仮面ライダーエンズ 第十話 取り引きと研究とデザイアの秘密 |
一人の老人が、街を散策していた。しかしこの老人、ただの老人ではない。コレクの人間態だ。
と、コレクは唐突に歩みを止め、言う。
「それで気配を消しておるつもりか?姿を見せたらどうだ。」
すると、
「…へぇ〜、バレてたんだ?僕のこと。」
近くの柱の陰から、一人の青年が姿を現した。青年の名はカザリ。グリードの一人である。コレクはそちらを向き、カザリに尋ねる。
「貴様…グリードのカザリだな?」
「驚いたなぁ、本当に僕達のこと知ってるんだ。いつから気付いてたの?」
「貴様が我らの周囲を嗅ぎ回り始めてからだ。」
「最初からってわけ?鋭いなぁ〜。何でほっといたの?」
今度はカザリから質問し、コレクは淡々と答える。
「特に害はなさそうだと思ったからだ。」
「なるほど…今回僕に声をかけた理由は?」
「貴様と取り引きがしたかった。」
「…取り引き?」
首を傾げるカザリ。コレクは自分の要求を伝える。
「要求は一つ。我らデザイアと、エンズへの絶対不干渉。」
「…つまり、君達に何もするなってこと?」
「そういうことだ。代わりに、こちらからも貴様らには干渉せん。」
実は、カザリはある人物からデザイアとエンズの情報を聞き、同時にそれらを探ってほしいとも依頼されている。カザリ自身も興味があったことであり、ここで手を引くわけにはいかない。
「嫌だって言ったら?」
「…ならばこうしよう。」
コレクは怪人態に変身し、両肩から剣を抜く。
「貴様が勝てば、好きにして構わん。しかし、わしが勝ったら、手を引いてもらう。これで良いな?」
「…いいよ、それで。」
コレクの提案をのんだカザリは、怪人態に変身する。
「君達は相当強いって聞いてるけど、進化した僕に勝てるかな?」
「ほう…進化したのか。では、どう変わったのか見せてもらうとしよう!」
こうして、グリードvsデザイアの戦いが始まった。
「…」
海馬は技術開発室で、レスティーから届けられたメイカーのコアメダルを見ながら、ある人物の到着を待っていた。待ちながら、海馬はかつてレスティーに依頼したことを思い出す。
『私のコアメダルを?』
レスティーは聞き返し、海馬は頷く。
『俺は今、技術班に対デザイア用の特殊装備を開発させている。だがそれを起動するためには、コアメダルのデータが必要だ。』
『要件はわかったわ。それで私のコアを解析したいんでしょ?でも、もう少し待って。』
『?』
『デザイアの中に、メイカーっていうデザイアがいるの。そいつのコアの方がいいわ』
『どういうことだ?』
『見たところメイカーのコアの属性は、重火器系。つまり近代兵器だから、そっちの方が解析しやすいと思って。』
『なるほど…』
海馬は考える。
『よし、それまで待とう。だが…』
『わかってる。そこまで時間はかけないわ』
(そして、そのコアメダルは手に入った)
そう、必要な素材は揃った。ちなみに、このコアメダルは解析が終わったあと、レスティーの元へ返還するつもりだ。
と、
「瀬人様、お見えになられました。」
海馬の秘書を勤める黒服の男性、磯野が、来客の到来を告げた。やがて来客が現れ、海馬が挨拶する。
「お待ちしていました。インテグラ局長」
やって来たのは、ヘルシング機関という組織の局長を勤める女性、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング、通称インテグラと、その執事、ウォルターだ。インテグラはアーカードの主でもある。
「お久しぶりです、海馬社長。」
