真恋姫†夢想 弓史に一生 第三章 第二話 精霊??
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〜聖side〜

 

 

 町長さんの家で御飯を頂いた後、俺は町長さんと娘さんの二人と話していた。因みに残りの人は後片付けをしている。

 

 

「もう夜も遅い。今日は家に泊まっていってくだされ。急ぎの用が無ければじゃが…。」

 

「急ぎの用は無いですよ…。でも、良いんですか?」

 

「今日は楽しい時間を過ごせました。これもあなた達のお陰…。これぐらいしないとバチが当たりますじゃ。…それに…家族を家に泊めるのに許可なんて必要なのですかな??」

 

「…いらぬ心配と言うことですか…。では、お言葉に甘えさせて頂きます。」

 

「では、準備はしておきますので…。」

 

「ありがとう…。ちょっと出てきますね…。」

 

「はい…。ただ、あまり長いこと出かけてるとお供の方々が心配しますよ。」

 

「大丈夫です…。少しだけ風に当たってくるだけですから…。」

 

「…では、いってらっしゃいませ…。」

 

 

 俺は町長さんの家を出て、城壁の所に行く。

 

 城壁には警備兵の人たちがいたが、町長さんとの一件を知っている人だったので、特別に許可を頂いて、俺は城壁上からこの町を眺めていた。

 

 決して大きな町ではない。と言ってそこまで小さな町でもない。大きさで言えば広陵の町と同等かちょっと大きいくらい。

 

 そんな大きさも影響してか、家同士は隣り合い、町の人たちは付き合いが深い。

 

 家族同士で付き合いがあり、まるで町の人全員が全員家族みたいになっている。だからなのか、この町の人たちは人付き合いが良い。そして、人を信じれる…。

 

 正直かっこいいと思う。というか人として尊敬できる。

 

 人が出来てると言うか、器が大きいと言うか…。俺にはちょっと出来そうに無い。

 

 こういうところは、漢の名家であっても学ぶべきところだよな…。

 

 今の時代の名家や高官たちは、自分のことしか考えていなく、自分の利益にならない付き合いはしようとしない。

 

 故に民たちの気持ちを知らない、考えられないのだ。それが政事に反映されるのだから、根本から破壊されていく…。結果、今のような腐敗した政治になり、町は荒れ、民たちは貧窮し、発起する…。

 

 ところがどうだ。この町は自治が確りしている。

 

 町の人同士が仲が良いのだから、隣人が困ってたら助け合い、余裕があれば手伝い、そしてより深く繋がる…。

 

 この町で問題が起こることは少ない。あるとすれば、他国から来た人がなじめずに起こる問題だが、それも人付き合いの上手さにより、時間次第で解決する。まさに『和を以って貴しと為す』俺の理想とする町がここにあった。

 

 …だからなのだろうか。俺はこの町に凄い親近感が湧く。

 

 家族と言ってくれたこと…初めこそ驚きはしたが、今は…なんとも心地よい…。この町の雰囲気もあるのだろうが、凄く安心感がある…。

 

 

「俺もこの町の一員…家族になって良いのかな…。」

 

 

〜芽衣side〜

 

 私たちは、町長さんの家で、夕飯の後片付けを終えた。

 

「あれっ? 町長さん。聖様はどちらに行かれたんですか〜?」

 

「そういやお頭がいないな…。」

 

「あぁ、彼ならちょっと風に当たってくるといって外に出て行ったよ…。しかし、ちょっと長いやもしれませんな。」

 

「では、私たちで探してきますです!!」

 

「そうですか。では私どもは家で寝床の準備でもして待ってますわね。」

 

「そうしてください〜。」

 

 そう告げた後、私たちは夜の町に出て行った。

 

 町は静かで少し不気味…。しかし、月と夜空一杯の星たちが、優しく町を見下ろし、暖かな光を届けてくれて暗さはあまり無い…。

 

