仮面ライダーエンズ 第十一話 波乱と再会と修学旅行
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「ヤッホー!!」

ザックスは飛び上がった。今彼がいる場所は、ロストグラウンド学園ではない。世界でも有名な常夏のリゾート地、コスタ・デル・ソルだ。今日は待ちに待ったロストグラウンド学園修学旅行の一日目。こういった行事が大好きなザックスは、思いっきりはしゃいでいる。

「やって来ましたコスタ・デル・ソル!思いっきり遊ぶぜ!!」

「はしゃぐなザックス。俺達は遊びに来たんじゃないんだぞ?」

ザックスの気分に水をさすクラウド。

「んなこと言ったって、あのコスタ・デル・ソルだぜ!?お前もいつかは来たいって言ってたじゃねぇか!」

「それとこれとは話が別だ。」

クラウドは勉強と遊びの両立ができているので、誘惑されない。

「さっさと班に戻るぞ。」

「…は〜い…」

クラウドに言われ、ザックスは渋々従った。

 

 

 

 

コスタ・デル・ソルはあくまでも宿泊地。今回の旅行では五人一組の班にわかれ、様々な観光地を巡り歩き、外国の文化というものを学習する。ちなみに皇魔の班は、皇魔、レスティー、音無、ゆり、かなでの五人組だ。

「ここからは自由行動だ。予定はお前達が前もって決めていたはずだから、予定に従い、時間を守って、必ず全員で再びここへ集合すること。では、解散だ。」

セフィロスから簡単な注意事項を受け、ついに始まる自由行動。この自由行動はそのまま、時間内だったら何をしてもいいというものだ。ビーチで泳いでも構わない。

「というわけで、午前中はビーチで遊んで、午後から観光地を巡りましょ♪」

班長を勤めるゆりは、行動を決める。副班長はかなでだ。ちなみに、なぜ皇魔が班長副班長に立候補しなかったかというと、本人曰く嫌な予感しかしないからとのこと。

 

そんなこんなで、まず海水浴から始まった。

「音無くん♪どう?」

ゆりは今日のために買った水着を着て、音無に見せる。紫を基調としたビキニだ。

「あ、ああ、似合ってるよ…」

音無には少々刺激が強かったらしい。

「結弦。どう?」

今度はかなでが、自分の水着を見せる。白を基調としたワンピースだ。

「うん。いいんじゃないかな?」

音無から見て、ぴったりだった。

「あっちでビーチバレーやってるから、行きましょ!」

「行きましょう結弦。」

「わっ、ちょっ!引っ張るなって!」

音無はゆりとかなでに引っ張られ、ビーチバレーに参加させられた。

 

一方皇魔は、着替えもせずに海を見ているばかり。

「皇魔は行かないの?」

レスティーが訊いても、

「行く理由がない。」

完全に興味なしだ。

「じゃあ私、泳いでくるわね。」

レスティーは一瞬自分の身体をセルメダルに分解すると、肉体を再構築。見た目は変わっていないが、水着を着ている。レスティーはこうやって本来の姿から、ロストグラウンド学園の生徒の姿になっているのだ。レスティーは行ってしまう。

 

ポツンと一人残された皇魔。だが、別に孤独を感じてはいなかった。数万年前の、あの闇の中に比べれば、どうということはない。

「お前は行かないのか?」

声を掛けたのはセフィロスだ。

「行く理由がない。」

本日二度目の答えを返さなければならないので、少しうんざりしている皇魔。すると、

 

「セフィロス?」

 

誰かがセフィロスを呼んだ。セフィロスと皇魔が見てみると、そこには二人の男性がいる。

「アンジール?ジェネシスも…」

「セフィロスじゃないか!久し振りだな!」

アンジールと呼ばれた男性は、感激の声をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

セフィロスは、かつて神羅カンパニーという会社で働いていた。いや、今も働いている。とある事情で神羅を離れ、教師をしているだけだ。アンジールとジェネシスはセフィロスの同僚であり、親友でもある。今日二人は休暇を取り、コスタ・デル・ソルへ来たのだ。