インテグラも海馬に挨拶した。そのまま、海馬に尋ねる。
「ところで、アーカードは?」
「何の問題もありません。今回あなたが来ることは伝えていないので、ここにはいませんが。」
ここで、アーカードがロストグラウンド学園にいる理由を教えよう。彼が所属しているヘルシング機関は、様々な化物を相手にする組織である。そのヘルシング機関にもグリード復活の情報は届いており、グリードによる世界の破滅を防ぐため、アーカードが派遣されてきたのだ。その際に海馬がツテを回し、アーカードがこの国で活動するために、ロストグラウンド学園の学生という仮の身分を偽造したのである。
「驚きましたよ。まさかグリードを遥かに上回る脅威が現れるとは」
言ったのはインテグラ。彼女は海馬に依頼され、機関の人員を総動員して、デザイアについての情報を調べていた。
「ただでさえグリードの調査に追われているというのに、わざわざ申し訳ない。」
海馬は謝る。
「いえ、そちらが謝罪する必要はありません。こちらとしても、収穫がありましたから。」
そこまで言ってから、
「ウォルター。」
「は。」
インテグラは執事を呼び、執事、ウォルターは古ぼけた本を取り出してインテグラに渡す。海馬はインテグラに訊いた。
「それは?」
「デザイアのものと思われる研究資料です。」
「デザイアの研究資料!?」
驚く海馬。デザイアについて情報を集めてほしいとは頼んだが、相手の研究資料などという貴重なものが手に入るとは思ってもみなかったからだ。
「ええ。解読もほぼ完了しています」
「それで、資料には何と?」
催促する海馬。インテグラは本を開き、資料を読み上げ始めた。
カザリは他にいるグリード、ガメルとメズールのコアメダルを体内に取り込んでおり、自分の風を操る能力に加え、重力操作や水を操る能力も使えるのだ。それがカザリの進化である。
「はっ!」
カザリは両手を前に向け、巨大な竜巻を放つ。
「ぬんっ!」
しかし、コレクは双剣を使って竜巻を斬り裂いた。続いて重力操作を使い、コレクの身体を宙に浮かべようとするカザリだが、コレクは自分にかかる力を、それ以上のパワーによって吹き飛ばす。
「なら…!」
今度は水流を放つカザリ。するとコレクは双剣を振り回し、そのままカザリに突進。水流を斬り裂きながら突き進み、
「ぬぇいっ!!」
「ぐあっ!!」
カザリを斬った。セルメダルを撒き散らしながらのけ反るカザリ。
「貴様の進化については知っている。だが、その程度のものか?」
コレクはデザイアとしての能力を使い、カザリの進化について知っていた。しかし、彼からすればカザリの進化は、まだまだ未熟だ。
「所詮貴様らグリードは失敗作。進化しても出来損ないは出来損ないのままということだ」
「何だと!?」
コレクの言葉に怒って格闘戦を仕掛けるカザリ。しかし、それすらコレクにとっては無駄な抵抗だ。双剣で斬りつけ、軽くあしらう。
「何より、貴様は己の欲望を優先させ、同胞を罠にかけ、使命を忘れた愚か者。貴様のような存在に、わしが負けるはずはない!」
双剣にエネルギーを込め、エネルギー波を飛ばすコレク。慌てて回避するカザリだったが、背後にあったビルが四本、跡形もなく消し飛んだ。この辺りがゴーストタウンでなければ、大変なことになっている。
「言っておくが、これでもわしは本気の三分の一も出してはおらんぞ。」
