リリカルなのは×デビルサバイバー |
翔門会、という宗教団体が存在する。
バ・ベルという名の、悪魔召喚サーバー……それを、ナオヤという人物の手を借りて、作成することに成功する。
しかしそれこそが、東京封鎖という事件を引き起こす切掛の一つを作ってしまう。
まぁ……世界を守る結界を維持する鬼神の一柱を倒し、悪魔が人間界へ進行する切掛を作ったのも彼らなのだから、ある意味で言えば、全ての元凶とも言える。
それはさておき、翔門会の人間を見分ける方法は、とても簡単である。紅色のローブを身に纏い、なんか電波なことを言っている奴が居たら、間違いなく翔門会の人間である。
ここまで、翔門会についての悪い部分を語ったが、勿論良い所もある。一つは元教祖のカリスマ性、そしてもう一つは神の試練を乗り越えるというその意思だ。
そして、その元教祖の娘であり、現教祖の九頭竜天音と、カイトは対峙していた。
「何のごようですか? 今更私になど、なんの用もないでしょう?」
刺々しい言葉。
しかし、そのような態度を取らせてしまっているのは、他でもない……カイト自身なのだ。
「ごめん……。でも、お前に用がなくても。俺がおまえに用がなくても、お前の身体に用がある奴が居るんだ」
カイトの言葉を聞いた瞬間、九頭竜は自分の体を庇うように、カイトから距離を取り始めた。
「はて?」と、九頭竜のようすに、カイトは疑問を覚え、自身が先ほど言った言葉の意味を……捉え方次第では、セクハラとも取れる発言に気づいた。
「ちっ、違うっ! セクハラなんかじゃないぞっ、ていうか、セクハラするならお前みたいな貧相なやつじゃなくて……」
と、明らかに言ってはならない言葉を言ってしまいそうになったカイトだが、この場一帯を神聖なる力が包み始めた。
神聖なる力……そう形容したが、実際の所は唯の巨大な力の塊だ。其の力の塊が、九頭竜を中心として集まっていく。
「こ、これは……っ!? もしや唯一神の!!」
その力の根源に気づいたものの、九頭竜はその力に抗うことが出来ず、身体が崩れ落ちていく。
その様子を少し離れた所から、カイトは眺めている。
何が起こるかわからないうえに、相手はあの幾つもの名を持ち、世界において最も信仰され、最も人を殺した神だ。
「…久しぶりだな。アベル」
「あぁ、そうだな。……ちなみに、此処ら一帯は人払いをしてある。お前が幾ら喋ったところで、影響は少ないぞ」
言葉とは魔法だ。
言葉とは力だ。
誰かがそう言った通り、神の言の葉は普通の人にとっては、樹に水をやりすぎるようなもの……つまりは、毒なのだ。
だからこそ、古の時代から巫女という存在のように、神の言葉を代弁する者が必要なのだ。
「そのようだ。全く、力を持つとは色々と面倒だろう?」
「知るか。で、何のようだ」
話を早々に切り上げ、さっさと本題に入るよう促す。
「私をあれほど慕っていた、アベルは何処へ行ったのか……。まぁいい、メタトロンからの話のとおりだ。四大天使の姿が消えた、忘れてはいないな?」
カイトは頷く。
数時間前のことを忘れるはずもない。
「基本、天使が私に反抗することはない。意見を言う事はあるがね」
「まぁ、だろうな……?」
疑問形になったのは、ルシファーの事を思い出したからである。
彼は元天使であり、魔界最高レベルの力を持つ者だ。そんな奴が神に反抗したことを思い出し、カイトは苦笑い気味になってしまったのだ。
「そんな彼らが消えたのだ。恐らくは、我が為に行動しているのだろうが、なにぶん時期が悪い。メタトロンの傷は未だ癒えておらぬうえに、汝のような者も居る」
「最悪、今の膠着状態が解け、三界を巻き込んだ戦いが起きる……か」
そして、そんな状況を誰も望んではいないのだろう。
「それで、俺に何をしろと?」
「四大天使を連れ戻してもらいたい。手段は問わない、人間界で倒れれば、私の方で回収するさ」
「お前らでやれよ」
拒絶の意を告げると、少し愉快そうに神は言う。
