仮面ライダーエンズ  ヤプールの欲望 後編
[全1ページ]

 

「…良くないフォースを感じる。この苦痛と嘆きのフォースは、あの皇魔という生徒のものじゃ。」

ロストグラウンド学園校長室で、緑色の小さな生命体が言った。この生き物こそがヨーダであり、ロストグラウンド学園の校長だ。

「あれは一度闇に落ちた魂です。ガラスのように脆く、また壊れやすい。きっかけ次第では、すぐ闇に戻ってしまいますよ。」

側で言葉を継いだ黒いスーツの男性は、ルシフェル。こちらはロストグラウンド学園の教頭である。

 

 

その二人のもとへ、白い服を着て眼鏡をかけた老人が訪ねてきていた。この老人こそ、理事長のカーネル・サンダースである。

「神であるあなたなら、どうすればいいかわかると思いますが…」

ルシフェルはカーネルを神と呼んだ。それもそのはず。カーネルとは仮の姿であり、真の姿は混沌を司る神、カオスなのだから。カーネルは笑みを浮かべながら言う。

「我々が手を下す必要はない。既に、彼を光へ戻そうとする意思が動いている。」

「ならば良いがの。」

「あなたがそう言うなら、私はそれに従う。神は絶対ですからね」

カーネルの言葉を聞いて、ヨーダとルシフェルは従った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇魔を取り逃がしたヤプールは、己の力を強化すべく、人間を襲って欲望を吸い取り、セルメダルを増やしていた。建物などを欲望のエネルギーに変換して、それを吸収することでもセルメダルを増やす。

「今度こそ…始末する…」

もうヤプールの体内のセルメダルは、かなりのものになっている。

「そうはさせない!」

音無達は、そんなヤプールの前に立ちはだかった。

「またお前達か。わざわざ殺されに来るとは」

かなでは音無とゆりに訊く。

「結弦、ゆり。あれがヤプール?」

「ああ、そうだ。」

「皇魔くんを散々馬鹿にして傷付けた最低なやつよ。」

「…」

説明を受けて、かなでは皇魔のことを考える。

 

皇魔から自分が転生者であると聞いた彼女は、以前の自分と同じだと思った。彼女は研究所からセフィロスに助け出され、それから彼の娘になったわけだが、その間、誰を頼ったらいいか、誰を信じたらいいかわからず、とても不安だったのを覚えている。皇魔も転生によって突然わけのわからない世界に放り込まれ、きっと不安だったに違いない。かなではセフィロスに自分が味わった不安を話してみたところ、それは恥じるべきことではないと言われた。つまり、当然のことなのだ。にも関わらず、ヤプールはそれを滑稽だったと馬鹿にした。といっても音無達から聞いただけなのだが、それでもヤプールがやったことに対し、かなでは珍しく憤りを感じている。

「ガードスキル・ハンドソニック」

ハンドソニックを出現させ、構えるかなで。

「あなたがやったことは、許されることじゃないわ。」

「許す必要なんてないわよかなでちゃん。」

「こいつは、倒さなくちゃいけない。」

同じようにサイレントアサシンを発現させるゆりと、ベルトを装着する音無。

「面白い。返り討ちにしてやる!」

ヤプールはゆっくりと自分の鎌を撫で上げ、

「変身!」

 

〈Music Start!〉

 

音無はそれを合図に変身。ビーツブレイザーを発砲しながら突撃していき、ゆりとかなでもそれに続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンペラ星人は、始めからあのような姿をしていたわけではない。最初はウルトラマン達と同様に、地球人と全く変わらない姿だった。それが太陽の輝きを失い、光への憎悪と闇の力を持ったがゆえに、あの姿となったのだ。ウルトラマンが光を得て進化した超人なら、エンペラ星人は闇を得て進化した超人なのである。

 

