仮面ライダーエンズ 第六話 修羅と鬼神と誘拐事件 |
立華かなでは、暗い夜道を一人で帰宅していた。彼女には生徒会長という役職があるため、どうしても帰宅が遅くなってしまう。もっとも、他の役員の仕事まで全部一人でこなそうとするせいだが。かなでは少々、真面目すぎるのだ。
(お父さん、心配してるかしら?)
自分にとって最高の父親、セフィロスのことを考えるかなで。セフィロスも教師であるため、やはり帰宅時間は遅いのだが、それでもかなでよりは早かった。
(早く帰らないと…)
かなでは歩を速める。
と、
「お嬢ちゃん、急いでるみたいだね?」
いきなり背後から声がかかった。かなでが振り向いてみると、そこには人のよさそうな男性が、五人ほどいる。先ほど声をかけた男性、男性Aは続けた。
「俺達が送っていってあげようか?」
それを聞いてかなではお願いしかけたが、思いとどまる。セフィロスから、知らない人についていってはいけない、と言われたことを思い出したからだ。
「せっかくだけど、遠慮しておきます。」
「ああそう。でも、そういうわけにもいかねぇんだよな。」
男性Aが言うと、他の男性達がかなでを取り囲む。
「俺達と来てもらうぜ!」
すると、男性Aが携帯質量を出し、それを分解して再構築。剣を生み出した。他の男性達も、それに習う。どうやら彼らは、アルター能力者の集団だったようだ。そして目的は、かなでの誘拐。
しかし、かなでも黙って連れていかれはしない。
「ガードスキル・ハンドソニック」
かなでが呟くと、彼女の両手の甲から光が溢れ、刃を形成した。これぞ彼女の能力、ガードスキルである。あらゆる事象を発現させられるという能力で、かなではこれを使って戦うのだ。もちろんこの刃、ハンドソニック、はガードスキルの一部でしかない。
「ガードスキル・ディレイ」
さらなるガードスキルを発動するかなで。ディレイは超高速移動を可能にするガードスキルだ。かなでは超高速かつ最小限の動きをしながら、男性達のアルターをハンドソニックで刻む。
「あ…うあ…」
かなでの戦闘力の高さにたじろぐ男性達。かなではハンドソニックを構えた。
「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」
「うわあああああ!!」
一目散に逃げ出す男性達。かなではそれを追わず、ガードスキルを解除した。ガードスキルの名の通り、彼女は自衛にしかこの能力を使わない。去る者は追わず。戦意を喪失した相手を、追いかけたりはしないのだ。
「…またつまらぬものを斬ってしまったわ。」
若干中二病なかなではどこかの剣豪のような台詞を言い、再び帰路についた。
そんな彼女を物陰から見つめる男性が、一人。
「フフフ…」
彼の名は小池玄人(こいけくろうと)。世界にその名を轟かせる誘拐犯だ。とにかく誘拐が大好きで、可愛い女の子や絶世の美女を見つけたりすると、つい誘拐してしまうという精神異常者である。今回のターゲットは、かなでだ。
「フフフ…!」
小池はクロロホルムを染み込ませたハンカチを取り出し、かなでに飛び掛かった。彼女のことは前もって調査してあり、ガードスキルを解除する隙を見計らって行動したのだ。先ほどの男性達も、そのための噛ませ犬である。タイミングは完璧、の、はずだった。
しかし、かなでは一瞬にして姿を消してしまう。
「!?」
驚いてかなでを捜す小池。と、いた。かなでは近くの家の屋根に着地している。
「ば、馬鹿な!ガードスキルを発動する暇はなかったはずだ!」
「…オーバードライブは、パッシブだから。」
かなでは駆け出し、屋根の上を次々と忍者走りで飛びうつって逃げていく。やがて、かなでの姿は見えなくなった。
「…くそっ!」
怒る小池。これは、彼の人生で初めての誘拐失敗だった。
