ぬらりひょんの孫になっちまった!? 第五幕 リクオ、本家に帰る |
「さあ!、頑張ってお出迎えしないと!」
私は若のお世話をしている雪女のつらら。
今日は、牛鬼様の所で修行してばかりであまり帰ってこない若が帰ってくる日。
今は、屋敷の掃除中なの!
タタタタッ!
「随分、張り切ってるじゃない?」
私が縁側を雑巾がけしていると毛娼妓が話しかけてくる。
「当たり前よ!若が帰ってくるんだから、屋敷中を綺麗にするのよ!」
私が胸を張ってこう言うと毛娼妓は呆れたような顔をしてる。
なんでかしら?
「そうはいっても、先月もその前の月もさらにその前の月もおんなじようにしてたじゃない?」
「そうだけど?」
なにか悪い所でもあったっけ?
「・・・あのさ、なにも何年間も会ってないわけじゃあるまいし、毎度毎度この騒ぎじゃ大変じゃない。まあ掃除は別にいいんだけど・・・正直、あれはどうなの?」
そう言って毛娼妓は近くの襖を開き、中の座敷を指差す。
そこには、小物妖怪たちと一緒に飾り付けをしたり、《若、お帰りなさい!》と書かれた幕が垂れていた。
「あっ!そうよね、少し地味よね。やっぱり、もっと飾り付けしたほうが・・・」
「ちがうわよ!派手すぎるっていってるの!」
「でも、紐を飾ってくれたのは首無よ?」
「え?どれよ!」
「ほら、ここの壁につけてある花の形に結んだ紐よ」
私が首無の作った花の飾りを見せると毛娼妓は面白そうに笑った。。
「フフッ、まるで子供みたいなことするわね。やっぱり首無も浮かれてるのね」
「私は小物たちに頼まれたから、作っただけだぞ」
いつの間にか、首無が私たちの後ろに立っていた。
子供扱いされたせいか、少し機嫌が悪そうだ
「それに、あいつらよりはましだ」
首無は首を外に向けて、見るように促す。
そこには・・・
「テメーらっ!!今日が何の日か分かってんだろうな!」
青田坊と・・・
「「「「若が帰ってくる日です!」」」」
「その通りだ!ならば我らがすべきことはなんだ!?」
黒田坊と・・・
「「「「全身全霊をかけて、お出迎えします!」」」」
「よし!百鬼夜行総出でリクオを迎えるぞ!」
「「「「おおーーーー!!!」」」」
百鬼夜行を率いた奴良組三代目総大将がいた・・・
ーーーーーーー
俺は奴良リクオだ。今、屋敷の近くまで帰ってきているんだが・・・毎回、この騒ぎはやめてほしい。
もう、ここからでも叫んでるのが聞こえるよ・・・人間にばれないのが不思議だ。
とりあえず、おぼろ車から降りて屋敷の門の前に立つ。
・・・覚悟を決めてから門を開ける。
パンッパパンッ!
「「「「若、お帰りなさいませ!!」」」」
待っていたのはクラッカーと百鬼夜行・・・いやいや、おかしいだろ!?
今までも、やりすぎなくらいの出迎え方ではあった。思い出すのはつららが雪で俺の彫刻を作っていたときや、じいちゃんがプレゼントを山ほど(本当に小山のようだった)用意(万引き)してくれたとき(さすがに返させた)など様々だが、百鬼夜行までも・・・
実は、まだ修行が終わったということは言ってないのだが・・・これで言ったらどういう反応をするんだろうか?
「あ、ああ、ただいま」
返事がぎこちなくなってしまったのは仕方ないと思う。
「リクオ、よく帰ったな!修行はもうそろそろやめてもいいんじゃないか?」
父さんが話しかけてくる。父さんは修行をまだするのかを俺が帰るたんびに聞いてくる。
「うん、もう免許皆伝らしいから修行は一旦終わりかな」
「そうか、まだ続けるのか・・・って、え?もういいのか?」
「牛鬼が言うには、俺はもうそこらの妖怪に負けるようなことはないらしいよ」
「つ、つまり、若はもう捩眼山には行かなくてもいいということですかい?」
づいっと青が話に割り込んでくる。デカい、顔が近い。
「そうだけど、な「今夜は祝いだー!!」ええー・・・」
「おい、どうした?」
「なんでもリクオ様の修行が終わったそうじゃ!」
「そら、めでたい!よっしゃ!酒の用意だ!」
・・・もういいや。この際俺も楽しもう。
ーーーーーーー
あの後、夜になるまで屋敷で大騒ぎしていた妖怪たちはみんな酔いつぶれて寝てしまった。
・・・こいつら、まだ六歳の俺に酒を飲ませようとしてくるんだ。妖怪年齢でも成人してないんだぞ!
「なんじゃ、妖怪の癖にこの程度の酒で酔っ払ってどうするんじゃ」
「全くだな。俺の百鬼だったら酒は飲んでも飲まれるなよ」
「いや、じいちゃんと父さんが異常なだけだろ!」
この二人、誰よりも多く飲んでんのに顔色一つ変えないんだよ。
さすが、初代総大将と二代目総大将ってことだろうか?