エンペラ星人皇魔は、光への復讐と全宇宙征服の足掛かりとして、かつて数万年もの間宇宙を支配していた全知全能の存在、レイブラッド星人に目をつけた。ありとあらゆる怪獣や宇宙人を操れるレイブラッド星人は、今でこそ肉体を失って精神体となっているが、それでも凄まじい力を持つ。皇魔はそのレイブラッド星人を吸収し、強制融合しようと考えたのだ。通常怪獣達を操れるのはレイブラッド星人と、その遺伝子を受け継いだレイオニクスと呼ばれる存在だけだが、レイブラッド星人自体を吸収すれば、レイオニクスではない皇魔でも、怪獣達を操れるようになる。また、基本的な戦闘力も数倍以上に強化されるのだ。

 

 

 

予定通りレイブラッド星人を吸収した皇魔は、自分の目的を果たす上で最大の障害となる、光の国の壊滅を計画した。光の国はウルトラマン達の故郷であり、彼らが開発した人工太陽、プラズマスパークエネルギーコアが安置されている惑星でもある。ウルトラマンの中でも特に危険で強力なウルトラマンキングと、ウルトラマンノアを計略によって撃破した皇魔は、破竹の勢いで進撃を続け、遂にウルトラマンを殲滅。プラズマスパークエネルギーコアの破壊にも成功した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光の国へ進撃した際、皇魔に一騎打ちを挑んできたウルトラマンがいる。それが、ウルトラマンケンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正史においてウルトラ大戦争と呼ばれるこの戦いは、本来なら超闘士として覚醒したケンが、エンペラ星人を撃退することによって終結するのだが、先に記したエンペラ星人とレイブラッド星人の融合は正史に存在せぬこの世界だけの出来事であり、またケンが超闘士に覚醒する直前、その力の強大さを察知した皇魔が、覚醒直前の段階でケンを倒してしまったため、ウルトラマン達は士気と勢いを増した皇魔軍に敗れたのだ。

 

 

この二つさえ起きなければ、ウルトラマンが負けることはなかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、どういうわけかケンは500年前のオーズの世界に転生し、エンズとして戦い、ここをエンズの世界にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不完全な覚醒をした無限の使徒っていう存在に転生させてもらったんだって。無限の使徒の方は、転生させた影響で死んじゃったらしいけど」

これが、レスティーから語られた、ケンの転生理由だ。

「まるで正義感の塊みたいなやつだったわ。デザイアを完全に悪だって割りきって…私も殺されかけた。」

ケンは皇魔ほど弱体化してはおらず、生身でもデザイアと渡り合える強さを持っていた。油断していたレスティーは危うく倒されかけたが、必死に命乞いをした結果助けられ、それ以来ケンの旅に同行することに。

 

他のデザイアとの戦いを続ける間、レスティーはセルメダルでケンの力を回復できることを発見した。皇魔に会った時回復法をすぐ教えられたのも、この前例があったからである。

 

「…それで、貴様は何が言いたい?」

この手の昔話を長々と聞くのが嫌いな皇魔は、レスティーが伝えたいことを訊く。

「…デザイアを信仰している人間もいてね。旅をしている間、そういった連中からも命を狙われ続けたわ。でもね、それでもケンは二度目の死を迎える瞬間まで、戦い抜くことができたの。何でかわかる?」

ウルトラマンは基本的に地球人に協力的であり、そして地球人を愛している。そんな愛すべき存在から命を狙われれば、自分の道を疑問視し、投げ出したくもなるだろう。

 

だが、ケンは全てのデザイアを封印し、再び死ぬ時まで戦い続けることができた。その理由は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人の心の光を、そして、自分自身の光を信じ続けていたからよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを聞いた時、皇魔は電撃に打たれたような思いがした。信じていたものに裏切られてなお、ケンは信じた。だが、自分はどうだろうか?そこまで信じることができたのか?いや、疑心暗鬼に陥り、信じることをやめてしまった。しかし、ケンは信じたのだ。

 