「諦めないぞ…必ずお前を誘拐してやる!」
この男、マジで変態である。
由多かなみは、いつものように弁当を忘れたカズマに弁当を届け、自分の教室に戻ろうとしていた。と、廊下に教師が二人、何か話しているのを見つけ、会話を盗み聞きする。
「知ってますか?最近この辺りで小池玄人が目撃されたそうです。」
「確か、世界中で有名な誘拐常習犯ですよね?まさかウチの生徒が狙われるなんてことは…」
「ありえると思いますよ?それなりにレベルがありますからなぁ…」
かなみはそれを聞いてから、自分の教室に戻った。
(誘拐犯、かぁ…)
考えるかなみ。と、
「かなみ!おはようでゲソ!」
彼女に挨拶する女子がいた。
「ああ、イカ娘ちゃん。おはよう」
かなみの友人のイカ娘である。
「どうしたでゲソ?なんか元気がなさそうじゃなイカ。」
「う、うん。最近この辺りで、小池っていう誘拐犯が目撃されたらしいから…」
「ああ私も知ってるでゲソ!100%の誘拐成功率を誇る、世界一の誘拐常習犯!嫌でゲソねぇ…」
「…イカ娘ちゃん。」
「何でゲソ?」
「…今日一緒に帰らない?」
かなみは誘拐を恐れ、できるだけ大人数で帰宅するという作戦を取った。
「いいでゲソよ。」
「ありがとうイカ娘ちゃん!」
「ただ、研も誘った方がいいと思うでゲソ。」
イカ娘が言った研というのは、彼女達と同級生の泉研という男子生徒のことだ。
「それもいいね。研くんは…」
研を捜すかなみ。研は、三人のクラスの副担任、魔王先生と会話をしていた。
「魔王先生。誘拐犯についてどう思いますか?」
「気にするな!」
これが口癖の魔王先生。
「はい!」
納得した研。
「…なぜ納得するんでゲソか…」
「あ、あはは…」
イカ娘はげんなり。かなみは苦笑していた。
小池は世界中に存在する多くの誘拐犯と連絡を取り合い、かなでについて調べていた。聞くところによると、かなでを誘拐しようと思っていた誘拐犯はかなりいるらしい。無理もないだろう。かなでは周囲の人間から天使と呼ばれるほどの美貌と知能、優しさを備え、誰からも好かれている少女だ。精神異常者なら、誘拐したいとも思う。しかし、かなではガードスキルという強力な能力を有しており、誘拐しようにもうまくいかない。例えガードスキルの解除後という隙を狙っても、肉体を強化するオーバードライブというパッシブタイプのガードスキルがあるのだ。隙がない。
と、小池はある有力な情報を得た。
かなでは麻婆豆腐を好物としており、これを前にすると校則のような大事なことも全て忘れてしまうほど、夢中になるのだという。
これを知った小池は誘拐犯達を集め、作戦を練り、そして実行した。
かなでは今夜も、暗い夜道を一人で帰宅していた。かなではセフィロスのことを考えながら、時々笑みを浮かべる。
かなでとセフィロスは、血縁関係にある父娘ではない。とある理由によってセフィロスに拾われ、そして彼の娘となったのだ。かなではセフィロスが大好きだった。だから、学園でも会えるというのは、彼女にとって最高の幸せである。
一刻も早くセフィロスに会いたいと願うかなで。と、かなではあるものを発見する。
皿に盛られた麻婆豆腐だった。
道の真ん中に、麻婆豆腐が置いてあるのだ。
普通の人なら、絶対におかしいと気付くだろう。だが、かなでは若干天然であるため、全く疑問を持たず、麻婆豆腐に手を伸ばした。
と、麻婆豆腐は何の前触れもなく突然後退し、かなでの手は空振りする。
「?」
再度手を伸ばすかなで。麻婆豆腐は再び後退し、かなでの手をよける。かなではむきになって麻婆豆腐を捕まえようと追いかけるが、麻婆豆腐は逃げていく。いつしか彼女は人通りの全くない道に来ていたのだが、そんなことは気にせず、かなでは麻婆豆腐に飛び掛かった。
その時、かなでの身体は空中で何かに引っ掛かってしまい、そのまま空中に固定される。
