いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した |
第三十四話 ピンポイント自爆!
『知りたがりの山羊』。
アサキムの持つスフィアでその力の引き金は『好奇心』。
その力を当てられた者はどんなに取り繕うとも必ず真実と本音を暴かれるというもの。
その副作用として『太極』の一端にふれたアサキムは不死の『放浪者』になった。
その『太極』とやらは俺も知らない。
「…なんだと?」
(それじゃあ、俺の本心も?!)
プレシアが簡単にアサキムの持つスフィアのことについて話した。ただし、副作用の事は話してはいない。
まさか、不死身の化け物と聞かされたら彼等の指揮を悪くするだろう。
ただ、ゲームではガンレオンの『修理機能』がこの世界で『再生機能』のように、それが変質したかは定かではない。
「…最悪ね。あれだけの機動力と攻撃力がある上に私達の攻撃パターンが先読みされるということね」
まあ、これは推測。
それに推測通りだとすればアサキムは『死にたがり』である。
『不死』である彼の最終目標は自分を不死の『放浪者』にした存在への復讐と自分の『死』。
…アサキムの気持ちが分からないでもない。
自分の親しかったものを失い、自分ひとりだけ『不死』になってしまったがために永遠に一人。だけど、『太極』の呪い。不死があるせいで死ねない。永遠に一人ぼっちだ。
…体は死ななくても、心は死んでしまう。
ある意味『好奇心』を糧にする『知りたがりの山羊』がもしかしたらアサキムには幸いしていたのかもしれない。
色んなものに興味を持ち、それに熱中していけたら…。
だけど、彼は不死だ。
いずれはそれすらも…。
「…話は以上よ。考古学者君。先程の質問に答えるわ。あなたにはその手腕で『傷だらけの獅子』『揺れる天秤』『知りたがりの山羊』の事についてありとあらゆる文献を調べて欲しいの」
「ちょ、ちょっと待ってください。僕たちは今、闇の書事件に応対しているんですよ!とてもじゃないけどそんな暇は…」
「この闇の書事件。必ずアサキムが関係してくるわ。そうすれば必然とスフィア絡みの事件に発達する。闇の書事件優先でいいわ。ただ、手が空いたらそのことに関しての文献を調べて欲しいの」
慌てるユーノに淡々と話しかけるプレシア。
事情を聴いたクロノは眉を曲げながらもユーノに声をかける。
「…あー、すまないがユーノ。頼めるか?君は明日にでも本局の方に赴いて僕の師匠と一緒に闇の書に関しての情報を集めてもらう予定だったんだ。僕からも頼む」
クロノのほうも闇の書事件に関して早めの解決を思っていた。
だが、その最大の関門になりうる闇の書の騎士達。それすらも上回る戦闘能力を持つアサキムがそれに協力しているとなると調べて損はない。むしろ調べてみないとわからないものだらけだった。
「クロノ?!…あ〜、もうっ。分かったよ。だけど闇の書に関するものを優先させるからね!」
クロノの考えが分かったのかユーノは何か言いたそう表情を見せたが諦めたかのようにうなだれた。
「…わかりました。お話は以上ですか?こちらとして、今はこれ以上話すことはありませんが、なにかご要望があればお聞きします」
リンディさんが今回の話し合いの締めくくりと両の手をポンと打つ。
仕掛けるなら((今|・))かな?
「…それじゃあ、これ。俺のガンレオンの戦闘能力データ。あと、少ないけどアサキムのシュロウガから取れたデータです。今後の作戦に役立ててください」
ペイン・シャウターを放った時の衝撃。あれはほぼ自爆に近いほどの稚拙さだったのでアースラスタッフとも協力してガンレオンの調整も行いたい。
…まあ、マグナモードのガンレオンを扱いきれない俺のサポートをしてほしいのが本音。
俺は車椅子を使ってリンディさんに手渡しでSDチップのような物をリンディさんに((直接|・・))手渡した。
(どこまでもお人好しだなっ。傷だらけの獅子!)
