DIGIMON‐Bake 2章 14話 屋根の上での遭遇 |
先日山の上で寛ぎにと出かけたが、散々な一日になった。
深は登りも降りも寝っぱなしだったし、何故だか七大魔王のベルゼブモンを見つけるし、その上ベルゼブモンには無理矢理食を勧められ運動だとか言って山を走って降りなければならない事になるし……全くの厄日と言っても過言ではなかっただろう。
結局向こうは俺の事を覚えているのかいないのか分からないし、そしてヤツの目的も探れないまま一日が終わった。
「え? ベルゼブモンといた人間が誰だって?」
「ああ、テイマーだと言っていたが」
「あー、あいつは俺の幼なじみだよ。何でテイマーになったかは知らないけど」
「幼なじみ!?」
「そうそう。あ、レオルモン、これから学校行ってくるから。今日で終わりだぜ、明日からは夏休みな」
「えっ、ちょっ深! まだ聞きたい事が……!」
バタンと部屋を出ていった深はいつになく早かった。オイ、何でこんな時だけやたら素早いんだあいつ……!!
窓から深が歩いていく様子を見つつ今日も日差しがキツイと思いながら差し込んでくる光を浴びた。
今日も暇な一日が始まる、そう思うとデジタルワールドが懐かしく思えて、空を見上げても青が一面に広がるばかりでリアルワールド球のようなものはなかった。
遠くにあるようで近い。近くにあるようで遠い。
そんな球体はこの世界には存在しない。リアルワールドとデジタルワールドは同じようにあるのではないのか?
窓を開けると俺はその外へ、屋根の上に体を放り投げたのだった。
▼▼▼▼▼
朝の早くから昼寝……ってそれじゃぁ昼寝とは言わねぇか。
いつものように早めに契を叩き起こして飯食って、ふらりと外へ出たら珍しく眠気が襲ってきた。だから屋根の上で一眠りしようと熱い瓦に寝転んだまでは良かったんだが……
「……」
「……」
明らかに「知り合いです」みたいな視線を向けてくる成長期デジモンに出くわした。
レオルモン? いや……そんな知り合いはいねぇんだが。しかも噛み付いてきそうな鋭い視線だ。
「……」
「……」
とことん無視を決め込む俺。ついに耐えきれなくなったのか、レオルモンが距離も縮めず喋った。
「お前、七大魔王ベルゼブモンだろう」
「……」
喋ったと思ったらそんな事かよ!?ぶっちゃけどうでもいいわっ。聞くなそんな事!
「おい……何が目的だ」
「……」
こっちが聞きたいわ。それを聞く目的は何だってなァ!
「……」
「……」
そもそも誰だよこいつなんて思って寝たふりをしてたら、
「いてててて――――!」
腕に噛み付いてきやがった。
「おまっ、調子乗んな――!」
ガバッと上半身を起き上がらせ柴犬くらいの体を腕からひっぺがすと、レオルモンは抵抗もせず俺を見る。
「先日のお返しだ。あの時は世話になったからな」
先日のお返し……?
会ったこともないし、噛まれるような事をしたのも身に覚えのないことだと最初は思ったが、そういえば先日、こんな目と声を持ったヤツがいたのを思い出した。
「あー……お前いつぞやのデュナスモンか」
「そうだ」
コイツは恐らくあの厄介なロイヤルナイツのデュナスモン。何度か狙われた事があったのを記憶している。だからだと思うが、先日会った時、そのデュナスモンだろうとは予想はしていた。そういうのは適当に、雰囲気や威厳で分かるものなのだ。
あー面倒くさいと思ったが、もう既に感付かれているのでどうやってもかわす事は出来ないだろうな。諦め半分、面倒くささ半分でこいつと会話する事にした。
「で、目的って何だよ。そんな面倒な事考えてねぇし」
「なら何故リアルワールド何かにいる」
間髪入れず返事を返してくるデュナスモンもといレオルモンを手から離すと、俺は再び寝ころんだ。
「何故って言われてもなぁ……好きで来たんじゃねぇし。俺が聞きてぇよ。じゃぁお前だって何でこんな所にいるんだ?」
「何でと言われても……俺も好きで来たんじゃない」
何だ一緒かよ。
「兎に角何か勘違いしてるようだから言っとくが、俺様はそんな他の魔王とかと違ってくだらない事は考えてね――」
「ん?」
「あぁ?」
何とも言えない気持ち悪い感覚がし、俺とレオルモンは後ろを振り返る。
「何だありゃぁ……」
空に小さく亀裂が入り、その隙間から球体が見えた。球体は青く、所々が緑に見える。地球儀のように綺麗な表面には見えず、荒れた地のように茶色がマーブル状に混じっている。
「リアルワールド球に似ているな」
「確かに……似てるなぁ」
球体はすぐそこに在るように思え、俺は何げなしに手を伸ばしてみた。空がこんな下にある筈もなく、普通ならば亀裂を通り球体には触れる筈はなかったのに指先は軽く球体に触れる。
「触れた? なっ――――!?」
触れた指先はチリッと痛み、まるで電気に触れたような痛さだった。指先の感覚が一瞬なくなったようにも感じたが、親指で指同士を擦ってみると感覚は正常だ。
「何なんだコレは……?」
覗き込んで見てみるとぐるぐると小さな四角い光が渦巻き、消えたり点いたりを繰り返している。
光の活動は見れば見るほど速くなっていて2秒もすれば倍にもなってくる。吸い込まれるように目は奪われ、次には亀裂からは霧が吹き出た。
「うぉっ――!?」
「くっ……」
視界は一瞬白く遮られ太陽を見たように目が痛くなった。目が開いく頃には自分が見る景色は全て白く濁っていて、それがデジタルゾーンだと分かるのには時間は掛からなかった。
「おい……これはマズイんじゃないのか……?」
「あぁ……そんな気がする……」
瓦の上から下を見渡すと置き去った思い出のように全てが止まっている。車が、人が、生き物の流れが全て。
「あいつらは……? 確か学校だったか?」
「深は学校だと言っていた。学校かデジタルゾーン外にあれば深らはこうはなっていない筈だが」
「あ、そうだな。場所は知ってるよな? 兎に角学校ってトコに行かなねぇとココじゃぁ何していいか分からねぇ」
「ああ」
瓦から飛び降り、同時に飛び降りた筈なのにレオルモンが後から着地する。それで気が付いたんだが、体の大きさ、体重もかなり差があるわけだ。
「……お前、進化出来ねぇのか?」
「……できん」
試しに歩くとレオルモンは忙しそうに手足を動かすし、やっぱり歩幅も合ってない訳で。
「あぁもう! 不便だなァ成長期はっ!!」
「んなっ!?」
こんな歩幅に合わせていたら進まないだけだとレオルモンを掴み上げ、頭の上に乗せてから学校に全力疾走したのだった。
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12話・13話http://www.tinami.com/view/452256 14話 屋根の上での遭遇 15話http://www.tinami.com/view/454663 |
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