乱世を歩む武人〜第十話〜
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物事には過程があれば結果が生じるものだ。

 

それが例え自分の望まないものだとしても、結果というものは絶対に出てしまう。

 

私達董卓軍は「董卓様を大陸の王にする」という結果を求めて様々なことをした。

 

まぁ正確にいうと直接都の権力を狙って頑張ってたのは賈駆さんだけであり、

 

董卓さんは持ち前の優しさが仇となり洛陽の民を見捨てることが出来ず、私達武人は賊の討伐や勅命による諸侯への小間使い的な仕事で忙しかった。

 

そんななかで張譲の指示の下発生した何進将軍の暗殺。

 

それに便乗してこちらで実行した都内での悪徳文官の大粛清。

 

そんな過程を辿ってきた私たちにでた結果が今目の前に直面している問題である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反董卓連合」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時代は確実に大きく動こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賈駆

「じゃあ・・・軍議をはじめるわよ」

 

賈駆さんがいつもより数段重い声で軍議の開始を告げる。

 

賈駆

「みんなも知ってると思うけど・・・袁紹を中心とした反董卓連合が結成されたわ。まもなく大きな戦になる」

 

董卓さんは暗い表情をしてうつむいている。他の将軍たちは怒り心頭のようだ。

 

華雄

「やつらめ・・・月さまが悪政を敷いているなどと良くも言えたものだ・・・!」

 

華雄さんなんか今にも飛び出していきそうなくらいいきり立っている。

 

張遼

「それで・・・ウチらはどないするんや?」

 

大して他の方たちよりかは冷静な張遼さん。まぁ彼女が感情で動いたらこの軍はとっくの昔に終わっているだろう。

 

賈駆

「当然迎え撃つわ。それしかない」

 

陳宮

「恋殿がいれば連合なんてあっという間にやっつけてやるのです!」

 

呂布

「・・・・・・家族、守る」

 

陳宮さんも呂布さんもヤル気がにじみ出ている。

 

皆思い思いにこれから起こる戦のことを考えている。だからこそ・・・ああ、だからこそここにいる中では私くらいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

徐栄

(ヤバイ・・・姉貴と敵対することになった可能性が非常に高い。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明らかに別のことで悩んでいる人間は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

賈駆

「現在参加がわかっているのは、中心人物である袁紹を始めとし、袁術、馬騰、公孫賛とそして曹操軍といったところね」

 

張遼

「あちゃぁ・・・こらまた有名どころを集めてきたもんやなぁ・・・」

 

華雄

「ええぃやつらめ・・・よってたかってというわけか」

 

そんな会話も聞こえてくるがそれどころではない。

 

徐栄

(畜生・・・姉貴は今どこにいるんだ?袁家か?まだ袁家にいるのか?それとも他の諸侯か?劉備・・・はないと見ていいはず。彼女の思想は姉貴とは咬み合わないはずだし)

 

身内びいきなしでも姉はおそらくこの大陸でも数人といない人材の一人だ。

 

だからこそこんな「勝ち残る可能性が高く、勝てば英雄として名を馳せることのできる」千載一遇の機会を逃すような主を選んでいないであろうし、もし選んでいるとしてもかならず姉が進言して参加しているはず。

 

そして負けるであろう側にいる私にとってはそれは最悪の事態なのだ。

 

ならば逃げればいいのでは?っと思うだろうが・・・いくらなんでもそれは出来ない。

 

流石に「負けそうになったから」といった理由で逃げていくような人材を欲しがる奴にろくな奴はいないだろう。

 

そして一応だが私も武人。戦いが好きではないが武人としての仁義を少しくらいは持ち合わせている。

 

ここで背を向け逃げ出したならおそらく私は二度と戦うことができなくなろうだろう・・・こういった理由でこの戦争。逃れることは出来ないのだ。

 

だから私が今回の戦で心がけることは大きく2つ。

 

一つは「姉の居場所を探す」。もし諸侯のどこかに姉がいると判明したらそこから離れた場所を攻める。または守るように進言してでも止めなくてはいけない。

 

そしてもう一つ「戦場ではち合わせない」こと。偶然とはいえ敵対勢力なんかにいることがバレたらどんなことをされるのか・・・

 

徐栄

(・・・もしかしたら一生外を歩けなくされるかもしれんね)

 

バレたときの折檻の内容を考え震えているところを見かねたのか張遼さんが話しかけてきた。

 

張遼

「なぁ徐栄・・・随分震えとるな?ひょっとして怖いんか?」

 

徐栄

「いえいえ・・・ただこれが董卓さんが大陸の王になれるかどうかの大勝負ですからね。武者震いってやつですよ」

 

ハハハ・・・と苦笑い。すると皆が呆けた顔でこちらに向きなおしてきた。

 

・・・?なんか変なこと言ったか?

