10 海ですよ。すずか様
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●月村家の和メイド10

 

「御二人とも? 止める気はありませんか?」

「こ、ここ、ここまで来て……っ! 止める、わけにも……いかないでしょ……っ!?」

「そ、そうだ……! もう決めたんだ……! だから……やるっ!」

「……いえ、御二人とも声が震えていますし」

「「やるっ!!」」

 二人同時に言い放たれ、カグヤは押し黙るしかありません。

 片や、トランクスタイプの水着一枚の黒髪の少年、龍斗。

 片や、薄紅色のフリルのついたタンクトップに、同じくフリルのボトムに身を包んだ水着姿の金髪少女、アリサ。

 そんな二人に対し、麦わら帽子に白のパーカー、水着は紺のタンキニに白のパレオという水着スタイルのカグヤ。三人仲良く水着を着ているのですから、誰でも御想像できると存じますが、つまりカグヤ達は近くの海水場に遊びに来ている……のですが……。

「あ、アンタなんかに、絶対……っ! 負けないんだから……っ!」

「俺だって……っ!」

 震える声で虚勢を張り合うアリサと龍斗。

 一体どうしてこうなったんでしたっけ?

 

 

 提案されたのは忍お嬢様でした。

 以前皆でプールに行った時、カグヤは土地の管理のため、御一緒できませんでしたのと、カグヤの水着が完成したので着せたいと言う、願望が重なったためにございました。

 っとは言え、カグヤも断る理由はありませんので、今回は楽しく御参加させてもらう事になりました。

 月村の皆様で遊びに行くとなれば、御友達思いのすずか様、必然的にアリサとなのはにも声がかかります。すると何故か、なのはから龍斗に連絡が周り、彼も一緒に行く事となりました。

 例によって、二台の車で海水場に向かい、現地で休憩用の陣地を確保している真っ最中です。ちなみに確保組は、どうせ忙しくなると思って下に水着を着て来たカグヤと龍斗と恭也さんの三人で行っています。

「……カグヤちゃん、可愛い水着だね。麦わら帽子も良く似合ってるし」

「この恰好のツッコミは既に済みましたので諦めています」

「へ?」

「いいえ、構いません。龍斗の方こそ良く似合っている水着ですよ」

「男が水着褒められても嬉しくないよ……」

 でしょうね。ですから褒めたのです。

「お待たせ〜〜〜! 陣地確保御苦労〜〜!」

 砂浜の上にシートを敷き終えたところ、ちょうど美由希さんの声が飛んできます。どうやら皆さん着替えが御済みになったようです。

「おわぁ……」

「ほぉう……」

 振り向いた龍斗とカグヤは、同時に溜息を洩らしてしまっていました。

 まず目に付いたのは、最初に声をかけて来た美由希さん。大胆な黒のビキニが少々男性心を揺さぶりそうですね。

 次の忍お嬢様、背中が良く見え胸の強調されるホルターネックブラで、堂々と彼氏の前に歩む姿は、何とも絵になる美麗の御姿。

 ノエル先輩は白のストライプで、しかし、普段通りのクールな雰囲気をまったく壊さない、引きしまったスタイルをしていらっしゃいます。妹のファリン先輩は、紺色のワンピースで、少し子供っぽく見えるかもですが、あの方の活動的な御姿は、とても女性としての魅力を最大に活かせているように思われます。

「なのは……、可愛いね」

「あ、ありがとう、龍斗くん……っ」

 どうやら龍斗は、桃色のフリルスカート付きワンピースの高町なのはしか見えていなかったようです。胸に付いた小さな飾りリボンがチェームポイントでしょうか?

 しかし、カグヤもあまり龍斗の事をどうこう言えないと思われます……。

「カグヤちゃん? どうかしたの?」

「……はっ!? いえ、大した事はありませんよ! はい!」

 薄紫色の簡素なワンピース姿のすずか様に顔を覗かれ、慌てて自分を取り戻します。普段と違って髪を高いところで結い上げていらっしゃる御姿は、今までに見た事のない新鮮さを称えていて、カグヤの中に萎え掛けていた男性的な女性に対する恥しさと言うモノが、鼓動となって復活しつつあります。

「そう? でも、もし体調悪くなったら言ってね? せっかく皆で遊びに来たのに、楽しめないなんて嫌だし」

「だ、だいじょうぶにございますよ!? カグヤは至って元気爛漫に在りますです!」

「カグヤちゃん、やっぱり体調悪いんじゃないの?」

 すずか様に余計な心配を掛けさせてしまいましたが、直ぐにカグヤ復活します。鼓動は止みませんが、最後になってしまった薄紅色の水着を着たアリサ様も含め、皆様にお伝えしておきます。

