SAO 奇跡を掴む剛腕 『SAO record 01』 |
何体目になるかわからない同種のモンスターを倒し、その姿がポリゴンになり四散する様を見届けると、持っていた長剣を杖代わりにし、それで体を支えながらずるずると崩れ落ちて行く。荒い息を整え、今日のレベル上げはこの辺りで切り上げるかと重い腰を上げた。
右手の人差し指と中指をまっすぐそろえ、軽く縦に振る。効果音と一緒になって現れる『メインメニュー・ウィンドウ』を何度か操作し、手に持った長剣をストレージ内に収める。さらに続けてその中にある今回のレベル上げで得た((戦利品|アイテム))をいくつか確認し、整理したのちにそのアイテム群から瞬間転移アイテムを取り出した。
八面柱型の、深い青色にきらめく結晶は、この『世界』でわずかに存在する『魔法』の要素が含まれているアイテムの内の一種だ。ブルーが瞬間転移、ピンクがHP回復、などなどこの様に色で分けられている。宝石の形をしているのも、また一つの特徴と言っていいだろう。
「転移!アルゲード!」
その手に持った結晶を掲げ、思い切り握りつぶす。砕け散り、効果が発動した結晶ははかなくもきえて行く。青い光に包まれ、周囲の光景が消滅していく中、ひときわ眩しい光が目の前を少しの間だけ遮ると、転移はすでに完了していた。
sideout
VRMMORPG『ソードアート・オンライン』
2022年の11月6日、日曜日の午後一時から正式サービスが開始され、そしてそのサービス開始から数時間後、その世界は形を残したまま本物のデスゲームへと姿を変えた。
メニューウィンドウから『ログアウト』をするためのボタンが消え、その直後に強制転移でゲーム開始地点である『始まりの街』に移動させられ、そこでこのゲームの製作者である茅場晶彦と名乗る顔の見えないアバターから一方的にチュートリアルを受けた。
そこでさまざまな説明を受けた。このソードアート・オンラインの世界でのHPバーは自分の命そのものだと言うこと。
HPが0になった瞬間、((現実|リアル))の自分が頭にかぶっている『ナーヴァギア』と呼ばれる機械が脳を焼き切ると言うこと。
そしてその瞬間、二百十三人もの人間がこの世界と現実世界から永久退場させられてと言うことを。
解放される方法はただ一つ。このゲームをクリアすること。
浮遊城『アインクラッド』を、最下層である一層から全百層を完全攻略しなければ、誰一人解放されることはないと告げられ、誰もが絶望した。誰もがオープニングイベントの過剰演出なのか、本物の危機なのか理解できなかっただろう。だが、最後に送られたアイテムによって、この世界がもう一つの現実だと無理やり納得させられた。
手鏡だ。アイテムストレージ内に送られた茅場晶彦からのプレゼントはそれだった。そこに映っていたのは、現実での自分たちの顔。操っているアバターの顔などではない。見間違うはずもなく、自分たちの顔であった。
たった数十分でゲームプレイヤーからこの世界にとらわれた囚人となったプレイヤーたちは叫んだり、泣いたり、怒り出したりと、さまざまだった。当然の反応ではある。ゲームをクリアしようとしてHPを0にしてしまえば、解放される前に死を迎える。もう二度と家族や友人、恋人などに会えないと考えると必然的にそうなってしまうことは目に見えていた。
そして、この悪夢のようなチュートリアルとゲーム開始から一ヵ月で、約二千人のプレイヤーが死を迎えた。
外部からの救援もなく、本当に出ることができないと理解し始めたプレイヤーたちは、ようやくこのゲームを攻略しようと動きだした。
パーティーを組み、ギルドを作り、協力してアインクラッド攻略に挑むプレイヤーと、一人で効率的にレベルをあげて行くソロプレイヤー。助けを求め、攻略をしようともせず、始まりの街で待ち続けるプレイヤーなど、さまざまな行動に分かれた。
それでも、ゆっくりとだが確実に攻略されていくアインクラッドは、未だ頂上が見えない。たくさんのプレイヤーが命を落として行っても、クリアまでの道のりはほど遠く、一ヵ月間では指で数える程度しか攻略されないほどの速度だ。
それでも、ベータテストの時よりははるかにましらしい。二ヶ月間だけ行われたそれでは、たったの六層しか攻略されていなかったらしいのだ。それを考えるならば、今のペースは少しばかし速いと思える。だが、やはり頂上までは距離がありすぎた。
結果、二年たった今でも頂上まで攻略されていない。残るフロア数は四分の一もあり、フロアごとに存在するボスや通常のモンスターたちもどんどん強くなっていく。そんな中、一万人もいたプレイヤーの人数は減りに減って、今では約六千人ほどしかいない。それがアインクラッドの現状であった。
sideout
第五十層『アルゲード』
猥雑の一言で済まされるようなこの街は、中層プレイヤーも一度は訪れることがあるだろう。だが、裏路地に入って数日間出てこられなかったと言う噂もある。それでも、ここの雰囲気が好きだと言うプレイヤーがいるのもまた事実。ただし、そのプレイヤーには一癖か二癖ほどあるとみていいだろう。
最上層の最前線で戦う攻略ギルド『血盟騎士団』(別名『KoB』)に所属しているテラスは、意外にもここに何度も来るらしい。今日のようにギルドの活動日以外の日にソロやパーティーを組み、冒険をした後はほぼ必ず訪れる。その理由は、この層に行きつけのショップがあるからだ。
「あれ・・・?」
人混みを縫いながら、足早にそのショップにたどり着く。テラスはそこにいた数人のプレイヤーの顔を見ると、頭の中に疑問が浮かぶ。約一名、自分の上司と言える人物がそこにいたからだ。
「副団長、何してるんですか?」
「あれ、テラス君?」
血盟騎士団副団長『閃光』のアスナ。テラスは彼女の補佐役を任されていた。
あとがき。
とあるサイトからの移転です。
基本原作沿いですが、応援よろしくお願いします。
説明 | ||
HPが0になることは死を意味するデスゲーム『ソードアート・オンライン』。 攻略ギルド『KoB』に所属する主人公テラスは、『剛腕』の異名とともにアインクラッド攻略を目指す。 |
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コメント | ||
読みに来ました。がんばってください。(nemus) | ||
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