 

張遼

「徐栄・・・お前状況わかっとる?いまウチらは諸侯から目の敵にされとるんやで?」

 

徐栄

「はぁ・・・そうですが・・・そんなもの予定調和でしょう?」

 

今度はみんなで驚いた顔をしている。・・・説明がいるっぽいな。

 

徐栄

「何進将軍が暗殺され十常侍よりの文官が思い思いに動いていたあの現状であんなことをすればそりゃあこんな噂もたてられるってものですよ。

 

だって生き残った奴らからしてみれば私達を消しさえすれば自分たちの罪を全部まとめてもっていってくれるのですからね。更に対抗勢力も消え権力大幅上昇のまさに一石二鳥。

 

ここで権力が欲しい奴らが動かない道理は欠片もありませんよ」

 

張遼さんは理解できたらしい。ひどく感心した顔しながらこう質問してくる。

 

張遼

「な・・・なるほどなぁ・・・しかし・・天下分け目っちゅーんはなんや?」

 

徐栄

「はい、先ほど言った状況・・・逆に言うならば私達が生き残ってしまえば文官の粛清は続けられ1本化した権力が全部こっちに回ってくるってことなんです。

 

そうすれば諸侯全員逆賊にして帝の権力をもって討伐すればやり諸侯の領地全てを私たちの勢力でできるってわけです。集まった諸侯の土地だけでも相当なもの。

 

さらに帝の庇護下ともなればもはや董卓さんを大陸の王にするのなどあとは時間の問題・・・・・・ってわけだと思ってたんですが違いました?」

 

正直に言おう。ここまで大事になるのは予想外だった。

 

賈駆さん一人でやっきになっても十常侍のどこか、それじゃなくともせいぜい袁紹あたりに潰されると踏んでいたのだ。

 

予想以上に十常侍と袁家の連中が予想以下だったことがひとつ、そして彼女の情熱と才能の高さ、更にはそれをたった一人で実行されてしまったのが予測を誤ったもう一つの理由だ。

 

十常侍に取り込まれるのでアレは利権を適当にちらつかせて退場すればよかったし袁家あたりに潰されるのならおそらくそこに姉が介入しているだろうと高をくくっていたのだが・・・

 

離れる機会はいつでもあると踏んでいた。居心地がそれなりに良かったこと、洛陽から大陸の情報を見れることの美味しさを理由に完全に機会を逃してしまった。

 

思考に沈んだことに気づきはっと周りを見ると私のことを何か珍獣を見るような目付きでみている将のみなさんがいた。

 

華雄さんと呂布さんは未だにいまいちわかってないっぽい。

 

徐栄

「え〜と・・・華雄さん、呂布さん。要するに「ここで勝てれば董卓さんが王になれる」ってことです。」

 

華雄

「おお!そうだったのか!よし、この華雄の武をもって月様に天下を!」

 

理解してくれたのか俄然張り切る華雄さん。よし、頑張れ。

 

天下の大勝負ということがわかったためか他の武将の方々にも怒気ではなく闘志がわいているようだ。あれ?賈駆さんがすごい疑惑の目でこっちを見てる。

 

・・・・・・あぁ・・・そうかようやく理解した。この発想は普通の武人ではでないのか。

 

賈駆

「ねぇあんた・・・今まで不思議に思わなかったけど・・・本当に何者なの?軍師でもない人にここまで流れが見えるとは思えないんだけど」

 

徐栄

「何者と言われましても・・・私は徐栄。張遼隊の副将です。それ以上でも以下でもありませんよ」

 

賈駆

「ただの・・・ね。まぁいいわ。今は時間が惜しいから今度ゆっくり聞いてあげる。でもこれだけは確認させてもらうわ。アナタは月を裏切らないわよね?」

 

徐栄

「無論。我が名徐栄にかけて誓いましょう」

 

 

 

 

 

・・・実は偽名だがまぁいいだろう。戦中はうらぎる気はないし。

 

 

 

 

 

 

賈駆

「そう・・・分かった。じゃあ今から配置を説明するわね。まず・・・」

 

どうやら連合は水関、虎牢関を通りココ洛陽へと向かってくるようであり水関に華雄さん、虎牢関に呂布さんと張遼さんの部隊を配置することになったらしい。

 

作戦内容は至って単純であり防衛に徹し遠征軍のうちわもめと兵糧問題をつこうというもの。

 

確かに水関、虎牢関ともども防衛側としては最高級の関であるため問題はないだろう。

 

私としても大歓迎だ。姉にはここにいると伝えていないはずだし攻撃に出ないのであれば軍師である姉に会う可能性は皆無といっていい。

 

守っていれば勝てるし私も姉会わなくてすむ。

 

