真恋姫†夢想 弓史に一生 第三章 第三話 鬼の化身(前編) |
〜聖side〜
「んっ…。もう、朝か…。」
俺は、まだ完全には開いていない目をこすりながら、辺りを見回す。
そして、そこで硬直する…。
掛け布団がめくれ、服は肌蹴て、下着姿の橙里が、横で寝ていた。
「…はぁ…。橙里って寝相悪いんだな…。こんなところ、芽衣にでも見られt…。」
「おはようございます!! 聖様起きて…。」
「…。」
「…。」
「……芽……衣??」
「…ふ〜ん…。そうですか〜…。」
「良いか、こっ…これには、深〜い訳が…。」
「良いんですよ、聖様。別に怒ってるわけじゃないんですから〜。(ニコッ)」
「芽衣さん、笑顔が怖いから!! 後、青筋が出てるから!!」
「私は、聖様を起こしに来ただけですし〜。まぁ、聖様は下の方も起きてるようですけど〜…。」
芽衣は、ジト目で俺を見る。
俺はそこで初めて、愚息が臨戦体勢なのに気付く。
「こっ…これは…男なら誰でもなるもので…。」
「どうだか…。大方、橙里のその姿を見て、興奮でもしたんじゃないんですか?」
「そっ…そんなことは…。」
「う〜ん…うるさいのです…。もう少し、静かにして欲しいのですよ…。」
橙里が、眠たそうに目を擦りながら起き上がる。
「橙里!! 良かった。とにかく、芽衣に説明してくれよ!!」
「ん…?? 何をですか…??」
「橙里…。 何であなたが、聖様の布団で一緒に寝ているのですか??(ニコッ)」
怖い!!芽衣さん怖いです!!
「…それは、私が先生に頼んだことなのです。でも、何もしてませんですよ。」
「そう…。じゃあ、何でそんな格好なのです〜??」
「ほへぇ!? わわわっ!!何でこんな格好を!! まさか、先生…。」
「してない!! 俺は何もして無いからな!!」
「何だよ、さっきからうるさいな。何かあった…芽衣、説明を。」
「あらっ、奏。ちょうど良かったわ。実はカクカクシカジカで。」
「ふんふん。なるほど…。お頭!! 橙里が寝てる間になんてことを!!」
「だから、俺は何もしてないから!!」
「私は…別に良かったのですが…。寧ろそうしてくれると、嬉しいと言うか…。(ボソッ)」
「あらっ?? 橙里、何か言ったかしら??」
「ひっ!? …何も言ってないのです。(ガクブル)」
その後、芽衣と奏にひたすら説教をくらう…。その時間三時間…俺、何も悪くないのに…。
説教が終わった後、俺たちは町長さんの家を出て城門へと向かう。
町長さんと娘さんは、俺たちを見送りに来てくれた。
「それでは町長さん、色々とお世話になりました。」
「ほっほ。いつでもまた来て下され。歓迎しますぞ。」
「そんな、悪いですよ。」
「いえいえ、あなた様はもうこの村の人たちの家族なのですから…何気兼ねなく来て下さい。」
「家族ですか…。そうですね、ならば是非また伺わせて貰います。その時にはもっと立派になってきますよ。」
「楽しみにしてますぞ。では、お元気で。」
「どうか、そちらもお元気で。」
「そうじゃった!! 最後に一言。」
「なんですか??」
「この村から北に少し行くと森があるんじゃが…今日は霧が出とるかもしれん。十分に気をつけなされ。」
「分かりました。何から何までありがとう。」
町長さん達と別れ、俺達は馬に揺られながら、北を目指すことにする。
いつもは、橙里が俺の馬に一緒に乗って、全員で馬移動していたのだが…今朝のことがあって、橙里は今、俺の左隣で一人で芽衣の馬、光華に乗せられている乗っている。
そして、当の芽衣はと言うと…俺の前に座りながら、陽華に乗っている。
そして、芽衣の後ろには俺…。つまり、芽衣と橙里の場所が変わっているわけで…。
そして、右隣には不機嫌そうな奏…。後から聞いた話だが、どうやら俺の馬にどっちが一緒に乗るか、と言う話になって、じゃんけんで決めたらしいのだが、勝者が芽衣で、負けた奏が一人で影華に揺られてるらしい。
「楽しそうだな、芽衣。お頭と一緒で。」
「えぇ、奏。聖様のこんなに近くにいられるんですもの〜…そりゃあ嬉しいし、楽しいですよ〜。」
「あぁ、そりゃ良かったね(♯`皿´)」
俺は、奏の耳に顔を近づけて言う。
「(ゴメンな。今度は奏の番な!! 約束する。)」
その瞬間、不機嫌そうだった顔が、一気に明るくなる。
そうなったかと思うと、急に赤くなって下を向いて俯いてしまう。
なんだか、反応が可愛らしくて笑ってしまう。
すると、芽衣が体を引いて、俺の胸にもたれかかって来る。
「もう!!聖様は…。 今は私だけを見ててくださいよ〜。( ///)」
ぐぅぅぅう…。上目遣いと照れながらのそのセリフは反則だ!!
