魔法先生ネギま!〜魔術と真祖の力を持つ者〜 第四作
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風、史。頼まれた通り迎えに来たぞ」

 

「ありがとうございます」

 

「へー、迎えに来てくれるなんて良い幼馴染じゃない」

 

「と言う訳で僕達は吸血鬼に襲われても平気だもんね」

 

ちわっす、虚崎空だ。今の会話の通り吸血鬼の噂が流行り出したため、風達に迎えに来るよう頼まれたと言う訳だ。確かこれはエヴァンジェリンが犯人なんだっけ。ま、知らない振りするんだけどな。

 

「つーか吸血鬼って、世界樹伝説と同じくらい眉唾なんだが」

 

そう言いながら桜通りを歩いていると、誰かが待ち伏せしているのが分かった。

 

「風、史、止まれ」

 

「え、何でですか?」

 

「そこのお前、何((者|もん))だ」

 

「ほう、鋭いな。二十二番鳴滝風香、二十三番鳴滝史伽とその幼馴染か」

 

「あんたが噂の吸血鬼って訳か」

 

「そう言うことだ。悪いが貴様を倒して鳴滝姉妹の血を吸わせてもらうぞ」

 

そう言うとその吸血鬼……ああ、面倒だ。エヴァンジェリンは俺に向かって飛んでくる。それに対するように俺もエヴァンジェリンに向かって駆け出す。するとエヴァンジェリンは試験管を取り出し呪文を唱え出した。

 

「『((氷結|フリーゲランス))・((武装解除|エクサルマティオー))』!」

 

しかし原作知識から予想していた俺は、懐から自作の護符を取り出し相殺させ縮地で間合いを詰める。

 

「なっ!?」

 

どうやら一般人だと思っていた俺が魔法を防いだせいで、致命的な隙を作ってしまい、エヴァンジェリンはまだ反応できずにいる。

 

「『((若雷|わかいかずち))!』」

 

すかさず俺は鳩尾を突き上げる。障壁があるはずなので不安だったが、さすがは獣人を悶絶させた技、障壁を物ともせずエヴァンジェリンを気絶させることができた。

 

「あれ、エヴァンジェリンじゃん」

 

「知ってんのか、風?」

 

知らない振り知らない振りっと。

 

「はい、私たちのクラスメイトの人です」

 

「どう言うことなんだ?」

 

そんな風に話していると向こうから何かが飛んできた。おそらく従者の茶々丸だろう。

 

「マスター、ご無事ですか」

 

「あんた、こいつの関係者か? 何がどうなってんのか、詳しい説明をしてもらおうか」

 

「私は絡繰茶々丸と言います。あの、マスターは……」

 

「いきなり襲われたんで、気絶させちまったよ。移動するなら俺が背負ってくが?」

 

ま、そろそろ裏に係わるのもいいだろ。風達も一緒ってのは考えてなかったが。

 

「いえ、それは私が」

 

「阿呆、誰が敵に人質候補を渡すか」

 

そう言って俺はエヴァンジェリンを背負う。すると、なぜか風達に睨まれた。

 

「そうですか。では、マスターの家に案内します」

 

絡繰の案内に従って森の中を進んでいくと、ログハウスが現れた。

 

「どうぞ、中にお入りください」

 

「邪魔させてもらうぞ」

 

「「お邪魔します」」

 

一応礼儀として、断りを入れる。風達もそれに倣って断りを入れていた。

 

「む、ここは……」

 

「目覚めたか、吸血鬼」

 

「な、貴様降ろせ!」

 

そう言われたので降ろしてやると、ソファーにどっかりと座り込んだ。

 

「で、何でお前は襲ってきたんだ?」

 

「ふん、誰が教えるか」

 

「負けたんだから勝者の言うことを一つくらい聞けよ」

 

「……ちっ、しょうがない。血が必要だったんだよ」

 

「何で?」

 

「一つ教えてやったんだからもう教えん」

 

「お前に掛かってる呪いに関する事か?」

 

原作で知っていたが、いざ会ってみるとこいつに呪いが掛かっているのがよく分かる。

 

「貴様、どこでそれを……と言うか貴様は一般人じゃなかったのか!」

 

「学園の奴らには知られてないが、裏を少し知っていてな」

 

「空兄、裏って何?」

 

「まあ簡単に言えば、麻帆良は魔法使いがいっぱいいるってことだ」

 

「魔法使いですか!?」

 

「ああ、そうだ。……なあ、吸血鬼。少し取引をしないか?」

 

「取引だと?」

 

「ああ。俺はお前に掛かっている呪いを解く。お前は俺の願いを一つ聞く」

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「願いとは何だ、言ってみろ」

 

「俺と風、史に西洋魔法を教えろ。俺は魔法発動体はあるが知識がないから魔法が使えないんだよ」

 

「……いいだろう。呪いが解けた暁には、貴様等に魔法を教えてやろうじゃないか。ちょっと待っていろ」

 

そう言って奥に行ったエヴァンジェリンが持ってきたのはダイオラマ魔法球だった。

 

「この中に入れ。そこでお前に解呪してもらうぞ」

 

「あ、先に行っててくれ。少し用がある」

 

「む、何だ?」

 

「いいから。俺もすぐ行くよ」

 

そう言われ、エヴァンジェリンは風達を連れ、中に入っていく。俺は空間制御で緋鞠を呼び出す。

 

「緋鞠、裏に係わることになったから、ついてこい」

 

「うむ、承知した」

 

そんなやり取りをした後、すぐに俺は魔法級の中に入った。

 