「皆様、大変お似合いの水着にございますよ。思わずカグヤも龍斗も見惚れてしまいました程」

「うわっ!? はっきり言わないでよ!」

 恥しがる龍斗に、美由希さんが「おお〜〜っ! お姉さん達の色香に参っちゃったかな〜〜? それとも、お目当てはなのはだったりして〜〜?」とおからかいになるので、なのはと龍斗が真っ赤な顔で騒ぎだしてしまいます。

「恭也は見惚れてくれなかったのかしら?」

「え? いや、もちろんそんな事は……!」

「どうだったのカグヤ?」

「カグヤも見惚れてしまいましたので解りませんが……、少なくとも龍斗の様に感嘆の溜息を洩らす事はなかったようですね」

「恭也? 子供の方がよっぽど正しい反応じゃないかしら? 特に彼女に対しての?」

「うっ、悪かったよ……」

 おやおや、こちらのカップルはさっそく御惚気になり始めましたか? これは間に入らないのがマナーですね。カグヤは『空気』を読んで差し上げる事にしました。

「そんじゃあ! さっそく遊ぶわよ〜〜〜!」

 浮き輪を持ったアリサが、準備運動を初めながら叫びます。終わる前に叫ぶ辺り、待ちきれないと言う事でしょうか。カグヤもすずか様の付き合いで柔軟体操をした後、駆けだす皆様を送りだします。

「カグヤちゃんも行ってきていいですよ。せっかくの休日なのですから」

 ノエル先輩に言われ、カグヤは少し困ってしまいます。それは、なのは達に引っ張られた龍斗も同じようでした。

 それもそのはず、なんせカグヤ達二人は、幼い頃から――現在進行形ですね――魔術師としての修業ばかりしてきました。それを当たり前と受け取り、暇潰しでさえ、己の魔術の鍛錬に当てていたくらいです。おかげで人並みに遊ぶ方法を何も知らないのです。以前のゲームと言うのは、残念ながら始める前に緊急事態で飛び出してしまいましたからね。

「カグヤちゃんも一緒に遊ぼう!」

「ほら、すずかも呼んでるわよ? 行ってきたら?」

 忍様にまで言われては仕方ありませんね……、困りながらもカグヤ、すずか様の命に応じて遊ぶ事にします。

 すずか様が御誘いくださった遊びと言うのは、どうやらビーチボールを地面に落とさずに、誰かに繋いでいくと言う物らしいです。それの何が面白いのかと、最初苦笑するしかなかった龍斗とカグヤですが、これが存外難しいです。まず、ビーチボールには重さがありません。なので誰にでも簡単に打ち上げられる半面、簡単に風に流され、方向が定まらないのです。試しに力一杯叩いてみましたが、手から離れるとすぐに失速するので、無理矢理方向を定めると言うのは難しそうです。力加減を間違うと、飛ばそうと思っていた相手とは別の相手に飛んで行ったり、自分と違う相手の名前が呼ばれたからと安心していると、こっちにボールが流れてきたりするのです。これは中々に―――、

「「いい訓練になる(り)」ます」

「訓練じゃないわよ! 真面目にやり過ぎ!」

 アリサに怒られてしまいました。しかし、龍斗もカグヤも、これは中々楽しめますよ。『遊び感覚』というのは失敗にリスクがなく、失敗してもそれを楽しむ。っと言うモノなので、楽な気持ちで訓練ができます。その分真剣度は下がるかもしれませんが、遊びながら力を付けられると言うなら、これは充分に良好な遊びです。

 おっと、ボールが来ました。

「なのは様!」

「は〜〜い! 龍斗くん!」

「よっしゃ! カグヤ!」

「あ、はい! アリサ様―――って流れた!? すずか様!」

「わっ!? え、えっと……! 龍斗くん!」

「ほい! なのは!」

「うん! アリサちゃ―――わっ! 流れちゃった!? カグヤちゃん!」

「はっ! すずか様! お願いします!」

「わっ! あ、……えいっ! えっと……誰かお願い!」

「御命とあらば!」

「あんたどんなスピードで戻ってきてんのよ!?」

「龍斗様!」

「うわっ!? 海の方に……! どりゃああぁぁ〜〜っ!」

「龍斗くんすごい! もどしたよ! ……今度こそアリサちゃ―――ええ〜〜!? また流れたよ〜〜!?」

「またカグヤですか!?」

「なんで私だけ、はぶられてんのよ!? 海風のバカ〜〜〜っ!!」

 ザッパ〜〜〜ン!

「うきゃあああぁぁぁ〜〜〜〜っ!?」

「おわぶぅふぅ〜〜〜っ!?」

「あ、アリサちゃんが!?」

「龍斗くんと二人で津波に―――!? カグヤちゃんお願い!」

「すずか様の命とあらば!」

 ザボ〜〜〜ンッ!