「男はだらしないねえ。私はまだまだいけるってのに」
さらに、毛娼妓もすごかった、父さん達に負けず劣らず飲んでたってのにほんのりと顔が赤くなっているだけだ。今は寝ている首無の頭をいじっている。
「あの、若、少し宜しいですか?」
つららが話しかけてきた。つららは料理を作ったり、酒を運んだりしていたため酔っていない。
「ん?どうしたの?」
「若はもう少しで小学生じゃないですか?それで私、入学祝いにランドセルを買ったんです!」
そう言って、つららが出したのは何から何まで真っ白なランドセルだった・・・
「いや、これは・・・」
俺、男だしな・・・ていうか、よくこんなランドセル見つけたな。
「ダ、ダメですか?」
うっ、見るからに落ち込んでしまった。しかし、これを認めてしまったら小学校六年間が悲惨なことになってしまう・・・俺はどうしたらいいんだ!?
「おいおい、雪女待てよ!」
おお!グッドタイミングで青が話しかけてきた!よし、つららを説得してくれ!
「三代目になるお方がそれじゃあ、格好つかないだろうが!」
そう言って、青は紫色がベースで大きく白い髑髏が描かれたランドセルを取り出した・・・
青!?お前もか!
「おめーら!リクオは俺の息子だぞ!だったら、やっぱりこれだろう!」
父さんが取り出したのは、一見普通に見えるランドセルだが・・・よく見ると畏の代紋が至る所に書いてある。
「鯉伴、それじゃあ地味じゃろ、こんなのはどうかの?」
今度はじいちゃんまでもが、ランドセルを取り出した。それは、金色に輝くランドセルだった。
「ちょっと待った!じいちゃん、それ、どうしたんだ?」
なんか、嫌な予感がする・・・
「なに、ちょっと拝借してきただけじゃから安心せい」
やっぱりか・・・まあ、ランドセル一個ではお店もたいした被害じゃないだろう。
「なんでも、金箔が施されているようでな。四十万くらいの代物じゃ」
「ブッーーーー!!!」
なんだそりゃ!そんなもの盗んできたのか!?
「じいちゃん!返してきてくれ!頼むから!できるだけ早く!」
「しょうがないのー。リクオに頼まれたら断れん」
じいちゃんの盗み癖は困ったもんだな・・・
「ところでリクオ、どのランドセルがいいんだ?やっぱり、畏の代紋ランドセルだよな?」
「いや、男なら髑髏マークですよね?若?」
「何言ってるのよ!若を黒と一緒にしないで!若は白いランドセルがいいですよね?」
正直、どれも嫌なんだけど・・・かといってどれかは選ばないといけないだろうし・・・
俺はどうしたら!?
「あら、みんな楽しそうねー!」
母さんが襖を開けてひょこっと入ってきた。
「ランドセルね!懐かしいわー。私は赤いランドセルだったのよ、鯉伴さん」
「そうか、じゃあ男には黒いランドセルがいいよな?若菜」
「やっぱり、男の子は黒で女の子は赤かしらね」
「よし!ほら、若菜もこう言ってるし、このランドセルで決まり「でも、無駄に装飾や柄が入ってるのはあんまり好きじゃないわ」え?」
「ランドセルだったらもう用意してあるの。ほら、リクオ見てみて!」
母さんが見せてくれたのは、スタンダードな黒のランドセルだった。
もちろん俺は即答だったよ。
「これで!!」
「「「ええー!!」」」
仕方ないじゃないか。まともなのないんだし。無難に黒で。
ーーーーーーー
あれからしばらくして、今は俺の部屋で寝る準備をしてる。
「リクオ、ちょっと話があるんだがいいか?」
ん?どうしたんだ?父さんが話とは珍しいな
「いいよ。どうしたの?父さん?」
俺は障子を開けて父さんを部屋に入れる。
「リクオ、お前は俺なんかより頭がいい。だから妖怪と人間の違いについてもよく分かっているだろう」
「急にどうしたの?」
「俺は妖怪として生きる道を選んだ。だが、リクオ、お前はどういう風に生きてもいいんだぞ?」
父さんは俺がどうやって生きていくか心配なんだろう。だけど、それはとっくに決まってるんだ。
「父さん、俺は人間とか妖怪とか選ぶつもりはないし、比べるつもりもないよ」
そう、俺は・・・
「俺は人間を守る妖怪の総大将になる!」
「どちらか一方で生きるより大変で困難な道だぞ?いいのか?」
俺は無言で頷いた。
「・・・そうか、よし!もう俺は何も言わねえ!頑張れよ、リクオ」
「ああ!父さんみたいな立派な総大将になるよ!」
「ははっ!そりゃあ、嬉しいな!じゃあな、よく寝ろよ」
「おやすみ!」
そして、父さんは部屋を出て行った。
きっと、総大将になるというのは想像以上に大変なんだろう。俺は心のどこかで甘く見ていたのかもしれないな。
俺は改めて気を引き締め、眠りについた。
説明 | ||
死んでしまった俺はぬらりひょんの孫の世界に転生することになった。まぁ、適当にがんばればいいかな……って、あれ?なんで俺の名前、リクオになってんだ!?……まっ、いいか。百鬼夜行の主になってやるぜ! 憑依転生ものです。よろしくお願いします! |
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