今のコレクはコアメダルが二枚欠落した不完全体、カザリと同じくセルメンと呼ばれる存在だ。にも関わらずこれだけの力を有しており、しかもまだ本気を出していない。もしコレクが完全復活しており、全力を出していたら、恐らくこの世界は一瞬で破壊されているだろう。デザイアは、シードのさらに数倍以上の戦闘力を持っている。コレクは能力こそ他のデザイアには劣るものの、戦闘力自体はデザイアの中で最強なのだ。もうコレクの勝利は決まったものである。だが、
「まだまだ…僕も全力を出したわけじゃない!」
カザリは諦めない。
「やはり失敗作だな。往生際の悪さも失敗作か!」
コレクはカザリに追撃を仕掛けた。
後藤は偶然見つけたコレクとカザリの死闘を監視していた。しかし、彼一人ではない。彼の師とも呼べる存在、伊達明も一緒だ。
「あれがデザイアか…火野からの情報だと、確かコレクだっけ?なるほど、ヤバそうなやつだな。」
伊達はコレクの強さを目の当たりにして言った。それはそうだろう。カザリは伊達すら苦戦するほどの実力者。しかし、コレクはそんなカザリを全く寄せ付けず、圧倒しているのだ。
「伊達さん。今見ている通りデザイアは強く、正面から戦うべきではありません。」
「わかってるよ後藤ちゃん。ここは漁夫の利を狙うべき、だろ?俺だって、あんな強すぎるやつとは正面きって戦いたくないからな。」
後藤からの提案で、両者が弱ったところを叩くことにした伊達。カザリが負けるか、コレクが負けるか。どちらに転んでも、二人には都合がいい。今回の場合は、ほぼ100%の確率で前者だろうが。
そこへ、
「伊達さん!後藤さん!」
映司とアンクが来た。
「おお、お前らも来たのか。」
「何だこりゃ?一体どうなってる?」
アンクは伊達に尋ねる。
「さあな。俺らも今偶然見かけただけで、何がどうなってるかなんてさっぱりだ。」
「何にせよ、ここは漁夫の利を狙って、弱ったところを叩くべきだ。デザイアの戦闘力を確認するいい機会にもなる」
「…そうだな。」
後藤の提案に従うアンク。彼にはもう、わかりきっていたのだ。例えカザリと協力して全員がかりで挑んでも、コレクには絶対に勝てないと。
しかし、
「アンク、メダルだ。カザリを助けるぞ」
映司は、そう思わなかった。これに対してアンクは猛反論。
「ああ!?お前、今の話聞いてなかったのか!?カザリは俺達にとって、いずれ倒すべき相手だ!それにお前、シードにだって敵わなかったろ!あいつは絶対シードより強いぞ!」
「だとしても!」
映司は異を唱え、再びグリードとデザイアの死闘に目を向ける。
「…一方的すぎるだろ…こんなの…」
そう、一方的すぎる戦いだった。既にカザリは満身創痍である。
「お前もカザリの二の舞になるぞ!」
「あとで好きなだけアイスやるから!」
「…ちっ!」
アイスで納得したアンク。
「あいつ相手に小細工は無意味だ。こいつで一気に決めろ!」
アンクは赤いコアメダルを三枚、映司に渡す。
「サンキュー!」
映司はオーズドライバーを装着してメダルを装填し、オースキャナーでスキャンする。
「変身!」
〈タカ!クジャク!コンドル!タ〜ジャ〜ドル〜♪〉
映司はオーズ タジャドルコンボに変身し、コレクに殴りかかった。コレクはそれをかわしてオーズを見る。
「貴様、オーズか。」
コレクはグリードを解析して生み出された存在なので、オーズについても知っていた。カザリはオーズに言う。
「邪魔しないでよ。僕には僕で、目的があってこいつと戦ってるんだからさ。」
「邪魔なんてしない。こっちもこっちで戦うから!」
「二対一か…それもいいだろう。来い!」
コレクは挑発し、激闘は再開した。
「全くあいつは…」
伊達はオーズを援護するべく、ベルト、バースドライバーを装着。セルメダルを装填し、バックルのレバーを回転させる。
「変身!」
カポーン!
