恋姫の世界に行ってくる 第十五幕 |
<海斗サイド>
「璃々ちゃん。起きてるかい?」
「うん、起きてるよ。ねぇお兄ちゃん、本当にお母さんに会わせてくれるの?」
そう言って心配そうな顔をする璃々ちゃん。
「ああ、今お母さんはここに来てるよ。だから会いに行こう。」
「本当?」
「本当だよ。」
すると、璃々ちゃんは少しの間考えて、俺の手を握ってきた。
「じゃあ、行こうか。少しだけ頑張ったご褒美だ。」
俺は璃々ちゃんに肩車をしてあげる。
「わあ〜、高い高い♪」
「喜んでくれたんなら何よりだよ。」
まあ原作で一刀がしてたのを思い出しただけなんだが、こんなに喜んでくれるとは。
そして俺は宿を出て、黄忠の元へ向かった。
<黄忠サイド>
「皆さん!大丈夫ですか!」
私のせいでこんなことに、
「黄忠様、来てくださりありがとう御座います。我々だけでは、
どうすることも出来ませんでした。」
「そんな事ありません。自分たちの力でこの村を守りました。
皆さんが、勇気を出し戦ってくれなかったら、私達は間に合いませんでした。
本当なら、私達が皆さんを守らなくてはならないのに・・・」
私は自分の娘一人の命と、自分の守るべき民何万の命を天秤にかけてしまった。
「黄忠様!これから俺達が黄忠様えを守る番だ!なぁみんな!」
と、一人の男性が言った。
「おう、そうだとも!今まで黄忠様にずっと助けてもらって来たが、これからは俺達が助けるんだ。
今回だって、俺達は黄忠様の娘さんだって守りきる事も出来たんだ。
俺たちにだって何か出来ることがあるはずだ!」
「そうだそうだ!」 「俺達がついてますぜ黄忠様!」 「任しといてください」
「おい、皆分かったから少し落ち着け。」
「皆さん・・・有難うございます・・・」
「紫苑。・・・して、村長。璃々はどこにおる?」
「あ、はい、今死神、いや。韓義という男?が宿に迎えに行っています。」
男?なんで疑問形なのでしょうか。
するとそこへ、
「海斗は男。」
と、徐庶ちゃんが言った。
「そうなのか。口調があれだからまさかとは思ったが・・・」
どういうことでしょう?
「待たせたな。」
「うわ〜い。高い高〜い♪」
愛すべき我が子の声が聞こえてきた。
「璃々!」
「お母さん!」
璃々を連れてきていた男性が璃々を肩からおろし、璃々は私の方に走ってきた。
「璃々!ごめんなさい。私がちゃんと見ていてあげなかったから・・・
なにか酷い事されなかった?」
「うん。あのお兄ちゃんがすぐに助けてくれたから、大丈夫だった。」
「そう。よかった・・・
あの、本当にありがとう御座います!なんとお礼を言えばいいのか、
璃々、あなたも。」
こういう時しっかりとした礼が出来る様に教えてきたから、
男性の方を向き、背筋を伸ばして。
「お兄ちゃん。助けてくれてありがとうございました。」
そういうと、男性はほんの少しだけ微笑んで、
「気にするな。ああいうクソ野郎共の事を見てみぬ振りができるほど、
人間出来ていないんでね。」
「ですが、なにかお礼をさせてください。そうでなければ、私の気持ちが収まりません。」
娘を救ってもらったのにお礼も出来ないなんて、
「そうだな、じゃあ俺達をいずれあんたらの仲間にしてくれないか?」
「仲間ですか。しかし、何故私達なのですか。貴方程の人、
仕官先ならいくらでもあると思いますが?」
この人程の武、欲しい諸侯はいくらでもあるというのに。
「ああ、色んな奴から誘われたんだが、袁家は、頭がダメだから問題外。
劉備にも会ったが、あいつの理想は非現実過ぎてな、
曹操はかなり良かったが、少し百合百合しい空気でな、うちの連れが喰われてしまう
可能性があるのでちょっとな。曹操のとこはもう一つ理由があるんだが・・・」
その時典韋ちゃんが、
「たしか兄様って、曹操様の所に居た天の御使いさんと同じ世界から来たんでしたよね。」
「・・・流琉。それ、言うなと言っておいたはずだが。」
「あ・・・ご、ごめんなさい兄様!」
天の御使いと言うと、あの管路の言っていた予言の?