「ゴメンな、芽衣。これで良いか?」
俺は、手綱を持つ手をクロスさせて、芽衣に後ろから抱きつくようにする。
芽衣は、俺の手を抱えるようにする。
「温かいです〜。まぁ、許してあげますね〜。」
「ありがとう。芽衣は優しいね。」
「ふふふっ。今頃分かったんですか?」
「勿論知ってたけどね。」
「あんまり、イチャイチャいないで欲しいのです。(ボソッ)」
橙里がかなり小さな声で文句を言っている…。
今朝のことがあり、強く言えないからだろうけど…何ともはや…。
これが俗に言う、女の嫉妬ってやつなのかな…。
そんなこんな、俺達は北に移動している。
少しすると、町長さんが言っていたとおりの森が見えてくる。
そして、言っていたように霧が発生している。
「さぁ皆。霧が出てるから気をつけていくように!!」
「「「はいっ!!(応っ!!)」」」
俺達は森の中を進む。
森の中は霧が濃く、1m先も見えないくらい。これは逸れたら大変だな…。
「二人とも!! 着いて来てるか?」
「はいです、先生。」
「あぁ。ちゃんと居るよ。」
「よしっ。このまま行くから、絶対にはぐれないように。」
しばらく先に進むと、道が分かれていた。
俺達は道に迷わないように、傷をつけながら進む。
そうこうしながら4時間くらい経っただろうか…。
俺達は、ひたすら森の中を進んだ。すると、川の音が聞こえたので一度休むことにする。
「ふうっ…。この森は意外と広いんだな〜…。今日中に抜けれれば良いけど…。」
「そうですね〜…。この森の中で野宿って言うのは、避けたいですよね〜。」
「なぁ芽衣。因みに、今どの辺まで進んでるんだ?」
「進んでいる時間的には、そろそろ森を抜けても良いぐらいなんですけど…。」
「なぁお頭。お得意の空からの視点で見えないのかよ?」
「それが出来れば良いんだけどね…。こうも霧が深くちゃ見えないよ…。」
「ここまで視界が遮られるとなんか怖くて…気が気でないのです。」
「人って生き物は、視界から得る情報が大きいからね…。五感の一つが狂うと大変なんだよ。」
「聖様は物知りですね〜。」
「結構有名な話だぜ。まぁ俺の国ではだけどね。」
「流石は天の国だな…。尊敬するぜお頭。」
「尊敬するのです。」
「はははっ。ありがとね、皆。」
その後、俺たちは休憩をやめて再び移動し始める。因みに、今は奏が俺の前に居る。
「お頭…。一つ聞いても良いか?」
「ん?? どうした?」
「前々から気になっていたんだが…お頭の剣って何か変だよな…。」
「そうですね〜…。あんまり見たことの無い形でしたね〜。」
「刀身が長く、幅は狭く、おまけに曲刀だったのです…。」
「あぁ、これか。確かに、こっちの世界じゃあ直刀で幅は広く、刀身の長い剣が普通だっけ? それと比べると随分違うよね。」
「あぁ。あたいから言わせて貰えば、そんな細い剣じゃあ、槍の一撃なんか耐え切れずに折れちまうよ。」
「そうですね〜。細い分耐久力が無く、何かと不便そうですが…。」
「いいやっ、実はこの刀は相当堅いよ。特別な鉄を入れてるから簡単に折れはしないし、それに切れ味は保障する。ただ、この刀は逆刃なんだけどね…。」
「逆刃とはなんですか??」
「見たほうが分かりやすいだろう。『武○錬金』…ほらっ、刀の刃を見てごらん。」
そう言って、皆に見えるようにする。
「片刃で、しかも曲がりの内側に刃が!? これじゃあ切れないんじゃ!?」
「あぁ、奏。その通りだよ。 でもこれで良いんだ。 この刀なら人を殺めることをしないで済む。俺は殺人剣を振るうつもりはないからな。活人剣こそ俺の理想、俺の誇りなんだ…。」