気付けば、かなでは巨大な蜘蛛の巣に絡め取られていた。
「っ!?」
驚いてもがくかなで。しかし、いくらもがいても抜け出せず、逆に糸が絡みついてどんどん動けなくなっていく。ハンドソニックで糸を切ろうとするが、もう腕を動かせなかった。
次の瞬間、
「ああっ!!」
かなでは電流を浴びて気絶する。スタンガンを当てられたのだ。
「うまくいったぜ!」
小池は中和剤をかなでにかけ、蜘蛛の巣を溶かす。最初この罠を仕掛ける時は、本当に引っ掛かるかどうかかなり不安だったのだが、かなでは見事に引っ掛かった。小池はそのまま、仲間の待つ車までかなでを運んでいった。
「ふぅ、すっかり遅くなっちゃったわ。」
仲村ゆりは、買い物帰りに暗い夜道を歩いていた。と、あるものを発見する。
車に乗せられるかなでだ。
「あれは…!」
荷物を置き、慌てて駆け出すゆり。しかし間に合わず、車は行ってしまった。
「まずいわね…」
ゆりは携帯を出し、急いで仲間達にメールした。メールの内容は、
『大変なことが起きたわ!今すぐ皇魔くんの家の前まで来て!』
しばらくして、ゆりから召集令を受けた音無、日向、直井、クラウド、ザックス、瓜核、イーリャン。そして、皇魔とレスティー。
「なぜ余の家の前なのだ!」
「仕方ないでしょ、緊急事態なんだから。」
怒る皇魔とたしなめるゆり。
「それで、一体何が起きたんだ?」
音無は本題を訊いた。ゆりは説明する。
「かなでちゃんが誘拐されたわ。」
「かなでが誘拐された!?」
驚く音無。日向はさらに尋ねる。
「本当なのかゆりっぺ?」
「残念ながら本当よ。しかも犯人は、誘拐常習犯の小池玄人。」
「マジかよ!?じゃあ、セフィロス先生に知らせた方がよくねぇか!?」
ザックスは父親であるセフィロスに知らせるべきだと言うが、
「それは得策ではないわ。」
ゆりは却下した。
「何でだよ!?」
追求するザックス。対するゆりは、ザックスだけでなく全員にわかるよう、説明した。
「よく思い出して。セフィロス先生が、かなでちゃんのことをどれだけ深く愛しているか…」
セフィロスは、かなでを溺愛している。成績を優遇したりはしないが、それでも溺愛している方だ。そんな彼に今回の誘拐を知らせたら、どんなことになるか…。
「…死人が出るな…」
クラウドが結論を出した。そう、死人が出る。
「セフィロス先生は生徒会長に危害が加わると、修羅になりますからね…」
「修羅なんてもんじゃねぇよ。ありゃあ鬼神だ」
直井と瓜核も同意した。
「だから、できるだけ穏便に事件を解決しようと思うの。幸いにも、小池は今まで何人も誘拐してるから、罪状は十分。あたし達が逮捕すれば、かなでちゃんを誘拐したことは知られないはず。」
ゆりとしては、担任に殺人などさせたくない。
「それで、どうすればいいの?」
尋ねるイーリャン。
「まずイーリャンくん。あなたのアルターで、かなでちゃんの居場所を割り出して欲しいの。お願いできる?」
「うん、やってみる。」
イーリャンは携帯質量を出して分解。再構築する。と、イーリャンの上半身を、アームが付いたいびつな金魚鉢のようなものが覆った。そのまま、内側にコンソールのようなものを出現させ、操作する。これがイーリャンのアルター、絶対知覚である。指定した範囲のあらゆるものを知覚できる能力だ。
「なるほど、これならすぐ見つかるわね。」
感心するレスティー。もっとも、彼女にも超能力があるため、それを使えば見つけられるのだが。
「…見つけた。こっち…」
どうやら発見したらしい。イーリャンは知覚した方向へ向かっていく。
「行くわよ!」
ゆりが一同を先導する。
「待て。余は行か」
「はーい!」
「…」
皇魔はレスティーに無理矢理連れていかれた。