「言ったはずだ。メタトロンが倒れ、我の最高戦力達が離反……ならば、汝に頼るのが一番と思ったのだがね。いや、いいのだよ? もし我らが失敗すれば、戦が起こるだけよ」
「……くっ!」
「その言葉の意味を、考えるといい」
神の力が消えていく。
その様子を見ながら、カイトは一人思うのだ。選択肢なんて、ないじゃないか! と。
* * *
翔門会から立ち去ったカイトは、各地を転々としていた。
各地とはいっても、東京都内を彷徨っているだけなのだが。
衛国寺。
日本を…強いては世界を守るために、結界を張っていた鬼神の人柱である、ビシャモンテンが居た場所だ。
カイト達に撃破されたものの、魂まで滅んだわけではなく、カイトの手により再召喚され、今もこうして結界を張り続けている。
「………」
カイトは財布を取り出すと、五円玉を賽銭箱の中に投げ込む。
別にビシャモンテンを、信仰している訳ではなく、唯考えを纏めるために、静かな場所に行こうとした結果、衛国寺に辿り着き、暫くここに居させてもらう礼に、五円玉を放り込んだわけだ。
「どうすっかな…」
いや、悩む必要なんて無い。選択肢なんてあってないようなもので、自身が動かなければならないことに、気づいているのだから。
「どちらにしても、俺が居なくなったところで……。ならっ!」
一気にコーヒーを飲み干すと、その缶をゴミ箱へと放り投げ、衛国寺を一人出ていくのだった。
* * *
「よっ、カイト」
「なんだ、アツロウか」
カイトを呼びかけたのはアツロウ(木原篤郎)だ。
彼もまた東京封鎖の被害者である。
「なんだ。とは、ひっでーなぁ」
「気にすんな」
「気にすんな…って、それは俺が言う台詞のはずだけど…まぁいいや。それよりも、学校には来いよ? 担任も嘆いてたぜ? 後一年で卒業なんだから、もう少し頑張れってさ」
「そうか……学校、かぁ。あ、そうだ」
何か思いついたように、カイトの動きが止まる。
アツロウもそんなカイトの様子をおかしく思いながら、再び声をかけた。
「お、おい? どうしたよ」
「いや、ちょっと話しておかないと、いけない事があってさ」
「話したいこと?」
カイトは神から聞いた話を、アツロウに伝えた。
話を聞いている内に、アツロウの表情がどんどん青くなっていく。
「ちょっ、ちょっとまった!!」
八割方話した所で、アツロウが叫ぶ。
ちなみに、今カイト達が居るのは、一般の人が普通に居るような公共の場だ。突然叫んだ少年の方を見るのは当然であり、その事に気づいたアツロウは、少々顔を赤くする。
「おいっ! 神からの話って大丈夫なのかよっ!」
今度は先程とは違い、小さな声で話す。
「嘘はついてないだろう。腐っても神だし、」
「その黙ってるって所が問題だと思うけど…。それで、お前やっぱり行くのか?」
カイトは頷く。
カイトの返事を聞くと、アツロウは俯き「そっか」とだけ言った。
「それで、アツロウに頼みがあるんだ」
「……俺に?」
「うん。確かだけど…COMPから俺の居場所を把握できるって話だろ?」
「え〜……っと? あぁ、思い出した。ナオヤさんがそう言ってたっけ?」
全てが終わった後、ナオヤを折檻…ゲフンゲフン。じゃなくてお話を聞いて、COMPの真の役割などをナオヤから聞いていた。
その中の一つがCOMP。
本来は神との戦いのために、魔界へ渡ったカイトとの連絡手段でもあるのだ。
「んで、COMPの座標も把握出来るんだろ? 確か」
「えっと、『戦況を把握するためには、位置も重要だ』だっけ? ナオヤさん曰く」
「それで、一日に一回……いや、週に一回でもいい。俺の安否を確かめてほしいんだ。」
「カイト……。分かった、何かあったら俺が何とかするって!」
自信満々に言うアツロウに、満足そうに微笑みながら、カイトは頷いた。
「それじゃ……また」
「おう! またな」
アツロウの後ろ姿を見ながら、一人落ち着く。
友だちとは、存外悪いものではない、と。
* * *
次の日…翔門会にて。
「良いのだな?」
九頭竜の身体を使い、神は一つ確認を取る。
「あぁ。行くのは決めた」
