第5話 テスト、それは命をかける戦い 前編
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「ふぅ〜、これでとりあえず全部終わりましたね」

 

モップを片手に持ち、もう一の片手で額にでた汗をぬぐっているのは桂馬。

というかその動作どこのお掃除のおばちゃんだよ。

 

「それにしてもなんか凄いのばっかりでしたね〜……金ぴかのコナ○像と、ガンダ○像とか……さすが金持ちはやることが違いますね……」

 

そこは金持ち関係ないと思うが……。

 

「どうしましょうかね、これから……とりあえずハヤテ君に会わなければなりませんね……。しかしハヤテ君が早めに終わっている可能性を考えれば、ここまで来るかもしれませんし、ここはおとなしくしていましょうかね?」

 

モップを安全なところに置く桂馬。そのまま借りた掃除用具一式もそこに置いた。

 

「しかし置物もそうでしたけど、本当に色々とありますね。特に驚いたのは部屋の数ですね。一体いくつあるんでしょうか?」

 

周りを見渡すと部屋のドアばかりである。

 

「こういう屋敷ってゲームとかだと何箇所か偽者のドアあったりするんですよね。

ルイージ○ンションでやられましたよ」

 

うんうんと一人で納得する。そうそうそこは作者も同感だ。あれのせいでお金が……。

 

「……少し覗いちゃってもいいですかね?」

 

誰もいないが一応声にしたかったのだろう。わかる気持ちは大いにわかる。

 

「作者さんにわかっていただいても仕方ないと思うんですが……いいですよね?大丈夫ですよね。少しくらい」

 

その知的好奇心で、今までどれくらいの主人公たちが倒れていったことか……。

 

「た、確かに……。でも誰も倒れていったと聞いただけで、退くわけにはいかないんですよ!!」

 

そんな熱い展開になりそうなことを桂馬が呟いていたとき、後ろから忍び寄るものがいた。

 

(やっと見つけたぜ……。それにしても広すぎだったつうの)

 

三千院家のマスコット?キャラクターのタマである。

 

(なんで疑問系なんだよ……まあ、それよりも……)

 

タマの目の前にはどうしようかと迷っている桂馬の姿。

 

(どんなやつか……とりあえずネコみたいによるのが一番だな)

 

「にゃ〜」

 

「ん?後ろからなんだかネコみたいなネコではないような声が」

 

後ろを振り返る桂馬。そこには尻尾をひらひらと左右に動かしているタマの姿。

 

「……」

 

(あ、あれ?失敗しちまったか?)

 

突然黙った桂馬に、少し動揺してしまうタマ。しかしそれは一瞬で杞憂に終わる。

 

「うわぁ〜、可愛いネコです♪」

 

目をキラキラさせながらタマの頭をなでる。

 

「やっぱり凄いですね、三千院家って。ペットまで桁違いですね。ここまででかいネコがいるなんて……」

 

(なんだ、こいつ。お嬢達と同じタチか?まあ、いいか。早速ハヤテの時のように動物が喋らないっていう夢をぶち壊してやるぜ!!)

 

ここまで来るとただの悪役である。でも確か夢を壊さないんじゃなかったっけ?

 

(へっ!!俺が壊したくないのは少女の夢だ。少年の夢なんてむしろ壊してぇよ)

 

壊すなよ。

 

「よしよし。いやぁ〜可愛いな。本当に。しかしあなたからはなんだか不穏なオーラを感じますね。もしかしたらこれから何かあるかもしれませんよ?気をつけてくださいね♪」

 

まるで太陽のような笑顔をタマに向ける桂馬。しかしそんなのは無意味だということを今すぐ知ることになるだろう。タマはそんなことを考えながら、

 

「ねっから年中不幸まみれの奴にそんなこと言われたくねぇよ」

 

堂々と桂馬に向かって言い出した。

 

「何がオーラだよ、むしろお前から特有のオーラでてるぞ。べジー○もびっくりだよ」

 

一瞬の沈黙。

 

(……さすがにいいすぎたか?)