俺はブラスタの迷彩機能を発動させながら高志がリンディに渡したデータチップにハッキングをかけた。
そこにはマグナモードを扱える時間や武装。奴の弱点が記されていた。
リンディ。彼女だけではなくクロノやユーノにも疑いの色が見える。
ブラスタの情報収集機能を忘れていたのか奴は俺の目の前で渡して、その場はお開きになった。
それからしばらくして俺にブラスタを預けるように言ってきたメガネの少女マリーに調整を任せてその日は眠りについた。
リンディやクロノから疑いの目でいろいろと質問されたがのらりくらりとかわした。
どうせ、闇の書の暴走体と一緒にその疑いもSPIGOTで完璧に吹き飛ばせばいい。
アサキムの件についても。
あいつの話が本当ならアサキムは俺よりもあの『傷だらけの獅子』にしかけてくるだろう。『好奇心』は俺よりアイツの方に向いているのは明らかだ。
せいぜい同士討ちするように誘導すればいい。それだけだ。
クロウがそんなことを考えながら自分の家で眠った同時刻。
今回の事件の総指揮官。リンディ・ハラオウンは頭を抱えていた。
「…はぁ。クロウ君の『揺れる天秤』の副作用、友軍狙撃(フレンドリーファイア)。頭が痛いわよ、まったく」
タカシ君から((直接|・・))データチップを受け取った時、彼から((接触念話|・・・・))を受けた。
接触念話とは相手に触れて念話。魔法でテレパシーを送るようなものでこれは普通の念話と比べて相手に触れるということをしないと出来ないことだが盗聴(・・)の心配がないということが唯一の利点ともいえる。
(クロウ・ブラスタ・引き離す。他にも伝える情報・それから)
それから一度タカシ君達を地球に返す。クロウ君からブラスタを引き取り、再度彼等をアースラに呼び出して、彼から情報を貰う。
彼から貰ったデータチップの中身はダミー。とはいってもマグナモードの耐久時間が少しばかり短く設定されていた以外の情報。
ガンレオンが近接戦闘用。空は飛べないなどあまり変わった点は見られなかった。
彼とプレシア曰く、『真実を多く混ぜれば混ぜるほど嘘はわかりにくいものでしょ?』と言われた時、私は苦笑いしか出来なかった。
さて、彼等から貰った情報はクロウ君の『揺れる天秤』の副作用。
常に彼の生体反応(バイタル)をチェックしてその事態に備えることと。
そして、ガンレオンの中にあった。タカシ君とクロウ君の初戦闘と会話のデータを見せてもらった。
「…あれは酷いものだったわね」
クロノには見せないでよかった。あの子はあの年齢で執務官になったとはいえ未だに冷静さが足りない。
もちろんクロウ君の事を疑いたいわけでもないし、彼等を完璧に信じたわけでもない。だけど、彼等のほうがクロウ君よりも好印象で信用があるのもまた事実。
ふー、と。ため息をつきながら私はシャワーを浴びる。
今日一日の大変なことをリフレッシュしようと思って今日あったことを想いだしていたら不意に思い出し笑いをしてしまった。
それはクロウ君を家に帰して、タカシ君達を再びアースラに呼び出した時の一連の会話。
「クロウ君は今、家にいます。ブラスタも調整の名目で今は完全停止しています。その上特殊なケージの中に入れているので盗聴の恐れもありません」
「…すいません。どうしても貴方個人と話したかったので。念のために接触念話でもいいですか?」
「あら、なのはさんやフェイトさんと同年齢なのになかなかの口説き文句ね」
と、冗談交じりにタカシ君の手を取る。と、彼の手が一瞬で赤くなった。
「…へっ?!」
「え?」
「ち、ちちちちが、ちがちがちがちがちがいましゅっ。…違います!」
(俺は何て言葉をォオオオオオオ!?!?)
今にも茹で上がりそうな表情で彼は急に慌てだした。数時間前までは私達と冷静になって論議を交わしていた彼が、である。
「もしかして…照れているの?」
「て、ててて、てれてにゃんかいみゃしぇん!」
(落ち着け、俺ぇええええええ!自分の憧れの人だからって。とにかく何か言うんだ俺!)
そんな彼が今、噛みまくっている。
「…タカ。あんたって子は」
その時は既に時間帯は深夜。
プレシアは呆れたかのように眠っているアリシアさんを担ぎながらタカシ君を見ていた。どうやら、本気でこの子は照れているようだった。
「美人な人だななんておもっていませんか、ら…。ああああああああああああ!!」
(なんというピンポイント自爆!別名ツンデレしてんだ俺はぁああああああ!)
それから床に倒れて殺虫剤をかけられてた芋虫みたいにびくびくと悶えたタカシ君。
こんな彼を見ていたらクロウ君も自分の恋敵と思わなくなるだろう。
それから落ち着いたタカシ君と呆れ顔のプレシアからクロウ君とスフィアに関することを口外せずに個人的に調べることを約束してから改めて情報を貰った。
「ふふふ。私もまだ捨てたものじゃないのかもしれないわね」
今日唯一の癒しを思い出しながら私も交代の指揮官を代わってもらい、休息を取ることにした。
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誤字発見しました。 だけど、動揺に→同様 読み返していたら見つけるとは…。(神薙) | ||
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