「ふん。ならば、細かい説明をしておくとしよう。お前が今から行く世界は、一言で言えば、『神から見放された世界』だ」
その言葉にカイトは目を丸くする。
「神に見放された……?」
「そうだ。もっと言えば『すべての神と呼ばれ、呼ばれた者達』かな」
「うわぁ……」
この言葉から分かることは、神の加護。悪魔と貶められた者達の加護が無いということだ。
「それ、微妙に不味くないか? つまり、世界を守る結界さえ存在してないって事だろ? 地上が魔界とつながる事も……」
カイトの不安を払うように、神は、笑いながら。
「言ったはずだ。すべての神に見放された……と。それは当然、魔界に住む一部の者達に神と呼ばれる者達も含むのだよ」
「逆転の発想か。悪魔が手を出さなければ、魔界は人間界に手を出さず。人間もまた、人間だけの力では、魔界に行く事はできない……か。だけど、神と呼ばれし者達が居ない世界なんて、少々厄介かもな」
もしかしたら世紀末の世界? いや、そもそも東京封鎖自体世紀末だったから、大丈夫かっ! ハハッ。
などとカイトが思っていると。
「そんなに深刻に考えることはないよ。神々の加護のない世界…それ以外は普通だよ。大体は」
「大体はね……そこが不安なんだがな。それで、他には?」
「君には、今の時代から大体二十年程前の時間帯に飛んでもらう。四大天使の力の波動を追った所、そこで途絶えてしまっていてね」
「なるほど…その時代から捜索すれば良いってことだな。しかし、十年前か。小学生ぐらいか、俺」
ははっ。と乾いた笑いをカイトがする。
神そんなカイトの様子に、一瞥くれるだけで、話をすすめる。
「それに伴い、お前の肉体をそれ相応に若くする。ついでにリミッターもかけておこう。今の君の力だと、あの世界にとっては、過剰戦力すぎる」
「過剰戦力……か。確かにそうかもしれない」
人は自分と違う者に対し、恐怖心を抱く。それが、強大な力であればあるほど。
もしそうなってしまえば、どのような場所でも、生きることは難しくなる。
「分かった。けれども、俺が居ない間に人間界に手を出してみろ……? その時は容赦はしない」
笑いながら――眼は笑わずに、カイトは神に言う。
神もまた苦々しく「分かっている」とだけ言った。
「それと金銭と住居の方も彼の地に用意はしてある。まぁ、もう一度楽しい楽しい、小学生生活を楽しむのだな」
「小学生、ね。二週目って事を考えると、かなり気楽な生活が送れそうだよ」
「ついでに、転入届も申請しておいた。楽しみにしてろ」
頭を抱えるカイトを楽しく見ながら、神は言い放つ。
「では、送ろう」
神はそう言うと、カイトの方に手を向ける。
すると、カイトの身体を不思議な光が包みこんでいく…そして、光が消えた時、カイトの姿もまた消えていた。
その様子を見届けた神は、ふぅと一つため息を付いた。
「我が主よ!」
「……メタトロンか」
一息ついた時、神の前にメタトロンが姿を現した。
「よろしいのですか? 確かに奴は東京封鎖を解除するために、悪魔の送還という道を選びとった…。しかしっ! 奴は魔王になる者なのです! それを……」
「私の考えにケチをつける…と? 偉くなったものだな、メタトロン」
冷たく重い声で、あたりに響く。
その声を聞いたメタトロンは慌てたように「そのようなことは……!」と弁解した。
「まぁいい。汝が心配するのも当然のこと。だが、その心配も杞憂よ…今のア・ベルではな…」
姿なき少年のことを思い浮かべながら、神は言う。
「傷つくことを恐れ、殻に閉じこもっている人間ほど、弱いものはないのだからな」
神のその笑に、メタトロンは安堵する。
眼の前に居る存在は何時までも、自分の信じる――世界の管理者であることを。
「だが――」
ふと、神は独り言のように呟く。
その表情には先程の笑はなくなり――否、何かを思うように懐かしむような声で、表情で言うのだ。
「されど、閃光のように再び輝く事のできるもの……それもまた、人なのだと」
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