とある科学の自由選択《Freedom Selects》 第 三 話 電撃姫との衝突
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第 三 話 電撃姫との衝突

 

「あんた、私の後輩に何してくれてんのよ」

 

神命 選は、不意に後ろから声を掛けられた。

 

常盤台中学の制服を着たその少女。神命は彼女の名前を知っている。

学園都市の7人のレベル5の第三位???超電磁砲(レールガン)の御坂美琴である。

 

「あんた一体何したのか分かってるんでしょうね?」

 

(何したって言われてもなぁ。何か襲って来たので返り討ちにしただけなんですけど……なんてどうせ言っても信じないだろうな)

 

はぁと大きな溜め息をつく神命。

 

「あんた、溜め息なんかついてないで何か答えなさいよ」

 

(って言うかよく考えたら寧ろこの状況って都合が良いんじゃないか?ここで第三位を倒したら……いやでもそんなことしたら今度こそ完璧に悪役だな)

 

神命はもう一度大きな溜め息をつく。

 

「何だ、こいつ第三位の知り合いなのか?」

 

「後輩だって言ってるでしょ。それにしてもあんた、私がレベル5だって知ってるのに随分と余裕かましてるのね」

 

「俺にとってお前はさほど脅威ではないからな」

 

「へぇ、私じゃ相手にもならないと?」

 

「そういうことになるな」

 

「じゃあ戦う気があるってことで相違ないのよね?」

 

「戦ってもあんまりメリットはなさそうだけど」

 

案外挑発に乗りやすいんだなぁと思いながらだるそうに神命は喋る。

 

「何だ、掛かって来ないのか?」

 

「言われなくても!」

 

その直後、御坂がビリビリと帯電したかと思うと勢いよく放たれた電撃の槍が神命目掛けて襲い掛かる。

 

しかし神命はと言うと相変わらずダルそうに頭を?き立っている。ただ「電撃を拒絶」と呟くだけで。

 

だがそれだけで異変は起こる。電撃は彼に直撃せず、いや直撃はしたのだがそこに何もなかったかの様に彼の後ろ通り抜ける。

 

その光景に御坂は一瞬唖然としたが再度電撃で複数の槍を形成し飛ばした。

 

そして彼に電撃の槍到達しようとした瞬間、彼は何かを呟く。直後、彼の体が大きくぶれ電撃の槍全ては外れていた。見るとさっき立っていた位置から10mほど離れた位置に彼は立っている。

 

(何なのあいつの能力、偏光能力(トリックアート)か空間移動と思ったけどぶれる寸前に少し足を動かしていたからどちらかと言うと肉体強化っぽいわね。少し様子を見てじっくりと見極めてやる)

 

御坂は今度は彼に雷撃を浴びせようとするが、それを遮る様に選がまた呟く。

 

「空気を選択、空間に固定。光を拒絶、身体を透過」

 

すると今度は彼の体の色が次第に薄れ完全に見えなくなってしまった。まるで気体が霧散するように。

 

(消えた!?見えなくなったってことはやっぱり透視能力(クレアボイアンス)か偏光能力みたいな視覚か光学操作系能力者の可能性が高いわね。これならさっきの現象も説明がつく!)

 

「ちょこまかと逃げ回ってちゃ勝負にならないでしょ。正々堂々と勝負したらどうなの。それともそうして逃げ回ることが、さっきのあんたの余裕の源だったの?」

 

すると頭上から声が聞こえてくる。

 

「いや別に逃げ回ってた訳じゃないんだが。少しは攻撃に転じて欲しいのか?」

 

神命は御坂の頭上でうつ伏せの様な状態で浮いていた。

 

「あんたの能力は相手の五感を狂わせて幻覚・幻聴を起こさせ自分の位置を誤認識させる能力。これでさっきあんたの体がぶれた様に見えたのも、霧散するよう消えたのも、今あんたが私の頭上に浮いているのも説明がつく。ならば私にだって対策はある。あんたが攻撃に転じようとしても、あんたの能力なら高が知れてるわ」

 

自信有り気に答える御坂だが、

 

「残念ながらそうじゃないんだ。まぁそう考えるのが普通だけど。因みにその対策って一体どんな奴なんだ?」

 

「知っての通り私は発電能力者(エレクトロマスター)のレベル5。10億ボルトの出力を誇る電撃をはじめ強力な電磁波によるジャミングや電波傍受、磁力操作によって砂鉄を操ることが出来る。だから電磁波を使ってレーダーのようにして死角からの攻撃にも対応できる。あんたの攻撃は私には当たらないのよ」

 

「あぁそういう使い方もあるのか、流石に発電能力者は応用性が高いな。まぁ、こっちもそれに対応するだけなんだが。 電磁波を拒絶 」

 

その直後、彼女の視界からだけでなく感知していた電磁波ですら選の姿は消えてしまった。

 

(そんな……あいつこんなことにまで対応できるの。一体どんな能力なのよ)

 

そんな彼女の思考を他所に再び地面の上に現われた神命は喋り続ける。

 

「んじゃ、そろそろ攻撃しますか。若干逃げ回るのにも飽きてきたしな」

 

 

そう言うと彼は腕を空に向けて掲げる。

 

「光を選択、手の平の一点に圧縮」

 

すると彼の手のひらの先に黒い物体が現われた。黒と言っても色としての黒ではなく漆黒、光沢など全くなくただただ黒い。

 