それを聞いて、日向は皇魔に尋ねる。

「どうして音無が、お前のためにあそこまで怒ったと思う?お前を信じてるからだよ。」

「…余を…信じている?奴は…余を信じているのか…?」

「…あいつから聞いた話なんだが、お前はあいつを不良から守ったらしいじゃねぇか。その時から信じているんだとよ」

皇魔は思い出す。そういえば、以前自分の通行を邪魔していた不良(ゴミ)を片付けたような気がする。

(その時近くに音無がいたような…)

どうやら、皇魔にとってはさほど重要な行為ではなかったらしい。

「それにな、音無だけじゃなくて、俺もお前を信じてる。ゆりっぺやかなでちゃんもな」

「音無さんほどじゃないが、貴様も十分信頼には値する。」

「俺達も信じてるんだぜ?な、クラウド!」

「ああ。」

「ククク…まぁそういうことだ。」

「信じてるに決まってるだろ?」

「お前なら、な。」

音無や日向、ゆりやかなでだけではない。直井も、ザックスも、クラウドも、アーカードも、カズマも、劉鳳も、しおんも、海馬も、ブラックも、それからレスティーも。この場にいる全員が、皇魔を信じている。しおんは皇魔に言った。

「お前の中には、孤独という闇が存在する。」

「…」

皇魔は頷き、肯定する。しおんは続けた。

「その闇を否定しろ。お前はもう、一人じゃない。」

「それから、次はお前が俺達を信じる番だ。」

「…」

皇魔は思う。確かに、彼らは自分を信じているからこそ、こうして語りかけてくるのだろう。ならば、こちらも信じるべきだ。けれど、今までの後ろめたさから素直になれず、

 

 

「……少しだけ、信じてみたくなった。」

 

 

と答えておいた。だが、彼らにはその答え方で十分である。

「次に何をすべきか、今の貴様ならわかるな?」

海馬から訊かれ、今度は力強く頷く皇魔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に何をするべきか。孤独という闇を振り切った皇魔には、あまりにもわかりきった問答であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!!」

ヤプールに殴り飛ばされるビーツ。ゆりとかなでも満身創痍だ。

「もう終わりか?」

「まだだ!」

「まだよ!」

「まだ…あたし達は…!」

ビーツ、ゆり、かなでは、ボロボロながらも勇ましく言い返す。

「ならば、これで終わりにしてやろう。」

鎌にエネルギーを集中し、

「死ね!」

突き出すヤプール。

 

 

 

 

しかし、光線を放つ前に衝撃波がヤプールを吹き飛ばした。

 

 

 

 

「ぐわあっ!!」

完全に油断していたヤプールは、本来なら耐えきれる一撃に耐えられず、地を転がる。ビーツ達には、その一撃を放ったのが誰か、わかっていた。

 

 

 

 

「そこまでにしておけ、ヤプール。」

 

 

 

 