「実はカグヤ泳げませんがね!! がぶがぶがぶがぶがぶがぶぅ〜〜〜……」

「「ウソ〜〜〜〜〜ッ!?」」

「はい、嘘でございます。ちゃんと救出してきました」

「「カグヤちゃん!!」」

「怒られてしまったではないですか、龍斗様、アリサ様」

「俺達の所為にすんなよ!」

「ってか、あんた……、さっき海に飛び込んでたのにどうして濡れてないのよ?」

「月村の使用人には、瞬間乾燥のスキルがデフォルトで備わっているのでございます」

「いくらなのはでもそれは嘘だって解るよ。ねえすずかちゃん?」

「え? ……普通はないの?」

「すずかちゃん!?」

「え? あれ?」

 っとまあこの様に、最初は何事もなく皆で楽しく過ごせていたと思うのですが……。

 事の発端は御昼を頂いている時だったと思います。

 

 

「どうぞ皆様、御注文の焼きそばを御持ちし―――、おや?」

 海の家から人数分の焼きそばを買ってきたカグヤとファリン先輩が見たのは、何やら言い争いをしている龍斗とアリサの姿でした。

「取り消せよ!」

「誰が!? 何度でも言ってあげるわよ! このシスコン!」

「俺が姉さんの事を良く言っただけでなんでそこまで言われなきゃならねえんだよ!?」

 龍斗が睨めばアリサが睨み、アリサが唸れば龍斗も唸る。喧嘩として典型的な堂々巡りの図の様ですが(実際に見るのは初めてです)? 珍しい組み合わせで喧嘩していますね。

「何があったのですか?」

 カグヤは状況が理解できず、一番場を冷静に見ていると思しき恭也さんに訪ねます。

「いや、最初はただ単純に会話していたみたいなんだけど……、アリサちゃんの『シスコン』って言葉に龍斗くんが過剰に反応しちゃったみたいで」

「そうなのですか? ……、恭也様、失礼でなければ伺いたいのですか、『シスコン』とはなんですか?」

「え? ええっと……、知らないのか?」

「初めて聞く単語ですね?」

「君は時々難しい言葉を知っているのに、変な事を知らないんだね……」

「カグヤ、八束神社に在る本以外での知識には疎(うと)おございます」

「なんて言えば良いのかな? ……『自分の姉や妹を病気的に好き』って意味なんだけど……、この場合は罵声になるのかな?」

「ニュアンスの問題になると、カグヤの経験知識では理解に届きません」

「そうなるよな〜〜、どう説明すればいいのか〜〜?」

「つまり、なのはちゃんに対する恭也の事を『シスコン』って言うのよ」

 恭也さんが頭を悩ませておりますと、隣から割って入った忍お嬢様が事も無げにおっしゃいました。

「お、おい! 違うぞ。別に俺はシスコンってわけじゃ……!」

「っとまあ、こんな感じの反応されるのが一般的な意味よ。理解出来たカグヤちゃん?」

 悪戯の成功した子供の様な笑顔でウインクいたします忍様に、自分がダシに使われたと知った恭也さんが項垂れました。これはゾクッ、と来るほど良き御手本を拝見できました。

「大変深く理解できました。カグヤも忍お嬢様の様に自然な流れで相手を弄べる技術を身につけたいと思います!」

「え? そっち? しかもカグヤちゃん、なんか本気で目キラキラさせてない? ……そう言えばすずかが『カグヤちゃんが何かに目覚めちゃって困ったよぅ〜〜』って言ってたような……?」

「今度、すずか様にも試してみたいと思います! 御教授ありがとうございました!」

「え? あれ? もしかして私、更にすずかを追いこんじゃった!?」

 さて、忍お嬢様への感謝も述べたところで、本題に戻りましょう。

 どうやら『シスコン』と言う言葉は、姉、妹がいらっしゃる殿方には、侮蔑に聞こえる様です。それも仲が良い事を示した言葉らしいのにです。仲が良ければいい事の様な気がしますが、何処が侮蔑に聞こえるのでしょう? 病気的と言うところでしょうか?

 ん〜〜〜〜……? ダメです。意味がちゃんと理解できないので、カグヤの口からは何も出ません。

 なのはとすずか様、ファリン先輩や美由希さんまで加わって宥めようとしていらっしゃいますが、収まる気配がないですね……。こう言う場合どうした物か??

「二人とも! 喧嘩止めてよ!」

「そうだよ! ね? この話は無し! それで良いでしょ?」

「取り消すまで認めない!」

「誰が取り消してあげるもんですか!? 取り消して欲しいなら頭を下げて頼みなさいよ?」

「なんで俺が頭を下げるんだよ!?」

「なによ!?」

「なんだよ!?」

 おやおや、堂々巡りですね〜〜。龍斗も意固地になって珍しい。何がそんなに気にくわないのでしょう? アリサもどうして『シスコン』と言う言葉にそんなに執着するのでしょうか?

