青いチビの使い魔 第8話 |
キキSide
チチチチと小鳥が喚く不愉快な朝。何故、太陽はこんなに眩しいのか・・・・あ゛ーー溶ける。俺は日が当たらない様に布団を被り包まろうとして、
「朝」
タバサに剥ぎ取られた。
「起きる」
「もう少し睡眠を・・・」
ゴンッと頭を杖で殴られた、痛い。
「・・・・起きる」
「あ゛ー、分かったから杖を何度も振り下ろすな」
ブン!ブン!とタバサが振ってくる杖を受け止めながら、俺はヨタヨタと寝床から起き上がり体を伸ばす。
「これ」
タバサはそう言って俺に水とタオルが入った桶を渡してきた。
「あんがと」
俺は受け取って顔を拭く。ついでに髪を濡らして整える。ってか
「・・・・・・すばらしきかな、ヒモ生活」
「ヒモ?」
「いや、何でもない」
タバサにはヒモの意味は分からないよな。うん、ヒモはやだなぁ。まぁ実際は使い魔だけど、そんなこんなで準備を整え部屋を出ると、
「うるさい! キュルケのバーカ!!」
通路の奥の方からくぎゅボイスが聞こえてきた。朝から元気だねぇ、
「バカって何よ! ゼロのルイズのクセに!!」
俺はタバサを見ると、テクテクと声のする方へ歩いていったので、
「厨房に行ってるからな〜」
タバサに声を掛けてから厨房に向かった。さて、昨日の事を思い出しながら現状の情報整理だ。まず、このゼロ魔世界は原作世界ではなくクロス世界であるという事。主人公組以外でもイレギュラーが在る事。うん、整理するほど情報無かった。そんな益体の無い事を考えながら厨房の裏口に着く。中を覗くと忙しそうに皆さん働いている。
「落ち着くまで待った方がいいかな〜?」
俺はとりあえず厨房が落ち着くまで扉の横に座りのんびりする。で、しばらくしたら向こうからメイドさんと仮面の騎士ってかリオンがやって来た。
「あら? こんな所でどうなさいました?」
メイドさんが聞いてきたので
「ああ、飯を食べに来たんだけど、忙しそうだったから落ち着くまで待ってる」
俺は簡潔に返答する。
「そうなんですか。えっと確か昨夜、ミス・タバサが言ってた使い魔さんですよね?」
「ああ」
「ならお話しは伺ってます。たぶんもう厨房も落ち着いたと思うんで、リオンさんと一緒にどうぞ」
そう言ってメイドさんが中に入っていく。俺と彼はそれに続いて厨房に入っていく、すると
「お、シエスタ。戻ってきたか!って後ろの2人はなんだ?」
まさに親方と言う呼び名がピッタシな人が現れた。
「マルトーさん。こちらの人達は例の使い魔さん達です。朝食を頼まれたので賄いをお願いしたいんですけど」
「おお!そうか。お前さん達も大変だなぁ。貴族のガキ共に召喚されちゃあな。ちょっと待ってろすぐに用意してやる。シエスタ!」
「はい!」
2人はそう言って奥に行ってしまった。俺達はとりあえず近くのテーブルに着く。・・・・・・奥のほうで鍋が煮える音、食材を切る音、洗い物をする音、俺達は互いに喋らず唯々静かに待っているだけ。そんな何でも無い、はたから見たらとても声を掛け難い状況で、
「マルトーさん!!ちょっ頼みが!」
奥の方から大きな声が聞こえてきた。その後は奥でなんやかんやがあって、そして奥から髪の長い黒髪の女の子・・・烏丸ちとせがやって来た。
「どうも、おはようございます」
「おはよ〜」
「ああ」
挨拶をしてきたちとせに俺とリオンはそれぞれ挨拶を返す。
「えっと、お2人はもしかして私と同じで使い魔なんでしょうか?」
ちとせが席に座りながら話しをしてくる。
「おう、そうだ」
「ああ」
「まぁ! そううなんですか! よかったぁ〜。人間の使い魔は私だけだと思ってたんですが仲間がいてよかったです。それじゃあ今日から私達友達≠ナすよね!」
なんか友達を凄く強調してきたけど、
「あ、自己紹介が遅れました。私は烏丸ちとせ、と申します。気軽にちとせとお呼びください。」
「んー、俺は日向キキだ。よろしく〜」
「・・・リオン・マグマスだ。呼び方は好きにしろ」
そんな感じで互いの自己紹介をし合っっていたら
「お待たせしました。おかわりはたくさん在るので欲しかったら言って下さいね」
シエスタがそう言いながら朝食を持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「すまない、いただく」
「どうもありがと」
ちとせ、リオン、俺の順にお礼を言っていく。その後は3人でワイワイと話しをしながらというよりちとせが1人で喋りまくって俺が相槌を打つ感じで食事をした。リオンは直接話をふられた時のみ話し返していた。で、それぞれ食事を終え、
「おちそうさま〜」
「おいしかったです」
「とても美味かった」
「はい、それはよかったです」
俺達はシエスタやマルトーさん達にお礼を言い厨房を出る。