「ようやく来たか。む、その猫は?」

 

「こいつが用事だ。そう言えば紹介がまだだったな。俺は虚崎空。こっちは緋鞠だ。あんたの名前は風達に聞いたからいいぞ、エヴァンジェリン」

 

「そうか。他の奴等は奥にいる。早く解いてもらうぞ」

 

「はいはい、分かってるって」

 

奥に進んでいくエヴァンジェリンに俺はついて行く。他の皆は、少し歩いたところにある広場にいた。

 

「あ、やっと来た!」

 

「緋鞠ちゃんを連れてきたですか?」

 

「ああ。んで、エヴァンジェリン。呪いは二つとも解けばいいのか?」

 

「二つだと?」

 

「一つは術式は綺麗だがかなり前に掛けられた呪い。もう一つはかなり強引に掛けられてる呪いだ」

 

「そう言うことか。なら強引に掛けられてる方だけでいい。もう一つのは解呪するとどうなるか分からんからな」

 

「そっか。なら少し待ってろ。術式に手を加えなきゃならん。『祓え、雪霞狼』」

 

俺がそう呪文を唱えると、右手の人差指に着けていた指輪が光り、槍に変わった。

 

「何だ、その槍は?」

 

「こいつは『((七式突撃降魔機槍|シュネーヴァルツァー))』、銘を『雪霞狼』つってな。こいつには『((神格振動波駆動術式|DOE))』が刻まれてるから、あらゆる魔力や気を無効化できるんだ」

 

「何だとっ!?」

 

「今からその術式を弄って無効化したくないものは出来ないように変えるんだ……よし、できた。解呪するから動くなよ」

 

俺はエヴァンジェリンに穂先を向け、

 

「『破魔の曙光、雪霞の神狼、鋼の神威をもちて我に悪神百鬼を討たせ給え』!」

 

高速詠唱のスキルのおかげで少し短くなった祝詞を紡ぎ、薄皮一枚だけを切り裂く。

 

「っ! 貴様、傷を付けるなら先に言え!」

 

「けど、ちゃんと解呪出来てるだろ?」

 

「む、確かに解けているようだが魔力は回復してないぞ」

 

「ああ、そりゃ封印結界の所為だろ。よかったらそれもどうにかしてやろうか? もちろん貸し一で」

 

「……本当にできるんだろうな」

 

「疑り深いな。しょうがない、緋鞠、あの姿になっていいぞ」

 

俺がそう言うと緋鞠は俺の頭の上から飛び降り人化する。

 

「うわっ、緋鞠が女の人になった!」

 

「待て、それは妖怪だろう! それなのに何故妖気が全く漏れていないのだ!」

 

「俺が作った緋鞠の首にあるチョーカーのおかげだよ。こいつには認識阻害の術式とか、色々組み込んであるからな。で、どうする?」

 

「そうだな、頼むとしよう」

 

「あ、じゃあその貸しで俺のことを貴様って呼ぶのを禁止するな」

 

「くっ、仕方がない。虚崎でいいな」

 

「ああ、それでいいぞ。そうだな、ネックレス、チョーカー、指輪の内どれがいい? 特別に魔法発動体にしてやるよ」

 

「む、主殿。私はそのようなことを聞かれた覚えはないぞ」

 

「猫が指輪とかしてたらおかしいだろうが」

 

「それなら指輪で頼む」

 

「了解。『開け、工房への道よ』」

 

エヴァンジェリンの要望を聞いた俺は、呪文を唱えて工房への道を作る。

 

「何だ、それは」

 

「ああ、そう言やこれは俺にしか見えないんだったか。『入室許可、鳴滝風香、鳴滝史伽、緋鞠、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル、絡繰茶々丸』」

 

「わっ、いきなり道が現れたです!」

 

「ほら、ついてこい」

 

皆を連れ立って中に入ると様々な道具の材料やそれを加工するための道具が置かれた広い部屋に出た。

 

「何だここは?」

 

「ここは俺の工房だ。さて、早速俺は作業を始めるからその間にエヴァンジェリンは風達に裏のことを教えてやってくれ」

 

そう言った後俺は材料置き場の方から必要な材料を取っていき、術式を組んでいく。一時間程度で作業が終わったのでエヴァンジェリン達の下へ行くと、大まかなことは説明し終えていたようで今は緋鞠が風達に色々聞かれていた。

 

「ほらよ、エヴァンジェリン。魔法発動体としても最高級の物にしておいたぞ」

 

「ふむ、緋鞠から聞いていたが、見事なものだ」

 

「風、史。これをつけとけ」

 

そう言って俺は風達にネックレスを渡す。

 

「いきなりどうしたの?」

 

「一般人が裏のことを知ったら、記憶を消されるかもしれないからな。そう言うのを防ぐ術式を組んでおいた」

 

「記憶を消されるですか!?」

 

「ああ。そう言うこともあるだろ、エヴァンジェリン」

 

「そうだな、ありえなくもないだろう。虚崎、それより大変だぞ? おそらく((別荘|ここ))から出たらじじいに呼び出されるだろうからな」

 

「だろうな。まあ、別にいいだろ。ちょっとした奥の手もあるしな。つか、虚崎って言いにくそうだな。別に空でいいぞ」

 

「そうか。私もお前のことは気に入った。エヴァと呼べ。ほら、鳴滝姉妹も来い。早速西洋魔法を教えるぞ」

 

「なら俺は初心者用の魔法発動体を用意しよう」

 

そうやって俺たちは別荘内で一日経つのを待っていた。

 

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