「しかし、これは宥める事が出来そうにありませんね?」

「カグヤちゃんならどう収めます?」

 ノエル先輩に訪ねられ、頭を悩ませますが答えなど出ません。そもそも二人が執着している原因が解らないのですから……。

「うぅ……、どうしようカグヤちゃん? 二人とも仲直りしてくれないよぅ……」

「―――!?」

 潤み始めるすずか様の目を見た瞬間、カグヤ脳内神経が急激に活発な活動を開始しました。脳内稼働可能領域全使用によるフル回転演算!

 …………!!

 ハッ!?

「話をそらし、内容ではなく、感情を別の方向にぶつけさせると言うのはどうでしょう?」

「例えばどうするの?」

 おや、なのはまでこちらの話に参加ですか? あの二人放っておいていいのですか? いいのかもしれませんね。

「そうですね……? 何か体を動かすもので競わせるのは如何でしょう? 感情も体力と同じで、いつまでもスタミナがあるわけではありません。同時に、体力の消耗は精神の消耗にも繋がりますから、感情のボルテージも下がるのではないでしょうか?」

「わあっ! それいい考えかも!?」

「でも、龍斗くんは男の子だよ? アリサちゃんより体力あるんじゃない?」

 すずか様は御喜びになりましたが、なのはの懸念を聞いて、また心配そうに顔を歪めてしまわれました。

「そうですね……? 何かハンデを付けられればいいのですが、こう言うのは言い訳の材料を残すと、勝ち負けで遺恨が残ってしまわれると思います」

「い、いこん?」

「恨みや嫉み。ソフトに言うのであれば『拗ねてしまう』っと言うところです」

 言葉の意味を教えた後で、更にカグヤは続けます。

「それに、これは勝敗を付ける事より、二人が疲弊してくれる事が重要なのです。互いに疲れて、頭が冷静になれば、ゆっくり話す機会も設けられると存じます」

「もうけ?」

「時間を作れると言う事ですよ。なのは様、一々言葉の質問が多いですよ?」

「ご、ごめんなさい……」

「いえ、叱っている訳ではないのですが……」

 ともあれ、そうと決まればあの二人に勝負をさせるのが一番でしょう。それも出来るだけ体力を削られる競技で。

「じゃあ、水泳は? ちょうど海に来てるんだし?」

「距離によります。近すぎれば勝負の意味がなくなってしまいますし、遠すぎれば溺れる可能性が出ます」

「あ、そっか……」

 すずか様の提案は残念ながら却下させてもらう事となりました。

 続いてなのはが提案を出します。

「じゃあさっきのビーチボールは? 先に落とした方が負けって事にして?」

「今日のアリサ様は風に呪われているようなので止めましょう」

「そんな理由で!?」

「っと言いますか、風が原因でさっさとゲーム終了になられても困るのです。長く続いてくれないと……」

「あ、そっか……」

「いっそ、普通に走らせるのはどうだ? 砂浜を駆けるのは疲れるだろう?」

 話を聞いていた恭也様も提案してくださいますが、それも却下にございます。

「体力差が如実に出てしまうのでダメです。龍斗様、アレで結構鍛えておいでです」

「やっぱりダメか……、ハンデとして重りを持たせるとかしても?」

「意地になるのは目に見えていますから、身体に負担のかかるような状態では、避けたいですね……」

 結局却下されてしまい、次に忍お嬢様が「宝探し」を提案しましたが、頭の中は出来るだけ単純な方向へと導いてもらいたいので、考える事になる競技も却下です。ファリン先輩が「こうなったら大食いなんてどうです!?」っと息巻いておられましたが、食材の冒涜なので止めてくださいと(睨んで)お願いしました。それに、仲直りした後の事を考えると、下痢などの恐れからあまりやって欲しくないですね。それならと美由希さんが「チーム対抗ビーチバレー」を提案しました。当の二人以外は全員が仕掛け人なので、上手く動かせるのではと言われましたが、パワーバランスの調整が出来ない事と、恐らくやらせはすぐにバレるであろう事から、却下しました。特に龍斗は魔術師ですから、そう言った所に勘強いでしょう。

 大概の案を出しつくしてしまったカグヤ達は「う〜〜〜ん……」と頭を突き出して悩んでしまう。これは……、詰まりましたかね?