そんな簡単な話・・・であったはずだったのだが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徐栄

「あれ?あの軍華雄さんのところでは?」

 

張遼

「んなアホな。あの水関がそう簡単に落ち・・・ホンマや。」

 

戦が始まり虎牢関に詰め寄って数日足らず、そこには連合軍という大きなお土産を持って帰ってきた華雄さんの姿があった。

 

 

 

 

・・・・・・どうやら簡単には終わらないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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〜連合側のとある場所〜

 

ここ・・・曹操軍では軍議が開かれていた。

 

曹操

「予定通り、虎牢関攻略の指揮権は引き受けてきたわよ。これでいいのよね。桂花」

 

見るものが見れば間違い無く「王の器」だと理解できるほどの覇気をまとい話す彼女こそ曹孟徳。この軍の当主である。

 

荀ケ

「はい。ここで呂布と張遼を破れば華琳さまの名は一気に高まるでしょう。それは華雄ごときの比ではありません。」

 

隣で桂花と呼ばれるものの名は荀ケ。黄巾の乱よりその才能を買われ今では名実ともに曹操軍の筆頭軍師として活躍をしている。

 

一刀

「ただ・・・それだけ強いんだろう?」

 

心配するような声で質問をしているのは軍議内唯一の男であり、巷で噂の「天の御遣い」である北郷一刀だ。戦場・・・というかこの時代には存在しない白い学生服を着ている。

 

夏侯淵

「呂布の武勇は天下無双。それに張遼の用兵は神速と誉れ高い。おそらく董卓軍で気をつけるべきはこの二人だろう」

 

彼の質問には夏侯惇が答えた。軍を取り仕切っているだけありその手の情報は持っている。

 

曹操

「・・・欲しいわね。」

 

曹操がそうつぶやく。その顔は至って真剣だ。

 

一刀

「また華琳の悪い癖が・・・」

 

一刀が頭を抱えてそうつぶやいた。どうやら彼女の人材に対する執着は並のものではないらしい。

 

夏侯淵

「今回ばかりはお控えください。特に呂布を捕まえるとなれば・・・姉者と私は最低でもいなくなるでしょう。」

 

そう曹操を諌めるのは夏侯姉妹が妹、夏侯淵だ。その言葉に曹操は僅かに顔をいぶかしげる。

 

曹操

「随分と弱気ね・・・でもわかったわ。あなたが言うのならば呂布は諦めましょう。でも張遼はどうなのかしら?」

 

夏侯淵

「張遼はたしかに強い武人でもありますが真の強みは其の用兵術。捕らえよとのこのであれば桂花と姉者がなんとかしてくれるでしょう」

 

荀ケ

「おまかせください華琳さま!」

 

彼女は自信満々にいう。自分の用兵術が一武人に負けるわけがない・・・その顔はそう語っていた。

 

夏侯惇

「わかりました!それが華琳さまのお望みならば何人だろうと捕えてまいりましょう!」

 

一刀

「何人だろうとって・・・張遼は一人しかいないだろう・・・?」

 

夏侯惇

「なにか言ったか?」

 

一刀

「いいや。何も。」

 

曹操

「そう。なら張遼のことはあなた達に任せるかわ。」

 

夏侯惇・荀ケ

「「お任せを!」」

 

彼女たちは頭をさげ答えた。

 

一刀

「・・・気をつけろよ春蘭」

 

一刀は心底心配そうに言った。彼にとっては彼女たちは武人であるまえに「女の子」なのだろう。

 

夏侯惇

「心配されるまでもない!華琳さまの信頼をえた今の私は無敵!」

 

が、そんなことがわかるわけでもなし。夏侯惇は自分の愛する主君の信頼を受け張り切っている。

 

夏侯淵

「フフフ・・・それでこそ姉者だ。桂花、お前も気をつけたほうがいい。」

 

桂花

「なんでよ?私が一武人ごときに兵の指揮で負けると思っているの?」

 

彼女は心外だとばかりにその顔を不機嫌にする。

 

夏侯淵

「いや。噂だが張遼には優秀な副将がいるそうだ。彼女の兵たちもその副将を信頼しているという話を聞いたので一応な」

 

荀ケ

「フン!たかが副将一人増えた程度で遅れは取らないわよ!・・・まぁ一応注意はしておくわ。華琳さまのためにね」

 

夏侯淵

「ああ。信頼しているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物語は虎牢関へと移り変わる。乱世も、彼も大きな転換点を迎えようとしていた。

 

 

説明
反董卓連合突入。訂正箇所がちょっとあります
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コメント
>> アルヤさん ええ、実はそうなんですよ。本当は一話時点で明かしていたんですが改変しすぎてここまで引っ張ってしまって・・・どうしてこうなった。(RIN)
衝撃の事実発覚!偽名かよwww(アルヤ)
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