「超電磁砲を撃つなら今だぞ。今なら隙だらけで当たるかもしれないし、出し惜しみするくらいなら撃ってしまった方がいいんじゃないか」

 

彼の言葉に美琴は驚いていた。これまで何人もの能力者と相手をしてきたが、自ら超電磁砲を催促してきた相手などいなかったからだ。

 

「どうした、撃たないのか?こっちは後十数秒で完成するんだが」

 

十数秒で完成すると彼は言った。それが自分に残された猶予だと彼女は悟った。しかし、たとえ超電磁砲を撃ったところで彼に当たるのか?恐らくそれは否だ。彼の居場所すら正しいのかどうか分からないし、たとえ見えている場所にいたとしてもすり抜けてしまうだろう。

 

「ようやく完成したな。これ作るのに時間掛かるからあまり使いたくないんだよな」

 

そう言いながら彼は掲げていた手を前は動かし黒い物体は球体から刀のような形へ姿を変えていく。

 

「どうだ?日光で作った剣だ。見た目は黒くてあれだがそれは目に剣からの視覚情報が入って来ないだけで中は、レーザーで構成されているから切れ味は抜群だぞ」

 

そう言って彼はそれを地面に突き刺すと地面のアスファルトはいとも簡単に溶けていく。こんなものに触れたらいくら第三位の超能力者と言えどひとたまりもない。

 

「正直、俺より序列が高いからもう少しやってくれると思ったけど、やはり相性的には最悪だからこんなものかな。どうする?降参するか?」

 

「わ、分かったわよ。降参すればいいんでしょ」

 

「分かればいいんだ」

 

そう言って彼は黒い剣を蒸発させる。そこへタイミング良く気絶していた白井 黒子が目を覚ます。

 

「あれ、何でお姉さまがこんなところに?確か私は連続発火強盗を追いかけて……ってそこにいる殿方が3人の強盗の一人ですの!」

 

「あんた、強盗だったの?」

 

御坂が神命に疑いの目を向ける。

 

「違う違う。俺はただ走ってきた強盗3人を返り討ちにして、現金の入った鞄を風紀委員の支部に届けようとしたら、そいつが俺を強盗と間違えて襲い掛かってきたんだよ。まぁ、そいつも返り討ちにしたけど……ほらっそこの路地に3人捨ててあるから確認してみろ」

 

白井が確認しに行くと確かに男が3人気絶して倒れており神命の無実は証明され、男達は警備員達に補導されていった。

 

「黒子…ろくに確認もしないで攻撃を仕掛けたの?」

 

「だって初春に聞いていた通りの特徴の鞄を持っていましたし、地味な外見と言うのも一致していたんですもの」

 

「おいっこいつ今さらっと地味って言ったよな地味って」

 

神命にとってこの言葉が今日最大の傷になったことを彼女が知る由もなかった。

 

「そういえば、あんた私より序列が低いってことはレベル5なの?」

 

「ああ、第六位???『自由選択(フリーダムセレクト)』の神命 選だ」

 

「第六位がこんなに強いなんて聞いたことないわ」

 

「序列が高いほど強くなる訳じゃないからな。あくまで能力研究の応用が生み出す利益が基準だから、ほらお前だって『妹達』の件で……いやこれは流石に言わないほうがいいな。まぁそういう訳だ」

 

「って言うか、結局あんたって一体どんな能力なの?」

 

「それは私も聞きたいですわ。私のテレポートも無効化されてしまいましたし、正直検討がつきませんわ」

 

「詳しいことは言えないが俺の能力はは主に二つに分けられるんだ。先ずは『拒絶』。これは自分が触れたくないと思ったものをすり抜けることが出来る。使うには少し条件があるがすり抜けたい対象の形状や大きさ、性質などさえ把握していれば使うことができる。例えば無色の液体でも別に塩酸なのか硫酸なのかそれともただの水なのかは把握してなくてもあの液体ってだけですり抜けられる。御坂の電撃を避けたのはこれだな」

 

「じゃあ私の金属矢を避けた原理もこれですわね」

 

「そうだ」

 

「ですが、これでは私のテレポートを無効化したことについては説明できませんわね」

 

「それは二つ目の『選択』で説明できる。これは結構話すと長くなるんだが、簡単に言うと遠くにある物を近くに引き寄せたり、普段は触れることができない物触れることが出来る、例えば気体とか光とかだな。後は物体の位置の固定だな、これは固体だけでなく気体にも使うことが出来る。対象物の座標を固定させるんだ。自分の足元にある空気を固定して乗ることが出来たり、空間移動能力者を今いる座標に固定して能力で移動できなくしたりできる」

 

「それで中に浮いたり黒子の能力を無効化したり出来た訳ね」

 

「主な説明はこんな所かな。はぁ今日は結構疲れたな、そろそろ帰るとするか」

 

「またお会い出来たら良いですわね」

 

「いやもう、いきなり襲われるのはお断りだけどな」

 

そう言うと彼は二人の前から急ぐように立ち去ってしまった。

 

「それにしてもお姉さまが負けてしまうなんて、あの方随分とお強いですのね」

 

「べ、別に超電磁砲も撃たなかったし、手加減してあげたのよ」

 

「まぁ、お姉さまが御見栄を張るなんて珍しいことですこと」

 

「うるっさいわね、こっちだってプライドってものがあるのよ、プライドってものが」

 

そんな会話を交わしながら二人は人ごみの中へ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
第三話
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とある魔術の禁書目録 とある科学の超電磁砲 

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