「お2人はこの後どうするんですか?」
食堂入り口付近に来た時にちとせが聞いてきたので
「俺は主についていく予定だけど」
「僕も同じ様なものだ」
俺とリオンは答える。そしたらちとせが
「それじゃあ私も付いていって良いですか?」
「まぁ、別に」
「好きにしろ」
付いてきたいと言ったので俺とリオンは適当に返す。
「ホントですか! よかったぁ〜。私ジンさんに『お前は絶対に来るなよ』って言われてましたがお二人が誘った事にすれば万事解決ですね。一人で学園内を徘徊なんてそんな寂しい事やってられません。お二人には感謝します。」
う〜ん、返答に困るような事を言うなぁ。リオンも呆れた顔してるよ。今更だがこの面子にはツッコミが足りなさ過ぎだな。そんなこんなで時間が経ち食堂からタバサ達が出てきた。
ちとせSide
ああ! なんていい人達なんでしょう。あのエンジェル隊の人達と違って私を蔑ろにしないし、話しも聞いてくれる。私こんなに幸せでいいのでしょうか、いや・・・いいに決まってます! だっていままで私がどれだけ不幸だったかそれは・・(省略)・・・な訳ですし。ハッ、私ったらつい物思いに。さて私も皆さんの後に・・・・・・
「って、いない!?」
そんな・・・さっきまでそこにいたのに。また、私をハブるんですね。キキさんにリオンさん・・・友達だと思っていたのは私だけだったんですか。ああ、私っ・・・(省略)・・・ぐすんっ。
「くっ、こんな事で私はへこたれません。こうなったら自力で・・・ってあら? ポッケになにか?」
なんでしょう? ポッケから紙が出てきたので読みましょう。
「これは・・・・キキさん! 私は信じていました。やはり持つべきは友ですね! こんなふうにメモを残してくれるなんて。えっと『先に教室にいきます。頑張って。』・・・教室の場所を書いてくださいよ!?」
信じた私がバカでした。所詮人間なんて信じれるのは自分のみと言う事です。仕方ありません。
「自力で探します。幸い私はこういうのは得意ですから」
と言う事で私は皆さんが向かった教室に向かいます。ロストテクノロジーの探索で古い建物の遺跡に何度も行ってますし構造は似た様な物でしょう。楽勝楽勝。
「・・・・・・・ここは何処でしょう?」
迷いました。おかしいですね? 確かこちらに人の気配がしたと思ったんですが・・・・・あ! 居ました。
「くっ、やっぱり魔法はダメか。ま、焦っても仕方ないね。じっくりやるさ」
「あのすいません」
私は大きな扉の前にいる女性に話しかけます。
「!?・・・な、誰!」
「あ、すいません。私烏丸ちとせと言います」
「・・・こんな所で何を?」
「えーっと実はお恥ずかしながら少々迷ってしまいまして、それで教室の場所を教えてもらえないかと」
「え? あ、あーそうなんですか。それでしたら私が案内してあげますよ。何処の教室ですか?」
なんて親切な御方なんでしょう、困っている私を助けてくれるなんて。えっと皆さんが行った教室は・・・・
「どこでしょう?」
「へ? あの、何処と私に聞かれても・・・、えっとその教室の生徒の名前はわかります?」
「あ、それなら分かります。ジンさんと言う方なんですけど」
「ジンってもしかしてミスタ・アルベルトの事ですか?」
確かジンさんはそんな名前で呼ばれてましたね。
「はい」
「その失礼ですが、ミスタ・アルベルトとはどういうご関係で?」
「えっと使い魔って事になってます」
「使い魔?・・・ああ、では貴方がミスタが召喚したと言う。分かりました、今からご案内しますね」
「ありがとうございます」
これでやっと教室に行けます。ホントにこの人には感謝感激です。私は女性、ロングビルさんと言ってこの学園で秘書をやっている方に案内され教室に行きました。
「ここですよ」
「本当にありがとうございました。このお礼はいつかしますね」
「別にいいですよ。ではこれで」
ロングビルさんに教室前まで案内してもらって私は彼女にお礼を言います。さて私は教室に入りますか。
「へ?」
「・・・・・・」
「・・・お」
私が扉を開けようとしたら、先に扉が開き中からキキさんとちっちゃい女の子が出てきました。あれ? もしかして終わっちゃいました? 私がオドオドしていると、
「ちとせ、こっち来い」
キキさんが少し離れた所から手招きしてきました。隣にはさっきのちっちゃい女の子が座って本を読んでいます。なんか見た目がミントさんに少々似てますね、小さくて髪が青いのとか。私は困惑しながらキキさんの所までいったら突如爆音が響き、後ろを見たら扉が吹っ飛び、教室が爆発していました。一体何が起こったんですか!?
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