一方、別の場所には『ブラックドッグ』というテロリストの集団が潜伏していた。しかし、この集団、人間は一人だけだ。集団の全員がアンドロイドであり、ただ一人の人間は、アンドロイド達を率いる隊長である。
今は本部から、作戦の決行指令が来るのを待っているところだ。と、
「ん?」
装甲車両に乗っていた隊長は、レーダーに反応があったことに気付き、もっとよく見ようとモニターに近付く。しかし、反応は隊員達に探索の指令を出すまでもなく、すぐに消えてしまった。
「…気のせいか…」
モニターから目を離し、背後を振り返る隊長。
その時、
「その欲望、私が叶えましょう。」
イーリャンの絶対知覚を頼りにかなでを捜す一同は、今はもう使われていないはずの廃墟を発見した。
「ここね…イーリャンくん。中には何人くらいいる?」
ゆりに訊かれ、イーリャンは調べる。
「えっと…二十人くらい。」
「結構いるんだな…それで、どうする?」
「正面突破か?」
ゆりに尋ねる日向とザックス。ゆりは首を横に振った。
「さっきも言ったけど、今回は穏便に、つまり、できるだけ人に知られないように解決しなきゃいけないの。正面突破なんてしたら、目立つでしょ?」
「なるほど、それでカズマやブラックは誘わなかったのか…」
納得するクラウド。確かにカズマやブラックのような派手な戦い方をする者を連れてきていたら、穏便には済まないだろう。選抜もしっかりしている。
「作戦はこうよ。まず、レスティーさんと瓜核くんの能力で、何人かを内部に瞬間移動させ、混乱させる。その隙を見計らって突入し、敵を倒しながらかなでちゃんを奪還。奇襲メンバーは、皇魔くんとレスティーさんで。突入メンバーは、クラウドくんとザックスくんを先頭に、あたし、音無くん、日向くん、直井くん。イーリャンくんはこれで連絡しつつここで待機。万一に備えて、瓜核くんもここで待機。」
作戦を簡単に説明しながら、トランシーバーを出して全員に配るゆり。イーリャンの絶対知覚は探知に優れた非常に強力な能力だが、直接的な戦闘力はない。イーリャンは戦えないのだ。そのため、バックアップに徹する。瓜核は護衛だ。
「奇襲メンバーが少なすぎる気がしますね…」
と直井。
「奇襲だから人数が少なくても、かき回してもらえればいいの。二人で十分よ」
「余が遅れを取ると思うか?余一人の手で殲滅してくれる!」
直井に言うゆりと、自信満々な皇魔。レスティーは皇魔に耳打ちした。
「変身は?」
「必要あるまい。相手がただの人間ではな…」
「さぁ、突撃よ!オペレーション・スタート!」
ゆりの言葉を最後に、作戦が始まった。
小池はほくそ笑んでいる。
「ついにあのセフィロスの娘を誘拐した!さぁて、たっぷり身代金をふんだくってやるぞ!」
気絶し、縛られたかなでを見ながら、さらに意気込む小池。
別の部屋。
「なぁ、これ、なんだ?」
誘拐犯の一人が、異常を告げた。見回りの誘拐犯達が、反応してそれを見る。
そこには小さなスイカがあり、どんどん大きくなっていたのだ。やがて人間大サイズまで巨大化したスイカの中から、メダジャベリンを持った皇魔が飛び出してきた。瓜核の技の一つ、瓜核ワープである。
「うわっ!」
驚いて銃を構える誘拐犯だったが、皇魔に斬られ、気絶する。今回は皇魔がメダジャベリンの特性を利用して刃を潰してあるため、殺す心配がない。さらに、レスティーが瞬間移動で現れ、誘拐犯の一人に蹴りを食らわせ、気絶させる。二人はそのまま暴れ始めた。
「大変だ!正体不明の敵勢力が…うわあああ!!」
トランシーバーで小池に連絡する誘拐犯。
「な、何!?どうしてここが…」
すると、今度は別の誘拐犯からも連絡が入る。
「変な餓鬼どもが突入してきた!応援を!」
「な、何なんだ、次から次へと…」
小池は慌てていた。
