とある神父の布教活動 第2話 |
〜アダムside〜
「よし、早速『Love&Peace』を布教せねば」
今のアダムは黒の神父服を身に纏い、片手に聖書を持ちながら街を徘徊していた。
「まずは手始めに……」
アダムは何を思ったか、懐から拡声器を取り出し近くにあった自動販売機の上によじ登る。
「皆さ〜ん!こーんにーちはー!!」
その奇怪な行動に自然と人が集まる。
「何あの人…?」
「知らねーよ……」
「風紀委員呼んだ方が良いんじゃねーの?」
周りから変質者扱いする声にアダムは満足そうに頷く。
よしよし…集まって来てますね……。
「そこのあなた!今、世界に求められているもの……何か分かりますか?」
「えぇ!あ、あたし!?」
指名された少女が驚く。
「制限時間は3秒です。3…2…」
「えっ!?ちょっ、短っ……!」
「1…0!時間切れです!!」
「短すぎるって!!」
憤慨する少女にアダムはハァ…とため息を吐く。
「仕方ありませんね…私が答えましょう」
するとアダムは右腕を振り上げ、天に向かって人差し指を振り上げる。
「答えは『Love&Peace』!これさえあれば万事オッケーです!!」
それを聞いた人々は口をポカーンと開け呆然とする。
「な、何言ってんだテメェ!?何が『Love&Peace』だよ!」
「そうだ馬鹿にしてんじゃねーよ!!」
「別に馬鹿になどしてません」
アダムが真面目な顔でそう言うと、人混みから不良な男が近づいて来る。
「『Love&Peace』だぁ…?ハッ!んなもん無理に決まってんだろ!!」
そう言うと男はポケットからタバコを取り出し火を付け吸い始める。
「感心しませんねぇ……。未成年の方が喫煙とは…」
「っ!!」
男が咥えていた筈のタバコは、いつの間にかアダムに奪われていた。
「喫煙は二十歳になってからです!!」
アダムは火の付いたタバコを握り潰した。
「なっ!火の付いたタバコを……!?」
「ハッハッハ!このくらい何ともありませんよ」
アダムは顔に大量の脂汗を滲ませながら笑顔で答えた。
「いや、無理してんじゃねーか!!」
「違いますよ………アレです。眠いからですよ」
「理由になってませんけど!?」
その後も、しばらくアダムの布教活動は続いた。
〜アダムside out〜
〜白井side〜
「確かこの辺りですの……」
この少女は白井黒子。学生の身であり((風紀委員|ジャッジメント))として街の安全を守っているのだ。
「しかし、おかしな話ですの…。神父が自動販売機の上で布教するなんて……」
まぁ、どうせイタズラですの……。
白井がそう思いながら辺りを見回すと―――――――――――、
「それではご一緒に!せーの…『Love&Peace』!!」
「「「「「『Love&Peace』……」」」」」
「いましたの……」
真昼間から何をやっているんですの……?
白井は困惑しながらも責務を果たす為、謎の神父に歩む寄る。
「風紀委員ですの!」
「『Love&Peace』〜♪『Love&Peace』〜〜♪♪」
無視された…良い度胸ですの……!
白井は自動販売機の上によじ登り、拡声器をひったくる。
「風紀委員ですのぉ!!」
さすがのいアダムも動きを止める。
「そんな近くで怒鳴らないでください。用があるなら普通に言ってください」
「さっき普通に言いましたの!そしたら無視されたんですの!!」
何なんですのこの神父!?意味不明ですの!
「それで…?何かご用で?」
「コホン…。今すぐこの布教活動を中止させなさい」
「えぇ〜〜!?」
何故かアダムはマ〇オさんの物真似をして驚く。
「(微妙に似てましたの…)先ほど苦情の電話が相次いで来たんですの。だから、即刻止めてもらいますの」
「何故です!?私はただ布教活動をしただけなのに……!何故!!?」
「「「「「やり方の問題だろう(ですの)」」」」」
その場の全員の思いがシンクロした。
「ほら、早く止めるんですの」
「やだやだやだぁ〜!布教したい〜〜!!」
「暴れないでくださいまし!!」
白井はアダムの動きを止めるべく、常に持ち歩いている鉄矢で瞬時にアダムを壁に打ち付ける。このアダムを一瞬の内に鉄矢を打ち付けることが出来たのは、白井の『空間移動』の能力のおかげである。
「さてと、これで大人しく……って!いない!?」
壁には、アダムが着ていた神父服だけしか打ちつけられていた。
「危ないではないですか」
「っ!?」
アダムは白井の背後からニュッと頭を出した。
いつの間に背後に…!というか……。
「あなたのその格好は何ですの!?」
今のアダムは、阪神の野球帽を被りセーラー服を着ていた。つまり変態だ。
「あなた変態ですの!?」
「いっけね!これパジャマだった☆」
「パジャマ!?それパジャマですの!!?」
アダムに振り回される白井は、自分の頭を振って気を紛らす。
「……抵抗するようなら容赦しませんの」
「別に抵抗はしません。ただ………」
「ただ?」
次第に、アダムの顔が真剣な顔つきになっていく。
「私はただ…皆さんに『Love&Peace』の大切さを伝えたいだけです」
そんなアダムの真剣な顔に、白井は諦めたかの様にため息を吐いた。
「分かりましたの…。今度からもう少し穏便にお願いしますの」
「感謝します。Ms.……」
「白井。白井黒子ですの」
「Ms.白井、感謝します……」
こうして普通にしてれば真面目そうな人ですのに……。
白井は、野球帽を被りセーラー服を着ながら頭を下げるアダムを残念に思う。
「それじゃあ今度から気をつけて……。あと、そのセーラー服は脱いだ方が良いですの」
「はい、必ずや」
白井はスカートをなびかせながら立ち去るアダムを見送った。
「やっぱり心配ですの……」
アダムと別れたのは良いが、まだ白井は安心していなかった。
まぁ、あれだけ言えば大丈夫な筈……ですの。
そう思った矢先、白井の携帯が鳴り出す。
「はい、もしもし」
『あ、白井さん。パトロールご苦労様です』
電話越しから聞こえてきたのは、まるで飴玉を転がすような甘ったるい声色をした少女だった。
「初春?どうしたんですの?」
声の主は、白井と同じ風紀委員の初春飾利であった。
『実はまたトラブルが……』
ハァ…。せっかく厄介事が終わったというのに……。
『あの…大丈夫ですか?』
「えぇ…平気ですの。それで?内容は?」
白井が問いただす。
『実は……、『神父が清掃ロボをロデオのように乗りこなしながら、布教活動をしている』らしいんですよ…』
「…………」
段々と白井の体が震える。
「全っっ然反省してないですのぉ!!!」
この後、白井はアダムの首根っこを掴みながら風紀委員本部へと連行して行った。
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白井さんとの初絡みです。 |
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