伊達は仮面ライダーバースに変身した。
「伊達さん!俺も!」
「いや、あいつはヤバすぎる。だから今回、後藤ちゃんは見学な」
バースは後藤に言い聞かせ、
「うおおおっ!」
銃、バースバスターによる射撃をしながら突撃していく。バースの存在に気付いたコレクは双剣でバースバスターのエネルギー弾をさばき、左手の剣から衝撃波を飛ばす。それをかわしたバースは、オーズの側に駆けつけた。コレクはバースのことも知っている。知っているうえで、カザリ、オーズ、バースを順番に見た。
「失敗作、失敗作を封印するための道具、失敗作を解析して生み出された道具。失敗作が勢揃いか!」
「何だと!?」
「はっ!」
バースはバースバスターで射撃を、オーズは左手から炎を放つ。すると、コレクの目の前に巨大な盾が出現し、全ての攻撃を受けきったと同時に大量のセルメダルに分解され、大量のナイフへと再構築。
「行け!」
宙に浮かぶナイフはコレクが右手の剣を振るのを合図に、オーズ達へとマッハで飛んでいく。
「「「ぐわあああああああああっ!!!」」」
オーズ達は吹き飛ばされた。
「やはり失敗作ではないか。」
余裕のコレク。カザリと同じく満身創痍になってしまったオーズは、バースに耳打ちする。
「伊達さん。ここは同時攻撃で一気に決めましょう!」
「…それしかなさそうだな…!」
オーズの作戦を聞いて立ち上がったバースは、セルメダルをバースドライバーに投入し、レバーを回す。
〈BLEST CANNON〉
すると、バースの胸部に巨大な大砲、ブレストキャノンが装備された。オーズも飛翔し、左腕にタジャスピナーという円盤を生成し、オーズドライバーに装填されているメダルを三枚取り外し、今度はタジャスピナーに装填する。バースは再度バースドライバーにセルメダルを装填し、レバーを回転。
〈CELL BURST〉
オーズはタジャスピナーをオースキャナーでスキャン。
〈タカ!クジャク!コンドル!ギン・ギン・ギン!ギガスキャン!!〉
「せいやああああああああーっ!!!」
全身に炎を纏って突撃する技、マグナブレイズを放つ。バースはもう一枚セルメダルをバースドライバーに投入し、レバーを回転させ、
〈CELL BURST〉
「ブレストキャノンシュート!!」
ブレストキャノンから光線を撃つ。
「はぁっ!!」
カザリもそれに便乗し、特大の竜巻を生み出した。これだけの攻撃を当てれば、さすがのコレクもダメージを負うはず。誰もが、そう思っていた。
しかし、それは当たればの話である。
コレクは双剣の柄を連結させ、一瞬セルメダルに分解。薙刀に再構築したあと、自分の真上で振り回し、
「くだらんわぁっ!!!」
振り降ろして超弩級のエネルギー波攻撃を繰り出した。
「なっ…」
「うあっ…」
「え…」
一同はその一撃に呑み込まれる。そして光がやんだ時、
「ぐあっ…がああっ!」
「ああっ…うおおおっ!」
「うがあっ…あうあっ…!」
オーズとバースは変身を解除され、カザリは人間態に戻っていた。
「映司!!」
「伊達さん!!」
驚くアンクと後藤。
「つまらん…」
コレクは薙刀を担ぎ、呟いた。
「やはり、わしを満足させられるのは…」
そして、ある方向を向く。
「貴様だけだな。」
そこにいたのは、皇魔とレスティーだった。
「ずいぶんと派手に暴れているようだな、コレク。」
「なぁに。取り引きに応じない愚か者に、力の差を見せつけただけだ。」
コレクはカザリへと目を向け、カザリは顔を背ける。
「約束は約束だ。守ってもらうぞ」
「…」
カザリは何も言わない。皇魔はコレクに言った。
「雑魚が相手ではつまらんだろう?次は余が相手になってやる。」
腰には、既にエンズドライバーが装着されていた。しかし、
「まぁ待て。」
コレクは待ったをかける。
「わしは貴様とも取り引きをしたかったのだ。」
「取り引きだと?」
コレクは頷き、皇魔に取り引きを持ちかけた。
「貴様、我々と来るつもりはないか?」
「…何?」
突然の勧誘である。コレクはさらに続けた。
「貴様は先代のエンズと違い、欲望にまみれている。エンズはまさしく、貴様のような存在にこそふさわしい。我々とともに来れば、その欲望を満たしてやろう。貴様の望みも、全て叶えてやる。どうだ?悪い話ではないと思うが…」