クラウドは合体剣という剣を、ザックスはバスターソードという剣を振るいながら、次々と誘拐犯を倒していく。向こうも銃で反撃してくるが、二人は互いの得物でそれを斬り払い、さらに日向と直井から銃による援護を受けて有利に戦いを進めていく。
ゆりと音無は戦いをクラウド達に任せ、かなでを捜索していた。ゆりはトランシーバーでイーリャンと連絡を取る。
「こちらゆり。かなでちゃんの居場所は?」
「そのまままっすぐ進んだ突き当たりの右にある部屋。小池も一緒にいるみたいだから、気を付けて。」
「了解。」
「この餓鬼!」
「!」
廊下の陰から突然現れた誘拐犯。連絡していたゆえに反応の遅れたゆり。だが、誘拐は音無に狙撃され、倒れた。銃に入っているのは麻酔弾のため、死ぬことはない。
「ありがとう。」
「ああ。かなでは?」
「このまままっすぐ進んだ突き当たりの右にある部屋。小池も一緒にいるらしいわ」
「厄介だな…もしかなでを人質に取られたら…」
「間違いなくするでしょうね。向こうもこっちには気付いてるはずだし…でも、進むしかないわ。」
「…よし、行くぞ!」
二人は一気に駆け抜け、かなでが監禁されている部屋に突入した。
「う、動くな!」
小池はかなでを抱え、頭に銃を突き付ける。
「かなでを放せ!」
「嫌だ!俺はまだ、身代金を要求してない!それに、これからも誘拐を続けるんだ!」
音無の要求を無視し、喚く小池。
「こいつ…」
思わず舌打ちするゆり。
その時、
「キモいのよ。あんた」
突然小池の背後から声が聞こえ、小池は振り向く。だが、声の主はおらず、気付くと自分が抱いていたかなでも消えていた。前を見る小池。そこには、瞬間移動でかなでを救出したレスティーが、ゆりと音無の間に並び立っていた。
「な、何だと!?ガアッ!」
再び驚く小池。しかし、直後、隣の部屋から壁を突き破ってきた皇魔から衝撃波を叩き込まれ、吹き飛ばされて気絶した。
「助かったよ。」
レスティーに礼を言う音無。
「私は可愛い娘の味方だから♪」
「は、ははは…」
音無はレスティーも危ないのではないかと思いながら、かなでを受け取る。
「かなで、起きろー。」
「…んぅ…まーぼー…どーふ…」
どうやら麻婆豆腐の夢を見ているらしいかなで。
「もう、かなでちゃんったら…」
かなで起こしに参加しようとするゆり。
と、
「気を付けて!何か近付いてる!」
彼女のトランシーバーに、イーリャンから連絡が入った。すると、壁を破壊して鎧を着た戦士のような怪物、ヨロイシードと、黒い石でできたような怪物、セキタンシードが侵入。ゆり、かなで、音無をタックルで吹き飛ばした。
「うあっ!!」
「ぐあっ!!」
壁に叩きつけられて気絶する音無とゆり。かなではまだ目を覚まさない。
「皇魔!」
慌ててエンズドライバーとメダルを渡すレスティー。
「変身!」
〈クレアボヤンス!ヤリ!ホノオ!ク・ヤ・ホ♪クヤホク・ヤ・ホ♪〉
皇魔はエンズに変身し、今度はメダジャベリンの切れ味を最大まで高める。
「今回は諦めかけていたが、どうやら当たりだったらしい。来い!」
エンズはシード達を挑発して外に飛び出し、二対一の大立ち回りを展開する。レスティーも飛び出していった。ヨロイシードもセキタンシードも頑強な肉体を持ち、メダジャベリンによる攻撃をたやすく弾いてしまう。
「ならば…レスティー!フブキコアメダルだ!」
「オッケー!」
要望を受けたレスティーはフブキコアメダルをエンズに投げ渡す。
〈クレアボヤンス!フブキ!ホノオ!〉
エンズは亜種形態のクレフブホコンボにコンボチェンジ。フブキコアメダルの力を解放した、凍てつく拳をセキタンシードに。ホノオコアメダルの力を解放した、燃えるキックをヨロイシードに。それぞれ叩き込む。金属を纏ったような存在であるヨロイシードは熱を、セキタンシードは冷気を弱点にしているため、大ダメージを与えている。よろめく二体のシード。