「成程のぅ、只の武人ではないと思っておったのじゃが、まさか天の御使いとはのぅ。」
「海斗様は天の御使いだったんですね!」
「初耳。」
流琉ちゃんのたった一言で辺りは騒然となった。
「あんたが天の御使いか。思っていた人物とかなり違うな。」
「なら焔耶。お前はどんな奴を想像してたんだよ。」
「えっと、もっと優しい感じの奴かと思ってたんだ。
大陸に平和をもたらすとか言ってたから。」
と、焔耶ちゃんと茜が話していると、
「いや、俺は天の御使いじゃ無い。曹操の所に居るのが本物だ。
俺は、只の韓義さ。
で、どうだ黄忠。俺はあんたの仲間になれるのか?」
天の世界から来た人ですか。ならば、
「一つ、質問してもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないぜ。」
「貴方はこの大陸をどうしたいですか?」
質問の解答次第では、貴方には上に立ってもらいます。
「貴方はこの大陸をどうなさりたいですか?」
「随分直球だな。俺は、俺の手の届く範囲の人間が苦しまないで、
普通に暮らせるとこにするな。
大陸全てを治めるなんて俺には無理だ。
だから、俺は自分と自分を支えてくれる人間が苦しまず生きていける世の中にしたい。
そのためなら、どんな業も背負ってやるさ。」
この人の目は、濁っている。沢山の、何千の人間を殺してきたでしょう。
けど、その奥には一筋の光が垣間見えてる。
「・・・成程、分かりました。私達でよければ。」
決まりですね。
<海斗サイド>
「話は決まったな。勝手に決めた後で悪いが、お前達もそれでいいか?」
いつの間にか、俺の後ろに控える様に立っていた三人に聞く。
「私は、どこまでも兄様についていきます。」
「海斗様が自らの力を世の為に使う気になってくださったのです。
私からは、なんの異存もありません。」
「右に同じく。」
良く出来た子達だ。こいつらの夫になる奴が羨ましいな。
「それより自己紹介といこうではないか。いつまでもお前、貴方じゃ話づらいしのぅ。」
そういえばそうだったな。
「ではまず私から。性は黄、名は忠、字は漢升。真名は紫苑です。
貴方は璃々の命を救って下さいました。真名はそのお礼の印です。」
「儂の名は厳顔、真名は桔梗じゃ。璃々は儂にとっても娘の様な存在でな。
礼を言うぞ。」
「私の名は魏延、字は文長。真名は焔耶だ。璃々様を救ってくれてありがとな。」
「アタシの名は張任だ。真名は茜。これからは仲間なんだろ。よろしくな。」
「俺の名は韓義、字は紅炎だ。真名は海斗。よろしく頼む。」
「典韋です。真名は流琉です。」
「私の名は司馬懿。真名は穂花です。」
「徐庶。真名は流里。」
全員の紹介が終わった後桔梗が、
「して、お主はいずれと言ったが。どこかに行くのか?」
「ああ、ここでしばらく休んだら涼州に行く。」
そう、涼州の馬騰に会いに。
「まぁ、お主らが行くと言うなら、何かしら事情があるのじゃろう。して、いつ頃戻るのじゃ?」
「お前らが劉璋を倒した頃かな。」
「あらあら。それじゃあそんなに遠く無いですね。」
そう言っている紫苑の後ろには、悪魔が。
「取り敢えず今日はもう休もう。皆も疲れてるだろうし。」
今まで黙っていた呉懿がそう言った。
「そうだな。どこか泊まれる所があるといいんだが。」
「ならうちの家を使え。将軍様達もどうぞお越しください。将軍様達と韓義達
の寝る場所位はありますので。」
「なら、御好意に甘えますか。海斗さん達は先に行っていて下さい。
私達は兵に指示を出してきますので。」
「分かった。先に行ってる。」
そう言って俺達は別れた。
<呉懿サイド>
俺は今家の縁側で一人で飲んでいる。
なぜなら。
「なんじゃ焔耶。この程度の酒で酔っ払うとは情けない!」
「き、桔梗様。この程度って、軽く10本はいってますけど。」
「あらあら、駄目よ桔梗。焔耶ちゃんは私達みたいにお酒強くないんだから。
それよりも海斗さん、ささっ飲んで下さい。」
「紫苑。何故胸を押し付けてくるんだ・・・」
「何、おい紫苑!抜け駆けは許さんぞ!」
「あらあら、多分酔っているんですね。すみません。」
「おい、焔耶大丈夫か〜。」
「茜、代わってくれ。」
「無理だ。」
「料理の追加持ってきましたよ〜、って兄様!」
「海斗様はやっぱり大きい方がいいんですね・・・」
「変態。」
「勘弁してくれ。」
とまぁ、こんな感じで一緒に飲む気になれないからだ。
男として羨ましいという気持ちはあるが・・・
そんな感じで一人ちびちび飲んでいる。すると、
「隣良いか?」
韓義がやって来た。
「ああ、構わないが。あっちはいいのか?」
「なんだかしらんが、女は大きい方がいいだ。普通がいいだ言い出してな。
放っておいた。」
なんと羨ましい。 ゲフンッ
「俺さ、今何がしたいか自分でも分かんないんだよな。」
「どうした。藪から棒に。」
「いや、俺の父さんがこの前まで村長だったんだけど。足を怪我してな。
もうそろそろお前に譲るかとか言われて、村長になったのはよかったんだけど。
俺ってそういう、事務的な仕事全く向いてないんだ。体動かしている方が好きなんだ。
けど、さ。」
「・・・なら、お前はどうしたい?自分に向いていないなら、向いている事を探せばいい。」
俺のしたいことか、
「俺は、今日戦ったんだよな。俺はこの村から出たことが無いから分かんねぇけど。
俺達みたいに戦っている奴も居るんだろうな。」
「そうだな。今のこのご時世、賊も出る。そんな奴らに屈しないには戦わないとだからな。」
そうか。なら、俺は。
「あんたと共に行きたい。あんたはあんたの周りの人間が普通に暮らせる世の中を
目指してんだろ。そのためにはかなり辛い事があるはずだ。
だから俺もその業を背負ってやる。」
「そうか、ふっ、面白い。なら付いてこい。お前の思っている程楽な
道じゃないぞ。」
「ああ、どこまでもついて行ってやるさ。んでいつか、あんたの横に立ってやるよ。」
「そうか。なら一杯どうだ。お前の旅立ちを祝って。」
「ああ、俺の真名は朧(おぼろ)だ。あんたに預けるぜ。」
「海斗だ。よろしく頼むぜ。」
そう言って、杯を打ち合せ、飲み干した。
その酒はいつもよりも美味かった。
あとがき
こんばんはnontanです。
最近はご指摘のコメも増えてきて、自分の文才の無さに打ち拉がれそうです。
今回書いてて気づいたんですが、拠点全く書いてないな。
とういわけで、次回は拠点にしたいと思います。
ご意見、ご感想、ご指摘があればコメントしていただけると嬉しいです。
でわでわ
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益州編終幕です。 旅は続きます。 |
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