 

さすがに言い過ぎたのかなんだか桂馬が黙っていることに心配になってくる。

タマはうつむいている桂馬の顔を見つめた。すると、

 

「……やっぱり三千院家って凄いんですね……まさか動物を話せるように教育しているなんて……」

 

こんなことを言い始めた。

 

「お、おい。驚かねぇのか?俺が喋ってること……」

 

「まあ最初は少しびっくりしましたけど、でも三千院家って考えれば全て説明がつくのかなと思いまして……」

 

(確かに……)

 

桂馬が言ったことに、凄く同感しているタマ。確かに三千院家の人達はなんだか普通とは違う。

 

「だから別段驚きませんでした。なんかリアクションすればよかったですか?」

 

「いや、それだとなんだか俺がかわいそうな奴と思われるからやめてくれ」

 

「そうですか。では改めてこれからもよろしくお願いしますね♪」

 

先ほどと同じように笑顔を向けていた桂馬にさすがのタマも諦めたようで、

 

「……おう」

 

と返すだけだった。

 

「タマーーー!!」

 

そんなときであった。可愛いピンク色の三角巾をつけて走ってきたハヤテが来た。

 

「あっ、ハヤテ君。とりあえず掃除終わったんですけど、どうすればいいですか?」

 

「あ、終わってましたか。じゃあしばらくそこにいてください。僕はそこのトラとお話があるので」

 

「トラ?これはネコじゃないですか?」

 

(おいおい、俺はまさかのコレ扱いですか?)

 

心の中で泣くタマ。

 

「でも確かにトラといわれればトラですね……しかし凄いですよね、タマ、でしたっけ?」

 

「え、何がですか?」

 

桂馬がタマを評価するところに疑問を感じたハヤテは思わず聞き返していた。

 

「だって……」

 

(やめろ、桂馬!それをハヤテに話したら俺は……俺はスターリンのごとく粛清されちまう!)

 

必死の抵抗で桂馬をジロジロと睨み付ける。そのタマの視線に気付いたのか、桂馬はタマの方を振り返りニコッと笑顔で返した。

 

(ほっ。あの様子だと大丈夫そうだな)

 

一気に安堵感に襲われたタマだったがそれは一瞬にして変わることになる。

 

「喋らせるように動物に教育するなんてすごいじゃないですか!!」

 

(おいぃーーー!!なに言っちゃってるんだあいつ!?さっきの笑顔ってそういうこと!?)

 

「ほぅ〜……そうですか。それは確かにすごいですよねー。僕も驚きました……」

 

「ですよね。そうですよね。しかしさすが三千院家、やることが違いますよ〜」

 

「そうですか……あ、僕そうえばタマに少し用があったんだった……すみません少しタマを借りますね」

 

「借りるも何も、大丈夫ですけど……用って?」

 

「ああ、用と言ってもすぐに終わりますよ、だって少しお話(・・)するだけですから♪」

 

(お話ってところ強調しやがったーーー!!どんなお話する気だよ、あいつ!?)

 

笑顔で話しているハヤテだが明らかに黒い邪悪なオーラが見える。

 

「少しそこで待っててください」

 

「わかりました」

 

桂馬にそう言ったハヤテはそのままタマのところまで歩いてくる。

 

「タマ……」

 

「な、なんだよハヤテ〜。なにか用があるんだって、俺に」

 

「ああ、とりあえずあそこの部屋で話しましょうか、色々と」

 

ハヤテが指をさしたのは、他のドアより少しでかいドアがある部屋だった。

 

「い、いや〜じらすなよ。俺たちの仲だろ〜」

 

「そうですよね、僕達の仲ですよね。だったらわかりますよね?」

 

笑顔で返してくるハヤテにタマはもう何も言えなくなってしまった。

そしてそのまま部屋へと引きずりこむ。

 

「ま、待ってくれハヤテ!」

 

「待て、って言って通用するのは二次元の中の話だよ、タマ?」

 

「い、いや。そういうことじゃなくてだな」

 

「さてとそれじゃあ約束通り、粛清(おはなし)しましょうか♪」

 

そうして扉はバタンッ、と大きな音をだし閉じた。

 

「にゃぁぁーーーーーー!!」

 

その後まもなくしてトラの、いやネコの悲鳴が聞こえたという。

 

「?なんでしょうか今の声?」

 

そこにいざなった張本人はその場でのほほんとしていた。

 

 

 

 

 

 

「それにしても凄いですね、桂馬さん、僕でも結構時間かかったのにこんなに早く終わらせるなんて」

 

「こういうの慣れているので。でもまあ今までやってきたよりかは断然に広いところでしたので、少々手こずりました……」

 

ハヤテがタマに色々してから数十分後、もはや原型がなくなったタマを見てびっくりしながら、ハヤテと一緒にリビングに向かっている。

 