「しかし驚いたな。ソルジャー最強の英雄も、今では一児の父親か。」

ジェネシスが今言ったソルジャーとは、神羅が抱える精鋭の戦士である。セフィロスは幼少時から神羅で数々の功績を打ち立て、最強のソルジャー、英雄などの称号をほしいままにしていた。

「しょうがないだろう。かなでは俺にしかなつかなかったんだ」

それを聞いて、アンジールは音無やゆりと一緒に遊んでいるかなでを見る。

「立華かなで…お前に似た容姿を持つ少女、か…」

「それだけなら何の問題もない。問題は、あの子がいた場所だ。」

セフィロスが言い、皇魔は思い出す。

「そういえば、余は貴様ら父娘が出会った経緯を知らなかったな…いい機会だ。話せ」

「…セフィロス。」

ジェネシスは目配せをしながら、セフィロスに話しかけた。どうやら、少しまずい話らしいが…。

「構わないさ。そんなに大した話でもない」

セフィロスは話すことにした。

「…あれは、今から四年ほど前の話だ。」

 

 

 

 

 

 

それは、セフィロスがソルジャーとして、神羅で戦っていた頃の話。いつも通りに仕事を処理し、要請があれば任務にも出動する生活を送っていたセフィロス。

 

ある日、彼にある任務が下された。任務の内容は、一月ほど前から違法な研究を行っている謎の施設の破壊。神羅側からの再三の警告にも関わらず、それを無視して研究を続けているため、ついに殲滅指令が下ったとのことだ。要するに、実力行使である。

 

そしてその施設でセフィロスが見つけたのが、かなでだ。すぐに保護されたかなでだったが、なぜかセフィロス以外の人間になつこうとせず、ガードスキルなどの不可解な能力も備えており、彼女の保護者として、そして神羅側からの監視として、セフィロスがかなでの父親になったというわけだ。教師になったのも、セフィロスがよりかなでを監視しやすくするためである。

「つまり任務というわけか。」

「そうだ。」

きっぱりと言うセフィロス。しかし、少ししてから、

「…最初はな。」

と続けた。

「俺はいつしか、かなでを実の娘のように感じていた。血の繋がりこそないが、それでも俺はできる限りであの子を幸せにしていきたい。」

「…貴様がどう思うかは勝手だ。だが、後悔だけはせんようにな。」

「…ああ。」

かなでに目を移すセフィロス。アンジールは訊いた。

「どうやらあの子には、好きな人ができたみたいだな。親としてはどうだ?複雑な気分か?」

「さあな。微妙だ」

と、ジェネシスの携帯電話に連絡が来る。少し何かを話したあと、ジェネシスは連絡を切ってアンジールに言う。

「急な仕事だ。アンジール、俺とお前に出動要請がかかった。戻るぞ」

「ああ。」

「仕事か。」

「すまないセフィロス。久し振りに話せてよかった」

「またいつか会おう。今度は、ゆっくりとな。」

アンジールとジェネシスは交互に言ったあと、神羅に戻っていった。

「あの二人が同時に出動要請を受けるとは、相当な任務だな。」

セフィロスは任務の内容を予想する。皇魔はセフィロスに尋ねた。

「そこまで強いのか?あの二人は。」

セフィロスは笑って答える。

「当たり前だろう?仮にも俺の親友だぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある飲食店。

ここでは今、二人の男性が何かの会議を行っていた。ルパン三世と、次元大介である。次元はルパンに訊く。

「おいルパン。お前、今度こそおかしくなっちまったんじゃねぇか?」

「いんやぁ俺はいたって正気だぜ?」

「だったらんなトコに忍び込むなんて言うわけねぇだろ!!」

「おぬしら、何の話をしているか知らぬが、客の迷惑も考えろ。」

そこへ、ルパンから要請を受けていた石川五ェ門が到着した。次元は五ェ門に頼む。

「なぁ五ェ門。お前からも言ってやれ!」

「だから、おぬしらは何の話をしているのだ?」

今来たばかりなので話の内容を知らない五ェ門。ルパンは説明する。

「別にいつもと変わらねぇぜ?ちょーっと不二子ちゃんに頼まれてさ。」

「はぁ…またか。」

五ェ門は思わずため息を吐いた。不二子とは、彼らの仲間の一人である女性、峰不二子のことだ。しかし基本的に行動をともにすることはなく、不二子自身他の組織と手を組むことが多いため、面倒なことになりやすい。彼女にとっては特別な場合を除いて、ルパン達ですら目的達成のための存在なのだ。無論ルパン達はそのことに気付いているのだが、次元や五ェ門はともかく、ルパンはホイホイ話に乗って何回も騙されているので、二人にとって悩みの種となっている。