 とりあえず町を一回りしてみよう、ということで歩き始めた。

 

 

「まったく、聖様も一言言ってから出かけてくれれば良いのに…。」

 

「そうだぜ、まったく。こっちの心配も少しは考えろっての…。」

 

「ふふっ。先生も愛されてますね…。」

 

「そうですね〜。でも橙里、逆もまた然りなんですよ〜。」

 

「どういうことですか?」

 

「もし、私たちの誰かが、こうして姿が見えなくなったら。お頭は、必死になって探してくれる。そういうことだろ?」

 

「愛されてるから逆もまた愛される、ってことですね…。」

 

「ふふふっ。そういうことです〜。追っては追われて、この付かず離れずの関係が大事なのです〜。」

 

「とりあえず今は、あたいたちは追わなきゃいけないってことだろ?」

 

「そうですね。早く見つけるのです。」

 

「それにしても…どこに行ったのでしょうね〜??」

 

「この町に来てそんなに経ってないから、案外道に迷ってたりするかもな。」

 

「でも先生には衛星視点がありますです。よほどのことが無い限り迷子は無いのです…。」

 

「確かに…。じゃあどこに行ったってんだ??」

 

「皆目見当が付かないですね〜。」

 

「あっ!!」

 

「「どうした(どうかしましたか〜)??」」

 

「あんまり関係ないかもしれないのですが…先生は、寿春に居た時に一度、城壁に登って町を眺めていました。もしかしたら今回も…。」

 

「町を見渡せながら且つ風に当たれる場所…あながち間違いでもなさそうですね〜。」

 

「よしっ!! 行ってみようぜ!!」

 

 

 私たちは城壁を目指して進む。暗がりの中に城壁の影が見えてきた頃…。

 

 

「んっ?? なんか聞こえないか??」

 

 奏が、急に何か聞こえると言い出した。

 

「えっ!? 何か聞こえますか〜??」

 

「ん〜…。何も聞こえないのです。」

 

「いやっ、確かに聞こえる…。 これは…歌…??」

 

「「歌??」」

 

「あぁ。めちゃめちゃ綺麗な歌声だ…。ほらっ、二人とも耳を済ませてみ。」

 

 私と橙里は耳を済ませる。

 

 

「……〜♪〜……。」

 

「っ!!? 聞こえました〜!!!」

 

「この声は…先生です!!」

 

「どこから聞こえるんでしょう〜??」

 

「ん〜…。これは…城壁の上からだな…。行ってみよう!!」

 

「「はい!!」」

 

 

 私たちは急いで城壁に行きました。

 

 城壁下では、さっきよりもはっきりと歌が聞こえます。城壁の傍には兵士が二人いましたが、二人ともその歌に聞き入ってるようでした。

 

 

「あの、すいません〜。」

 

「はっ!!どうしましたか??」

 

「あの〜、ここに男の人は来ませんでしたか〜??」

 

「それは、御使い様ですか??」

 

「あぁ。お頭の事だ。」

 

「いらっしゃいましたし、まだ上にいらっしゃると思いますよ。」

 

「分かりましたです。私たちも上に行っても良いですか??」

 

「どうぞ。御使い様のお供の人たちと存じております。」

 

「ありがとうございます〜。」

 

 

 私たちは城壁の階段を登り、城壁の上に出る。

 

 そこには、目的の人物が、欄干にもたれかかりながら歌を歌っていた。

 

「闇夜に浮かぶ望月と 光る数多の雫

 眼下に見える街並に 映る自身の心

 家族と言う二文字の音 信じられずただ驚くばかり

 暖かな皆の気遣いに 心に刻む思い

 乱世を鎮め 平和を願う 民の声が聞こえる

 心に決めた 決意と共に 地に足付け進む。」

 

 ……それはまるで精霊…。

 

 儚げで、それでいて力強い歌声、心に響くその言霊。

 