「それにしても、タマは大丈夫でしょうか?なんだかモザイクかかってるんですが……」

 

後ろを振り返る。そこにはなんだかトラどころかネコの原型をなくしたタマの姿があった。

 

「大丈夫ですよ。タマはああ見えて結構しぶとい奴なので」

 

「それならいいかな」

 

「いいわけないだろ!?大体なぁ」

 

反論しなければならない、そう思ったタマはなんとか原型を取り戻し、すぐさまハヤテに向かって反論しようとする。しかし、

 

「何か言ったか、タマ?」

 

めちゃくちゃ怖い顔で言うハヤテがそれを許さなかった。

 

「……いえ、なんでもないです」

 

「そうですか♪」

 

「……一体何をしたんですかハヤテ君は?」

 

「別に。ただのお話ですよ」

 

「……そうですか」

 

これ以上聞いても多分何も言わないだろうと感じた桂馬はもう聞かないことにした。

 

「ってあれマリアさんじゃないですか?ハヤテ君」

 

「あれ、本当だ。しかもクラウスさんまでいる」

 

ちょうどリビングが見えたところでマリアとクラウスの姿を見つけた。

 

「あの、あの隣にいる老人は?」

 

「あ、あの人はクラウスさんと言って執事長です」

 

「執事長ですか、ではちゃんと挨拶しなければ」

 

そんなことを話しているうちにリビングについた。

 

「あらハヤテ君に桂馬君。もう終わったんですか、掃除は?」

 

「はい、桂馬さんが予想以上に早くて……」

 

「いやぁ、なんだかやっていたらいつの間にか終わってて」

 

(なんですか、その自然スキルは)

 

出会って一日だが、桂馬という人間をだんだんとわかってきたマリアだった。

 

「そうですか、それなら執事としては上出来ですね」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

嬉しそうに頭を下げる桂馬。

 

「ふんっ、まったく掃除ができたからといっていちいち喜んでいては執事の仕事は勤まりませんな」

 

「え、あ、すみません……」

 

「いいじゃないですかクラウスさん、初めてなんだし」

 

「そこまで言う必要はないんじゃないでしょうか?」

 

「いや、大体掃除なんて子供の頃からやっていること、当たり前のことだ」

 

「そ、そうですよね。さすがに浮かれすぎちゃいましたかね。褒められたものが久しぶりだったもので……」

 

(((褒められることが久しぶりって一体どんな人生だよ)))

 

三人が同時に思ったことであった。

 

「そうえば、まだクラウスさんに挨拶してませんでしたね。御剣桂馬です。よろしくお願いします!!」

 

「ふむ、まあ挨拶だけは上出来ものですね。

だが

まだそれでは執事とは言えなませんな」

 

「そうなんですか……」

 

(いや、掃除の出来でもう充分なのでは?)

 

ハヤテは先ほどの桂馬が掃除していたところをみる。すみからすみまで綺麗で、そのレベルはもはやこの小説では表現できないほどだった。

 

「いいかな、御剣桂馬。一流の執事とはすなわち、力や頭のよさなども重要だが、なにより大事なのは主を常に守ることである!!」

 

「!?」

 

「マリアに聞いたが、君はサイ○人らしいな」

 

「いや、サ○ヤ人ではないですけど……」

 

「ならばまだ君には執事になる資格はある……」

 

「あの、マリアさん、執事になるためには○イヤ人でなければならないんですか?」

 

「いえ、それはただクラウスさんがつけた妄想です。それにそんなとんでもない設定があるんでしたらすでにハヤテ君は執事失格ですね」

 

「そうですよ。そこのところはどうなんですか?クラウスさん」

 

ハヤテの質問に対するクラウスの返答は……、

 

「それは、お嬢様も言っていたではないか、お前は変身をあと二回残していると……」

 

「それはお嬢様が言ったでたらめな設定ですよ!しかも僕地球人ですし!」

 

結論、ドラゴンボー○の設定だったらなんでもいいのだ。

 

「まあ、それはともかく、クラウスさん」

 

「わかっている、マリアよ。御剣桂馬!」

 

「は、はい!」

 

「君にはこれから執事になるテストを仕方なくしてもらう」

 

「テスト……ですか?」

 

「そうだ。そしてそのテストに落ちたら……お前はここに出て行くことになる」

 

「!?」

 

