相良良晴の帰還6話 |
正徳寺での会談(と親子?喧嘩)が終わり、一同は尾張の本城である清洲城に戻った。
その道すがら、信奈は今回の内容に満足したらしく、良晴に後で褒美を与える旨を伝えてきた。
そのため、港での領主公認の通商許可証と元手となる金銭を求めてみると、あっさりと二百貫の褒美と、信奈の花押(かおう)(現代でいう実印のようなもの)が入った証書を届けると返された。
しかも明日中に。
即断即決を尊ぶ、信奈らしい素早さである。ただ、その代わりに家に関してはしばらく他の下級武士と同様((長屋|ながや))(現代でいうアパートのようなもの)に住むよう命じられた。
これは、彼女個人としては良晴を信用しているものの、織田軍に来たばかりの(というか先日戦場で自身を売り込む前には尾張の領民ですら無かった)良晴に屋敷を与えるということによる、尾張軍の旧臣達と良晴との無用な諍(いさか)いを防ぐ意味もあった。
給金(現代でいう毎月の給料)以外の金銭を与えることが特別扱いで無いという訳では無いが、やはり武士として個人の屋敷を持つというのは別格なのである。
無論、良晴も悪目立ちなどするつもりは無いため、そのことに関して文句は無かった。
信奈との話が終わった後、犬千代に連れられて向かった先の三の丸にある下級武士用の長屋、その一つを、良晴は住処として得た。
そして、お隣さんである犬千代と共に、生垣代わりに植えられているウコギ(薬草の一種)をかじりながら、彼女との会話を楽しんでいた。
「良晴は南蛮の人?」
「いや、南蛮出身では無いなあ。まあ、昔南蛮人と仕事してたから南蛮の言葉はちょっと話せるけど。」
というか正確に言えば過去に政略結婚関連で南蛮の姫やシスター等の外国人とも結婚したため、基本的に当時日本と関わっていた国の言語は話せる。
これは頭が良い悪いとは別に、日常的に覚えなければ非常に不便だったからだ。(例;醤油とって⇒Why?という状況が毎日続くはめになる。)当然、そんなことはおくびにも出せないが。
犬千代は彼のその答えを聞くと、目を輝かせながら様々な事を聞いてきた。
その一つ一つに答えながら、彼はかつて過去の世界で結婚後に彼女が言った事を思い出していた。『自分が背が小さかったり、胸が無いのはあんまり良いものを普段食べてなかったから。もっと前からちゃんと食べていれば育った。』
無論、食べ物を変えただけで、劇的に体型が変わるのかという点については議論の余地があるが、彼女にとって、後に悔やんだ事の一つであったのは間違いがない。
又、当たり前のように人が死んでいく時代であるため、結婚が早く行われるこの世界において、母子共に健康であるために、栄養を取る事は、現代以上に重要であった。
そこまで考えると、良晴は犬千代の頭にポンと手を乗せ、撫でながら話した。
「ウコギだけで、お腹は満足したか?」
犬千代は首を振って否定の意を示した。薬草だけで腹一杯など望むべくもない。ただ、金銭の余裕もなく、又、険しい山から食料を得る技術もない彼女には、これ以外、定期的に得られる食料はない。そう答えると、良晴は親指で自らを差し示し、こう言った。
「俺に任せろ。」
6時間後・・・
良晴に呼ばれた犬千代は、自分の目の前にある光景が信じられなかった。
山菜や茸、兎の肉を使った具沢山の味噌汁。
焼いて塩を振った鶏肉。
そして・・・ほかほかに炊けた御飯。
匂いをかいだだけでよだれが止まらなくなりそうな料理達が用意されていた。
「お金・・・持ってたの?」
「いんや、山に入って、片っ端から金になりそうだったり、食えそうなもん取ってきた。」
簡単に言うが、そういった事を行う場合、草木を見分ける知識だけでなく、この辺りの山の地図が頭に入っていないと無理だ。加えて盗賊や野生動物などもいる。
犬千代はその疑問を問いかけた。
「んー、まあ、剣の腕は弱くはないし、そこら辺の知識は、漢方医とか、マタギから教わったよ。」