「……カグヤちゃん? それって、精神的に追い詰めるのでもいいのかしら?」

 これは諦めかと思った矢先、唐突にノエル先輩から質問されました。

「そうですね……、物によりますが、問題ないと思いますよ? 例えばどんな事です?」

「肝試しなど、恐怖から精神的に追い詰めようかと」

 着眼点はいいと思います。体力より精神を疲労させた方が色々手っ取り早いですし、しかし……。

「龍斗様が御化けを怖がりますかね?」

「そうね。お化けは怖がらないかも……。そもそも昼間だし。ですけど―――」

 

 

 っと言うわけで二人には崖から飛び込みをやってもらう事になりました。これは普通の子供には怖いです。まして女の子が平気な顔などできようはずありません。……見積もり軽く三十メートルくらいあります。カグヤもこれは少し怖いです……。

 ちなみにこれ、龍斗は浮遊魔法が使えるようになったので、「平気だ!」とタカを括っていたのですが、「それでは公平になりませんから」と言うカグヤの言で、魔力を一時的に封印し、更に崖の高さに幻術を掛けて、本人が怖いと思える高さに見えるようにしておきました。龍斗「あり得えねえだろ〜〜〜〜〜っ!!?」と山彦呼んでましたが、一体どれだけの高さに見えたのでしょうね?

 っと言うわけで、二人はさっきから虚勢を張りあって中々飛び降りようとしません。これはかなり精神的に参っているようですね。更に言うなら「これはまだ一回戦ですから」と伝えた事も起因しているかもしれません。これをクリアーしても、さらなる恐怖が待っていると思うと、なおのこと足が出ないのでしょう。

「跳ぶならさっさと飛んでください。それと人魚飛び―――足から降りるのは無しですよ」

「「わ、解ってる!!」」

 声震えてますよ、御二人とも……。

 さて、これからが色々問題ですね。飛び降りてもらう事が目的ではないので、適度に脅して精神的に疲労してもらいましょう。

「ど、どうした? 飛ばないのか?」

「と、飛ぶわよ! そう言うアンタこそと、飛ばないの!?」

「べ、べつに、先に飛んだからって、点が多いわけじゃないし〜〜! だったら、急ぐ必要もないだろうぉ〜〜?」

「わ、私もそんな感りよ〜〜!」

「変な語尾になってますよ? 噛んでますよ? 声震えまくってますよ?」

「「気の所為!!」」

 息が合ってますね……。共通の危機的状況下において、シンクロしているのかもしれませんね。カグヤに心が読めたら、さぞ御二人の心中は荒れている事で……。

 おや? そう考えるとカグヤ、突然胸の奥からふつふつと込み上げてまいりましたよ?

 ニヤリッ、

「早く飛んでは如何ですか〜〜? この崖、見た目ほど高くありませんから、飛んでしまえば一瞬ですよ。怖いのは最初だけです」

「あ、安全性とかちゃんとしてるんだろうな?」

「下では恭也様と美由希様が控えております。カグヤも上から出来る限りのサポートはさせてもらいますよ」

「し、下が浅かったり、岩場に当たったりとかないでしょうね?」

「ちゃんと調べましたから大丈夫にございますよ」

 安心させるように教えると、さすがは魔術師、龍斗が最初に覚悟を決めます。

「よ、よし! それなら……!!」

「まあ、以前ここから飛び降りた方が亡くなったと言う話は聞きましたけど……」

「………」

 そして挫いてやりました。

「な、なによ! そのくらい〜〜〜……っ!」

 続いて、怖いのを我慢して駆けだそうとするアリサに―――、

「その亡くなった方、どうも恐怖から助走が足りなかったとかで、崖の岩肌にぶつかって○○○○○○○○○○○な状態になって亡くなってしまったそうですねぇ〜〜」

「………!!!」

 恐怖を植え付けて差し上げました。

「なら……っ! 逆に思いっきり飛べば―――!」

「そう言えばこのくらいの高さから落ちると水面もコンクリート並みの強度になるとか? 顔面から落ちると失明してしまう可能性はないのでしょうか?」

「………(ガタガタブルブルッ」

「ええいっ! やるしかないんでしょう!? やってあげ―――!」

「ああ、アリサ様? 足から落ちたらもう一度やり直しですよ?」

「………(ウルウルダバダバッ」

「おっと、失礼しました。カグヤが言わなくても別に怖くない御二人には関係なかったですね? ささっ、先程語った心の強さを行動で体現して見せてください」

「「も、もち、ろん……」」

 ヤバイですすずか様、カグヤ楽しいです!

 もう本来の目的忘れて、このまま楽しんでしまいそうです。これが遊びと言うモノなのですね!

 カグヤ! 『遊び』を覚え―――!

