いでサポートしたかったが、一番でかい一撃を、俺はまだ受け止めてないといけない。誰にも助けに行く事が出来ない!? そう、心が焦りを覚えた時、幾閃もの赤閃が横に走り、無数に飛び火する雷に当たって相殺していった。
「……これ『火叢御の火矢』? カグヤ? どうやって結界内に―――うわっ!? いつの間にか結界に穴開けてる!?」
カグヤ view
遠方への援護となると、やはり遠的しかありません。そんな訳で長距離射撃をすると決めた時から、結界に穴を開けるべく、一撃の術を八つに複製する、術式・八尺瓊勾玉を連続発動。なんとか結界を破り、火矢で雷を相殺する事に成功しました。おかげ様で、今のカグヤは地面に突っ伏している状況です。魔力も借りた霊力も使い切って、もう動けません。カグヤ昨日熱出したのですが、またぶり返して来ていませんか? 大丈夫だと思って使ったのですが、存外に無茶だったようですね。
「まあ、どうせ後の事は龍斗がどうにかするでしょうし、後はお任せしちゃいますか……」
そう言ってカグヤは仰向けになると、広い空を眺めます。後を任せられると思うと、不安なく休む事が出来るのですね。
ええっと? 何でしょう? これ、なんて言うんでしたっけ?
たぶんカグヤ、『信頼』……を、知ったのだと思いますよ?
説明 | ||
カグヤ「え? プレシアのところですか? カグヤには関係ないので行きませんよ。龍斗に全部任せます。………はい? 龍斗の話? カグヤが知ってるわけないじゃないですか? 後日聴くくらいですよ」 ホンマに原作介入せんこです……。でも、すずかとの話がメインなんで許せ。←(またそれか、とか言わないで) |
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