「だがもし、そのテストに受かることができれば、まあ、執事になることを許してやってもいい。ちなみにこれはマリアが提案してくれたのだ。マリアに感謝することだな。私だったらすぐに追い出しているところだ」

 

桂馬はクラウスの話が終わったと同時にマリアの方に向く。

 

「そうなんですか?マリアさん?」

 

「そうですよ。私、桂馬君にはナギの執事になってもらいたいんです。最近ナギはあんなに元気になったのに、また落ち込んでいる姿はもうみたくないので。それに桂馬君自体もほっとけないんです」

 

「マリアさん……」

 

「そうですよ、桂馬さん。出会ってすぐ別れなんていやですよ。せっかく同じ執事としての仲間ができたし」

 

「ハヤテ君……」

 

マリアとハヤテの言葉は桂馬の心に刻みつくように入っていく。

 

(そうだ……僕は恩をかえさなきゃならないんだ。ナギお嬢様に。そしてマリアさんに。みんなの期待のためにも……僕は!!)

 

「わかりました。クラウスさん。そのテスト受けましょう!!」

 

「うむ、威勢だけはいいですなぁ……」

 

(それにほっといてしまうと)

 

(多分僕みたいに……)

 

((犯罪にはしってしまうではないかと思うと……))

 

実際にはこんな思いもあったりするが、桂馬は知らない。

 

「さて、クラウスさん……そのテストとやらはどんな内容ですか?」

 

「まあ待ちたまえ。少し準備がかかるのでな。先に行って準備しているよ。お楽しみはそこでということで」

 

「分かりました」

 

そう言ってクラウスは部屋から出て行った。

 

「僕の時みたいにロボットと戦ったりするんでしょうか?」

 

「さぁ、私にも分かりませんけど、多分何かしらのものはあるでしょうね……」

 

(何かしらってなんですか!?凄く気になるんですけど)

 

そんな感じでテストの内容が気になりながらもしばらくリビングにいるとクラウスがやってきた。桂馬たちはクラウスに連れられて、ある部屋に向かった。

 

 

 

 

 

「私が寝ている間に色々あったんだな」

 

「はい。それはもう色々と……」

 

ここは三千院家のとある部屋。そこでナギが久しぶりにこの小説内で声を発した。

 

「それはお前のせいではないか」

 

次は気をつけます、ほんとに。

 

「まあ、それならよいがな」

 

「お嬢様一体誰と会話を?」

 

「ハヤテにはまだ早い。気にしないのが身のためだ」

 

「はぁ、そうですか」

 

「それよりもここで何のテストをするというのだ」

 

ナギがキョロキョロと可愛げに辺りをころころ見回しながら呟くこの部屋は他の部屋と違って少し広いのが特徴だ。

 

「さて、御剣桂馬君。ここで君には執事勝負をしてもらう」

 

「執事勝負ですか?」

 

「そうだ。執事勝負とはまあ、名前の通り執事の仕事を競ってもらうことだ」

 

「でもクラウス、どこにも相手がいないではないか?」

 

確かにナギが言う通り、この部屋には五人を除いて誰もいなかった。

 

「ふっ、もう来ますよ」

 

「フン、遅くナリマしたネ!」

 

いきなりどこからか声が聞こえたと思うと、そいつは窓ガラスを破ってやってきた。

 

「な、なんてやつだ」

 

「というか誰がこのガラスを修理するんでしょうね」

 

マリアのそんな思いを無視するかのように、全身白い服の男は喋りだした。

 

「おマエが俺のシケン相手カ。ナンダカ弱そうなヤツだナ!」

 

「状況から察するに、僕の試験相手みたいですね」

 

(なんだか喋り口調からして色々ある方だけど……でも負けるつもりはない!!テストには絶対に受からなきゃいけないんだ!お嬢様たちの恩を返すためにも!)

 

心の中で絶対の決意を表した桂馬は目の前に向かって叫ぶ。

 

「御剣桂馬、行きます!!」

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、ハヤテ……」

 

「なんですか、お嬢様?」

 

「これはいつからこんなに熱く燃える少年ジャ○プに載っているようなものになったんだ?」

 

「最初っからこんな感じでは?」

 

「……それもそうだな」

 

((それで済ませていいのでしょうか?))

説明
第五話です。

なんだかんだでなのはを見に行けない。前売り券は買ってるんだけどなあ。
早めに見に行きたいです。

ではでは五話どうぞ〜。
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