二体がうまく一ヵ所に集まったところで、エンズはフブキコアメダルの力によってレゾリューム光線が変異した冷凍光線をシード達に浴びせ、凍らせた。
「これで詰みだな。」
〈トリプル!スキャニングチャージ!!〉
エンズはエンズアルカイドを発動して突撃。
「ぬん!!ずあああーっ!!!」
一回ずつ斬りつけ、シード達を爆砕した。
シード達を倒し、戻ってきた皇魔とレスティー。
「二人とも、大丈夫!?」
レスティーはゆりと音無を助け起こす。
「ん…ぅぅ…レスティーさん?痛たた…」
「何だよ一体…」
目を覚ましたゆりと音無。
「ゆりっぺ!」
「音無さん!」
間もなくして、日向達もやってきた。当然、イーリャンと瓜核以外だが。
「無事か?」
クラウドが尋ね、
「ああ、何とかな…」
音無が答える。と、皇魔はあることに気付いた。
「…立華がいないようだが…」
「……えっ?」
ゆりは辺りを見回す。確かに、かなでがいない。そこで、ザックスが近くに落ちていた紙を拾い、書いてある内容を読む。そこには、こう書いてあった。
『この娘は、我らブラックドッグが預かった』
ザックスは思わず叫んだ。
「どんだけ狙われてんだよ!!!」
「悪いな、手伝ってもらっちまって。」
ウォントはコレクとメイカーに礼を言った。メイカーとコレクは順番に言う。
「私がステルス能力を使ってテロリストの隊長にシードを寄生させ、より大規模な行動を起こすように仕向ける。」
「さらにわしと貴様があらかじめ生み出しておいたシードを囮に使い、うまくエンズと一対一で戦える状況を作る、か…考えたな。」
そう、第二の誘拐は、ウォントの策略だったのだ。ちなみに、かなでがブラックドッグに誘拐されたことを教えるための紙を残したのもウォントである。ウォントは呟いた。
「返してもらうぜ。アプリシィのメダルを!」
翌日の朝。
その日はちょうど休日であり、セフィロスは非番。かなでは帰ってきていないが、彼はかなでが誘拐されたことを知らない。ゆりから、かなでは彼女の家に泊まると連絡を受けていたためだ。かなでの帰宅を気長に待ちながら、ニュースを見るセフィロス。
「臨時ニュースが入りました。テロリスト集団、ブラックドッグが立て籠っているようです。」
セフィロスはそのニュースを見ながら、日本茶を飲む。
「ブラックドッグは、立華かなでという少女を人質に取っているようです。」
「ブーーーーッ!!!」
そして盛大に吹いた。
「何だ!?どういうことだ!?かなでは仲村の家に…」
と、頭のいいセフィロスは察する。かなでがゆりの家に泊まっているというのは、ウソだ。恐らく、自分に気付かせないように解決しようと、ウソをついたのだろう。自分がどれだけ彼女を愛しているか知っているから、心配させまいと…。
「…気遣いには感謝しよう。だが…」
静かに呟くセフィロス。
「…必要ない。」
彼は修羅に、いや、鬼神になっていた。
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次回、
仮面ライダーエンズ!!
ゆり「もはや一刻の猶予もないわ。」
音無「今、助けてやるからな…!!」
ウォント「やっと、この時が来た。」
皇魔「返り討ちにしてくれる!!」
セフィロス「覚悟は、いいな?」
第七話 突入と乱闘と奪還作戦
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仮面ライダーエンズ!!前回起きた、三つの出来事!! 一つ!ユキオンナシードが、幽霊騒動を引き起こした! 二つ!アーカードがアルター能力、ライフコストを発動! 三つ!アーカードはユキオンナシードを倒した!! |
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