その本人、皇魔は、心強い味方を何人も連れてやってきた。

「皇魔!」

「あんた達まで!」

「みんな…来てくれたのね…」

ようやく安堵する三人。

「ぐっ…まだくだらない友情ごっこをするつもりか!そんなことをしても、いずれ裏切られるだけだ!無駄だということがまだわからないらしいな!」

ヤプールは起き上がって再び言葉攻めを始める。だが、

「残念だったな。もはや貴様の言葉には惑わされんぞ」

「何!?」

今の皇魔に、ヤプールの邪悪な囁きは通用しなかった。

「今の余には、余を信じて戦ってくれる者達がいる。ならば、余はそれに応えなければならん!」

「利用されているだけだ!!」

「何とでも言え!それでも余は信じる!例え裏切られようと、信じ抜く!最期まで!!」

「うぐぅ!?」

皇魔の固い覚悟を崩すことなど、もはやヤプールには不可能だ。

「レスティー!貴様のコンボを使う!」

「了解!」

レスティーはベルトと自分のメダルを渡す。

「そのケンカ、俺にも手伝わせろよ!」

「加勢するぞ皇魔!」

シェルブリットと絶影の第二形態を発動するカズマと劉鳳。

「俺も行くぜ!」

「手を貸す。」

バスターソードと合体剣を抜くザックスとクラウド。

「異論はないな?」

ココロパフュームを出すしおん。

「いらんとは言わせないぞ?」

「たまには暴れさせろ。」

ドラモンキラーを構え、カスールとジャッカルを抜くアーカード。

「援護くらいはするぜ?」

「感謝するんだな。」

互いに銃を取る日向と直井。それらの光景を見て皇魔は、

「…好きにしろ。」

と、どこか嬉しそうに呟いてから、

「変身!」

 

〈クレアボヤンス!サイコキネシス!テレポート!ク〜レ〜イト〜!〉

 

エンズ クレイトコンボに変身した。

「プリキュア!オープンマイハート!」

しおんもダークプリキュアに変身し、これで完全に臨戦態勢が整う。

「舐めるなよ貴様ら!いくら数を揃えたところで、この私に勝てるはずゴバァッ!!」

ヤプールは、それ以上言葉を紡げなかった。ヤプールの目の前に瞬間移動したエンズが、ヤプールのみぞおちに拳を叩き込んだからだ。凄まじい速度で空中に打ち上げられるヤプール。15mほど飛んだあたりで、再び瞬間移動してきたエンズから踵落としを背中に喰らい、地面に激突。小さなクレーターができた。

「こ、こんなもので…ハッ!?」

今までセルメダルを貯めることで力と耐久力を上げたヤプールは、あまりダメージを受けずに済んだ。しかし、起き上がった直後に気配を感じ、見てみるとそこにはダークプリキュアが。

「はぁっ!!」

「ごあっ!!」

鞭のようにしなるキックを顔面に受けて、吹っ飛ばされるヤプール。

「ドラモンファイヤーストーム!!」

待ち受けていたブラックは、自分の周囲に巨大な炎の竜巻を発生させ、ヤプールを巻き込む。

「ぐわああああああああ!!!」

全身を業火に焼かれて苦しむヤプールだが、

「まだ終わらねぇぞぉっ!!」

カズマの予告通り、まだ終わりではない。

「シェルブリットバーストォォォッ!!!」

「ごがはぁぁっ!!!」

ヤプールは全身に光を纏って突撃してきたカズマのシェルブリット・バーストで、ドラモンファイヤーストームもろとも吹き飛ばされる。

 

〈CORE BURST!!〉

 

「チャクラムダンシングカット!!」

「剛なる拳・伏龍!!臥龍!!」

「ぐぎゃああああああああ!!!」

エネルギーを纏ったチャクラムと刃付きミサイルで、空中のヤプールを滅多切りにするビーツと劉鳳。クラウドはその間に跳躍し、合体剣に闘気を纏わせつつ、ヤプールに向かって振ると同時に合体剣を分離。分離させた複数の剣を、未だ空中にいるヤプールの周囲に配置する。クラウドは配置した剣を伝いながらヤプールを斬りつけ、

