虚空の生存者 |
第1話 深淵の相対者
終わりにて放つ叫びは断末魔
では、始まりを伝える一声は何か
配点:(終と始)
「全っ部、お前のおかげだ。サンキュな」
「この先、どうなるか・・・、正直誰にもわからへんけど、
ウチはアンタ忘れへんで?」
「世界、上書きされても、絶対に忘れない・・・絶っ対。
・・・それだけ!」
「・・・食べて。おいしいよ?」
「何つーか・・・オモロかったわ。また何かやるやろ、お前。
したら呼べや・・・絶対な」
「アンタには興味ある。
死ぬほど、興味ある」
「みんなあなたに感謝してる・・・。もちろん、私もだよ?
だから・・・ご褒美をあげます」
「俺は変わった気がする。
何ていうか・・これからは、色んな事にちゃんと向き合うよ」
「見えるんだ、俺には。
復元した世界は、きっと前よりいい世界になる」
「私は・・・君について来て、良かったと思う。
だから・・・礼を言わせてくれ」
「この先に待つ未来次第では、再びお前の敵として、
実力主義を実現してやる」
「本当は、もう少し話したかった。
だから・・・世界が、復元しても絶対に忘れたり・・・しない」
仲間達の姿が近付き、離れ、そして消えていく。
いや、帰っていく。前と同じ、しかし、確かに変わった日常へと。
そして、最後には少年が一人、残された。
「・・・・・・」
少年はただ、空を見上げ、
「ありがとう」
そして、
「じゃあな」
ただそれだけを呟いた。
「気づいていたのかい、《輝ける者》」
声に振り向くと、そこにいたのは赤と黒のストライプ柄の服を着た白髪の男だ。
「なんとなく、程度だけどな」
「・・・そうか」
男が、顔を伏せる。
「これは、私にはどうにもできない。たとえこの身が欠片ではなく万全であったとしても。
・・・それほどまでに、君の存在は大きくなりすぎた。
大きすぎる力は、世界にとって異物だ。だからこれは私の・・・」
「お前のせいじゃないし、俺はお前の事、恨んでないよ。むしろ、感謝している」
男の言葉をさえぎるように、少年が言葉を紡ぐ。
「お前がいなかったら俺たちは何も出来ずにいたかもしれない。
何も選べず、死んでいたかもしれないんだ」
でも、
「俺たちは自分で選んで、ここまで来れた。だから―――――」
それは滅多に浮かべない満面の笑みで、
「ありがとう、《憂う者》。お前がいてくれて、本当によかった」
「・・・・・・!そう、か」
飾らない感謝の言葉に男が驚く。
「・・・アル・サダクだ」
「ん?」
「私の名だ。君のおかげで私の憂いは晴れた。故に《憂う者》の名はふさわしくない。
それに、この名の方が気に入っているしな」
「そうか。・・・っ!」
瞬間、少年の顔が苦痛に歪んだ。
体にノイズが走り、手を見れば、少しづつかすんでいくのが見てとれた。
「もう、時間みたいだな」
「・・・ああ」
天を見上げると、真上を中心として星がゆっくりと回転し始めた。
「うん、綺麗だな」
満足そうにつぶやいた少年に、男が問いかける。
「君はこの結末に後悔していないのか?」
「・・・んー」
天を見上げたまま、少しだけ考え、
「欲を言えば、もう少し生きたかったっていうのはある」
だけど、
「これで良かったと、そう言えるくらいには満足だな」
「・・・ああ、君はそういう人間だったな」
呆れたような声に少しだけ苦笑する。
「・・・すまない」
「え・・・?」
驚き、振り返る。その瞬間、
「くっ・・・?」
少年の足元と頭上に複雑で巨大な方陣が展開された。
次いで、方陣の中と外を区切るように光の壁が形成される。
その方陣は少年には見覚えのあるものだった。
場所は長田町、国会議事堂の地下。用途は―――、
「召喚用の方陣!?」
「正確に言えば、それを反転させたものだ」
召喚の方陣の反転。つまり―――、
「送還・・・?」
「そうだ。これで、君が存在できる世界へと送還する」
「って、おい!お前、さっき、自分の事欠片だって言ったよな!
そんな状態でこんな大きな術なんて使ったら・・・!」
「・・・ああ、私は実体を保つことが難しくなるだろう」
「だったら・・・!」
「侮るな、人間!」
「っ・・・!」
怒声。
その剣幕に怯む少年に、微笑みながら言う。
「いつか君は言ったな『友を救うのに理由はいらない』と」
だから、
「私に栄誉をくれ、《輝ける者》よ。『かけがえのない友を救った』という小さな、されど、何物にも代えがたい栄誉を」
「―――――――――、ずるい、な」
言葉を無くし、俯く少年はそう絞り出すように言った。
「そんなこと言われたら、俺はお前をを止められないってこと、分かってるだろ・・・」
「だから言っただろう。すまない、と」
そうだな、と呟き力なく笑う。
「これを持っていくといい」
そう言って男が指を鳴らすと、少年の前に一冊の辞典大の本が出現した。
「これは?」
「君に必要となる物だよ」
「・・・そうか。ありがとな」
「どういたしまして、と言うんだったね、こういう時」
少年が頷くと、男も嬉しそうに笑う。
その間にも、方陣はゆっくりとその輝きを増し、臨界点を迎えようとしていた。
だから―――――
「またな、サダク」
「ああ、また会おう。天宮 玖狼」
その言葉を合図としたかのように方陣の光は炸裂した――――――
べべベン ベンベン♪
弁士
「さて、今回はこれにて終了!
少年、天宮・玖狼は男、アル・サダクの手を借りて異世界へと旅立つのでありました。
彼を待つのは、一体どのような運命でありましょうか。
まぁ、それもこれもこれからのお話。
物語の終わりは、新たな始まりへとなり候。
次回『街中の召喚師』にて、またお会いを」
べべベン ベンベン♪
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にじファンより移転してきました。 この作品は「境界線上のホライゾン」と「デビルサバイバー2」のクロスオーバーをベースに様々な作品の設定を盛り込んでいます。 不快に思う人はご注意ください。 |
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