変わってる。普通、そのような知識を、しかもマタギなんかに教えを乞うてまで知りたがる武士はいないのに。そう思っているのが顔に出たのか、良晴から話しかけて来た。
「変か?」
「他の武士達はそんなことはしない。」
しまった。冷たい言い方になってしまった。気を悪くしたのではないかと内心では心配していると、穏やかな口調でその続きが語られた。
「そうだな、俺も最初やりたくなかったよ。」
「ある時・・・まあ自分が所属していた軍が山んなか散々追い回された事があってね。」
「結局生き残りはしたけど、当然部隊は半壊。仲間たちを大勢死なせたよ。」
「それから、まあ、自分の未熟さに嫌気がさしてね。一人の時間に森の中うろちょろしてた。『あの時ああしていれば』とか女々しいこと考えながらね。でまあ、何にも知らないの隠していてもしゃーないから、頭下げて回った。」
「町民とかに?」
「教えてもらうのに地位も何もないだろ。生き残るためにはどうしても必要になる事ならなおさらな。ほら、煮えたぞ。」
作った料理を二人分よそった良晴に、犬千代は慌てた。『長屋の塀代わりに生えているウコギが食えますよ』としか教えてない対価にはこの料理は高すぎる。
「お金無い・・・」
「いらねえよ。俺が好きで(お前が元気でいてほしいからの意味)食わせるんだから遠慮するな。」
彼女の頬が朱に染まった。結婚適齢期をむかえてはいるものの、体型が貧相な彼女に言い寄ってくる男など居なかったのだ。〈彼女は知る由もないが、それに加えて信奈のお気に入りに手を出すと後が怖いという理由もあった。〉なるほど、それならば遠慮なく頂いて良いだろう。嬉しそうに御飯をパクつきながら、一応、注意をいれる。
「まずは・・・お友達から。犬千代は軽い女じゃない。」
「ん?ああ、勿論お前が飯なんかで寝返らない事ぐらい知ってるよ。これからもよろしくな。」
なんか妙なことを言っているが、仲良くなれたんだろう。そう思いながら、良晴もご飯を食べ始めた。
一応言い訳(?)しておくが、彼は別に特別異性の感情に鈍い訳では無い。
彼女は基本無表情な上に、たまによく分からない事を言うため(自分探ししたら自分を見失った等)婉曲的な表現をされると対応に迷って無難な理解をする道を選んでしまっているだけである。
そして、1時間ほどで食事が終わった後、犬千代が良晴を連れていった先、この長屋の主である浅野家にむかった二人を待っていたのは、ある意味(・・・・)正史に沿ってはいるが、彼の記憶に無かったイベントだった。
「おうおう、よく来なさったのう。犬・・・何とか殿に相良良晴殿。」
「犬千代。なんで来たばかりの良晴の名前を覚えてて私を忘れているの?」
「すまんのう。先ほど丹羽長秀(にわながひで)殿からそちらのお侍さんへの伝言を預かってのう。そのせいか他の事を忘れてしもうたわい。」
「万千代(まんちよ)が?何?」
犬千代は浅野の爺様と話しながら首をひねった。自分と同じく信奈が気に入っている者の一人だが、どちらかというと内政向きであんまり現場には口出ししないタイプなのに。
「うむ。『ねね』よ。こっちに。」
その言葉で奥から顔を出したのは美少女というにはまだ幼すぎる少女。彼女が近寄ると同時に、爺さんは爆弾発言を投下した。
「良晴殿?」
「はあ・・・何でしょうか?」
「ねねを・・・よろしくお願い申す。」
「えっ・・・?何だそれ?」
何が起きた・・・
楽しげにひっつくねねと、横から吹き荒れる殺意の波動を前に、良晴はしばらく呆然としたままだった。
(第六話 了)
説明 | ||
織田信奈の野望の二次創作です。素人サラリーマンが書いた拙作ですがよろしければお読み下さい。注意;この作品は原作主人公ハーレムものです。又、ご都合主義、ちょっぴりエッチな表現を含みます。 そのような作品を好まれない読者様にはおすすめ出来ません。 追記:仕事の合間の執筆のため遅筆はお許し下さい。 |
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