「超究武神覇斬!!ver.5!!!」

最後に落下しながら剣を振り降ろし、着地した。クラウドの周囲の地面に、分離した剣が落ちて突き刺さる。ヤプールも落ちてくるが、

「まだまだ!!」

今度は代わりにザックスが空中へ跳び、

「メテオショット!!」

バスターソードから大量の火炎弾を放つ。

「ぐがああああ!!!」

この連続攻撃を防げず、ダメージを受けるヤプール。動きが鈍ったところへ、アーカードが接近。

「対デザイア用の特殊弾頭だ。零距離から味わってみるといい」

ジャッカルをぶっぱなした。

「ぎゃばっ!!」

今アーカードが撃った弾には、放つと同時にセルメダルの結合を不安定にさせ、さらにセルメダル自体を爆破するエネルギーが込められており、ヤプールは仰向けに転がる。

「行くわよかなでちゃん!」

「わかったわ。」

日向と直井の援護を受けながら駆け抜けるゆりとかなでは、通り抜けざまにヤプールを斬る。これによって生まれたヤプールの隙に、

「滅びのバーストストリーム!!!」

ブルーアイズを召喚して攻撃する海馬。

「ぬがあああああああああ!!!」

まさにフルボッコにされてしまったヤプール。だが、

「クックックックッ…」

彼には余裕があった。

「忘れたのか?私は復活できるのだぞ?ここで貴様らに倒されようと、貴様らへの憎悪を糧に、何度でも蘇ってやるわ!!」

ヤプールは復活ができるのだ。ここで倒しても、皇魔達への憎悪や宇宙支配への欲望から復活し、どこまでも食らいついてくるだろう。

 

「それはいい話を聞いた。」

 

しかし、ある者にならヤプールの復活を永遠に封じることができる。いつの間にかこの場に来ていたその存在に驚き、ヤプールは反射的見た。

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様は、二度と蘇るな!!」

 

いたのは、ギアスを発動したルルーシュ。ギアスの瞳を見てしまったヤプールには、『復活してはならない』という命令をくだされる。

 

これまで様々な方法で復活を封じられてきたヤプールは、そのいずれもを打ち破り、復活してきた。だが、ギアスによる命令は絶対。もうヤプールは復活できないのだ。

「でかしたぞルルーシュ!」

「今だ!一気に倒せ!」

「うむ!」

ルルーシュからこの上ないサポートを受けたエンズは、ベルトをスキャン。

 

〈スキャニングチャージ!!〉

 

「ぬん!!」

念動力でヤプールの動きを止め、

「でやああああああああああ!!!」

PSYキックを放つ。

「ぐわあああああああああああ!!!」

不可避の一撃を食らったヤプールは爆炎を散らしながら地に落ちるが、それでもヤプールを討つには至っていない。どうやら、相当なパワーアップをしていたようだ。

「…復活を封じられたか…だが!!」

フラフラしながら立ち上がるヤプール。

「なら倒されなければいい!!簡単なことだ!!」

確かにそうなのだが、これだけの面子に揃われては絶望的である。

 

 

 

 

 

 

だが、今のヤプールの肉体は疑似デザイアのもの。セルメダルの自己増殖機能を備えている。

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

ヤプールはここに来て自分の欲望を増大させ、結果、セルメダルが爆発的な速度で増殖。今の肉体の大きさでは、その量のセルメダルを抱えきれず、抱えきるため、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤプールは巨大化した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、マジかよ!?」

「まさかの巨大化!?」

驚くビーツとゆり。

「ふははははははははははははは!!!」

ヤプールはそれに構わず、周囲の建物を欲望のエネルギーに変えて吸収。さらにセルメダルを増殖していく。しかも、一緒に周辺の人間からも欲望を吸収する。そして、ビーツ達もその影響を受けた。

「ぐ…あああ…!!」

「頭が…」

「うう…!!」

欲望を吸い取られ始め、苦しむ一同。ビーツは変身を解かれ、レスティーでさえ少しずつセルメダルをヤプールに奪われている。

 

 

しかしただ一人、エンズだけはこの手の攻撃に耐性があるため、苦しまずに済んでいた。だが、このままというわけにはいかない。手を打つため、エンズは変身を解く。

「皇魔!?」

彼の意図を計りかねるレスティー。と、

 

 

 

「今の余なら二時間はもつか…」

 

 

 

 

謎の一言を発した。同時に、力を解放する皇魔。やがて彼の目が青く光り、皇魔は赤黒い炎を纏って駆け出す。

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

「でやぁっ!!」

勢いよく跳躍し、皇魔の全身がさらに巨大な赤黒い炎に包まれ、炎が消えた時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皇魔は、エンペラ星人となって着地していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