むやみやたらに人を殺すことが、この世の全てを救うことに繋がるわけではない。
少なくとも、亡人の家族は救ってやれていない。ならば、俺は…俺の理想のために…不殺(ころさず)の誓いをここに立てる。
「そうか…。良い刀だな!!」
「ありがとうな、奏。 おっ!!皆見てみろよ!! 先が開けてきたぞ。森を出たんじゃないか!?」
俺たちは、霧の先に見える光に向かう。
森を抜け、光を確認した後、辺りを確認すると…。
「あれっ!? ここは…。」
そう。俺たちが出て来たのは、入ってきた場所。
つまりは戻ってきてしまったわけだ。
「戻ってきてしまいましたね〜。」
「おかしいねぇ。確かにまっすぐ進んでいたと思うんだが…。」
「そうなのです!! 木に印を付けて行きましたが、印の付いた木など見てないのです。」
俺は近くの木に行って見る。そして理解する。
「橙里。ちょっとこっちに来てごらん。」
橙里はトコトコと近寄ってくる。そして、俺の指し示す先を見て理解する。
「成程…。私は木の表と裏にそれぞれ印を付けてたんですね…。それじゃあ、印が分からなかったわけです。 …先生すいません、私の過ちです。」
俺は、橙里の頭を撫でながら言う。
「良いよ橙里。人って言うのは誰でも失敗はするんだ。大事なのはその失敗を次に活かせるかどうか…。 橙里はその辺大丈夫だよね?」
「はいです。二度とこんなことはしないのです。」
「うん。任せたよ!!」
俺が橙里の頭を撫でてると、芽衣と奏が羨ましそうな、そして睨みつける様な表情で橙里を見ている。
俺は二人に手招きして近寄らせると、頭を撫でてあげる。
二人とも目を細めて、嬉しそうにしていた。
「さて、これからどうしようか…。」
「う〜ん…。そうですね〜日が少し傾きかけてますし…今から森に入ったとしても、明るい内に森を抜けられそうに無いですね〜…。」
「そうか…。仕方ない、今日も夏口の町に泊まろうか…。なんか、格好良く出て行ったわりに、その日のうちに戻るってのもなんだけど…まぁ、仕方ないよね…。」
「きっと、あたい達を歓迎してくれるって!! 大丈夫だよ!!」
「そうです!! あの町長さんたちなら大丈夫なのです!!」
「よしっ。一路夏口へ!! 皆行くぞ!!」
「「「はいっ!!」」」
俺たちは一路夏口を目指した。
日は傾きかけ、今から向かえば、日暮れまでに夏口へ着ける算段だった。
夏口まであと少しというところで、今朝と違う違和感を感じる。そして、直ぐに異変に気付く。
「あれは!!! 煙だ…!! 町で煙が上がってる!! 急ごう!!」
俺はこのとき、嫌な予感がしてたまらなかった。
でもなるべく払うようにした。
物事を悪い方、悪い方に考えても仕方ない…。
そうさ、ただの小火騒ぎかもしれない。町に入ったら、皆が笑いながらそこにいるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて…。
説明 | ||
どうも、作者のkikkomanです。 これにて、転載が終了します。 これからの更新頻度ですが、一週間に二話ぐらいでやっていこうと思います。 それ以上になると、書き溜めたストックが無くなってしまうので…ご了承ください。 また、今話と次話は続き物です。よって、今日中に二話ともあげておきます。お楽しみに…。 |
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