「それで、今回は何を狙うのだ?」

それはともかくと話を続ける五ェ門。ルパンは今回狙うお宝について、五ェ門に説明した。

「代行者の碑文さ。」

代行者の碑文とは、今から一月ほど前に発掘された、謎の円盤石のことだ。

「なぜそのようなものを?」

「ただの円盤石じゃあないのよ。なぜか常に膨大な量のエネルギーを発していて、円盤石自体が一種のエネルギー永久機関になってる。古代のオーバーテクノロジーによって生み出されたものだとも言われているが、まだ研究段階で、ほとんど全容がわかっていない。けど、かなり実用的だろ?不二子ちゃんはそこに目をつけたってわけさ。」

「なるほど…それで、次元は何をそこまで渋っておるのだ?」

最初の問題に戻る五ェ門。次元は答える。

「お宝は問題じゃねぇ。お宝の置いてある場所が問題なんだ」

「置いてある場所が?一体どこだ?」

「第三神羅博物館だよ。」

「!!」

五ェ門は即座に反応した。第三神羅博物館とは、その名の通り神羅の管轄にある博物館の一つで、常に多くのソルジャーが警備を行っている。

「考え直せルパン!相手が悪すぎる!」

ソルジャーの実力を知っている五ェ門は、次元と同意見だ。しかしルパンは、

「いや、俺の考えた作戦で行きゃあ大丈夫さ。」

と、考えを変えるつもりがない。次元はさらに食い下がる。

「確かに五ェ門がいりゃあ、2ndや3rdはどうにかなるかもしんねぇ。だがクラス1stや英雄セフィロスが来たらどうするつもりだ?」

ソルジャーは1st(ファースト)、2nd(セカンド)、3rd(サード)の三つに階級分けされており、最上級の1stともなれば、一人一人が軍隊をも上回る戦闘力を有しているのだ。そして、セフィロスの実力はその中でも飛び抜けており、その名は次元のような闇の世界に生きる者達にも知れ渡っている。恐らく不二子を含めた四人がかりで行っても、勝ち目はゼロだろう。

「拙者もセフィロスが相手では勝てる気がしない。だから考え直せ!」

「心配しなくても、セフィロスは来ねぇさ。」

ルパンはあらかじめセフィロスが今教師をやっているという情報を知っており、それを二人に伝える。

「今修学旅行でこっちに来てるらしいが、それでも俺達に構ってる暇はねぇさ。あの学園の生徒は曲者揃いだからな」

「…それはわかった。だが、間違いなく1stが何人か派遣されてくるぜ。そっちはどうするつもりだ?とっつあんだけでも厄介だってのに。」

ルパンの話に納得した次元は、次の話題を切り出す。とっつあんとは、ルパンをライバル視して追っている警部、銭形のことだ。予告状も出してしまった以上、間違いなく来るだろう。

「その点も心配はいらねぇ。今回、ある情報を手に入れてな…」

「ある情報?」

次元は聞き返した。

「ああ。今日を逃せば神羅博物館に忍び込める日は、たぶん二度と来ない。」

「そんなにすげぇ情報なのか?」

「そうだ。」

「…では聞かせてもらおう。」

次元と五ェ門はやっと乗り気になり、ルパンはプランの説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。コスタ・デル・ソルのリゾートホテルにて。