皇魔は今まで力を回復し続けていたおかげで、二時間程度なら本来の姿に戻れるようになっていたのだ。まぁ力の回復が完全ではないため、本来の半分程度の力しか発揮できないが、

「何!?」

それでもヤプールを驚かせるには十分だった。

「あれが…皇魔の本来の姿…」

音無は、その規格外さに圧倒されている。これが、自分の目指す領域だと思い知った。皇魔は、ヤプールに言い放つ。

「終わりだヤプール。復活を封じられた以上、貴様に勝ち目はない。」

「ふん!私が何の準備もしていないと思っているのか?」

ヤプールは一度片手を上げ、

「いでよ!」

振り下ろす。すると、皇魔の周囲にある空間がひび割れ、中から異形の怪物達が現れた。

 

ヤプールは怪獣と様々なものを合成させることによって誕生する怪獣を超えた怪獣、超獣を生み出すことができる。皇魔を取り囲むように現れたものもそれだ。

 

一角超獣バキシム。蛾超獣ドラゴリー。ミサイル超獣ベロクロン。満月超獣ルナチクス。四体もの超獣軍団である。

「私の異次元科学をもってすれば容易いこと。終わるのは貴様の方だ!」

勝ち誇るヤプール。しかし、

「…それがどうした?」

皇魔は余裕だ。それが気に食わないヤプールは、

「殺せッ!!!」

攻撃命令を下す。

 

超獣軍団はミサイルで、火炎弾で、光線で、皇魔を周囲から攻め立てた。ヤプール自身も、鎌から出る破壊光線で応戦する。

 

 

ドガガガガガッ!!ズドーンズドーンズドーン!!ジュババババッ!!!

 

 

皇魔は全身に攻撃を受け、起こった爆発に包まれて見えなくなった。

「皇魔ぁぁぁぁ!!!」

「何よこれ…一方的すぎるじゃない!!」

音無は叫び、ゆりはついさっきまでヤプールをフルボッコにしていたとはいえ、改めて見た状況に嫌悪する。逃げられないように包囲され、一斉攻撃を食らっているのだ。

「すぐスパイダーマンに連絡を!」

「ああ!」

海馬は日向に、スパイダーマンを呼ぶよう命じる。スパイダーマンのレオパルドンが加われば、間違いなくこの状況を打開できるだろう。日向も急いで連絡を取ろうとするが、

「その必要はない。」

アーカードが止めた。

「どういうつもりだアーカード!」

「皇魔くんを殺すつもり?」

劉鳳とかなでは、アーカードを非難する。だが、

「大丈夫だろ。」

「俺も同意見だ。」

カズマとブラックは違った。

「正気か貴様ら?」

「明らかに大丈夫じゃないだろ!」

「さすがにまずいと思うが…」

直井、ザックス、クラウドは、アーカード達の感性を疑う。だが、

「いや、私も平気だと思う。」

「俺もだ。」

なんとダークプリキュアとルルーシュまでが、アーカード達と同じ考えだった。

「しおんさんまで…ルルーシュくんも…!」

呆れるゆりだったが、

「大丈夫よ。皇魔は大丈夫」

レスティーが落ち着ける。仕方ないので、アーカードが結論を言うことに。

「お前達は、あの男がこの程度の攻撃で死ぬと思うのか?」

 

 

 

 

煙の中から雄々しき姿を現した皇魔は、アーカードが言った通り、無事だった。どころか、無傷である。いかに弱体化したとはいえ、この程度の相手をねじ伏せるなど、皇魔には造作もないのだ。

「ば、馬鹿な!」

「今度はこちらの番だ。」

皇魔はまずベロクロンに向けてレゾリューム光線を発射し、消滅させる。その後向かってきたルナチクスは衝撃波で爆砕し、皇魔の両腕に組み付いてきたバキシムとドラゴリーは強引に振りほどいてから、裏拳一発で頭を粉々に破壊した。零距離で爆発する超獣二体。それすら、皇魔にダメージを与えることはできない。