「カグヤちゃん、目的忘れてない?」

「え? はっ!? い、いいえ! そんな事ありませんよなのは様! って言うかいつからそこにいらっしゃったのですか?」

「飛び降りて亡くなった人がいるって辺りから……」

 結構早くにいらっしゃってたんですね。

「カグヤちゃんって……、実は意地悪だったりするの?」

「以前、寝ぼけていらっしゃるすずか様に悪戯した時から、どうもこの手の事に悦を感じでなりませんね」

「『えつ』?」

「楽しい! っと言う事でございますよぉ〜〜♪」

「カグヤちゃんお肌艶々!?」

 っとは言え、このまま放っておいても話が進みませんね。そろそろ御二人に動いてもらいませんと……。あまり脅し過ぎて止められても面白―――、つまらな――――、困りますし……。

「カグヤちゃん。なのは、今すごく怖い思念を感じた様な気がするの?」

「そうなのですか? この崖で亡くなった方の幽霊でもいるんでしょうか?」

「ひぃ〜〜〜っ!?」

「なのは様もいい反応をなさいますね〜〜♪」

「やめてよ! 私まで!」

 なのはを軽く無視した後、カグヤは二人に歩み寄り、薄く笑って見せます。すると漏れ聞こえた笑い声に気付いた二人が、今度は何も言いだすんだ? っと言う顔で振り返り、カグヤはそのタイミングで伝えます。

「まあ、今のは全部カグヤの作り話ですが」

「「この狼少女〜〜〜!!」」

「失敬な! れっきとした男です!」

 まあ、理解してはもらえませんが……。

「まったく、変に緊張したじゃないか……、今度こそ俺は飛び込むぞ!」

「私だって! いつまでもアンタなんか待ってやらないわよ!」

「上等だ! なら同時に飛びこむか?」

「良いわよ! アンタが飛び損ねたら、下から思う存分笑ってあげるわ!」

 御二人はいきなり安心したように言い争いますと、同時に駆け出し、まったく同時に地面を踏みしめ、跳び上が―――、

「ですがこの高さから子供が落ちれば、そのショックだけで気絶して溺れますね。確実に」

「「カグヤ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜…………ッッ!!!!」」

 悲鳴の様にカグヤの名を叫びながら落ちて行く姿に、カグヤは! カグヤはもう……!

「し、知りません……! カグヤ! これほどの悦を、今までに感じた事なんてありません……! あまりの悦に、カグヤ! 勝手に息が上がります……!!」

「今、初めてカグヤちゃんが怖いと思ったよ……、私……」

 着水の音が聞こえたカグヤは、息を整えて立ち上がると、崖の方に走り出します。

「それでは……、本当に気を失ってる可能性もあるので、カグヤは二人を追いかけるとします!」

「え? でも、それじゃあカグヤちゃんも―――!?」

「その時はなのは様が止めてくれなかったと夢枕に出るとします♪」

「カグヤちゃん今日は絶好調だよね!? 絶対生きて帰ってよ!? 本当にお願いだよ!?」

 

 

 

アリサ view

 

 ん……? あれ……?

 私、どうしたんだっけ?

 あ、そうだ! 確か度胸勝負で龍斗と飛び込みで競って、それで飛び降りた瞬間、カグヤに変な事言われて……!

「気が付かれましたか?」

「! カグヤ!?」

 目を開けると、目の前にびしょびしょに濡れたカグヤが居た。

「あ、アンタね〜〜〜! よくも私を〜〜〜!」

「怖かったんですか? おかしいですね? アリサ様は最初っから怖がっていらっしゃらなかったではありませんか?」

「ぐぅっ……!」

 そう言われちゃうと何も言えなくなるじゃない! 私が意地張った所為なんだから!

 つい膨れてしまっていると、カグヤはくすりっ、と綺麗な笑みを作って笑った。

「冗談ですよ。確かにカグヤは意地悪をしてしまいました。申し訳ありません」

「うぅ……」

 何よ〜〜! そんな笑み見せられながら謝られたら、何も言えなくなっちゃうじゃない!

 なんだか恥ずかしくなった私は、上体を起こして周囲を確認する。

 ここ、どっかの岩場なのかしら? 浜辺の近くだと思うんだけど、さっきの崖の近くかしら?

 って言うか、他の皆どうしたのかしら? なんで私だけこんな所でカグヤと一緒なの?

 ああ、そっか。飛び降りて溺れた所を助けてもらったんだ。

 え? でもなんでそれならカグヤしかここにいないのよ?

「アリサ様」

「え、な、なに?」

 きゅ、急に声かけられてびっくりしちゃった。

「どうして、龍斗様と言い争いになられたのです?」

「! ……そ、そんなの決まってるでしょう? アイツがお姉さんお姉さんって、うるさいから!」

「姉を好きでいて、甘える事は何もやましいとは思えませんよ? ……少なくともカグヤには、もうできません」

「……」

 解ってる。解ってるわよ。それは一番カグヤが理解してるんだってことくらい。アンタは大切なお姉さんを失くしたんだもん。だから……、だから私……、

「だからよ……」

「だから、ですか……?」

「そうよ! だってアンタ悲しくなるでしょう!? 辛くなるでしょう!? アンタが美由希さんとなのは、忍さんとすずか、ノエルさんとファリンさん、この組み合わせを見る時のあんたの目! とっても嬉しそうだけど、同時にすごく辛そうじゃない!? それも、ここ最近になるまで判んなかった程!」

