IS〈インフィニット・ストラトス〉 〜G-soul〜 |
『敵の排除、開始』
機械音声とともに放たれたレーザーが一夏に迫る。
「くっ!」
バチィッ!
一夏は雪片弐型でそれを受け止めた。
「マドカ! どうしたんだよ! おい!」
一夏が必死に呼びかけるが、マドカは何も言わずにレーザーライフルを構えなおす。
俺は一夏の前に躍り出た。
「一夏っ! マドカの様子がおかしい! それにこんな街中でのドンパチは危険だ! 上空に上がるぞ!」
「あ、ああ! ラウラ、頼めるか!?」
「任せろっ!」
ラウラはワイヤーを射出し、サイレント・ゼフィルスの右腕に絡みつかせた。
「おおおっ!!」
そして肩のカノン砲を連続発射してサイレント・ゼフィルスを上空に打ち上げる。
「瑛斗っ!」
「Gメモリー! セレクトモード! セレクト! フラスティア!」
コード確認しました。フラスティア発動許可します。
俺はフラスティアを発動させ、サイレント・ゼフィルスに体当たりしてバーニアを噴かせた。
高度一五〇メートル程まで来て、サイレント・ゼフィルスと距離をとる。
バシュバシュバシュバシュッ!
レーザービット、シールドビットをそれぞれ二機ずつ射出し、レーザーライフルの銃口が俺に向けられる。
(こいつのビットからのレーザーは曲がる! BRFじゃ意味がない! だったら!)
俺はフラスティアを解除して、G−spritを発動。ビームウイングを展開した。
ライフルとビットからのレーザーの同時攻撃が放たれた。
横に動いて躱す。しかし、レーザーが曲がることはなく直進していった。
(・・・・・・・?)
変だ・・・・・。どうして曲がらない? マドカならできるはずなのに・・・・・・・。
「瑛斗!」
「ラウラ! 一夏!」
ラウラと一夏が俺に追いついた。一夏は第二形態の雪羅を発動している。
「! 瑛斗! 後ろだ!」
「しまっ――――――」
ラウラの声でとっさに振り返ったが、その時にはすでにライフルからレーザーが発射されていた。
ドガァン!
「ぐああっ!」
被弾し、姿勢を崩してしまう。直撃は免れたがシールドエネルギーが大きく削られた。
「瑛斗!」
一夏が俺の前に出た。そして、手を大きく広げる。
「マドカ! もうやめろ! 一体どうしたんだよ!」
『・・・・・・・・・』
だが、マドカが一夏の声に応えることはない。ビットが一夏とマドカの間に割り込み、一夏はレーザーの攻撃を浴びて
しまう。
「ぐっ・・・・・!」
「二人とも離れろ! 今のアイツにおそらく自我はない!」
ラウラが俺と一夏を引っ張って、マドカから無理矢理離れさせた。
「なんでそんなことがわかるんだよ!」
「アイツの機械的な戦い方を見ていればわかる。それに、戦闘開始時に『操縦者の生命の危険と判断』と言っていた。
あのISはどうやらマドカの命の危険を察知して、自動操縦になっているようだ」
「自動操縦って・・・・・銀色の福音と同じことが起きてるっていうのか?」
「いや、あれは暴走だ。今回の場合は、『操縦者の防衛』と捉えるべきだろう」
「防衛・・・・・じゃあ、サイレント・ゼフィルスは、マドカを守ろうとしてるのか?」
「簡単に言えばそういうことになる。多分、そういうシステムが組み込まれてたんだろ」
「・・・・・・・・・・・」
一夏は黙り込んで下を向いた。
「・・・お前にはアイツと戦うのは酷だろうな。俺がボルケーノブレイカーで――――――」
「いや。俺がやる」
一夏は顔を上げた。
「俺がやらなきゃいけないんだ。アイツの兄ちゃんになるんなら、それくらいやってみせる」
「お前・・・・・・・・・」
一夏の目は、真っ直ぐだった。俺はやれやれと肩を竦めた。
「わかったよ。援護は任せな!」
「ああ! ありがとう!」
「ラウラ! 正面からカノン砲を撃て! 奴のシールドビットの注意を逸らす!」
「了解だ!」
一夏は零落白夜を発動して、俺もビームブレードを発振して左右に分かれ、ラウラがカノン砲を連射する。
ガンッ! ガギンッ!
シールドビットは砲弾を弾き、レーザービットがラウラに向けられる。
「瑛斗! 一夏っ!」
「はあああああっ!」
「おおおおおおっ!」
ザンッ! ズバァッ!
二つのエネルギー刃による斬撃が、サイレント・ゼフィルスの装甲を砕く。
「やったか!?」
振り返りざま一夏がマドカを見る。俺も見たが、その時はまだサイレント・ゼフィルスは健在で、レーザーライフルを
一夏に、俺にはレーザービットを向けてきた。
「くっ!」
一夏はライフルからの銃撃を紙一重で躱し、俺はBRFアーマーでレーザーを消滅させる。
「! また勝手に!?」
突然G−spiritが姿を変え、ボルケーノが発動。ボルケーノブレイカーが金色に光りだした。
「ん?」
ウインドウに表示が出た。
(熱エネルギーを集中させて・・・・・遠距離射出!?)
俺はウインドウの表示をイメージする。
「・・・・・・・! おらぁっ!」
ゴオッ!
光の玉がボルケーノブレイカーから高速で発射された。
その光球はサイレント・ゼフィルスが咄嗟に展開させたシールドビットを貫通し、奴の胴体に激突。
「今だ! 一夏ぁっ!」
「おおおおおっ!」
姿勢を崩したサイレント・ゼフィルスに一夏が大上段で雪片弐型を振り下ろした。
ズバァァッ!
振り下ろされたエネルギー刃はマドカの顔を覆っていたバイザーを砕いた。
気を失っているのかマドカの目は閉じていた。
「・・・・・ビットの動きが・・・止まった?」
ビットとの戦闘をしていたラウラが呟く。見れば、確かにすべてのビットは動きを止めていた。
「サイレント・ゼフィルスが・・・・・」
すると、サイレント・ゼフィルスの展開が解除され、マドカの左耳で待機状態のイヤリングに戻った。
「! マドカ!」
飛ぶ手段を失い、気絶しているマドカが落下しそうになる寸前で一夏がその体を抱きとめた。
「なんとかなったか・・・・・」
俺がほっと息を吐くと、ラウラが隣に飛んできた。
「いや、このままここにいても危険だ。この空域を離脱する」
「了解・・・・・って言いたいところだけど、マドカの方も心配だ」
学園に戻りたいところだが、いろいろ騒ぎになるのも面倒だ。うーむ・・・・・・・
「・・・・・一夏、お前の家に邪魔するけど、いいか?」
「え? 俺の家?」
「学園より距離は断然近いし、騒がれることもないだろ」
「あ、ああ。わかった」
一夏は首を縦に振った。
「よし、Gメモリーセカンド、セレクトモード。セレクト、サグシェラード」
コード確認しました。サグシェラード発動許可します。
俺はサグシェラードを発動。サグシェラードはシェラードの発展系で、光学迷彩フィールドを展開することができる。
「このまま一夏ん家に向かうぞ」
俺はラウラと一夏を近くに寄せ、光学迷彩フィールドを展開。周囲の景色と同化して一夏の家に向かった。
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決戦! サイレント・ゼフィルス | ||
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