ゆりは自分とかなで、レスティーに割り当てられた部屋に皇魔と音無。日向、直井、クラウド、ザックスを呼び出していた。

「何だよゆりっぺ?」

「今僕は機嫌が悪いんだが?」

音無と同じ班になれなかった不満を隠そうともしない日向と直井。しかしゆりにとってそんなことはどうでもよく、話を始める。

「今日あたし達の班は、第三神羅博物館に行ったわ。」

今回彼女達が巡った観光地には、第三神羅博物館が含まれていた。しかし、博物館にはルパンからの予告状が届いており、厳戒体勢であったために入館できなかったのだ。

「信じられる!?せっかく前々から行こうって決めてた観光地なのに、おかげでこっちは急いで新しく巡る観光地を探さなきゃならなかったのよ!?」

さすがゆり。相手がルパンだろうと全く恐れていない。どころか、むしろ怒りをぶちまけている。

「そこで、あたしはルパンの計画をとことん邪魔してやろうと思うわ。」

「だから俺達を呼んだのか。」

それを知ったクラウドは、少しげんなりした。

「さすがクラウドくんね。そういうわけだから…」

ゆりは改めて持ちかける。

「ねぇ、行ってみない?」

「面白そう!俺は行くぜ!」

ザックスは真っ先に乗った。

「でも校則「お前らだけに行かせるわけにもいかないし、俺も行くよ。」…結弦が行くならあたしも行くわ。」

音無につられて、かなでも行くことに。

「「音無(さん)が行くなら俺(僕)も!」」

日向と直井もつられた。

「仕方ない。俺も行く」

クラウドもだ。だが、

「却下だ。」

と言ったのはいつも通り、皇魔である。

「いいじゃない。行きましょうよ」

レスティーが持ちかけるが、

「行く理由がない。」

皇魔は聞かない。

「また私のセルメダルあげるから。」

「…全く、貴様らは…」

セルメダルで折れた皇魔。

「そうと決まったら早速出発ね!幸い近くだし、さっさと片付けましょ!」

ゆりはなんだか生き生きしていた。と、皇魔はゆりに訊く。

「そういえば、ルパンは何を狙っているのだ?」

「代行者の碑文っていう円盤石よ。」

ゆりは代行者の碑文について簡単な説明をする。

「品はわかった。だが、なぜ代行者の碑文という名前なのだ?」

皇魔のさらなる質問に、ゆりはさらなる答えを返した。

「円盤石の表面に、古代文字で、『我は王の審判を聞き、裁きを代行する者なり』って書いてあるからよ。」

「それで代行者か…」

「でも、王って誰なんだろうな?」

「古代の品だ。該当する王ならいくらでもいる」

あまり重く受け止めていない日向、ザックス、クラウド。しかし、

「…」

レスティーだけは沈痛な面持ちで、何か考えている。

「どうしたの?」

心配そうに話しかけるかなで。レスティーはゆりに尋ねた。

「その碑文って、いつぐらいに作られたものかわかる?」

「さぁねぇ…まだまだ研究の段階だけど、一応500年くらい前の品じゃないかって話みたい。」

「デザイアが産み出されたのと、同じ時期だな…」

「そうですね。」

考える音無と、同意する直井。

「…」

レスティーは、ある存在のことを思い出していた。

 

 

 

 

『聞けい人間ども。我は王の審判を聞き、裁きを代行する者なり。汝らに下った王の審判は、死だ!』

その存在は純白の装束を身に纏った神官のような姿で、様々な現象を引き起こし、『王』の審判を代行していった。碑文と同じ言葉を口にしながら。

 

 

 

 

 

 

(まさかあいつと…イズマと関係があるの?)

「レスティー。どうした?」

「えっ?う、ううん、何でもないわ。」

慌てて取り繕ったレスティーは、皇魔や仲間とともに準備を済ませる。

「待ってなさいよ、ルパン三世!」

ゆりは意気込み、一同の先頭に立って博物館を目指していった。

 

 

 

 

 

 

それを見ている影が一つ。

 

無論アーカードである。

「ククク…」

アーカードは姿をコウモリに変化させ、こっそりと彼女達を追った。

 

 

 

 

 

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次回、

仮面ライダーエンズ!!

 

アンジール「まさか…奴らは…」

 

次元「おいルパン!こいつも計算のうちか!?」

 

アーカード「なかなか面白そうなことになっているな。」

 

皇魔「だから余は嫌だったのだ!!」

 

 

第十二話 計画と予想外とお宝争奪戦

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