 眼前に広がるのは、まさに幻想としか表現できない光景…。

 

 私たちは、しばらく瞬きも忘れてその光景を見つめていた。

 

「んっ?? なんだ、皆か。そんなとこにいないで、こっちに来たらどうだ??」

 

「…はっ!!! しっ失礼します。」

 

「どうしたんだ、皆??」

 

「どうしたもこうしたも無いぜ!! お頭の姿が急に見えなくなったんだ、心配するのは当たり前だろ。」

 

「そうです!! もう少し、こっちの気持ちも考えて欲しいのです。」

 

「あれっ…。もうそんなに時間が過ぎてたか…。ゴメンな、心配かけちゃって。」

 

「…これからは、ちゃんと一言言ってくださいね〜。」

 

「…分かった…。」

 

「それにしても…お頭がこんなに歌が上手いとは思わなかったな。」

 

「そうですね〜。聞き惚れました〜。」

 

「私は聞いたことがありましたが…今日の歌は聞いたことが無かったのです。」

 

「あぁ、さっき歌ってたのは、俺が勝手に作ったやつだからな…。……変な歌だろ??」

 

「そんなこと無いです〜…。素敵な歌でした〜。」

 

「あぁ。なんか、胸を打つようなそんな感じの歌だったな。」

 

「前の歌も良かったですが、今日のも良かったのです。」

 

「そんなに言われると恥ずかしいな…。さぁ、じゃあ戻ろうか。明日も早くから移動しなきゃいけないし、確り休もう。」

 

 聖様は、そういうと帰路に立ちました。

 

 私たちはその後ろに付いて行きながら、先ほどの歌の歌詞について話してました。

 

「さっきの歌、どう思います〜??」

 

「…お頭の心の声って所か…。」

 

「そうですね。思いの強さを感じたのです。」

 

「ふふふっ。私は安心しました〜。聖様は聖様ですね〜。」

 

「ん?? どういう意味だ、芽衣??」

 

「分からなくて良いですよ〜奏。」

 

 聖様は聖様。あの方の決意にブレは存在しない。そこに私は惹かれたのだから…。

 

 聖様、何があっても付いていきますよ。改めてそう、心に誓う…。

 

 

〜聖side〜

 

 

 町長さんの家に着いた俺たちは、明日も早いと告げて先に眠りに付いた。

 

 明日は朝にこの町を出て、山道を抜け、北を目指す。次の目的地は首都洛陽。

 

 本当は、荊州刺史劉表さんのところに訪問に行きたかったが、病によって床に臥している、ということを蓮音様から聞いていたので、行くことを自重することにした。

 

「さて、そろそろ寝るか…。」

 

 そう思って寝返りをうった所で、枕元に人影があることに気付く。

 

 上目遣いで見てみると、よく見知った人物。橙里の姿がそこにあった。

 

「……橙里?? どうしたの。」

 

「なかなか…寝付けなくて…困ってるのです…。( ///)モジモジ」

 

 グホッグハッ…。とっ吐血が!! 吐血が止まらない!! 誰か、血を!! 血を分けてくれ〜!!!!

 

「大丈夫、みんな傍に居るから安心して(ニコッ)。」

 

「先生…。一緒に寝てくれませんか…。」

 

 ひでぶっ!!! …こっこれが北斗神拳か…。流石の破壊力だぜ…。だが、俺はこんなところで死ぬわけにはいかんのだよ!!

 

「そっ…そこまで橙里は子供じゃないだろ??」

 

「子供じゃないですが…。」

 

「そうだろ。なr『先生…。』んっ??」

 

「…先生は私と一緒に寝るのはお嫌ですか…?」

 

「嫌とかそういうのじゃなくてだな…。」

 

「…駄目ですか?(ウルウル)」

 

 

 チ~ン…。父さん、母さん…。先立つ俺を許してください…。

 

 俺はこの世界で死にます。死因は萌え死です…。でも、未練はない…かな。

 

 

「先生!! 先生!! 大丈夫ですか!!先生!!」

 

「お花畑が見えるよ…。」

 

「戻ってきてください!!」

 

 ガクンガクン!!