「……そうですか。それはカグヤとしては無意識だったのでしょうね」

「そうよ! だから……! だから……、せめてアンタの前で、あんまりお姉さんの話しするのは止めてあげたいって思ったの。大きなお世話かもしれないけど、せめて、カグヤが心の整理が付くまでは……って」

「心の整理、っとは……、まさかバレていましたか」

 そう言ってカグヤは、私の隣に腰を下ろしたまま、膝を立てて顔を埋めた。

「……カグヤにとって義姉様は、命そのものにございます」

「いのち……」

「はい、故に今のカグヤは真実生きている心地がしないのでございます」

「そんな……、カグヤはここにちゃんと、こうしているじゃない!?」

「はい、カグヤは生きております。ですがカグヤは『生きている』と感じられなくなっているのです」

「……どう言う意味?」

「それを説明するには、カグヤもアリサ様もまだ子供です故……、上手く説明できませんし、理解も出来ないでしょう」

「そっか……」

 ちょっとく悔しい。私が子供だから、カグヤを理解してあげる事が出来ない。でも、私だけが大人になっても、カグヤ自身が解らない事を知ってあげる事はできないと思う。だから、結局何もできない自分が、ちょっと恥ずかしい……。

「わたし、このグループじゃ、一人だけ一人っ子でしょ? だから、どんなに頑張ってもカグヤの気持ちが解ってあげられなくて……、なのはは、カグヤと適切な距離の取り方して気遣ってたし、すずかとメイドさんはアンタにとっては家族だから、気にしない事で守ってあげてた。龍斗は……なんか逆で、アイツはむしろお姉さんの話題になると嬉しそうにし出すのよ。それが、カグヤを傷つける事になるんじゃないかって思ったら……」

 私は一人っ子だから、本当はどうしてあげるべきだったのか、それが解らなくて、それでも力になりたくて、結局一人空回りして……、何やってるんだろう。

「つまり、アリサ様はカグヤのために怒ってくださっていたのですね? ありがとうございます」

「いいわよ、お礼なんて……。実際空回っただけの大きなお世話じゃない。自分でも解ってるんだから」

「そうですか? そうですね。龍斗様もアレで、気を使ってくださっていましたから」

「あ、そうだったの?」

「彼の姉と、カグヤの義姉は知り合いなのですが……、そう言えばアリサ様には御伝えしていませんでしたね。ですから彼は事情を知っていました。その上でカグヤは以前に彼に言った事があるんですよ」

「何を?」

 私が訪ねると、カグヤは私の顎に手をやると、正面を向かせる。ちょっと驚いたけど、どうやら耳打ちするみたい。顔にかかる髪を耳の後ろにどけながら内緒話をするように耳元で囁く。

「『せっかく御姉様と血が繋がってらっしゃるのです。甘えられる時には御甘えになる事を御勧めします』っと、……随分ひねた物言いと存じますが、出来なくなったカグヤにとって、できる相手にしないのは、『勿体無い』と思うのですよ」

「かぐや……」

 カグヤは顔を離すと、またあの綺麗な笑顔でくすりっ、と笑う。本当に綺麗で、同じ女の子である私でも見惚れちゃうくらい。こんなに可愛いのに、どうしてカグヤってば自分の事男にしたがるのかしら? 無理があるわよ。

「アリサ様。もし今回の事がカグヤのためにしてくださった事だと言うのであれば、一つ我儘を聞いてくださいますか?」

「え? 何よ突然? なんの我儘?」

「もう少し、龍斗を知ってあげてください」

「!? え?」

「きっと龍斗は良い殿方ですよ。真摯に接しようとするあまり、優柔不断になる時はありますが、こうと決めた後は決して曲がらない一本の剣となります。そんな人間が、何も考えていない訳がありませんでしょう? 今回の喧嘩は、アリサ様が龍斗を知らなかったから起きただけなのです。だから、もう少し彼の事を見つめて、知ってあげてください」

「あ、う、うん……、解った……」

 なんだろう? わたし?

 なんでだろう? わたし?

 カグヤの言ってる事は素直に理解出来たし、そうするべきだと私も思った。不快に思うところなんて無かったし、納得いかない処もなかったのに……。

 カグヤが龍斗の事を『様』で呼ばなかっただけで、何だか急に胸騒ぎがした。何だかカグヤにおいて行かれるような……。そうだ。なのはの時と同じだ。つい最近のなのはが、何処か遠くに行ってしまうような、そんな怖い予感がした。私は今、それをカグヤにも感じているんだ……。

 でも、微妙に違う……。あの時はなのはが何処かに行っちゃうような気がして……。

 今感じたのは、……最初っからあった距離に、今気付いたような、そんな不安だ。

「かぐや……」

「なんでしょう?」

 かぐやは、どうしてそんな遠くにいるの?