「…」
考える皇魔。映司は当然、
「ダメだ!そんな話を聞いちゃいけない!」
と言うが、
「貴様は黙っておれ。」
コレクは映司を黙らせた。レスティーは考える皇魔に、そっと囁く。
「…あなたの好きにしていいわよ。私は、あなたに従う。」
「…」
そして、皇魔は答えを出した。
「…聞いてやっても良い。だが、貴様に聞きたいことがある。」
「何だ?」
「貴様らデザイアについてだ。貴様らが生まれた経緯について、余は知りたい。レスティーに聞いてもよかったが、話したがらんのでな。そして、余を誘う理由も話せ。」
「…良いだろう。今代のエンズである貴様には、知る権利がある。」
コレクは了承し、
「貴様らも聞いておけ。特に、そこの失敗作はこれくらいでもしなければ納得せんだろうからな。」
映司達に、特にカザリに言ってから、語り始めた。
「今から500年前のこと。世界に絶望した、一人の科学者がいた。どこを見ても欲望だらけ…科学者は、そんな世界に絶望したのだ。」
コレクの話からして、それがデザイアを生み出した科学者であることは間違いないだろう。
「ある時、科学者は偶然グリードの研究資料を手に入れた。そして、こう思ったのだ。」
「そんなに欲望にまみれて死にたいなら、望み通りにしてやる、と。」
インテグラは資料を読んだ。
「それがデザイアの開発理由か…。」
「科学者が世界に絶望するというのは、よくある話です。」
「ふん、愚かな自己逃避だな。」
鼻で笑う海馬。インテグラは資料に書いてあった内容を、簡単に要約して伝える。
「まず、グリードのコアメダルが生物のデータを吹き込まれて生み出されたのに対し、デザイアのコアメダルは人間から欲望を抜き取り、それを凝縮して生み出されたものです。それも一人や二人ではなく、何百何千と…」
「つまり、製造法そのものが違うということか…強いわけだ。」
「それだけではありません。グリードのコアメダルが九枚なのに対し、デザイアのコアメダルは七枚。二枚少ないのです」
「!?」
海馬は驚いた。
「意外だな。あれだけ強いのだから、二十枚はあると思っていたが…」
それに関しては、ウォルターが説明する。
「ただ単純に数を増やせば、それで強くなるというわけではありません。少なくて強いこともあれば、多くして逆に弱くなることもある。デザイアの場合も、少ないという点がさらに彼らを強くしているのです。」
「どういうことだ?」
今度はインテグラが説明する。彼女の話だと、デザイアにはグリードの情報が吹き込まれており、それによって、『グリードの方が自分達よりメダルの数が多い』という事実が伝わる。そしてその事実が、『そんなことでグリードに負けたくない』という欲望を生み出し、『足りないゆえに満たしたい』という原初の欲望と増幅し合う。さらに、『破滅を望む』という欲望を吹き込むことで欲望が三つ揃い、それが相乗効果によってさらに増幅し合った結果、あれほどまでに強大な存在、デザイアを生み出したらしい。
デザイアは生み出された目的通り、多くの世界を破壊していった。当時はこの世界が様々な世界と繋がっており、転移能力を持たない彼らでも、異世界を滅ぼすことができたのだ。
「しかし、それを快く思わぬ者どもがいた。そして、その者どもがオーズを解析して生み出したのがエンズだ。」
コレクは語る。デザイアを生み出した科学者に対して、反対の意義を唱えていた科学者達が、オーズのデータを解析して、エンズを生み出したと。
「だが、エンズを扱える者は誰一人としていなかった。貴様と、先代のエンズを除いて。」
エンズは、デザイアの力を利用して戦うための道具。そのデザイアの力が、あまりにも強すぎたのだ。そしてコレク曰く、先代のエンズは正義感の塊のような存在だったらしい。デザイアを世界を滅ぼす悪とみなし、世界を守るために戦ったのだと。
「わしは思った。あれほどの力、奴にはもったいない。もっと欲深い、そう、まさしく貴様のような存在にこそふさわしいと。だからこそ、わしは貴様を誘いたいのだ。」
「…貴様の言いたいことはわかった。だが!」
皇魔はあらかじめレスティーから受け取っていたメダルをエンズドライバーに装填する。
「余は貴様の仲間にはならん。」
「なぜだ?貴様の欲望は好きなだけ満たせるというのに。」