 

「ぐおぉぉぉ…。首!! 首が~!!!!!」

 

「良かった…。戻ってきたのです…。」

 

「殺す気か!!」

 

「ついさっきまで、先生が死にそうだったのです!!」

 

「まぁ…そうだが…。」

 

「でも、何で急に…。」

 

「それは、橙里に萌えて…と言うか、橙里のせいじゃないか!!」

 

「えぇ!! 言いがかりです。後、『萌え』ってなんですか!?」

 

「萌えってのは……。」

 

「何なんですか!! はっきり言ってくださいです!!」

 

「……萌えって言うのは、女の子が可愛く思えたときに使うものなんだよ…。( ///)」

 

「えっ…。」

 

「だから、さっきの橙里の行動が可愛かったから…その…。」

 

「かぁ〜〜〜。( ///)ボッ」

 

 顔を真っ赤にさせて、橙里はモジモジしている。

 

 そんなところも可愛い、何て言ったら倒れるんじゃないだろうか…。

 

 しばらく顔を真っ赤にしていた橙里だったが、急に何かを決心したかと思うと俺の布団に入ってきた。

 

「ちょっ!!」

 

「先生は駄目とは言ってないですよね??」

 

「ぐっ……仕方ない…今日だけだぞ。」

 

「えへへっ。ありがとうなのです。」

 

「はぁ〜…。ちゃんと明日、芽衣たちに説明してくれよ…。」

 

「はぁ〜い、なのです♪」

 

「どこまで分かってるのやら…。」

 

「…先生。」

 

「んっ??」

 

「手を出してください。」

 

「こうか??」

 

 俺は片手を橙里の顔付近に出した。

 

「両手共です。」

 

 そう言われて両手とも出す。

 

「へへっ、よいしょっと!!」

 

 橙里は、俺の左手を枕代わりに寝転んだ。なるほど、腕枕をして欲しかったってわけね…。

 

「もう片手はどうすれば良いのかな…?」

 

「もう片手は……こうするのです。」

 

 橙里は俺の右手を両手で包み込むように握ると、首の辺りに持って行って…。

 

「今日はこのまま眠るのです…。」

 

 と一言漏らした。

 

「これじゃあ寝辛くないか??」

 

「いいえ、これだと先生の温かさが感じられて安心できますです。」

 

「ふぅ〜ん。まぁ、橙里がそれで寝れるんなら、それでも良いか…。」

 

「♪」

 

「よしっ、じゃあ今日はもう寝よう!! 明日も早いしね…。」

 

「…分かったのです。先生、お休みなさいなのです。」

 

「お休み橙里。」

 

 俺は、橙里が寝付くまで、彼女の髪をゆっくりと撫でてあげた。

 

 しばらくして橙里から寝息が聞こえてきた。ただでさえ可愛らしい橙里の顔なのだから、寝顔は格別。

 

「本当に、こんな可愛い子が俺の元にいてくれるなんて…。」

 

 俺はそっと、橙里のおでこにキスをすると、寝るために目を閉じるのだった。

 

 

「…ここまでしても、先生は、私のおでこに口付けをするだけ…。手にかけてはくれないんですね…。」

 

 

 彼女のか細い声は俺には届いていなく、少し複雑で、寂しそうな女の子の顔が、俺の腕の中にあるだけだった。

 

説明
どうも、作者のkikkomanです。


前話なのですが…。

いや〜…全員でやれば、案外と格好良く、決まるのかもしれないですね。


そして、爺さん無双!! 若い聖もそのパワーに押され気味ですね…。

でも、妾が三人も居る聖が悪い!! そうだ、そうに違いない!!

…後で、聖さんを体育館裏に呼び出しておきますね(笑)


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