「……」

 何も聞けなかった。だって、聞いてしまったら、この不安が本物になる気がしたから……。

「ごめん、何でも無い……」

 ごめんなさいカグヤ、誤魔化したりなんてして本当にごめんなさい。

 本当に、本当にごめん―――

「いいえアリサ様、誰しも失いたくない物はあります。踏み込まない事で、傍における物も……」

「!?」

 気付、かれて……、それでも……。

「ありがとう……かぐや……」

 ごめん、少し泣いちゃうけど……。

 でも、許してね……。

 私、アンタの前だと、泣いちゃえるみたいだから……、だから許して……。

「どうぞ、アリサ様」

 そう言ってカグヤが私に手を差し伸ばしてくれる。

 その意図が解っちゃった私は―――飛びついて、カグヤの胸に顔を埋めた。

 

 

 

カグヤ view

 

「……っと言うわけでした皆さん」

 泣きやんだアリサを連れて戻ったカグヤは、アリサが龍斗に謝っている内に事の顛末を伝えます。っと言っても、実はあの岩場の影に皆さんいたので、改めて説明するまでもなかったかも知れませんがね。

「まあ、何事も無くて良かった。……けどまさかカグヤちゃんまで飛び降りてくるとは思わなかったからびっくりしたよ」

 恭也さんに少し御叱りを受けて、カグヤも頭を下げて謝っておきます。でも恭也様? カグヤはちゃんと魔術も使えますし、着水の仕方も知っていますから、怪我の心配もないのですよ? この高さは初めてでしたが、ちゃんと訓練もしてましたし。

「でも、アリサちゃんもだけど……、カグヤちゃんも大丈夫?」

「何の心配でございましょう? 忍お嬢様」

「色々よ。お義姉さんの事も、自分の事も」

「何の心配をしてくださっているのか解りかねますが、別段心配はなさらなくて結構ですよ」

 カグヤの言葉に御心配をおかけしたと言うなら、それはまだ、今のカグヤには理解できていない事に存じます。ですから、心配される事はないでしょう。それでも心配なさるのが、この御優しい方達なのかもしれませんが……。

 なにはともあれ、これにて海水浴は終了。最後は皆様笑顔で御帰宅なされた事を、心より安堵申します。

 

 

 

すずか view

 

 私は帰宅してからずっと、心がもやもやして眠れずにいる。

 その原因は解ってる。アリサちゃんと話している時に言った、カグヤちゃんの言葉。

「『生きた心地がしない』……」

 それってどういう意味なんだろう? 私には理解できないんだろうか?

 知ってあげたいと思う一方で、それを知ってしまってはいけないって予感もする。

 私はカグヤちゃんの主として、友達として、家族として、充分な行いが出来ているのかな? 何だか自信がない。だって、カグヤちゃんはずっと、自分でも解らない『生きていない』って気持に、悩まされ続けているんだもん。その傷を、私達じゃ紛らわせる事も出来ていないって事なんだもん。

 ベットに寝転がり、抱いた枕に顔を埋めながら、私は何度目かになる唸り声を洩らしてしまう。

 どんなに考えても、あのカグヤちゃんを助けてあげる方法が思いつかない。きっとそれは私にしかできない事だと思うのに、カグヤちゃんの秘密に一番近い、私がしてあげなきゃいけない事なのに……。

 でも、どうしたらいいのか……。

「……うん」

 決めた。

 私はベットから出ると、カグヤちゃんの部屋に向かう。

 ノックをしただけで、私だと解ったカグヤちゃんは「どうぞ、すずか様」とドア越しに声をかけてくれる。最近はこれが当たり前になってる。

 部屋に入った私は、ちょっと照れながらもカグヤちゃんに恒例になりつつあるお願いをする。

「一緒に寝よう」

「よろしいですよ」

 浴衣姿のカグヤちゃんに抱きつき、そのままベットにダイブ。思いっきりくっ付いてカグヤちゃんの事を確かめるようにして寝る。

「すずか様? 何だか今日は甘えん坊さんですか?」

「そうかもしれない」

 電気を消すカグヤちゃんが、いつからか用意してくれている私の分の枕を渡しならが言うけど、私は受け取らずに、カグヤちゃんの体を枕にして離れない。

 ちょっと不思議な顔をしていたけど、カグヤちゃんは何も言わずにそのまま毛布をかけて瞼を閉じた。

 私はカグヤちゃんに何をどうしてあげればいいのか思いつかないけど、それなら、思いつくその時まで、全力で傍にいよう。そう決めた。

 だって私は、カグヤちゃんが一番大好きな子だから……。

 私は今日、『悩み』を一つ抱えた。

 

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