「余は、自分自身の手で成し遂げたいのだ。」
皇魔は決めていた。必ず、自分の手でこの世界を支配すると。誰の手も借りず、あってもそれは借りるのではなく、ただ使うだけ。誰かの仲間になるなど、もってのほか。
「そこには何者の介入も許さん!」
そう、許さない。彼のプライドが、信念が。
「変身!」
〈クレアボヤンス!ヤリ!ホノオ!ク・ヤ・ホ♪クヤホク・ヤ・ホ♪〉
皇魔はエンズに変身した。
「…それが貴様の答えか…ならば仕方あるまい。」
残念そうだが、どこか納得した様子のコレク。そして、コレクは尋ねた。
「貴様、名は?」
「…皇魔。天砕皇魔だ」
「では皇魔。受け取るがよい」
コレクは一枚のメダルを、エンズに向けて投げた。エンズはそれを掴み取り、静かに驚く。
「これは…」
コレクが投げたものは、コレクのコアメダルだった。
「それは次に会う時まで預けておく。だがその時には、それも含めた全てのコアメダルを返してもらう。」
その場にいる誰もが、コレクの行為の真意を疑う。しかし、エンズ、いや、皇魔だけは気付いていた。
コレクは皇魔を認めたのだ。エンズとして、自分達の好敵手として。
「…後悔するぞ。」
「後悔などするものか。貴様のような存在と出逢えたというのに」
コレクは使命に忠実なデザイアだ。しかし、強い相手との戦いを望む、武人気質な面もある。
「だが、これだけは覚えておけ。」
しかし、コレクは忠告した。
「エンズとはその名の通り、全てを終わらせる者。世界も、時間も、空間も、命も。そして、貴様自身の存在すらも…。」
「…」
意味深な言葉を呟いて去っていくコレク。エンズはレスティーに訊いた。
「どういう意味だ?」
「…ごめん。そのことについては、もう少し気持ちの整理をさせて?あんまり思い出したくないことなの。でも、いつかちゃんと話すから…」
「ならばさっさとしろ。余も気が長い方ではない」
エンズは変身を解除する。それを見て危機が去ったのを確認したアンクと後藤は、映司と伊達に駆け寄る。カザリはいつの間にか姿を消していた。
「映司!」
「伊達さん!大丈夫ですか!?」
「アンク…」
「何とか死なずに済んだ。あいつに感謝しなくちゃな」
「…帰るぞレスティー。」
「…うん。」
二人は映司達を無視し、帰っていく。だが、皇魔は密かに映司達を意識しながら、こう思っていた。
(せいぜい捨て駒くらいには使ってやる)
「資料はこれだけですか?」
海馬はインテグラに訊く。
「今はまだ調査中の段階ですが、これだけです。何か不備が?」
「いえ、これだけあれば十分です。それで、本題ですが…」
海馬がインテグラを呼んだ理由。それはコアメダルの製造だ。コアメダルは科学的な部類よりも、魔術的な部類に近いアイテム。それは海馬コーポレーションよりも、ヘルシング機関の方が適任だ。しかし、ヘルシング機関にも限界はある。そこで海馬コーポレーションとヘルシング機関は、グリードとデザイアという共通の敵を倒すため、協力関係を築いたのだ。
「欲望の方はセルメダルで代用できるでしょうが…やはり数の問題は無視できませんね…」
ウォルターの言った通り、コアメダルはセルメダルを遥かに上回るパワーがある。そんなコアメダルを造るとなれば、量を揃えなければならない。しかし、それは既に海馬が解決済みだ。
「心配はいらない。磯野!」
「はっ!」
磯野に命じて、何かの装置を起動させる磯野。すると、隠し金庫が出現した。扉を開けてみると、中には大量のセルメダルが詰まっている。今まで皇魔とレスティーが戦って集めた、数十万単位のセルメダルだ。インテグラはそれを見てニヤリと笑い、呟く。
「パーフェクト。」
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次回、
仮面ライダーエンズ!!
ザックス「やって来ましたコスタ・デル・ソル!!」
ゆり「ねぇ、行ってみない?」
皇魔「全く貴様らは…」
第十一話 波乱と再会と修学旅行
説明 | ||
今回はデザイアの誕生に迫ります。あと、グリードとデザイアの力の差を知っていただけるでしょう。 | ||
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