「やはり、終わるのは貴様だったな。」

皇魔が空中に手をかざすと、光とともに一本の剣が出現する。かつてケンとの一騎打ちに使われた、エンペラブレードという剣だ。

「お、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

やけになって突撃するヤプール。皇魔も駆け出し、鎌とエンペラブレードの一瞬の交錯を経て、

「ご…が…」

ヤプールは真っ二つとなり、爆発した。

 

戦いに勝利した皇魔は人間に戻り、悠々と戻ってくる。

「…すごいよな、皇魔って。」

音無は呟く。

 

次の瞬間、皇魔いきなり崩れ落ちた。

「皇魔!」

慌てて駆けつけるレスティー達。皇魔は荒い息継ぎをしながら、半死半生の状態だった。今の段階で最も負担がかかるクレイトコンボを使った上に、本来の姿に戻ったりもしたのだから、当然だ。

「どうしよう…ポーションさっき使ったやつで最後だったのに…私の力じゃ疲労までは治せないし…」

ヤプールから重症を負った時に使ったポーション。二人持っているポーションは、あれで最後だったのだ。レスティーの力では、傷は治せても疲労は治せない。このままでは皇魔が死んでしまう。

 

その時、

 

「なら俺のを使え!」

 

ザックスが自分のポーションを出し、皇魔の口元に近付けた。

「飲めるか!?なんとか飲んでくれ!」

「う……」

皇魔はどうにかポーションを飲むが、まだ回復しない。

「俺のだけじゃ足りない!」

「俺のも使え。」

クラウドも自分のポーションを差し出し、皇魔はようやく意識を覚醒させた。

「…なぜだ?なぜ、余のために…?」

目覚めてすぐ、皇魔はザックスとクラウドに訊く。

「…お前が俺達の仲間だからだよ。」

「お前は俺達を信じてくれたからこそ、音無達を助けるために来た。そうだろう?なら、お前は俺達の仲間だ。」

「…仲間…そうか…余は仲間か…」

仲間。それは他者を信じられなかった皇魔にとって、転生前からずっと求めていた言葉。それを、彼はようやく自分に向けてもらうことができた。皇魔はそのことに喜びを感じながらも、しかし表には現さず、あくまで平静を装って立ち上がる。

「さて、もらうとするか。」

皇魔の目の前には、ヤプールを倒すことで残ったセルメダルの山があった。

「今回の件はこちらの不手際にも原因がある。謝罪の意味を込めて、このセルメダルは全て渡そう。」

「感謝するぞ海馬。」

皇魔はセルメダルの山を全てエネルギーに変換し、吸収する。

「これで五時間は本来の姿に戻れるようになったな。」

予想以上に力を回復できた皇魔は、満足げに頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、まだ終わってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐ近くから、三枚のコアメダルが発光しながら浮かび上がってきたからである。破壊されたと思われていたヤプールのコアメダルは、皇魔の攻撃を受けた瞬間に本体から弾き出されていたため、破壊を免れたのだ。

「あれはヤプールのコアメダルか!?」

驚く皇魔の目の前で、コアメダルはどこかに飛んでいく。

「待て!」

「!」

追いかける皇魔とレスティー。音無達も追いかける。メダルは突如として現れた灰色のオーロラをくぐった。そして、オーロラは皇魔とレスティーがくぐると消えてしまい、音無達は二人を追いかけられなくなってしまう。

「皇魔…レスティー…」

二人の身を案じる音無。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、再会はすぐに訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その再会は、新たなる戦いの幕開けとなっていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

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次回はいよいよ、超クロスオーバー大戦GENESISです。たぶんとてつもなく長くなるので、前後編に分けると思います。

 

では次回もお楽しみに。

説明
後編です。ちなみに、今回は近いうちにまたやろうと思っている長編の伏線も張ってあります。
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